せっかくだから測ろう
夜の航路を照らす灯台。その下(もと)、つまりそそり立つ灯台の根元は暗いという。
どの程度暗いものか。なんていうことをぼそりと企画会議で出してみたらやってもいい機運になったので見てこよう。
ただ「あーなんか暗いっすねー」というのもアレなので測量機マニアのWEBマスター林さんに明るさを測る照度計を借りた。
持っている前提で聞いたらやっぱ持ってた。
センサーを光源に当てるとその明るさが数値化(単位:ルクス)されるというすぐれものである。
パッとかざしてパッと見える化。
仕事も人間関係もこんな案配でいけばどんなにいいだろうかと思うほどにスムーズなジャッジメントをうながす。
自動販売機は1059lx。昼の室内の北窓近くと同じくらい(微妙)
夜の灯台でかざしても0が出てくるだけじゃないのかという指摘はさておき、これで灯台におもむくモチベーションにつながった。
いつもの江ノ島から灯台めぐりスタート
また来ちゃった。
たいして記事を書いていないのにやたら登場頻度の高い江ノ島。まあ、ほら、みんないきつけの公園とかあるじゃないですか。
藤沢駅の体験イベントが楽しかった。
風がかなり強く、海は大荒れ。
湘南港灯台で照度探し
湘南港灯台。初点灯は昭和39年。東京オリンピックで江ノ島周辺がヨット競技の会場となった時にヨットハーバーと共に作られた。ヨットの帆をイメージしたデザイン灯台となっている。
ドアがすごくかっこいい。
日が落ちる前はどうなんだろうと照度計を使ってみる。
コード海に投げ入れたら新手の釣りだと思われるかなー。
おお!8.41klx(8,410ルクス)
オフィスビルの事務室の目安が750ルクスといわれているからその約10倍だ。すごい。しかし他に目安を調べると、日陰が10,000ルクスらしいのでまあそんなものではないかとなる。この場合何がすごいんだ。ええと、オフィス意外に暗い!
日が暮れるまで釣りだ!
トゲモミジガイ フグと同じテトロドトキシンという毒を体内に持つ。これが言えたんで釣果とかはいいです。
ヒトデを手裏剣のように海に放すと日はとっぷりと暮れていた。
夜の灯台かっこいいなあ。今からあの下へ。
照明はあるものの根元は暗そう…
日中と同じように照度計のセンサーをかざす。ばかばかしいくらいに暗い。
0.1lx(計測時の数値を固定してあるのでカメラのフラッシュ等の影響はありません)
この照度計の測定範囲の下限が0.1lxなので実際はもっと暗いかもしれない。
「やっぱ暗いな~灯台下」灯台に意志があったらお前の心根よりかマシじゃと即答したに違いない。
そんな中でも白い本体が街灯の光りに照り返している部分があるようにも見える。照度も若干高い。
お、0.3lx!
0.5lx!手ぬぐいはいったんもめん!
満月の夜の照度が0.3lx程だという。位置によっては結構明かるいところもあるのだなあと思ったらこの日は満月だった。要するに夜の暗さだ。
しかしなんかもう、この静寂の中で数値になんらかの動きがあった事がうれしい。
不気味なものでさらに暗さの実感を
他にもなにか感覚的に暗さを表せないかと苦慮していたら、「絞りとシャッタースピードを固定して写真を撮り、その明るさを比較しては?」とアドバイスをもらった。
なるほど。素晴らしいえい智。というわけで被写体を持ち込んだ。
100均で買った木像「ジェントルマン」とベトナムみやげでもらった漁師のおっさん。我が家の不気味ツートップ。
夜の闇の中、不気味なフィギュアを並べ、カメラのセッティングをする。なんだろうこの呪術感。
しかも強風でころころ倒れる。
