知られてないぞ八尾空港
「八尾って聞いたから沖縄にも八尾って場所があるのかと思ったぐらい。大阪の八尾というから『ヘー』というのが実感」
オスプレイ報道の際に副総理の麻生太郎がいったことばである。なぜ知らないんだ、八尾空港を。
と言いながらも副総理の口から八尾空港の名が出て『へー』してることにちょっと笑ってしまう。さあ、うれしはずかしい気持ちいっぱいで麻生さんに八尾空港を紹介してあげよう。
近鉄八尾からバスに乗った。八尾南駅の近く、市街地にある
本当にあるのか、八尾空港
麻生さんが知らないのもあたりまえ、八尾空港はセスナなどの小型機がメインであり、ふつうの人にはあまり用がない空港である。
私も八尾市で20年あまりすごしたが一度もその姿を見たことがなかった。
なので「八尾空港に文珍のセスナあるらしいよ」
そんなものいいは「極東に金でできた国があるらしいよ」
これくらいの存在感で語っていた。
そしたらちゃんとあったじゃないか、ジパングは。
市街地に突然「これより空港道路」標識。これがジパングか……
「八尾空港は本当にあったんだ!」(『天空の城ラピュタ』にこういうセリフがあったような気が……)
「父さん、セスナだよ。文珍のセスナだよ……」(『天空の城ラピュタ』にこういうセリフがあったような気が……)
空港道路。壁にぼんやりとした、ドラえもんのあと。こういうのはだしのゲンで見た気がする
八尾空港のおたのしみ
空港沿いの空港道路をすすむといくつかの航空会社が見えてくる。航空写真や遊覧飛行を申し込むならここだ。
セスナの空港、八尾空港と市民との唯一の接点であり、あこがれがこの遊覧飛行。八尾市民にとってライオンズクラブやロータリークラブのようなステータスの証である。
「おれ、八尾空港でセスナ乗ったことあるし」
フリーパスの概念をどうとらえるかにもよるが、この一言とほんの少しの突進力でで八尾市のあらゆる施設はフリーパスだ。
こういう会社がいくつかある。遊覧飛行に行けるのは2社。
唯一のたのしみ、遊覧飛行
今あるセスナの遊覧飛行の会社は2つ。ふらっと入った会社のセスナ遊覧飛行は大人一人8,800円から。子供料金もあり、家族三人だと一番短いコースを飛んで2万4千円くらい。
やはりちょっと気合の入ったあそびなのでまた今度にするとしてどうなんですか、オスプレイはくるんですか?
航空会社の人にきいてみると、その返答は「いや~、どうですかね~?」とレッドカーペットでいうところの満点苦笑い。
なんなんだこの騒動は、おれたちといえば文珍のセスナじゃないか……とむこうの人も困惑してるような印象を受けた。
オスプレイくるんですか?「いや~(笑)」これ以上ない苦笑いでました
一人8,800円から。一人で乗るなら安いか
10,000円でセスナに乗れる
もうひとつの会社ではこの空港の最安値、セスナ体験コース一機10,000円があった。飛行時間は10分にも満たない程度だが、セスナに乗ることは八尾市でいう名球会入りと同じようなことである。意を決して申し込んだ。
ところがあいにくこの日は機体が全部出払っているそうだ。当日でも乗れるそうだが予約は必須だろう。
は~、そうか~。ところでオスプレイの旦那はくるんですか?
オスプレイくるんですか?「いやあ~(笑)」きもちいいくらい満面の苦笑いが見られる
八尾空港をゆるがす苦笑い
オスプレイくるんですかときいてみたところ、「いや~(笑)」とこれまた未曾有の大苦笑いをいただいた。
「マスコミ各社さんからも問い合わせきたりしてましたけどね~(笑)」
マスメディアもやってることは同じというか、八尾空港は航空会社の人をつかまえてオスプレイどうすかときくくらいしかすることがないのではないか。やることがないのだ。
子どもたちもいることはいた。この日の大阪、気温37~8℃。熱中症と隣り合わせ。
全国的にもめずらしい交差する滑走路があるらしい。交差するくらいだから敷地はせまい
交差する滑走路や消防と自衛隊が見もの
遊覧飛行以外のおたのしみは空港見学だろうか。
なかでも交差する滑走路は全国でもまれだ。しかし中は立入禁止であるし、フェンス外からは見えない。あとは自衛隊と消防航空隊が併設してるのも珍しいらしい。
この珍しさ、どうしたらいいものだろう。
もしあなたの誕生日に恋人が両手いっぱいにバラの花束かかえずに、両手いっぱいに八尾空港の珍しさをかかえてたらどうだろう。
私ならその場で別れる。さあ、これはつらい恋になるぞ。
滑走路の交差ポイントはフェンス越しに見えない。お楽しみはセスナがたまに飛ぶくらいだ。これが文珍のセスナかな。
それともこれが文珍のセスナかな。見ると幸せになれるという……
文珍のセスナないかな
ということで八尾空港にきてやることといえば、文珍のセスナないかな、と探すことくらいだろう。
関西文化圏のテレビでは吉本興業の内輪話がとにかく多く「文珍のセスナが八尾空港にある」という話を幼少のころにすりこまれる。よって敬称もとれた「文珍のセスナ」が一般名詞として使用されているのだ。
ところがこんな風に文珍のセスナとへらへらしてたものの、調べるとえらいものが出てきた。
管制塔の方は立入禁止。この状態でたのしめる上級者むけです。
たしかに市街地にある
オスプレイ報道はきまって市街地にあるからむりだと締めくくられる。たしかにフェンス越しに家や町工場が見える。薄皮一枚はいだら八尾がそこにある。
空港道路にある自販機のジュースが100円切ってるのがなによりの証拠だ。この価格は空港ではない、市街地のそれだ。
90円。これが空港の自販機の値段なのか。やはり市街地の空港である
八尾に素朴な空港がある
八尾空港は実際にあった。そんな地点からの話なのかとお思いだろうが、地元でも本当に行かないスポットなのだ。そしてなぜ行かないのかもわかった。素朴すぎる空港なのだ。その味は成分無調整の豆乳のようだ。
ブー。これ豆腐そのままじゃないかと子供は吐き出すだろう。オスプレイ連れてきてよ、とねだるだろう。
しかしオスプレイが来て紀分の調整豆乳のように口当たりがよくなったとしよう。
豆乳飲料バナナ味、まあいいだろう。豆乳飲料抹茶、うんそれもまあいいだろう。豆乳飲料プリン、おいおい、ちょっと待ってくれないか。豆乳飲料バニラアイス、もうそこまでいくのか君たちは。
バニラでいいんじゃないか、バニラで。アイスまで入ったらそれはもう豆乳じゃなくてバニラアイスじゃないか。
そう思って飲んでみると(……あれ?けっこうおいしい!)となるので紀分の調整豆乳はあなどれない。
さて、私は一体何の話をしていたのか。その前に腹ごしらえをしよう。謎解きはディナーのあとでだ。