交響曲第1番「カーテンガバメント・オブ・江戸」
他人に作曲してもらった交響曲を、自分が作曲したと偽り発表していた人のことが話題をよんでいる。
その人が、作曲者に渡していたという「交響曲の指示書」というものの画像(
参照)が様々なところで紹介されており、一躍「交響曲の指示書」が赤丸急上昇することとなった。
この指示書、時系列順に曲の盛り上がりなどを説明したわかりやすいものだったので、ぼくもそれっぽいものをまねして書いてみた。
時間による変化をビジュアル化したものだ
話題になっていた「交響曲の指示書」はぱっと見、図形楽譜のようだけど、こまかく見てみると、あくまで曲のイメージを伝えるだけの「指示書」だということがわかる。
どのへんからどういう曲調でどんな風に盛り上がるのか? を時間軸にそって細かく指定している。
週刊誌に掲載されていた「交響曲の指示書」(週刊文春2月13日号)
これって要するに、時間の進み具合によって内容が変わるものを表現したわけだから……例えば、江戸幕府の歴史も交響曲の指示書風に書き表すことができるのではないか?
ということで、実際に書いてみた。
交響曲第1番「カーテンガバメント・オブ江戸」の指示書完成です
歴史の授業で習う江戸時代というと、戦国時代や幕末のようなわかりやすい戦乱もなく、飢饉や改革の暗記ばかりであまりおもしろく思わなかった人も多いかもしれない。
でも、このように混乱や三大改革を、交響曲の指示書っぽく表現すると、江戸時代の概要がなんとなくつかめるような気になってくるからすごい。
この指示書では1年を1ミリとし、関ヶ原の戦いの1600年から大政奉還の1867年まで、267ミリの横軸をとった。江戸時代、たったの26.7センチである。
1年1ミリ
江戸幕府の始まりが1600年はおかしいという意見もあるかもしれないが、計算しやすいのでそうさせてもらった。
本家の指示書にあった指示書っぽい部分をマネたが特に深い意味はなく適当である
1600年から始まる江戸時代。16世紀と17世紀の変わり目の年にちょうど天下分け目の合戦があったというのも不思議な偶然である。
全体的に混乱と飢饉に焦点をあてました
幕末に行くにしたがって混乱と改革が込み入ってくるのがよくわかる
こうやって改めて書いてみると、生類憐れみの令の期間が、いわゆる元禄時代の期間と丸かぶりしてるんだなあ、とか、享保の改革って寛政の改革や天保の改革に比べると期間がすごく長い(30年)ことなど、役に立たない新たな気付きを得ることができた。
ペヤングを作る過程も交響曲に
さて、時間によって状況が変わるものは歴史だけではない。食べ物を作る時もそれはおなじだ。
大好きなんです
ペヤングである。
ペヤングはその調理過程においても「啓示」「祈り」「受難」「混沌」「歓喜」など、様々な要素があるといえる。
それらを踏まえて作成した「交響曲第二番『PEYANGU』」の指示書がこちらだ。
交響曲第二番『PEYANGU』
まずは「啓示」。
ペヤングは、時々無性に「食べたい!」と、思うことがある。なんのまえぶれもなくその「食べたい!」はやってくる。神からの啓示であるといえるのではないだろうか?
神からの啓示を受ける
ペヤング……
水屋に食べ残しがあった!
こういうのは、我に返る前に一気に書いてしまわないといけないので、どんどん進めたい。
続いて「祈り」である。
お湯を沸かし、容器にお湯を注ぎ入れ、3分待つ。これはまさに「祈り」そのものではないか?
ひたすら祈るパート
神に祈りを捧げるようにただひたすらお湯が沸くのを待ち、そして麺がふやけるのを待つ。
祈りを捧げる作曲家。銀座のハンズにはこんな金髪のカツラしかなかったのでこれご勘弁いただきたい
祈るようにキャベツを麺の下に入れる、関係ないけれど、この前久々にやきそばUFOを食べたら最初から麺の下にキャベツが入っていて感心した
祈るようにお湯を注ぎ
祈るように3分待つ
すみません、まだもうちょっと続きます。
さて、祈りが終ったは今度は「受難」と「混沌」である。
お湯の廃棄という受難を耐え忍び、そしてソースと麺の混沌へ陥る。歓喜へつながるための重要な部分だ
排水口に捨てられてしまうお湯の受難、そしてソースを投入されかき回される麺の混沌。このあたりがこの交響曲の一番の聞かせどころである。
お湯の受難
混沌の渦に巻き込まれるソースと麺
運命に翻弄され、受難と混沌を味わうペヤングに感情がシンクロし壁に頭を打ち付ける作曲家
そしていよいよ「歓喜」のパートである。
春を待ちかねた動物が、長い冬眠から目覚め、草木が一斉に芽吹くように、ペヤングが完成する。
作曲家「ペヤングできたぁー」
全人類の歓喜、生きる歓び、そして未来への希望、世界平和、家内安全、無病息災、商売繁盛、夫婦円満、子孫繁栄、犯人逮捕、安定供給……その他諸々をペヤングで表現したい。
ペヤングに背負わせるには少々荷が重いかもしれないが、それぐらいできるはずである、ペヤングはやればできる子。YDKなはずである。
やはり、歓喜の部分は第九っぽくしてほしい
いずれにしろ、指示書っぽいものはできたので、あとはこれを作曲してくれるひとを待つばかりである。
山田耕筰は明治時代を表現した「明治頌歌」という楽曲を作曲しているくらいなので、交響曲「カーテンガバメント・オブ江戸」も無理な話ではないと思う。
さらに、ペヤングに関しても「火事」とか「校長先生」という交響曲があるハイドンを思えばどうってことないはずだ。
われこそはと思う作曲家の諸兄姉はぜひデイリーポータルZ編集部までご連絡頂きたい。