「海岸線・河川だけ」「鉄道路線だけ」の地図でいろんな施設の場所を示せるか?
この記事を読んでいるみなさんにもぜひチャレンジしていただきたいのが、下の2枚の地図に「1.スカイツリー」「2.東京タワー」「3.カルチャーカルチャー」の3つの位置を描き込んでみる、という遊びだ。
名付けて「うろおぼえマッピング」だ。
石川初さん作:首都圏の、海岸線と主要河川だけが示された白地図。これに「1.スカイツリー」「2.東京タワー」「3.カルチャーカルチャー」の位置を描き込んでみてください!
同様にこちらは鉄道路線だけのもの。どうでしょう?
どうだろうか。けっこうむずかしいよね。ぼくは「海岸線・河川」のやつに東京タワーを描き込むのに悩んだ。
みなさん、たぶん鉄道の方がまだ自信が持てるのではないかと思う。いずれの施設へも、電車で行くことがほとんどだろうし、日常的に路線図は見慣れているだろうから。
ただ、いわゆる「路線図」って実際の地理に正確じゃなくてダイアグラム化されてるので、そこらへんが迷う点だと思うけど。
で、冒頭のGIFアニメは、鉄道のほうの地図に、50名弱の方々に実際描き込んでもらったものだ。予想以上にバリエーションに富んだプロットだ。すごくおもしろい。
で、下は海岸線・河川のほうのもの。
実におもいおもいの位置。味わい深い。すごくおもしろい!(同じく「1.スカイツリー」「2.東京タワー」「3.カルチャーカルチャー」)
かなり実際に近いものもあれば、すごく素っ頓狂な位置に置かれているものもある。ずっと見ていて飽きない。予想以上に楽しいぞこれは!
「マッピングナイト5」というイベントで行った試みでした
ご存じニフティのイベントスペース「
カルチャーカルチャー」で行った「マッピングナイト5」。おかげさまで今回も大盛況でした。
この「うろおぼえマッピング」は、先日ぼくも出演した「
マッピングナイト5」で行ったもの。地図を使ったいろいろな遊びを実践してみせるイベントで、「5」とあるとおり、今回で5回目。おかげさまで人気なのだ。
興味ある方は見に来てくれた方々のつぶやきをまとめたもの(→
「#マッピングナイト5 逃げ地図スペシャル」まとめ)を見てください。そして次回ぜひお越しください。
今回は4人でよってたかって地図を使って楽しみましたよ!
登壇者はぼくの他に石川初さん(
@hajimebs)、渡邉英徳さん(
@hwtnv)、そして今回のスペシャルゲストとして羽鳥達也さん(
@_HATORI_)の4人。
石川さんはこれまでもぼくの記事で「GPS地上絵師」として再三登場している(→
これとか)。渡邉さんは先日手がけているプロジェクトのひとつ「ヒロシマアーカイブ」が
第40回「日本賞」のファイナリストに選出されるなど時の人であり、羽鳥さんは「
逃げ地図」のリーダーとして名高い。
いずれも地図を使い倒している面々。彼らが揃ったイベントがおもしろくないわけがない。
で、この「うろおぼえマッピング」はその石川さんのアイディア。今回のイベントの来場者に前述の白地図を配り、それを集計したのだ(壇上でスキャンしてPhotoshopで重ねるという作業をした)。
スカイツリー、東京タワー、カルカル、というお題はその場で決めた。まあ、あまりひねりすぎてもアレだし(個人的には「光が丘団地」をプロットしてほしかったんだけどー)、妥当なメジャー施設じゃないでしょうか。
ともあれ、まずはいくつか魅力的な回答を見てみよう。
すごい魅力的なうろおぼえっぷり!すてき!
正しくないほうが楽しい!
スカイツリーを北千住に置いた方。なんか、分かる。すてき。
まず申し上げておきたいのは、これは正解のあるゲームではないということだ。
やっかいなのは、こういうのやるとつい「実際の位置に近い答えを描いた人の方が偉い」と思いがちなこと。そうじゃないんだ。そうじゃないんだよー。
正しい位置を知りたければふつうの地図見るさ!そうじゃなくて、ぼくらはなにを手がかりに場所を地図の上に探すのか、を知って楽しみたいのだ。
そう、以前記事にした、みんなのイメージの中の東京の範囲を集計した「
どこまで東京?」と同じ感じ。正しい答えなんて、いらない!
なんと大胆なプロットだろうか。東京タワーが豊洲に。魅力的!
「2」の東京タワーがほぼ実際の位置なのに、スカイツリー、カルカルは旅に出た。ぼくの趣味としてはカルカルはこの方が置いたように
魅惑のゴミ埋め立て地・中央防波堤に移ってほしい!
この方は逆に「1.スカイツリー」「3.カルカル」がかなり実際に近いのに、「2.東京タワー」が旅立っている。「×」が実際の場所。めずらしいケースだ。こういうの大事にしたい。
ね、あらぬ位置にあるほうが興味深いでしょ?いやもう、ほんとうにおもしろい。何時間でも見ていられる。
そもそも、ふつうぼくらは河川で地理を把握しないので、この「海岸線+河川」の白地図はかなり悩ませる。それでもかなりの方が実際の位置に近い場所に置いていてびっくりした。すごいなみんな。
とくにこの方などは白地図に欠けていた北十間川などを書き入れている!すごい!
鉄道でもダイナミックな例がたくさん!
河川よりは鉄道のほうが実際の位置からのズレが小さいだろう、と思っていたのだがどうしてなかなか大胆な置きっぷりを魅せる方々がいてうれしい。
スカイツリーが大胆にジャンプ!そこは魅惑の大谷田団地↓がある場所じゃないですか!ナイス!