なんとか撮影。絞りF4.5・シャッタースピード1/10
この写真が基準となる。
暗くてこわいので次の灯台へ移動しよう(次もこわい)
片瀬漁港へ
小田急線片瀬江ノ島駅近くにある漁港で、港湾を囲むように左右に長い防波堤が伸びている。どちらもプロムナードとなっており、釣り人だけでなく、散歩やジョギングを楽しむ人なども行き来している。その先端に白い灯台と赤い灯台が建っている。
昼間に撮影。湾をはさんで紅白の灯台が建っている。
ちなみに赤白に塗り分けられているのは船が入港する際、右舷に赤、左舷に白を見ながら入るように目印とする為らしい。
白い方から来ました。グリーンの光があやしくもかっこいい。
やる事はかわらない。風も強い
0.4lx!満月並み!(満月の夜なのですが)
大概は0.0~0.1lxなのだが、海の向こうに飲食店の明かりがきらめく江ノ島側は少し数値が高いように感じた。単に満月だったからかもしれない。
フィギュア撮影は断然暗くなった。(湘南港灯台と同じ設定で撮影)
湘南港灯台のもの。
比べれば歴然。
明るく加工するとちゃんと写ってます。風が強すぎて手で支えた。
そして赤い灯台へ。泳いで渡れればすぐなのだが、工作員じゃあるまいしそんなわけにもいかないので防波堤を戻ってからまた赤い灯台のある防波堤へとゆく。巨大なクワガタのあごに沿って歩いて行く感じだ。わかりにくいな。
赤灯台も負けずにあやしい。
照度計測中。奥できらびやかに光っているのは江ノ島灯台。 通称シーキャンドル。
最大値が0.3lxだった。
マスコット撮影。こんなのが置いてある中華料理店ありそう。
またも湘南港灯台のもの。
白灯台の時より真っ暗。
フォトショップで無理矢理露光を上げるとエクトプラズムみたいに。
先ほど写真にちらりと写っていたが、この他に江ノ島にはものすごく有名な
灯台がある。その名も江ノ島シーキャンドルである。
昭和26年に初の民間灯台として設置され、2003年、現在の形となってリニューアルオープンした。夜になると四季折々のテーマカラーでライトアップされ、不安になる程ビビッドな光を放つ。
夜の江ノ島に浮かび上がる巨大なファンシー。
ここや湘南港と違い入場時間に制限があるので颯爽と島の斜面を登って行ったのだが
あれ?なんか閉まってるぞ…
ウワー。ぬかった!
営業時間を30分間違えていた上に、途中で夜景やカミキリムシに夢中になっていたら終了時間を過ぎてしまい中に入れなかった。
ウスバカミキリ。こいつのせいですよ!(なすりつけ)
さらなる灯台を求めて三浦半島へ
近隣で灯台といえばやはり三浦半島ではないか。幕末から明治にかけて、房総半島と相対する狭い水道の安全航行の為に、日本で最初の西洋式灯台が建設された地である。
観音崎公園の駐車場。灯台オブジェが。
なにかと灯台モチーフ。
そもそも夜に近づけそうもない灯台も多々あり,土地勘もないのでとにかく回ってみる。
観音崎で重大な勘違いが判明!
最初に訪れたのは観音崎灯台。日本で最初の西洋式灯台である。
やはり、ザ・灯台といった感じのデザイン。
ここは内部を一般に公開している、いわゆる「のぼれる灯台」である。
注意書きの文字がかっこいい。
レンズも間近で堪能。
併設された資料展示室ではこの灯台を建設した経緯などが貴重な資料と共に展示されている。
改めて「そうか明治政府の誕生とともに灯台が」と感慨すると同時に「意外に新しい言葉なんだな灯台下暗し」とふと思った。
とんだ灯台違い!
「あれ?家の故事ことわざ辞典に載ってた気がするぞ」と改めて調べてみると…ぎゃあ!「灯台とは岬の灯台の事でなく燭台の事」
とあるではないか!
