特集 2013年7月3日

水族館の暗闇空間が心地良い

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水族館の暗くて静かなところが好きだ。

とりわけ魚とか全然関係ない、単なる通路とかが良い。 そういったところは人も少なく、水槽の明るさもない。 でも雰囲気づくりのために暗さはそのままなので、 水族館のなかでも特に静かで暗い。

そういったところに佇んでいると、まるで自分の存在が世界から消えたみたいに感じられて、仕事とか別にしなくてもいいような気がしてくるのだ。禅空間と言ってもいい。

普段の仕事をがんばるためにも休みの日は仕事を忘れるのは大切だと思う。 ということで水族館の特段に暗いところを探し回りたい。
1985年生まれ札幌市出身。髪がとても硬いため寝癖がなかなか直りにくい体質。そのためよく帽子をかぶっています。

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すみだ水族館

最初に訪れたのはスカイツリーの開業に合わせてオープンした、すみだ水族館。
入り口からして既に良い暗さ。
入り口からして既に良い暗さ。
東京の水族館としては最も新しいので、最新LEDとかその辺の超技術を使った良い感じの闇を期待したい。
最近の流行なのかクラゲエリアはムーディーな感じでうす暗い。 これでもう少し暗くて人が少ないと理想なのだが。
最近の流行なのかクラゲエリアはムーディーな感じでうす暗い。 これでもう少し暗くて人が少ないと理想なのだが。
とか思ってるうちにすぐ明るくなってしまった。
とか思ってるうちにすぐ明るくなってしまった。
これでも室内としては暗いほうではある。
これでも室内としては暗いほうではある。
どんな暗さが良いとか、そもそもどういう場所のことを言ってるのか、 早い段階で出さないとちっとも理解してもらえない可能性が高いので なんとかしたいのだが。明日の仕事よりこっちの方が余程心配だ。

ひとまず求めてる暗さを表す例えとして、 「ダルマを置いても誰も気づかないぐらい」というのを思いついたけど、もっと分かりにくい。
すみだ水族館はペンギン推し。
すみだ水族館はペンギン推し。
赤ちゃんも公開中。暗闇とか無縁に育ってほしい。
赤ちゃんも公開中。暗闇とか無縁に育ってほしい。
訪れた時は平日の昼間だったので休日に比べればそれほど人は多くない。 加えてこのときはペンギンの赤ちゃんを公開する時間帯となり、 たくさんの人がそちらに行列をなしていた。

禅空間は地味な展示付近にあり

こういうときはチャンスである。人がそちらに流れてるときは 他の場所が空く。そういうときこと静寂の禅空間が発生しやすいタイミングだ。
こういう端っこの展示に暗闇が落ちていそうな気がする。
こういう端っこの展示に暗闇が落ちていそうな気がする。
こっちの展示は「東京湾・東京諸島」の水槽。 ペンギンとかアザラシの明るさはそんなにないはずだ。
これはいい静寂ですよ。
これはいい静寂ですよ。
暗い。

しかも通路も長く先が見えない。 かといって真っ暗でもなく独特の雰囲気を保っているところが、水族館特有の暗闇空間だと思う。
あぁ、解脱…。
あぁ、解脱…。
実際にダルマを置いても気づかないだろう。(合成です。水族館にダルマを置かないでください)
実際にダルマを置いても気づかないだろう。(合成です。水族館にダルマを置かないでください)
あーいい、落ち着く。この影と一体になって存在を消してるような、普段の生活では味わえない感覚がすばらしい闇である。 借金取りから逃げる場所としてもオススメ。
こういう人の少ないところは、だいたい食べるとおいしそうな魚が展示されている。
こういう人の少ないところは、だいたい食べるとおいしそうな魚が展示されている。
そしてニルヴァーナ(帰り道)へ。
そしてニルヴァーナ(帰り道)へ。
暗闇をたっぷり味わった後、 光が漏れる出口に向かう水族館の流れもカタルシスがある。 出た瞬間におそらく悟りを開いてると思う。

でも帰りの電車ですぐ閉じるから、まだまだ水族館の暗闇を探したい。
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葛西臨海水族園

葛西臨海水族園は大きな規模の割に値段が安さとマグロで人気の水族館。 比喩表現のマグロ並の静寂を期待したい。
入り口ではマグロと背比べという独特すぎる展示があった。
入り口ではマグロと背比べという独特すぎる展示があった。
エスカレーターで闇に落ちていく。
エスカレーターで闇に落ちていく。
エントランスは映画館のようなムーディーさ。
エントランスは映画館のようなムーディーさ。
暖色系の光なので、水族館らしい静けさとは違い映画館とかホテルのロビー のよう。

