特集 2014年2月3日

いますぐエスカレーターファンが名古屋に行った方がいい理由

名古屋駅といえばの、4基並列エスカレーター
名古屋駅といえばの、4基並列エスカレーター
先日、全国の数少ないエスカレーターファンの方のおひとりからお便りをいただいた。私が「丸ボディ」と呼んでいるレトロなタイプの、それも照明つきのよりレアなバージョンのありがたい目撃情報だったのだが、それがなぜか名古屋に集中して何カ所もある。というわけで、時間を作って名古屋に行ってきたのだが、エスカレーターに少しでも興味があるなら、今すぐ名古屋に行った方がいいと思う。そのくらい名古屋はヤバかった。
1984年うまれ、石川県金沢市出身。邪道と言われることの多い人生です。東京とエスカレーターと高架橋脚を愛しています。

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最近東京でいちばんすごかった丸ボディ

と言っても、「丸ボディ」の何がすごいのか、エスカレーターに興味のない方にはわかりづらかろう。「丸ボディ」って私のつけたてきとうな呼称だし。
まずは見ていただくのが早いと思うのだが、せっかくなので最近東京で見たいちばんすごい丸ボディがこちらだ。
新宿のドラッグストアの片隅で眠っていた。これも別の目撃情報をいただいて出会えたもの。
新宿のドラッグストアの片隅で眠っていた。これも別の目撃情報をいただいて出会えたもの。
手すり下、欄干部分が丸みを帯びて出っ張り、かつ全部が乳白色のもの。これが、丸ボディ全照明タイプである。本当は乳白色部分が光るはず。
しかし、こちらはもうすでに故障して動かず、エスカレーター特有の乗り口部分の微妙な段差をスロープで解消してもらうという措置により、階段としての余生をまっとうしていた。全照明型エスカレーターが誕生したのは1950年代。その後、部分照明、全透明、透明薄型と順々に進化して、全照明型が作られることはなくなったから、機械としては相当の年代モノだ。そんなレアモノに対してひどい扱いだと思われるかもしれないが、全照明型エスカレーターのほとんどが、もはや撤去されるか、建物ごとなくなるかしている現状を考えるに、こうして残してくれているだけとてもありがたい。たとえ動かずとも。光らずとも。
東京で光ってるのは、こちら日本橋三越と、あとは東急東横店、ニュー新橋ビルぐらい。
東京で光ってるのは、こちら日本橋三越と、あとは東急東横店、ニュー新橋ビルぐらい。
初めて全照明タイプが納入された日本橋三越では、デパート側のご好意で、かつてのものを忠実に再現した綺麗なゴールド丸ボディが動いている。
東京じゃなくて光ってたのは、福井駅前の繊協ビル。裏日本希望の星。
東京じゃなくて光ってたのは、福井駅前の繊協ビル。裏日本希望の星。
いきなり場所が福井にとんだが、光ってる全照明タイプは全国的にみてもすごく少なくなっているのだ。なので、最優先収集対象として、目撃情報をいただくとけっこうすぐに現地にとぶようにしている。
これは京都の大丸。動いてるが、光ってない。
これは京都の大丸。動いてるが、光ってない。
そんな貴重な丸ボディ全照明タイプが、名古屋ではざっくざっくと見られちゃったというのが今日の話だ。
だー!いきなりの3基並列!
だー!いきなりの3基並列!
3基とも動いてる!光ってる!!
3基とも動いてる!光ってる!!
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日立の丸ボディ全照明…だと…?

前ページ、少しでも詳しい方なら、3基並列、というところだけじゃなく興奮してくれたはずだ。そうなんですよ、これ、日立の全照明なんですよ!
名古屋以外で私が見た全照明タイプは、すべてが三菱電機製だった。というのも、そもそも全照明タイプを開発したのは日本どころか世界を先駆けて三菱が最初だったので、数が多いのは必定なのだ。
それが、3基とも、ご覧の通りの日立製作所謹製である。
それが、3基とも、ご覧の通りの日立製作所謹製である。
目撃情報をいただくまで、「日立はたぶん全照明タイプは作ってなかったんじゃないかなー」とかてきとうなことを言っていた(私のエスカレーター知識はほとんど実物を見て推定しているものが大半なのでこのようにいいかげんで後に修正することが多々あります)。反省しきり。
これはなにかの文化財にいますぐ指定したほうがいいんじゃないか。稀少すぎてそわそわしてしまう。
いちばん右側は、ステップとランディングプレート(乗る部分の銀色の板のこと)が最新のものに変えられていた。これはメンテナンスが行われている証拠なので安心できる。この調子で、ずっと光り続けてほしい。
いちばん右側は、ステップとランディングプレート(乗る部分の銀色の板のこと)が最新のものに変えられていた。これはメンテナンスが行われている証拠なので安心できる。この調子で、ずっと光り続けてほしい。

東芝の丸ボディ全照明…だと…?

