薄闇にぼんやりうかぶ、トタンの美
今回訪れたのは、神奈川県綾瀬市の北部に位置する工業団地である。渋滞情報でおなじみ、「綾瀬バス停」のある界隈だ。
中小規模の工場や倉庫が建ち並ぶ、そんなちょっとした工業地帯。さてはて、どんな夜景を見ることができるのだろう。
というワケで、やってきました小規模工業地帯
街灯が少なく、薄暗い中にトタンの建物が浮かび上がる
近隣商業施設のネオンや、車のライトがトタンに表情を与えるようだ
経年によるサビや塗装落ちが、より良い風情を醸している
カートやパレットが積まれた軒先。このような雑多な感じが好きだ
夜の方が陰影が濃く、インダストリアルな雰囲気が強調される
昼間は鼠色にしか見えないトタンの壁も、薄闇のなかではより明るく見え、存在感を増す。
街灯や常夜灯の明かりに照らされたそれらのトタンは、見る角度によって波打つようにてらてらと輝き、思わぬ表情にどきっとさせられる。
まだ見学を開始して早々ではあるが、やはり私は確信した。小規模工業地帯もまた、夜の方が圧倒的に魅力的である。
スポットライトに照らされて
夜間に人が出歩くことを想定していないのだろう、工業団地の夜は暗い。その全体的な薄暗さのためか、ポツンポツンと点在するライトの光が一際目立つ。
要所要所に取り付けられたそれらのライトは、まるでスポットライトのように建物の入口を照らし出し、やや心寂しくも味わい深い景観を作り出しているのだ。
街灯に照らされるトタンの反射が美しい
まるで映画のワンシーンのようなたたずまいである
こちらは鉄扉の塗装の剥げ具合が素晴らしい
毛羽立った塗膜が放射状の影を作り、もはや芸術作品である
暖色系のライトは、鉄くずにも味をもたらす
古めかしい扉、および横に並ぶドラム缶が、なんともそそる
そこそこ大きい会社の敷地は、なんとなく空港に似た雰囲気であった
ひと気ない寂寥感に、小さくとも工業地帯なのだと実感させられる
ひっそりと朝を待つ重機たち
この工業団地には重金属やコンクリートの会社が多く、重機が活躍する場面も多そうだ。
現場に置かれたままの重機は、なんとなく寂しそうな感じである。暗くひっそりした工業団地の中、ことさらそう見えたのだろう。
寒空の下、瓦礫の山に停められたシャベルカー
こちらは定位置っぽい。黄色い車体が工場の景観によく馴染む
重機ではないが、一列に並ぶトラックもまたカッコ良い
一番の花形はコンクリート工場
小規模な工業地帯となると、どうしてもインパクトというか、見た目の派手さに欠ける部分があることは否めない。
そのような中、一際目を引いたのは背の高い塔がそびえるコンクリート工場である。
やっぱり、高さのある建物は映えますな
複雑に入り組むはしごや筋違など、まさに鉄の美
その頂上は、まるで二匹の竜のようであった
鉄とトタンと静けさと
大規模工業地帯のようなダイナミックで美麗な景観が望める訳ではないが、独特の味わいと風情がある小規模工業地帯。
楽しむコツは、自分の足であちらこちら散策して周るということだろうか。道を進む度、角を曲がる度に新たな景色を発見できるので、冒険心も満たされる。
このような工業団地は街灯が少なく、薄暗い夜は敬遠されがちな気がするが、こうしてぷらぷら歩いてみるのもなかなか楽しいものですな。