解体される都営霞ヶ丘アパートを見に行った
東京の千駄ヶ谷にある国立競技場は、こんどの東京オリンピックに合わせてかなり大きくなる予定だ。それで追い出されるのが、すぐ南側の都営霞ヶ丘アパートだ。
そもそも前回の東京オリンピックに合わせて作られたこの団地、今はどんな様子なのだろうか。
入り口がすでに素敵
千駄ヶ谷駅から歩いて約10分、霞ヶ丘アパートは年季を感じさせながらも素敵な雰囲気を残す団地だった。
都営団地でよく見られる、住民の手入れによるプチ林。
柿もなっていた。
「外苑マーケット」という商店街の入り口には、
外苑マーケソ
外苑マーケットには、生鮮食料品店の他、クリーニング、文房具店などがかつてはあったそうだ。今では店主高齢などの事情でどんどん店が畳まれ、常時営業しているのは井上青果店のみとなっている。
クリーニング屋さんを含め、軒なみ休業
「一身上の都合」の貼り紙
井上青果店は元気に操業中。「おれ以外はだいたい辞めちゃったんだよね。」
コアラのマーチを買いながらお話を聞いた。
この団地がつぶれてしまうということはほぼ確定で、すでに役所と話し合いが始まっているとのこと。住人の移転先は具体的には未定。
自転車小屋は盛況
移転先が未定だから、いつまでに出て行けという話もまだない。ただ、何十年も暮らしてきた街だからやっぱり寂しいよねえ、とのことだった。
そこそこ大きな団地。住人は約400人。
このアパートは、競技場の関連敷地になる予定だ。
1964年の東京オリンピックに合わせて作られた霞ヶ丘アパートが、2020年の東京オリンピックに合わせて壊されようとしている。なんとも不思議な運命。
日本橋の高島屋の裏が昭和だった
東京日本橋、高島屋の周辺には商業ビルが立ち並ぶ。
ぴかぴか
ぼくはつねづね、町を歩くときは大通りの一本内側を行くべき、知らない景色が見えるから、と思っていたんだけど、ここの一本内側は強烈だった。
まじすか
そこには「おびやかされる昭和」があった。すごい構図だこれ。
ここの三丁目の夕日がなぜ暮れようとしているかというと、再開発の対象地区だからだ。
「日本橋二丁目地区第一種市街地再開発事業」。
6年後までに、ここに約180メートルのビルが建つ。向こうに見えるCOREDO日本橋のビルが約120メートルだから、その1.5倍だ。
付近の人がよく通る
ここは近くに住む人や働く人の通り抜けの道になっているようで、だからこの道を潰さないで、という意味の「廃道、再開発反対」という看板がよく見られた。
再開発反対
しかし確実に背後から迫られている感じ
6年後までに必ずやつらはやってくる
ここに住む人、お店を構える人にとっては大変な問題なのは間違いない。
ところで日本橋二丁目は再開発に先立って遺跡の調査が行われ、地面の約3メートル下から江戸時代の生活道具とかが見つかった。
中央区立郷土天文館第9回特別展図録より
3メートル下といっても、江戸時代の人が地下で暮らしてた訳じゃない。
地震や火事で町が壊れるたび、その瓦礫の上にあらたな地面と新しい町を作ってきたということなのだ。その結果ぼくらは江戸時代の3メートル上空で暮らしている。
そしてまた新たな町を作ろうしている
きみは湊二丁目を知っているか
東京都中央区、湊二丁目。ここは一度は行くべき場所である。
鉄砲洲稲荷神社のある町
鬼平犯科帳の鬼平が子供のころ住んでた町でもあるが、現在はすごいことになっている。
一軒屋のようなビル
都心でこういうふうにビルが孤立してることってあまりない。空も広い。
広い空と駐車場
向こうまでずっと駐車場だ。でも車が止まってる様子はあまりない。
一軒家
また別の一軒家
出入りは困難
ここはバブルの頃に地上げが盛んに行われたものの、バブル崩壊によって土地が歯抜けのようになってしまった。かなりの面積が車のいない駐車場になっている。
そこで「湊二丁目東地区第一種市街地再開発事業」として、4年後に高さ約130メートルのビルなどが建つ予定だ。
だから駐車場に囲まれた一軒家が多い。ある意味便利。
この町は廃墟なんかじゃない。ふつうに人が暮らしていて、洗濯物も干されているし、犬の散歩をする人もいる。だからいっそうこの佇まいが不思議だ。
宅地整備工事の向こうに石川島の高層ビルが見える
石川島の高層マンション群「リバーシティ21」は、低いものでも約140メートルの高さだ。だからそれに準じる高さのビルが、この湊二丁目にできる。
現状から想像するのは難しいけど、町を作るって言うのはそういうことなんだろう。すごい力だと思う。
工事って永遠に続くように思うけど、新しい建物ができてしまうとあっけなくその風景が日常になる。前まで何だったのかを忘れてしまうぐらい。
だから、ぜひお住まいの町で事業中の再開発地区の一覧を探して、そこに行ってみてください。自治体のウェブサイトなんかにきっと載ってます。