コラボ企画 2013年11月19日

天からプロデューサー巻き

空飛ぶカーディガン(CM上の演出です)
空飛ぶカーディガン(CM上の演出です)
いま、プロデューサー巻きがキてるらしい。
1980年代後期のバブル時代に、テレビ局のプロデューサーが好んでしていた「カーディガンを肩から羽織って両袖を巻いた」格好で、プロデューサーの象徴にして記号の、あれだ。
あれが一回りして2013年にリバイバルしているという。
しかし、30年後の今の格好がバブル時代と同じでは意味がないだろう。
21世紀らしく、かっこよくプロデューサーになりたい。
1973年京都生まれ。色物文具愛好家、文具ライター。小学生の頃、勉強も運動も見た目も普通の人間がクラスでちやほやされるにはどうすれば良いかを考え抜いた結果「面白い文具を自慢する」という結論に辿り着き、そのまま今に至る。(動画インタビュー)

前の記事:ソフト安全靴を作る

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プロデューサーといえば、巻き

いきなり内部の話をするのもよろしくはないのだろうが、今回は、ニフティがこのほど開始した『うまいもんプロデューサー』というサービスとのコラボ記事である。
地方の食品メーカーが作った旨いものを、ユーザーの方がプロデューサーとなってヒットさせる、というものだ。

で、プロデューサーといえば、巻きだろう、と。
肩にカーディガンを巻けばプロデューサーだろう、と。
せっかくなので、みんなで格好良くプロデューサーになろう、と。

他に類を見ないほどザックリとしたスタートで、恐縮だ。

ちなみに打ち合わせの時、僕が「プロデューサー巻きって、いま本当に流行ってるんですか?」と漏らすと、編集林・古賀の両氏から少し食い気味に「いや、マガジンハウスの人がしてたから、ぜったい流行ってる」と返ってきた。
ファッション誌など多く出してる、銀座の出版社である。それはまあ流行ってるっぽいな。

いきなり暗礁に乗り上げかけるプロデューサーたち

理由は後述するが、今回の撮影はお台場の東京カルチャーカルチャーを借りて行うことになっていた。
待ち合わせの時間にカルカルに着くと、古賀さんが慌て気味にあちこち電話をかけている。
どうやら古賀さん、借りてきたカルカルの鍵を忘れてきたらしい。
本気で慌てる古賀さんと、それを見守るニフティうまいもんプロデューサー担当荒井さん。
本気で慌てる古賀さんと、それを見守るニフティうまいもんプロデューサー担当荒井さん。
一時は「カルカルは諦めて、外で撮影か?(昨日木枯らし一号が吹いたし、超寒いけど)」という流れになっていたのだが、幸いにも店内事務所にカルカルスタッフのワタルさんがいるのが判明し、事なきを得た。
ワタルさんありがとう。お礼は後ほど。
ワタルさんありがとう。お礼は後ほど。

21世紀のプロデューサー巻きとは何か

無事にカルカルに入れたところで、今回めざす21世紀の格好良いプロデューサー巻きについて確認しておこうと思う。
肩にカーディガンを羽織って…という形式は変えようがない。変えたらもうプロデューサーじゃないからだ。となれば、羽織るプロセスを格好良くするのがポイントになりそうだ。
本当は袖を首の前で結ぶのが正式なプロデューサー巻き。不慣れですいません。
本当は袖を首の前で結ぶのが正式なプロデューサー巻き。不慣れですいません。
例えば、空中からふわりと舞い落ちてきたカーディガンが肩に「ふぁさっ」と落ちてきて羽織れたら、それは格好良くないか?
みんなでかんがえた、かっこよいプロデューサー像
みんなでかんがえた、かっこよいプロデューサー像
イメージとしては、『ヤッターマン』の変身シーンで、空中に放り投げた衣装がスローモーションで落ちてきて自動的に着られる、みたいな感じ。あの変身してる雰囲気が今回目指すところだ。
テキパキ準備を進める古賀さんと、その長い棒みたいなのは何に使うんだろうと不安げな荒井さん。
テキパキ準備を進める古賀さんと、その長い棒みたいなのは何に使うんだろうと不安げな荒井さん。