ただそれにしたってかなり暗いのが水族館だと思う。 ホテルでこれだけ暗いとムーディーがすぎる。
しかし人が多い。
しかし人が多い。
館内はすみだ水族館と比べても広い分暗いところも多いのだが、 この日は土曜のお昼頃来たためかなりの人出。そんなときに暗いところでジッとしてると怪しまれる可能性が高い。
そんなの関係なく涅槃に入ってる人もいたが。
そんなの関係なく涅槃に入ってる人もいたが。
結局見つからないまま一週してきてしまった。
結局見つからないまま一週してきてしまった。
どんなに広い水族館でも魚をまったく見ないとあっという間に終わるのだなあ。

トイレの横の暗闇ベンチ

いやそんな新発見は今日はいらない。 欲しいのはダルマを置いても…な、とにかくとびきり暗い場所である。
あ、あのベンチは。
あ、あのベンチは。
目に入ったのはトイレ脇のベンチ。おそらく家族サービスですっかり疲れたお父さんが 座ってるのだろう。照明も当たらず雰囲気もドロリとしている。これはいいぞ。
禅ベンチ。
禅ベンチ。
座ってみる。周りが明るい分、周囲がよく見える。反対に向こう側からこちらはあまり見えてないだろう。

きっとバックの代わりにダルマを抱えてても気づかないはず。
影と一体になった僕を認識するものは誰もいない。
影と一体になった僕を認識するものは誰もいない。
そんな訳ないんだけど、なんとなくそう思える。 ここに座ってる限り、仕事の引き継ぎとか絶対要求されない。
むしろノマドワーキングしたい。
むしろノマドワーキングしたい。
しばらく座っていたところ、隣に来た小学生が携帯ゲームを始めた。

「わざわざ水族館に来てまでしないでも…」とは思わない。 僕もこの禅ベンチで赤いきつねとか食べたい。
水筒をその角度でその位置にぶら下げると色々マズイ。
水筒をその角度でその位置にぶら下げると色々マズイ。
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エプソン品川アクアスタジアム

品川駅からすぐ近くにある水族館。大都会に位置するだけ合って、 コンパクトで大人な雰囲気の水族館らしい。アダルトな静寂を期待したい。
大人向けと聞いて来たのに、いきなり魚のメリーゴーランドがあって仰天する。
大人向けと聞いて来たのに、いきなり魚のメリーゴーランドがあって仰天する。
良い暗さだが、アダルトという言葉のイメージと相まってなんか複雑な感じだ。
良い暗さだが、アダルトという言葉のイメージと相まってなんか複雑な感じだ。
ここは明るいがそこを抜けると、
ここは明るいがそこを抜けると、
いいぞ暗いぞ。
いいぞ暗いぞ。
暗いぞいいぞ。
暗いぞいいぞ。
最初の水中トンネルはかなり明るかったが、 そこ以外は水族館の中でも全体的にかなり暗め。 これならダルマを…の例えはもういいか。

暗闇を覆い尽くす家族パワー

それにしても訪れた日は日曜の昼間なのに意外と人が少ない。 場所的に大人が夜中に訪れる感じなのだろうか、とか思っていたら、
ダワワーッ。
ダワワーッ。
どうやらイルカショーをやっていたらしく、大勢の客がちょうどそっちにいた時間だったらしい。

終わると同時にこの混雑。さっきまでの暗闇が幸せ親子連れパワーで駆逐されていく。やめろーやめてくれー。

暗黒アナウンススポット

しかしそれをきっかけに暗闇を発見。
しかしそれをきっかけに暗闇を発見。
扉と壁の隙間に人がいるのが分かるだろうか。

この方は混雑なので気をつけるようにとのアナウンスをしてる係の人なのだが、 その位置がまさしく探してる暗闇空間そのものなのだ。
近づいてもこのカモフラージュ率。
近づいてもこのカモフラージュ率。
明るいドアの隣という位置も視認性を低くしてる。
明るいドアの隣という位置も視認性を低くしてる。
いいなあ暗いなあ。あそこは人の多い通路ながら、流れの邪魔にもならない高度な暗黒スポットである。
ちょっと館内をうろついてから戻ってくると空いてる。よし!
ちょっと館内をうろついてから戻ってくると空いてる。よし!
と思ったらすぐ別の係の人が違うアナウンスを同じ場所でし始めた。
と思ったらすぐ別の係の人が違うアナウンスを同じ場所でし始めた。
どうやらこの場所は館内放送するときのオフィシャルスポットとして機能しているらしい。 これはしょうがない。あきらめよう。

