900年の歴史にハイテクが融合
トップに載せた写真は栃木県の那須岳に行ったときに泊まった大黒屋という温泉旅館である。三斗小屋温泉には二軒の旅館がある。温泉旅館と言っても山道を歩かないと着かない。客はみな登山者である。
三斗小屋温泉は900年ほどの歴史がある。春だが雪が降っていた。
部屋は見事に温泉旅館風。
おばあちゃんちみたいな雰囲気の廊下。
外観も内装も歴史を感じる懐かしい感じである。サッシなんてものはなく、全体が木と紙とガラスで出来ている。
しかし、よく見れば太陽光発電をしているのだ。
冒頭に載せた写真であるが、しれっと太陽光発電。
山小屋って近くで発電機が動いていて、音がうるさいし排気ガスが臭い印象があった。だが、太陽光発電なら静かでクリーンだ。時代はしっかり21世紀になっているのだ。
「ランプの宿」となっているが、ランプは太陽光発電の電気で点いている。この電球がなんだったのかは未確認。
食事は昔ながらのお膳で出てくる。懐かしいのかハイテクなのかよく判らないことになっている。
よく見るとLED電球である
太陽光発電ではそんなに派手に電気を使えないっぽいが、ちゃんと電球もハイテクなものに変わっていた。LED電球なのだ。
これは北アルプスの燕岳(つばくろだけ)にある燕山荘(えんざんそう)。蚕棚の、よくある山小屋である。ここは多分ディーゼル発電機を使っている。
電球はLED。20世紀には無かったものだ。ハイテクである。
燕山荘の電球は全てLEDだった。見た目は変わらないのにちゃんと21世紀になっているのだ。
配線を見ると昭和っぽいんだけど、先についてる電球はLEDである。COOLだ。
ステンドグラスのランプシェードが可愛い。そして中身はLEDだし、写真中央にはAEDの機械も写っている。よく見ればハイテクだらけだ。
でも暖房はローテク
発電や電球はハイテクになっても、暖房は変わらず昔ながらである。
こないだの冬に東京都の最高峰である雲取山に行ったら、雲取山荘にあったコタツは豆炭こたつだった。豆炭とは、石炭や木炭を消臭剤などと混ぜて丸く固めた固形燃料である。
緩やかに温かく、しかも一晩中温もっていた。電気を使わずにずっと温かいのだから山小屋の暖房器具として最適である。
えらそうに説明しているが実物を見たのは初めて。
これが豆炭の燃焼部分。内部の触媒によって一酸化炭素の発生が抑えられているという。燃焼時間が長いので山小屋に向いている。
こちらは北八ヶ岳で見たダルマストーブ。
ダルマストーブの燃料はコークス。石炭を蒸し焼きにした物だそうな。
窓から赤い火が見える。昔は学校などで使われていたらしい。僕が小学生の頃はもう灯油ストーブでした。
そしてこれは富士山5合目にある佐藤小屋という山小屋の写真。冬に雪上訓練で行きました。
ここの暖房は薪ストーブ。ストーブの上には釜が乗っててお湯沸かしてます。
薪ストーブの正面には液晶テレビ。液晶テレビと薪ストーブ。このミスマッチ。
暖房みたいな大きな熱が必要なものは電気にすると大変なのだろう。これは22世紀になっても変わらないんじゃないかと思う。100年後の登山者も豆炭コタツやダルマストーブで暖を取るに違いない。
携帯は割りと繋がる
携帯電話なんて20年前はほとんどの人が持ってなかったが、今はほとんどの人が持っている。そんな携帯電話だが山でも結構使える。今時は遭難の救助要請もかなりの割合が携帯電話からだという。
中央アルプスの宝剣山荘ではFOMAが使えるそうです。
山でもちゃんと繋がるのはdocomoである。auも結構繋がるがdocomoには負ける。
僕はソフトバンクから離れて久しいが、ソフトバンクの人は大体山では通話自体を諦めて機内モードにしてしまっている。孫さんは山に登っていかに使えないか実体験すべきだと思う。せめて山小屋周辺では使えてほしい。
宝剣山荘はこんな場所に建ってます。奥の岩山が宝剣岳。ここで携帯繋がります。
雲取山荘は階段の踊り場で繋がりやすいです。
見通しがいいところに建っている山だと普通にネットも使えてFacebookで山行を報告できたりもする。写真も文章も送り放題である。僕みたいなネット中毒の登山者も安心だ。
北八ヶ岳の麦草ヒュッテの壁に携帯がぶら下がっていた。あとなぜか丸鋸。火災報知器は埋め込み式という見慣れなさ。
山小屋によっては、小屋の電話が衛星携帯だったりする。だから確実に繋がるが、故に予約の電話を掛けるとすごい勢いで通話料が嵩んでいくという。
最近の山小屋は食事が豪華
山小屋のご飯なんて高いお金を払う割にしょぼくて美味しくない、そんなイメージを持ってる人もいるだろう。でも最近の山小屋はすごい。
相変わらずカレーのとこもあるけど、美味しいとこはちゃんと美味しいのだ。
西穂高山荘の夕食。焼いた鶏肉になんか美味しいソースが掛かっていた。野菜も肉もたっぷりで栄養価が高い。
麦草ヒュッテの夕食。フルーツやら漬け物やらフライやら。右に写ってる小さいカップは白ワイン。
南八ヶ岳にある赤岳鉱泉の夕食。陶板焼きですよ。
加工肉ですが山でステーキを食べられるなんて!素敵!
