特集 2013年12月26日

フルーツパーラーのパフェ入門

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フルーツパーラーのパフェについて語る人に会った。
「桃はできますかって聞くと『それはまだ』なんて断られたりするんです」
そんな寿司屋の大将と話すような会話があるのだという。

でも考えてみたらその時いちばんおいしい果物の盛り合わせがフルーツパフェだ。おまかせで頼むお造りみたいなものである。

スイートな世界だと思っていたが、そんなに凛としたものだったのか。そう思うと俄然興味が湧いてきた。そのフルーツパフェという世界を味わってみたい。
1971年東京生まれ。デイリーポータルZウェブマスター。主にインターネットと世田谷区で活動。
編著書は「死ぬかと思った」(アスペクト)など。イカの沖漬けが世界一うまい食べものだと思ってる。(動画インタビュー)

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千疋屋は3つある

知人というのは先日の記事「伝説のチラシ エヌ山くんとティティ川くん」にも登場してもらったコピーライターの林裕さんである。
インタビュー後、ごはんを食べに行く道すがらパフェについての話を聞いていた。
林裕さんと林雄司。ダブル林によるダブルピース。
林裕さんと林雄司。ダブル林によるダブルピース。
林裕さん情報によると
・千疋屋は3つある(千疋屋総本店、銀座千疋屋、京橋千疋屋)
・千疋屋によって使っているいちごが違う
・フルーツを邪魔しない生クリーム
・ひとつひとつのフルーツがおいしい
・「千疋屋のパフェは間違いがない」

ということだった。パフェとはフランス語のパルフェ、英語のパーフェクトが語源である。完全という名のデザートなのだ。甘いものはあまり好きではなかった僕だが、フルーツパーラーのパフェとやらを体験してみようではないか。

銀座千疋屋

完全の深淵を見極めるために銀座千疋屋でパフェを頼んでみた。
フルーツパフェ
フルーツパフェ
苺のパフェ
苺のパフェ
銀座千疋屋の1階はフルーツ売り場になっていて、そこで6,000円のとちおとめを2箱買って「自宅用です」と言ってる人を見たと林裕さんが言っていた。
自宅で12,000円の果物を食べる人。その人はメディチ家かハプスブルク家ではないだろうか。

緊張気味に食べるふたり
緊張気味に食べるふたり
苺のパフェは1,680円。フルーツパフェは1,365円である。まあ、高い。
林裕さんは
「下で売ってる苺の値段を見ればこれは安いですよ。美味しいところを盛り合わせてくれてゴミも出ない」
と言っていた。確かにそうだ。そうだ、そう考えれば安い。ルーズナブル。

そう言い訳を話す我々にやっぱり贅沢した負い目がなかったと言ったら嘘になる。そんな遠回しないいかたやめよう。負い目バリバリである。負い目オブザイヤーぐらいあった(しかもこの日は月曜日)。

そんな負い目を感じつつもおいしい。果物がひとつひとつおいしい。これはいまいちだなというものがない。ひなあられのなかの黒くて堅い豆みたいなのがない。林裕さんが言う間違いがないとはこういうことか。
もうすぐ食べ終わってしまう
もうすぐ食べ終わってしまう
安いパフェだと下のほうにコーンフレークが入っていたりするがここのは下までうまかった。それどころか新たにフルーツが登場したのだ。どろどろに溶けたうまいアイスのなかに溺れる苺がうまい。超うまい。

「山下達郎のJOYってライブアルバムがあるんですよ。最後の最後にライドオンタイムを演奏したりするんです。それみたいですね」

林裕さんはパフェが最後になって一層盛り上がるようすを山下達郎のライブに例えていた。この苺はライドオンタイムだ。

ライドオンタイムの余韻とともにパフェ終了。なるほど、これはおもしろい。美味しいというより、面白かった。
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京橋千疋屋に

面白かった、と銀座で終わるふりをして次の千疋屋である。京橋千疋屋。

日本橋の千疋屋総本店から暖簾分けしたのが銀座千疋屋と京橋千疋屋。銀座千疋屋はサントリーとコラボして缶入りカクテルなど展開しているが、フルーツパーラーは銀座のみ。
京橋千疋屋は対照的にデパートなどに幅広く出店している。