この、日立製全照明タイプを見てなお、「あーでも東芝はたぶん部分照明からしか作ってないはずー」とか私は言っていた。
それにはちょっとした根拠があって、東芝一号機とされているエスカレーターが、部分照明タイプなのだ。
それがこちら。東芝科学館に展示されていたもの(現在は東芝科学館が閉館してしまったため見られない)
それがこちら。東芝科学館に展示されていたもの(現在は東芝科学館が閉館してしまったため見られない)
乗り口部分だけが乳白色で、あとの部分は透明になっているのがご覧いただけるだろうか。全照明タイプ誕生後まもなくして、各メーカーは、より開放感を増すため透明タイプの開発に勤しんだ。その途上期に作られたのが、こちらの部分照明型。ちなみにこのタイプもエスカレーターファン的には見かけたらけっこう嬉しいが、全照明タイプと比べたら残っている数は格段に多い。
戦後参入と比較的あとからエスカレーター開発に関わった東芝の一号機がこの部分照明タイプであるのだからして、それより古いモデルである全照明タイプは作っていないだろう、というのが予想だったのだが。
名古屋にはあるのだ。
名古屋にはあるのだ。
上下二基。しかも光ってる。
上下二基。しかも光ってる。
ランディングプレートに刻まれたメーカー名は筆記体。
ランディングプレートに刻まれたメーカー名は筆記体。
遠くからでもわかる、神々しい輝きを放つ。やはり部分照明とは格が違う。※個人の感想です
遠くからでもわかる、神々しい輝きを放つ。やはり部分照明とは格が違う。※個人の感想です
他の場所にしれっと、幅が広い別タイプの全照明もある。この日人生で乗ったことのある丸ボディ全照明タイプの数を軽く超えた。
他の場所にしれっと、幅が広い別タイプの全照明もある。この日人生で乗ったことのある丸ボディ全照明タイプの数を軽く超えた。

より大きな地図で 名古屋全照明密集地域 を表示
地図にプロットすると、日立全照明、東芝全照明があるのはものすごく近所である。全照明エスカレーター密集区。
いっぽう天下の三菱先輩はこの近所にものすごく独特な照明意匠を施したエスカレーターを納入されてらっしゃった。どうした三菱先輩。
いっぽう天下の三菱先輩はこの近所にものすごく独特な照明意匠を施したエスカレーターを納入されてらっしゃった。どうした三菱先輩。
この時点でもう名古屋ヤバすぎるだろう。え、こんなの地方都市ならよくあるじゃん、と思った方もいるかもしれないが、仙台、広島、岡山、福岡なんかでエスカレーターハント(めぼしい百貨店やビルに全部入ってエスカレーターを確認する)したことがあるけど、全照明をこんなホイホイ見つけられるの名古屋だけだ。
しかし、ヤバさの総本山ともいえる、名鉄百貨店本店の紹介がまだ残っている。
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東芝の例のアレが見たい

以前にも紹介したことがあるのだが、世界で3基しかないという、全照明よりさらに激レアなエスカレーターが名古屋にはある。
東芝の例のアレ。欄干の形状が非常に独特。
東芝の例のアレ。欄干の形状が非常に独特。
このタイプ、ふつうの人はふつうのエスカレーターとしてのぼっていくくらい、気づかないといえば気づかない違いのようだが、私には衝撃だった。エスカレーターの概念を覆す勢いと言ってもいい。ぐるっとまわりこむはずの手すりがそのまま垂直にもぐっていくのだ。たとえば、漫画やアニメなどの背景で、こういう感じの欄干を持つエスカレーターが描かれることがあるが、今までなら「そんな形のエスカレーターねぇよ」って鼻で笑ってた。が、あったのである。
東京では日比谷の東宝ツインタワーに1基だけある。仲間うちでは「垂直落下タイプ」と呼んで愛でている。
東京では日比谷の東宝ツインタワーに1基だけある。仲間うちでは「垂直落下タイプ」と呼んで愛でている。
「全国で3基しかない。あと2基は名古屋」と中の人に教えていただいて、ずっと名古屋に想いをはせていた。おなじ中の人に、「あと2基ってどこにあるんですか?」ときけばいいのだが、いきなりきかないのが私のルール(そのほうが見つけたとき嬉しいから)。

そしてやってきたのが名鉄百貨店本店。
そしてやってきたのが名鉄百貨店本店。
想いをはせること数年、「あ、そういえば例の日本で3基のやつ、名古屋の駅前の名鉄でみましたよ」とついに目撃情報をゲットしたのである。ちなみに教えてくれたのは私のモノレール師匠、和田さんである(和田さんの紹介記事はこちら)。和田さんとお知り合いになっておいてよかった。