空からカーディガンが降ってくる

なんとなく方向性が固まったら、実際にやってみるのが手っ取り早い。端的に言えば見切り発車である。しかもかなり急行のやつで、さらに乗ったらもう終点まで降りる駅の無いやつだ。

最終電車を乗り越して終着駅のタクシー乗り場でぼんやり立ち尽くした、という経験がある人は、なんとなく理解してくれるだろう。あの時のあなたが、僕たちだ。

ともあれ、カーディガンを降らすには高い場所が必要だ。
今回の撮影場所にカルカルを選んだのは、カルカルにデカい脚立があったから。
天井まで届く、3mぐらいのやつだ。
脚立ツリー。乗ると超こわい。1段ずつがでかい。3段ほど登っただけで足が震えた。
脚立ツリー。乗ると超こわい。1段ずつがでかい。3段ほど登っただけで足が震えた。
この脚立の上からカーディガンを落として、下にいる人の肩にかけてプロデューサーに仕立て上げようという寸法だ。
天からカーディガン担当、林さん。僭越ながらプロデューサーはきだてが担当。
天からカーディガン担当、林さん。僭越ながらプロデューサーはきだてが担当。
プロデューサーはこんな感じで作られる。
プロデューサーはこんな感じで作られる。

まずはNG集

結果から言っておくと、この時点ではまったく成功しなかった。
第一投目のGIFアニメを見ていただきたい。
洗濯したカーディガンを雑に干してる、みたいな。
洗濯したカーディガンを雑に干してる、みたいな。
とにかく狙ったところにカーディガンが落ちない。ひらひらと安定しないのだ。
この状態では下にいる人間がプロデューサーになるなんて、夢のまた夢である。
これ以降20投ほど、だいたいこんな感じだった。
はやく乾け。
はやく乾け。
床に落ちたカーディガンは、河原の濡れた段ボールぐらい悲しい。
床に落ちたカーディガンは、河原の濡れた段ボールぐらい悲しい。
自分から受けに行っても駄目。
自分から受けに行っても駄目。
古賀さんも挑戦。
古賀さんも挑戦。
ひどい有様だ。
ひどい有様だ。
ひとつ気付いたことは、成功事例を紹介する前にNGシーンをまとめて並べると、そこそこちゃんとしたドキュメンタリーっぽくなるんじゃないか、ということだ。

特に古賀さんの失敗シーンは、脚立に登った酒乱の亭主にカーディガンをぶつけられている、みたいな写真になっていて涙を誘う。
実際は上司と部下で自社サービスのプロモーションをやっている図なのだが、そんな要素は何ひとつ感じられない。
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改造カーディガンによる挑戦

20投して我々が出した結論は「カーディガンが悪い」だ。
かつて逆上がりができなかった小学生の僕も「この鉄棒が悪い」という結論に至ったと記憶している。あれから30年以上経ったが、人間、なかなか変わるものではない。

そして、小学生が鉄棒を望むように改造するのは難しいが、大人になった我々がカーディガンを改造するのは簡単なことだ。
上手く行かない時はだいたい道具が悪いので、改造するべき。
上手く行かない時はだいたい道具が悪いので、改造するべき。
これまでの失敗を振り返り、左右の袖がバタつくことによって落下軌道が不規則になるのが原因であることは理解できた。
ならば、原因箇所を固定してやればよい。肩から袖に針金のフレームを通し、ハンガーに掛けたような感じで固めるのだ。
改造カーディガン1号。
改造カーディガン1号。
針金を通してガムテープで固定しただけのものだが、針金の安定感は予想していた以上だ。これはイケそうな気がする。
こんな感じでかかる予定。
こんな感じでかかる予定。
さらに、すっぽりと肩にハマるよう僕の肩幅に合わせて曲げるなど細かな修正も行う。上手く行くかも、という期待感の表れである。
なんか変にかっこいい写真。ビジュアル系プロデューサー。
なんか変にかっこいい写真。ビジュアル系プロデューサー。
ちなみにこの写真だけ妙なアングルなのは、たぶん撮影担当の古賀さんが普通に写真撮るのに飽きてきていたのではないかと思う。今回に限らず、記事中に突然おかしなカットが紛れ込んでいたら、撮影者が飽きてきた頃合いだと考えて間違いない。