そのフルーツパフェはこれだ。
京橋千疋屋 フルーツパフェ
京橋千疋屋 フルーツパフェ
フルーツがたくさん乗っている。特筆すべきはりんごやみかんといった普通のフルーツまでおいしいこと。りんご、みかん、バナナなど並べて書くとエクセルのヘルプみたいだが、そんなフルーツまでシュッとしている。

美味しいアジ最強説(おいしい普通のものがいちばんうまいという説。唱えてるのは主に僕)がまた強化された。

いや、マンゴーも美味しかったんですけどね。
林裕さんは苺のパフェ。いちごはさちのか。
林裕さんは苺のパフェ。いちごはさちのか。
フルーツパフェにしても苺にしてもケチケチしたところがない。苺のパフェは1,890円だ。フルーツパフェはたしか2,100円だったと思う。2,100円か…。

でも待ってほしい。2,100円って和民で飲むより安いのだ。(ガーン)

しかも飲みながら仕事の話をすると極端な話になりがちだし(おれ直訴してやりますよ!とか田中正造みたいな話になったり)、いいこと聞いてもすぐ忘れる。しかも翌日だるい。
友好関係を築くための食事はパフェなんじゃないかと思うのだ。すぐには食べ終わらないし、誘ってもおかしくないイベント性もある。甘いものが苦手な人はいるがフルーツが苦手な人は見たことがない(いたとしたらそいつは悪魔だ)。
「今夜パフェでもどうかね」というビジネスハックを提唱したい。
カーテンコール部分(下の方をそう呼ぶことにした)もすばらしい。甘いジャムに酸っぱいフルーツが混ざって旅の終わりを彩る。
カーテンコール部分(下の方をそう呼ぶことにした)もすばらしい。甘いジャムに酸っぱいフルーツが混ざって旅の終わりを彩る。

感想戦が始まる

食べ終わってから思い返してニヤニヤする我々だ
食べ終わってから思い返してニヤニヤする我々だ
食べ終わってからは感想戦である。将棋をさし終えてから互いの手を検証したり感想を言い合うのを感想戦と呼ぶ。完璧なパフェはパフェ感想戦が自然と始まるのだ。

あれこれ言い合ってメモもしたが、感想戦は主に「おいしかったね」という話であった。飲酒を否定しておきながら会話は飲酒時のどうでもいい話に近い。
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ラスボス 総本店へ

銀座千疋屋→京橋千疋屋ときてこいつら日本橋の千疋屋総本店にも行くだろうなと予想している人も多いかと思うが、その通り3店目である。

さすがに続けてはつらいので日本橋近辺を散策した。
微妙なまつりを見物したり
微妙なまつりを見物したり
コートを着せられてるライオンを見たり
コートを着せられてるライオンを見たり
ちょっと口のなかが甘くなっていたのでデパ地下でキムチ試食したりもした。そして5000キロカロリーぐらい(ちょっと多めに書いてます)消費したところで総本店へ。
千疋屋総本店 スペシャルパフェ 1,785円
千疋屋総本店 スペシャルパフェ 1,785円
林裕さんはクイーンズトロベリーパフェ 2625円。でかい
林裕さんはクイーンズトロベリーパフェ 2625円。でかい
総本店のパフェは大きい。
フルーツパフェはこの時期にスイカである。砂漠のお金持ちが庭に噴水を作るかのような豪華さだ(無理なことだってしちゃうぜという富の象徴)。

そしてクイーンズトロベリーとは千疋屋総本店オリジナルの品種だそうだ。生クリームとの相性が抜群とサイトに書いてあった。パフェにかける気合いが全くスイーツではない。
僕はフルーツパフェを真上と真横から撮っていた
僕はフルーツパフェを真上と真横から撮っていた
情感あふれる感じで撮るんじゃなくて、記録したくなったのだ。できれば3Dスキャンしたい。データにしてとっておきたい。ハードディスクにフォルダに分けて整理したい。
「千疋屋総本店」というフォルダのなかに フルーツ.pfeとして保存したい(.pfeはパフェの拡張子)。