残念だと思う気持ちよりも、 暗闇空間が公式に有効活用されていることを誇らしく思える 謎の感情。
笑わせに来てるとしか思えないノコギリエイ。
笑わせに来てるとしか思えないノコギリエイ。
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サンシャイン水族館

数年前にリニューアルしたばかりのサンシャイン水族館。 住まいが近いこともあり何度か来たことがある。

でも暗さとか気にしてみたことはないので 暗闇空間があったかどうかは分からない。 ここにあれば週末は毎回訪れようと思うのだがいかに。
この丸いライトはすみだ水族館のに似てる。
この丸いライトはすみだ水族館のに似てる。
駅のホームに置いてあるようなベンチも海底ムードでなんかステキだ。
駅のホームに置いてあるようなベンチも海底ムードでなんかステキだ。
ステキすぎてなんか気取った写真を撮ってしまった。
ステキすぎてなんか気取った写真を撮ってしまった。
主に水槽の明かりで照らす感じで全体的に結構暗い。
主に水槽の明かりで照らす感じで全体的に結構暗い。
館内では「ボエェ~」と海底環境音楽が流れており、雰囲気づくりに一役買っている。
館内では「ボエェ~」と海底環境音楽が流れており、雰囲気づくりに一役買っている。
「ボエェ~ボエェ~」。大変良い。
「ボエェ~ボエェ~」。大変良い。
この環境音が海の底という雰囲気をとても出しており、また全体的に暗いことも相まって良い感じの暗闇空間は割と見つかる。

見つかるのだが、なかなかここでジッとしていても落ち着ける、という場所は見つからない。つまりそこに人がいると不自然な場所、座敷わらじ的な妖怪の類いだと思われかねないところしかないのだ。

この辺りもまた個人的感覚過ぎてどうにも伝えにくい。 例えようとするとまたダルマになってしまうのでやめておこう。
暗くても人が多いところはダメなんだ。
暗くても人が多いところはダメなんだ。
人だかりが出来ていたラッコ水槽の隣にあったゴミ箱。 たぶん誰も気づいてない。
人だかりが出来ていたラッコ水槽の隣にあったゴミ箱。 たぶん誰も気づいてない。
こんなにISO値を上げないと写らないゴミ箱がかつてあっただろうか。
こんなにISO値を上げないと写らないゴミ箱がかつてあっただろうか。
ベンチに座るより下に潜りたい。
ベンチに座るより下に潜りたい。
ここら辺までなると、もう単なる変態か妖怪である。 そうじゃない。さっきのゴミ箱のような立場になるのが理想なんだけど。

ほとんど掃き溜め的暗闇

しかしそんなこともどうでも良くなる程の暗闇を見つけてしまった。
右側のスペース。
右側のスペース。
なにも視認できないその先は、
なにも視認できないその先は、
井戸の底のような壁
井戸の底のような壁
暗すぎる。どう考えても人がいることを想定してない場所である。ちょっとした洞穴と言っていい。 これでも画像補正である程度明るくしており、肉眼ではもっと暗い。

右側に扉があるので、おそらくバックヤード施設とかの関係上、ポッカリ出来た スペースではないだろうか。
井戸底からの風景。
井戸底からの風景。
水族館での思い出での1枚。
水族館での思い出での1枚。
この暗黒スペース、 おそらくはスタッフの方が出入りに利用する場所なので、この暗闇に潜むのはほどほどにした方が良さそうだ。

そうでなくとも、 通り過ぎる人たちからものすごく怪訝な顔で見られたので、本当ほどほどにした方が良い。

最近の水族館は総じて暗い

当初は水族館の暗くて静かなステキスポットを探してたはずなのに、最後はなんでか暗がりに潜む妖怪みたいになってしまった。

昔の水族館はもっと明るかった気がするが、最近の傾向なのかどこの水族館も押しなべて暗く、わざわざ暗がりを探す必要もあまりなかったかもしれない。
少しは魚の写真も載せよう、と思ったらホヤぐらいしか撮ってなかった。
少しは魚の写真も載せよう、と思ったらホヤぐらいしか撮ってなかった。
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