さあ、古賀さん、僕が今からプロデューサーになるところをばっちり撮ってください。
鳥カーディガンコンテストか。
鳥カーディガンコンテストか。
針金の効果、おそるべし。安定しすぎて、落としたカーディガンがそのままスーッと滑空してしまったのだ。ちがう。我々はカーディガンを飛ばしたかったのではない。巻きたいのだ。

続・改造カーディガンによる挑戦

空飛ぶカーディガンによる挑戦は早々に断念した。
しかし一箇所にとどまることなく次々に新しいメソッドを生み出してこそ、プロデューサーというものではないか。それこそがプロデューサー魂であろう。よく分からないが。
段ボールとカーディガンの融合。
段ボールとカーディガンの融合。
安定感を優先させたカーディガン。
安定感を優先させたカーディガン。
胴と袖に段ボールの芯を通してみた。
より安定した落下を目指して、全体的な剛性を追求したカーディガンである。
これで上手く行くかどうかはわからない。今までの人生でカーディガンに剛性を求めたことがないからだ。

見た目は先のバージョンよりもさらに空を飛びそうだが、重量もかなり増しているので、落とし方次第ではきれいに決まるのではないか。
こんな感じで落とすと
こんな感じで落とすと
こう真っ直ぐ来て
こう真っ直ぐ来て
ジャキーン、合体!
ジャキーン、合体!
合体、前からの図。
合体、前からの図。
確かに、うまく背中に落ちてきてくれればガッチリはまる感じはする。安定感ハンパない。
ただ、やはりどうしても「巻いた」よりは「装着した」と言いたいビジュアルである。
どう見ても甲羅。防御力は高い。
どう見ても甲羅。防御力は高い。
あと、生物の種として考えると、プロデューサーではなくカメもしくは河童に分類されると思う。
河童Pです。
河童Pです。
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新・改造カーディガンによる挑戦

この時はもう一案、並行して改造を進めていた。
結局は段ボールとカーディガンだけで進む改造。
結局は段ボールとカーディガンだけで進む改造。
安定性と防御力を求めた剛のカーディガンに対して、こちらはカーディガン自体の柔らかさを活かした、いわば柔のカーディガンである。
改めて写真を見ても、全体的に粗雑で面白い。
改めて写真を見ても、全体的に粗雑で面白い。
裾から段ボールが出ないようにホチキスで留める。この瞬間、衣類としてのアイデンティティーは喪失。
裾から段ボールが出ないようにホチキスで留める。この瞬間、衣類としてのアイデンティティーは喪失。
袖口と裾の部分にだけ重りとして段ボールを入れ、下で待ち受けるプロデューサー候補に絡み付くよう狙ってみた。方向性としては、ほぼ「投網」だ。
はたしてうまくプロデューサーを絡め取ることができるだろうか。
こう投げる。
こう投げる。
こうなる。
こうなる。
はい、巻けた。
はい、巻けた。
一回目の投擲実験であっさりカーディガンが巻けてしまったので、嬉しいというよりはむしろ虚を突かれた感じになってしまった。
林さんも「…え、なに、これでいいの?」的な顔になっている。

このあとも幾度か試してみたが、どうやらこの柔のカーディガンがいちばん成功率が高かった。よし、これで行こう。
巻けたけどちょっと狙いがそれた図。
巻けたけどちょっと狙いがそれた図。

プロデューサー、完成

とにかく方向性が決まったので、あとは反復練習あるのみ。
投げては肩で受ける、投げては受ける、の繰り返し。プロデューサーになるための感覚を体に叩き込むのだ。
入念な事前トレーニングを繰り返す上担当と下担当。
入念な事前トレーニングを繰り返す上担当と下担当。
というか基本的に僕は立っているだけで、林さんばかりが疲弊していく。
適当なところで切り上げて、疲れすぎて投げられなくなる前に本番に移ろう。
「ゆくぞプロデューサー(仮)」「どんとこいです」
「ゆくぞプロデューサー(仮)」「どんとこいです」
空を舞うカーディガン。いい写真。
空を舞うカーディガン。いい写真。
これが撮りたかった。プロデューサーの変身シーン。
感動の瞬間。いま僕はカーディガンと一体化した。
感動の瞬間。いま僕はカーディガンと一体化した。
空から降ってきたカーディガンが、僕の肩に「ふぁさっ」とかかる。
ほぼ1ページ目のイメージGIF動画どおりではないか。これだ。まさにこれがやりたかったのだ。