東芝じゃないレアなのばっかり見つける

名鉄、というと金沢出身の私にはなじみ深い存在である。地元のデパートが、大和と名鉄のふたつだったからだ。「めいてつ」が「名古屋鉄道」の略だと気づくのは大人になってからである。
が、その名鉄のお膝元である名古屋はすごかった。当たり前だが鉄道としての「名鉄」もあるし、名鉄バスセンターもあるし、百貨店もあるし、しかもその全部が複雑に入り組んでつながっていて、いったいどの名鉄の、どこに目当てのエスカレーターがあるのかわからない。金沢の例でつづけると、大和と名鉄と金沢駅の百番街と、ついでにホテル日航ぐらいまで、金沢のめぼしい建築物が全部つながってるぐらいの広さがあると思ってくれたらいい。
教えてくれたひとに聞く、のは私ルールにより最終手段である上、和田さんはソーシャルメディアとかに日常的にはいらっしゃらないのですぐお返事いただけるともかぎらない。うーむ。

と、さまよってるうち、めあてのエスカレーターじゃないレアなエスカレーターばっかり見つけた。
なんだろうこの鱗状の欄干。
なんだろうこの鱗状の欄干。
と思ってはっと足下を見ると、オーチスのデコプレートだった。
と思ってはっと足下を見ると、オーチスのデコプレートだった。
オーチスというのは世界で最も老舗のエスカレーターメーカーである。比較的新参で、低価格路線でいくシンドラーと比べると、ランディングプレートの種類も多種あるし、さまざまな形のエスカレーターがあるし、日本発祥の形である丸ボディタイプも生産しているしで、見所は多い。こちらの非常に凝った模様のランディングプレートは、オーチスの中でもややレア、コレクター価値的にはギザ10までいかないが最近めっきりみなくなった二千円札ぐらいである(貨幣コレクターではないのでてきとうですみません)。
なので見かけると嬉しい。
なので見かけると嬉しい。
ん。これもオーチス。って…
ん。これもオーチス。って…
こ、これは、オーチス、ESCAL-AIRE…?
こ、これは、オーチス、ESCAL-AIRE…?
あまりにびっくりしたのでブログに書いていたら、それを見た外国の方から、「たぶん興味あると思って」と言って、このESCAL-AIRE発売当初の広告ポスターの原画を教えてもらった(このページに載ってます。

これを見ると、おそらく透明薄型のまったく新しいエスカレーターを出すときに、オーチスがはりきって「ESCAL-AIRE」と商品名をつけたのだと思われる。「ESCALATOR」という言葉も、そもそもオーチスが登録商標していた商品名だったのだが、上のふつうのOTISと比べると、たしかに透明薄型は革新的なので、新しい名前をつけたくなっちゃう気持ちわかる。ふつうはどっちも同じエスカレーターとしか思われてないわけなのだが。
しかしESCAL-AIRE、日本だとここしか見ていないのでもしかするとここだけかもしれない。どうなってるんだ名古屋。

そうこうしてるうち、無事、目的のエスカレーターを見つけました。
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名鉄百貨店をさまようこと30分、ようやく目的のエスカレーターを見つけた。デパートでは上階に向かうと構造が複雑になり、よくレストラン街の部分だけ別の場所にエスカレーターがついたりしているが、まさしくそれ、9階のレストラン街へとつづく、変則的独立エスカレーターが、例のアレだった。
あった…!
あった…!
赤くてピカピカの手すりがまぶしい。やっぱりメーカー名は筆記体。
赤くてピカピカの手すりがまぶしい。やっぱりメーカー名は筆記体。
ステップは側面がつるつるのタイプ。この時期の東芝はこれ。
ステップは側面がつるつるのタイプ。この時期の東芝はこれ。
9階から。やっぱりこのエスカレーターは、正面から撮ると構図がばしっと決まってかっこいい。これを作りたかった気持ちわかる。
9階から。やっぱりこのエスカレーターは、正面から撮ると構図がばしっと決まってかっこいい。これを作りたかった気持ちわかる。
ちなみに9階から10階へのエスカレーターも同じ構図だったが、こちらはけっこう最近のモデルになっていた。
ちなみに9階から10階へのエスカレーターも同じ構図だったが、こちらはけっこう最近のモデルになっていた。
8階から9階への間だけが奇跡なのだ。
また8階へ降りて
また8階へ降りて
正面からもう一度
正面からもう一度
こちらのエスカレーターは、日比谷のものに比べてかなりしっかりメンテナンスされている印象だったので、まだもうしばらく大丈夫だろう。
しかし繰り返すようだが、なにかしらの文化財に指定して保護してほしいと心から願う。

じつは、今年エスカレーター来日100周年です

というのは、お正月の「100年前の東京」特番をテレビで見ていて気づいたのだが、日本にエスカレーターがやってきたのは1914年3月8日、大正博覧会の会場入り口でが初お目見えだったので、今年でちょうど100年になる。
じつは名古屋のエスカレーターを観に行ったのはちょっと前で、しかも何回かにわかれて見ているのだが、そういうわけでこの機会にまとめてみた次第である。名古屋のエスカレーターだけで4ページも書くことあるかしらなんて思ったのがまったく杞憂だったことをあわせてお伝えしたい。
愛知まで広げると、まだまだ書くことがあるぞ。
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