私はまだ本気出してないだけ
30代も半ばになると、目や口周りのシワやたるみが目立ちはじめる。
それが人間のことわりであることは重々承知しているが、やはり気になるところではある。できるだけ若くいたいというのが万人共通の考えだろう。
平日の夜、気だるい34歳
しかしよく考えてみれば、私はそれらの悩みにまだきちんと向き合っていなかった。まだ大丈夫だろう、と表情筋を甘やかし、努力を怠って生きてきたのだ。
そろそろ本気を出す時が来たんじゃないか?
本気で表情筋に集中し、鍛えあげれば、シワやたるみが解消されるかもしれない。若返る可能性が無いとは言い切れないのだ。いやむしろ若返らないわけがない。
ヒカリエ前で事前調査を行う
何歳に見えるのか聞くのだ
効果検証するため、街頭で私の年齢当てクイズをした。クイズと楽しげに書いたけど、内心は複雑で怖かった。どう見られているのか知りたいという欲求と、真実を知る事の怖さ。
しかもよりによって最新情報発信地である渋谷ヒカリエの前での調査。シビアな回答をしてきそうなこの街をあえて選んだのだが、早くも後悔した。
巣鴨とか優しそうな街を選べばよかった。
「32歳くらい」
「凄く頑張ってる36!」
「28歳?」 ちなみに彼は30歳だそうだ。若い!
男女10人ずつ聞くはずだったところ、全部で23人に質問した。数が中途半端なのは、撮影と声かけをお願いした編集部の安藤さんがノリに乗っていたからだ。
自分とは関係のない質問だからか楽しそうに見える。しかし相手の女性に、いくつに見えるかと逆に聞かれた時の動揺ぷりは凄かった。
逆に聞き返されることも。難しい
確かに女性の年齢を当てるのは凄く難しい。やはり気を使ってしまうものである。
安藤さんは、「20代前半ですよね?」と、年代を使いザックリと回答(しかも質問返し)するという方法を使っていた。そうかそういう答え方があったか。
一応、そんな日本人の優しさを察して「気にせず率直に言ってください!」とお願いした。
その結果、こうなった。
結果はマチマチ。平均すると27歳だった。全員が本音であればとても嬉しい事ではあるが、やっぱり気を使っているというのとパッとみた印象だからバレてない、というのが大きいだろう。
どういう所を見て年齢を判断するのかと聞いたところ、多かった順に
・顔の肌
・笑った時のシワ
・髪
・服装(ラフな格好が若い印象)
・雰囲気、声や話し方(落ち着きがあると年上の印象)
・化粧の濃さ(この時は薄い方が若いという意見)
・首のシワ
・手のシワ
という意見に集約された。
やはり何においても人はまず顔で判断するのだ。
実年齢を言ったときの驚きの反応は素直に嬉しく、ニヤリとした
決戦は一週間後。表情筋を鍛える
さて、ここからが本題である。
この日から表情筋を鍛え、どれだけ若返ることができるのかに挑戦するのだ。
決戦は一週間後の同じ時間。またヒカリエ前で年齢当てクイズをし、今日より年齢が下に見られていたら勝ちである。
さっそくトレーニング開始だ(ゴムパッチン法)
ゴムの反発力と恐怖による顔のこわばりで鍛える
表情筋を鍛えるにあたり、どんなトレーニングが適しているかを考えた結果、ひらめいたのがこれである。
ビビる安藤さん
ためしに安藤さんと交互でやってみて分かったが、ゴムパッチン法は顔全体に利くという意見は合致した。
見た目は100%罰ゲームだがこれは立派な表情筋のトレーニングである。
顎の力と信頼感が試される
ゴムが完全に伸びきった限界後の尻モチ。トレーニングには危険がつきものだ
意外や私の顎はすでに強かった。
いつも
皮や殻や袋をむかずに何でも食べてる安藤さんよりも遠くまでいけたのだ。(二重にした2mのゴムが私は5.5m、安藤さんは5.15mまで伸ばせた)
ただそれは、相手がいつ手を放すんじゃないかという信頼感の問題でもあるようだった。
「歯が前に取れるかと思って!」と言ったあと、私への不信感も語る安藤さん
別にこれはかつて一世を風靡した芸人コンビ「ゆーとぴあ」の真似事ではない。手を放して痛がるさまを見て笑うのが目的ではなく、あくまでトレーニングなのだから、手は放さなかった。
誰か見てたら違ったろうけど。
ゴムが当たった腕の火照りが引かない。トレーニングには痛みがつきもの
帰りの電車で、自分が27歳に見られたことを思い出し改めて嬉しく感じられた。
一番若く言われたのが23歳か。もう少し頑張れば大学生じゃないか。一週間鍛えれば、下手したら10代とまで言わせてしまう可能性が無きにしも非ず。
若いので、積極的に席を人にゆずった。
45分以内にプロテイン
帰って急ぎ飲む
体の疲労度は普段程度だが、さきほどのゴムパッチン法数回で顔の筋肉はいつもよりも格段に疲労している。
これから一週間集中的に鍛えるにあたっては、ただ放っておくだけではなく、効率よく筋肉をつける必要がある。
そこでウイダーのプロテインの登場だ。
安藤さんから3キロ受け取ってきた
運動後(できれば45分以内)にこれを飲むと効率よく筋肉がつくらしい。
3日間で120km遠足しても筋肉痛にならなかったという話もあるくらいだ。
私のばあい今すぐ筋肉をつけたい部位が顔しかないが、効果を期待し袋に書いてあった通りスプーン3杯分を水に溶かして飲んだ。(運動の量に応じて調節してもOK)
続けてトレーニングメニューを考える
ゴム製の専用器具
ゴムパッチン法だけでは足りないと思い、他のトレーニングメニューも模索していく。
ゥオエー!