カーディガンとヒトの美しき融合。皆さんありがとう。僕いまプロデューサーになりました。
ポーデイのジーキーラボコー、いつアップよ?(デイリーポータルZのコラボ記事、〆切はいつでしたか?)
ポーデイのジーキーラボコー、いつアップよ?(デイリーポータルZのコラボ記事、〆切はいつでしたか?)
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続々と生まれるプロデューサーたち

せっかくなので、他の人たちもプロデューサーを目指そうと言うことに。
他の人たちも…と言いつつ、実は林さんだけがずっと脚立の上からカーディガン落とし係である。地上に降りてない。

正直、この脚立は高くて怖い。代わりに登りたくなかったので、ずっと林さんが投げているということに気付かないフリをしていた。
古賀P、完成。
古賀P、完成。
やはりプロデューサーはサングラスか。いい写真。
やはりプロデューサーはサングラスか。いい写真。
古賀さんが「プロデューサー、これもいりますよね」みたいなことを言ってサングラスを出してきた時は正直「えー、そうかなあ」と懐疑的だったのだが、こうやって後から写真でみると、やっぱりプロデューサーにはサングラスが必要だったと思う。

ただ、万が一「じゃあ、上から降ってきたサングラスを顔で受けるのもやりましょうか」みたいな話になっていると、またかなり大変だったと思うので、これは無くて良かった。

あと、古賀さんの中ではセレブとプロデューサーは同じ箱に入っているのではないか。
荒井P、動画。やはり格好良い。
荒井P、これもいい「悪質な女社長」ポーズ。
荒井P、これもいい「悪質な女社長」ポーズ。

最後に特撮版

今回の企画、打ち合わせの時にポイントになったのは、本当にカーディガンを投げてちゃんとプロデューサー巻きができるのか、という部分。ポイントというか企画の根幹である。
「落とすの、成功しなかったらどうしましょうかね」
「特撮みたいに天井から糸で吊ってやればいいんじゃないですか」
「長い棒の先にカーディガンをくくりつけて、下から操るのもいいですね」
「長崎おくんち!カーディガンおくんちだ!」
「じゃあ、長いマジックハンドみたいなので挟んで操りましょう」

「(カタカタカタ)あ、2mのマジックハンドありましたよ」
「(カタカタ)3mのマジックハンドもありますね」
そんな感じで話が進み、本番当日にはちゃんと3mのマジックハンドが準備されていた。
最初からカーディガンを落とすのに成功しない気、満々である。
カーディガンおくんち。
カーディガンおくんち。
せっかく3mのを購入したのに長すぎて取り扱いが面倒だから縮めて使用している、とか、そういうのを置いてもなかなかの迫力である。

ただ、こうやってマジックハンドでカーディガンを操つるには人手が必要で、肝心のプロデューサーになるべき人間が足りない。
上空から襲いかかるどう猛なカーディガン、にも見える。
上空から襲いかかるどう猛なカーディガン、にも見える。
ここでまたしても狩り出されたのは、最初にドアの鍵を開けてくれたワタルさん。
この人はカルカルのイベントプロデューサーなのだが、プロデューサー巻きをしてない。
これはプロデューサー的に良くないのではないか。巻いてももらわねば。

本人はまったく何をしているのか把握できていないままに、真ん中に立っていただいた。
今から巻きますよ。
今から巻きますよ。
マジックハンド組、息を合わせて操縦。
マジックハンド組、息を合わせて操縦。
ワタルP、完成。
ワタルP、完成。
やりました、成功です。
やりました、成功です。
「…すんません、これ、結局なんなんですか?」
「…すんません、これ、結局なんなんですか?」

プロデューサーvs河童プロデューサー
プロデューサーvs河童プロデューサー

着地点がふわふわなままに押し進めたプロデューサー企画だが、実際にカーディガンを羽織れた時はなかなかの達成感だった。

あと、マジックハンドを使ったおくんちが思ったよりも楽しかったので、これはこれで別の機会に改めてやってみたい。
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