魅惑の大谷田団地。むしろこれをスカイツリーと呼ぶのは正解ではないか。
鉄道ではあまり「2.東京タワー」はズレないのでは、と危惧(?)していたのだが、これもなかなかのうろおぼえっぷり。うれしい。
「3.カルカル」が大井に!現地にいてこれを描いているのにこのズレっぷり!あっぱれ!
把握の仕方に傾向が見えてきた(気がする)
ほんとうに、どれもおもしろい。今回はそれぞれ50人弱の方々に描いていただいたが、もっとたくさん見てみたい。
で、見ているうちに傾向が見えてきた。気がする。以下がぼくの印象だ。
このかたは鉄道の場合の典型例。「1.スカイツリー」は東武線の終点に置きがち(実際は終点は浅草)。「2.東京タワー」は中央線の南、山手線の下半分の上の方、って感じ。「3.カルカル」はゆりかもめのなんかまんなからへん、という印象。
海岸線+河川の場合はもっとおもしろくて、「1.スカイツリー」は "東京の東の方にある、南北に流れる河川に挟まれたどこか" って感じで、
「2.東京タワー」は "皇居の下あたり" で、
「3.カルカル」にいたっては "えーと、とにかくなんか埋め立て地のどこか" というイメージか。
マッピングをちゃんとやってみる
というのは、ぼくの印象にすぎない。やはりみなさんの回答を一枚の地図に載せ、それぞれ実際の位置と比べねばなるまい。
が、それって想像しただけでたいへんだよなー…でもなー、やるしかないよなー。
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こちらは「2.東京タワー」。赤が「海岸線・河川」、白が「鉄道路線」。(
大きな地図で表示)
そしてこれが「3.カルカル」。オレンジが「海岸線・河川」で白が「鉄道路線」(
大きな地図で表示)
どれだけ作業がたいへんだったかはくどくなるので書かないが、100回は「ぼくなにやってるんだろう?」って気になったことだけはお知らせしておきたい。
しかし、やっぱりちゃんとマッピングしてみるとおもしろい傾向が見える。まず、スカイツリー、東京タワー、カルカル、いずれもみんなの「プロットの雲」のまん中あたりにちゃんと実際の位置がある、ということだ。これが集合知ってやつか!
「2.東京タワー」は河川(赤)が北東に分布して、鉄道(白)は南西に。これはそれぞれ「海岸線と皇居との間」「山手線と皇居との間」というとらえ方なのではないか。つまり、位置の把握は「何かと何かの間」という形で行われるのではないだろうか。きっと。たぶん。おそらく。
「3.カルカル」であらためて分かったのは、埋め立て地って区別されてない、ってことだ。海岸線(オレンジ)見ると、ほんとうにいろんな埋め立て地に分布しているのがおもしろい。鉄道(白)の場合おもしろいのは、カルカルって「駅からちょっと歩くよね」っていうイメージがあるためか、ゆりかもめ沿いではあるもののどれぐらい線から離れるかが人によってまちまち。りんかい線で来た人ととゆりかもめできた人とで傾向が違うのではないかと思う。きっと。たぶん。おそらく。
しょうがない、もっとがんばるか!
…っていう以上のコメントも、結局は見た目で言ってるだけだ。ここはやはりもっと科学的な振りをしなくてはならないか。しょうがない、もっとがんばるか!
「標準偏差」ってひさしぶり。
線を引けば、直線距離がわかるのだ。
線を引いた。引いたよ、ぼくは。こうすればそれぞれの「ズレ」の距離が分かるのだ。
どれだけ作業がたいへんだったかはくどくなるので書かないが、さらにもう100回は「ぼくなにやってるんだろう?」って気になったことだけはお知らせしておきたい。
上は「海岸線+河川」白地図での、東京タワーの位置。同様に他5種類も線を引いた。
なにがたいへんって、いちいちマウス持ってった先で情報が出てきて、線が引けなくなるのよ!
で、それぞれを500m刻みでまとめ、グラフにしてみた。
スカイツリーについて「海岸線+河川」(青)、「鉄道路線」(緑)それぞれの度数の分布をを折れ線グラフに。
同様に東京タワー
そしてカルカル。
白地図の精度や、それをスキャンして地図にマッピングする際の誤差なども考えると、500m以内というのは、もうぴったり実際の位置に合ってる!といってもいいほどだ。それからすると「海岸線+河川」におけるスカイツリーの位置の正確さにはびっくりだ。
見ていくとこれはスカイツリーだけではなくて、意外なことに全般的に 「海岸線+河川」の方が500m以内に置かれているケースが多い。
しかし同時にこの「海岸線+河川」は後ろに2つめのピークがあって、これはつまり「当たってる人とズレている人とで二極化している」ということだ。
鉄道の方はおおむね1.5km前後にひとつだけ大きな山がある感じ。つまり 「ぴったりは当たらないが大きくは外さない」ということか。
それぞれの「ズレ」の平均と標準偏差。
ついでに標準偏差とかも出してみた。ひさしぶりにやったよこんなこと。
特徴的なのは、スカイツリーだけ河川より鉄道のほうが平均値が大きい。これは小数の大胆な例が引っ張っているためだろう。大谷田団地とか。
また、ばらつきもスカイツリーが大きく、つまりスカイツリーって、鉄道にしろ河川にしろ、まだまだ場所が認知されていないってことだ。
他の地図・対象物でもやってみたい
慣れない統計のまねごとをやってしまって、理屈っぽい記事になってしまった。しかもなんか結論がよく分からない。
いや、分かってます。結論は「うろおぼえマッピング楽しい!」ってことです。ほかでもやってみようっと。
来場してくれたライター仲間・三土さんの回答。おそるべき正確さ!さすが!