クライミングで有名な三ツ峠山にある四季楽園での夕食。山でまぐろの刺身とか(しかも美味い)!クライミング後に嬉しい高タンパクな夕食でした。
泊まりたい山小屋第1位になった事もあるという、燕山荘の夕食。全て美味しかった。また行きたいなぁ。登るのキツかったけど(北アルプス三大急登の一つでした)。
ほら、上の写真みたいな夕飯を見るとカレーが残念に見えるだろう。ハンバーグが乗ってるのがせめてもの救いか。これは北アルプスの某山小屋の夕飯。ここは夏の最盛期に行ったので超混んでて、寝床も体の幅しかなかった。
妻や妻の友人と行くときは小屋泊まりでも自炊していた。その方が楽しいからだが、山小屋での食事も悪くないな、なんて最近は思っている。
これは赤岳に登ったときに食べた自炊料理。アルファ米とレトルトハンバーグでハンバーグ丼。材料費は400円くらい。最近の調理器具は全て軽くてコンパクトなので担いでも苦にならない。自炊は自炊で楽しい。
ビールはだいたいどこでも飲める
この1年で、山小屋の快適さにすっかり飼い馴らされてしまった。テントは楽しいしお金掛からないけど、山小屋の楽さを知ってしまうと「山小屋もアリだよね」なんて気持ちになる。
食事もちゃんとしてるし、ほぼ全ての山小屋で生ビールを飲めちゃうのだ。
ジョッキがマムート(登山用具メーカー)。マムートさんはこういう宣伝が上手い。
ビールの自販機が小屋の前にあったりする。
山で飲めるビールはアサヒビールが多い。積極的に売り込みを掛けているのだろう。アサヒビールは2009年から「うまい!を明日へ!」プロジェクトを展開して1本につき1円を自然保護活動に使っているのだという。
去年の夏に北岳の山小屋で飲んだ生ビール。美味しかったなぁ。また山にビールを飲みに行きたい。
高所では気圧の関係で美味しい生ビールを提供するのが難しいらしい。が、高所仕様のビールサーバーを使ったり、美味しいビールを提供するためのセミナーを開いたりしているそうだ。
単にハイテクなだけでなく、色んな人の努力が美味しい一杯を生んでいるのだ。
時計はローテク
よく見ると結構色々ハイテクになっている山小屋だが、変わらなくても困らないような物は昔ながらにそのまま使われている。例えば時計とか。普通に柱時計がチックッタックと動いていて懐かしい気持ちになる。
変わるべきところは未来にとって代わり、それ以外のものは時間が止まったようにそのまま。これが現実の21世紀なんだよなぁ。
こういう、別に変えなくても困らない物はローテクのままだ。
記念で寄贈されたらしい柱時計。
未来らしい未来ではないけど未来な現代
1970年代に描かれた21世紀は、チューブの中をホバーカーが走り、人は銀色のタイツみたいな服を着てペースト状の食べ物を食べていた。でも現実にはあんまり変わらなくて、よく見ると従来の物がひっそりとハイテクに置き換わるという現代が表れた。
きっと100年後も僕らは汗を流して山に登って、豆炭のストーブで温まるのだろう。長生きして山に登り続けたいものです。
トイレもバイオ処理になっていたりして結構ハイテクです。
なお、トレッキングスクールで泊まった山小屋は、何十年もの経験があるプロガイドが選んだ選りすぐりの小屋だったりします。だから快適だったのだけど、普通に20世紀のまま時間が止まっている小屋も沢山あるので全ての山小屋が快適だとは思わないようにしてください。