この世に生を受けてはじめでこの言葉を聞いて以来、「灯台」とはあの、海際に、つまり今測りまくっているものだと寸分も疑う事はなかった。
いやあ無知はこわいですね。この企画がまさに灯台下暗し。
しかし燭台探しもピンとこないので結局まだまだ灯台を巡る。
鴨居西防波堤灯台 テトラポッドの棒倒しみたいだ。
岩礁の先端に建つ安房埼灯台。燭台に見えなくもない(こじつけ)
かっこいいが夜来るのはちと厳しいか。
こうして見ると一口に灯台と言ってもいろいろ個性があっておもしろいなあなどと感嘆しながら訪れたのは半島の先っぽ。城ヶ島。
微妙な滑り止め
草に覆われているが「城ヶ島灯台公園」とある。
階段を登ってゆくとなんというか、ああ、ガーデンですねといった佇まいの公園に出る。
きっと浄土だ、そうに違いない。
どーん、城ヶ島灯台である。
明治3年、観音崎灯台と同じく横須賀製鉄所首長フランス人ヴェルニーにより設置された我が国で5番目の西洋式灯台。
大正12年の関東大震災で倒壊し、大正15年に改築されたのが現在の姿だという。
それにしてもなんでも壊してるな関東大震災…
道も整備されており、ここなら夜でも近づけそうだ。
腹ごしらえでもして満を持そうではないか。満を。
うつぼ丼で…。「うつぼ丼」っていうのぼりがあるのもすごいな
そしてうつぼのおいしさよ!なにこの皮のコラーゲン感。
ドクウツボはシガテラ毒を持つからねーと縁起でもない事をつぶやきながらうつぼ丼をおいしくいただき夜が更ける。向かう途中で灯台がぐるぐる光線を照射している姿が目に入る。
ピンボケですいません。真ん中のビームっぽいのがそうです。
なんかもう、上の部分がこのまま回転しながら空に飛んでいくんじゃないかと…
静かな夜空に江ノ島で見たよりはるかに力強い光を振りまく巨大な回転体、およそ現実感のない光景に「X-MENに怒ると見境なくこんなビーム撃ちまくるやついたなあ」なんて思いながらぽかんと見とれていた。
いくぶんテンション下がったけどやりますよ。
0.2lx。上があれだけすごくても下は暗い。
こんな寂しげな所でも遊歩道がきちんと整備されているので、肝試し気分で若いカップルが通りかかる。「灯台下暗しっていうだろ~」「ほんと暗いね~」みたいな会話が弾んでいる。ふっふっふ。その灯台は違うんだよ。と心の中でドヤ顔をするも「じゃあ何測ってんですか」と言われたら答えに窮して土下座せざるを得ないので指摘はしない。っていうか単なる不審者だよ、下手したら妖怪だよ。
三浦半島にも連れて来ました。
真っ暗。もはや露光を上げてもサイケデリックになるだけだった。
漆黒の闇の中、灯台はしごします
夜の灯台の異様な雰囲気に魅せられてもう1箇所巡ろうではないかと移動して夜道を行く。
暗い絵ばかりですいません。暗いんですなんせ。
明かりなき道をしばらく歩くと眼前が突如開けて、またなんかすごいとしか言いようがない光景が。
威風堂々たる照らしっぷり。
剱埼(つるぎざき)灯台。先ほどの城ヶ島灯台とは反対側。半島の南東端にある灯台で明治4年、日本で7番目に点灯された洋式灯台である。
一目見て城ヶ島灯台と違ったのは、照射する光の向きだ。
矢印参照。足元付近に照度が供給されている!
単純に灯火の標高が高いからなのかわからないが,割と足元近くに明かりが降り注いでいた。
光の先に立ってみるとよくわかる。
レンズが回転してくると
神々しい光が降り注ぐ!
やった!照度来た!3.9lx!
根元ではないにしろ、灯台の下で3.9lxである。この後におよんで何がうれしかったのか。きっと他の場所と明確に違う数値が表示されたからだろう。
ちなみに風営法では店内の照度が5lx以下の場合は「低照度飲食店」というものに該当し、あらかじめ風俗営業許可を受けておかないと無許可営業となってしまうそうだ。おしい!あとすこしだ(何が)
これがレンズ。マスコットはやっぱり真っ暗だった。
灯台下(も)やっぱり暗い
何が一番の驚きだったって「灯台下暗し」の「灯台」がこの灯台ではなかったという事だ。しかし、こちらの灯台の下だって風営法に抵触するくらい暗かった。
既にそうかもしれないが、これからますます「灯台」といえばこちらの方がポピュラーになるだろう。いつか行政府で「大臣、”灯台下暗し”ってあれどうしますかねー、燭台なんて誰も知らないし、もう海の灯台という事にしちゃっていいっすかねえ。」「しかし君、そっちは本当に暗いかどうかわからんじゃないか!」なんていう問題が生じた時に、この記事がお役に立てば幸いである(まずない)
観音崎灯台の戦利品。それはそうと灯台めぐり楽しいですよ。