フルーツパフェのクリームの下はバナナのアイスだった。意外。だけど当然うまい。ファッション上級者のセンスみたいだ。スーツにジャージあわせて決まってる人である。

千疋屋3店は素晴らしい体験だった。銀座・京橋・日本橋とちょうど2キロなので全く痩せる要素のない散歩コースとしておすすめしたい。
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フルーツパーラー西村

終わると見せかけておいてまだ続くのだ。千疋屋だけではなく、他のフルーツパーラーのパフェも確かめてみたい。

まずは渋谷の西村。ここからは林裕さんは同行しない。ソロ林である。
何度も通っているのに入ったことがなかった
何度も通っているのに入ったことがなかった
フルーツパフェ 945円
フルーツパフェ 945円
あまおう苺パフェ 1,400円
あまおう苺パフェ 1,400円
千疋屋に比べるとリーズナブルである(あまおう苺パフェは1,400円だけど)。
渋谷はどこの喫茶店も狭くてうるさいので、だったらパフェ945円でも西村に入るのもいいかもしれない、とこんど言い訳して入ろう。

あまおう苺パフェは皿もスプーンもグラスの模様も金なのが懐かしい感じの嬉しさである。俺は今ごちそうを食べている、という気持ちになる。
その時の自分は脳内で男おいどんで表示されているのは言うまでもない。
食べてるのは撮影係のべつやくさんだが
食べてるのは撮影係のべつやくさんだが
うむ、フルーツパーラーのパフェに間違いはない。そう確信して最後に向かうのは新宿のタカノである。

ヤクルトのピッチャーはフルーツパーラー説

西村、高野とヤクルトスワローズのエースみたいなリレーだ(そういう選手がいたんです)。

ちなみに渋谷の東急には林フルーツという店もあり、あれもやっぱりヤクルトのピッチャーと同じ名前なのだ。去年までヤクルトに在籍した林昌勇(イムチャンヨン)だ。

ヤクルトとフルーツパーラーの奇妙な符号については次の機会に譲るとして(たぶんない)タカノである。
フルーツパフェ 1,200円
フルーツパフェ 1,200円
ドラゴンフルーツが乗っているし、メロンも2種類刺さっている。フルーツの幅がこれまででいちばん広い。ストライクゾーンを目一杯使ったピッチングと言えよう(野球の話に引きずられてしまった)。
珍しかったのはパフェ下部である。
みたことのない透明なものが入っているのだ(後ろで薄ら笑ってる人は関係ありません)
みたことのない透明なものが入っているのだ(後ろで薄ら笑ってる人は関係ありません)
これが、うまかった。

コーンフレークでこそないが、なにかかさ上げ的なものだったらどうしようかと思ったのだが、それは杞憂に終わった。
どっさりフルーツのどっさり部分(フルーツではない部分)みたいでうまい。
落ちてきたアイスクリームと混ざって美味
落ちてきたアイスクリームと混ざって美味
上のほうで無邪気にアイスを食べていただけなのに下で勝手に混ざってうまくなってるなんてまさに神の見えざる手である。ありがとう!アダム・スミス。
こちらはデラックス紅ほっぺ苺のパフェ
こちらはデラックス紅ほっぺ苺のパフェ
苺のパフェは苺が階段状で僕があれこれいう必要もないだろう。いい階段である。ここに住みたい。

タカノフルーツパーラーはスマホでパフェを撮ってる人が多かった。店内が明るい(しかもホワイトバランスがとりやすい)ので写真が綺麗に撮れる。Facebookにあげていいね!がたくさんつくのはタカノなんじゃないかと思う。


あけなくていい扉があいた

今回行った店はどこも果物を売って、その2階や奥でパフェが食べられるパーラーがあった。構図としては肉屋の店頭でコロッケ立って食べてるのと同じだ。

そりゃうまいにきまっている。しかも飲むより安いしね。

………こういう理屈をたくさん用意してこれからもパフェ道に邁進してゆきたい。
底から果物が出てきたところ
底から果物が出てきたところ
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