ブオエー!(老けた!)
ゴム製は苦手
まずはドンキで表情筋を鍛えるグッズを買ってきた。
1つは吸ったり吐いたりして表情筋を鍛える専用器具(ハードタイプ)。もう1つは通常の筋トレにお馴染みのゴムバンドだ。ゴムパッチン法で使った紐よりも強力だと思い買ってきたのだ。
しかし実際に口に入れてみると、ゴム臭がする。それにゴムの反発力が強力なためか、体が激しく拒否してえずいて仕方なかった。
どちらも涙が出て終わった。
これは気持ちいい
ゴムバンドは完全にアウトだったが、黒い専用器具の方は我慢できない程ではない。実際、毎日使っていたらずいぶんと慣れペコペコと素早く運動できるようになった。
割と早い段階で気づいたけど、ペットボトルでも同じようにできたに違いない。
あと、「きりっとした口角と口元へ」と書かれたフェイスマッサージの器具も採用した。
食事トレーニング
アスリートはトレーニングだけでなく、食事にも常に気を使うという。
あくまで表情筋を鍛えるためだ
いまの私の場合は、その食事さえもトレーニング。表情筋を意識し、固い肉を噛み締めるトレーニングだ。
昼休みに、以前から気になっていた「食いしん坊」というお店のステーキを食べに行った。大変噛み応えのあるステーキでトレーニングにふさわしかった。
本当は寿司が食べたいのに
夜ご飯
夜ご飯のほうは本気できつかった。
食品の中で一番固いのはやはりダントツでスルメ。そして鮭とば、ビーフジャーキーあたりだろうか。
それをおかずにして夜ご飯としたのだ。
カテー
先生、残して良いですか
この食事トレーニングは難航した。とにかく食べ終えるまで時間がかかる。これが給食だったら外でドッチボールどころか、掃除の時間も一人で泣きながら食べていることになる。
鮭とばとビーフジャーキーはまだ噛み進められるが、スルメが全然食いちぎれない。食欲も減退するほどだ。ダイエットに使われるのがよく分かった。
その後、表情筋のトレーニング
運動後にプロテイン
その他のトレーニング
この日も昨日の器具(ゴムバンドの代わりはゴムひも)を使ったり、ネットで調べた顔を動かすトレーニングなどした。
ネットで表情筋トレーニングを検索すると変顔が見れて面白くて笑ってしまう。同じことを鏡の前で自分もやってみて、やっぱり笑ってしまう。
楽しそうではあるが、その光景を誰かが見ていたらと思うとゾッとした。
他にも、実家の犬に手伝ってもらったり(全然引っ張ってくれなかったが)
週末は実家に帰り、犬たちに手伝ってもらった。おやつを口にくわえ、引っ張り合う事で鍛える算段である。
しかしさすがうちの犬はお利口さんだった。好きなおやつとはいえ、主と取り合う事はせずペロペロするだけであった。
兄の家で筋肉に関して勉強したり
そのあと兄に会う機会があった。
話の流れで最近プロテインを飲んでいると話したところ、ウイダー主催のボディビル世界大会のDVDを取り出し、プロテインと筋肉の解説してくれた。
プロテインは飲む時間が大切で、筋肉はバランスが大切らしい。
過酷なトレーニングの日々
時には重力に逆らってみたり
織姫と彦星にお願いを聞いてもらったりした(七夕はまだ先だけど)
やるだけの事はやった
こうして写真を並べてみるとあまり真面目にやっていないようにも見える。
しかし毎日1時間以上のトレーニングを欠かさなかった。本当に本当だ。表情筋トレーニングほど、人に評価されにくい筋トレは無いかもしれない。基本変な顔でやってるし。
<基本の表情筋トレメニュー>
○スルメをかじる…15分
○ゴムひもを引っ張る…15分
○変顔(ムンクの叫び顔がきくらしい)…10分
○吸ったり吐いたりする器具…5分
○口角を鍛える器具…5分
○マッサージャー…10分
○トイレの中など空き時間に変顔
そして本番当日(調査から一週間後)
若返ってるかなー
本気を出したって無理なものは無理
この一週間、今まで無いくらいに自分の顔を鏡でよく見ていた。予想はしていたがそうそう顕著な変化は見られない。どう考えたって無理だろう。時間的に、だ。
むしろ急激に顔を刺激しすぎて、前よりも肌が伸びて老けてきた気さえする。
若さとは何か?最初の調査をした時に色々と学んだ。肌とか表情筋だけでなく、恥をかき捨て全力で立ち向かう事にしたのだ。その結果がこれだ。
私が思い描く若さ
思い切って10代狙い
以前の調査から参考にしたのは、
・前髪はパッツンの方が若く見える(ウィッグを使用)
・喋ると異常に落ち着いているから喋らない(私は声が低いのだ)
・服は安モノの方が若くみえる
そこに、自分の考える若さを表現したのが上の様な格好である。
こだわりはPIKO(ハワイ生まれのサーフブランド)みたいなピンクのTシャツと、チュッパチャプスと雑誌セブンティーンである。
とにかくカラフル(特にピンク)。それが若さだと私は思っている。セブンティーンの付録も蛍光の黄色とピンクのバッグだった。間違っていないはずだ。
若者特有の力の抜き加減で行きます
笑うとシワが出るのでこらえる
騙されない
たとえ笑いジワを見せずとも、声を出さずとも、若くは無いだろうと見抜かれる。おかしいじゃないか!(ちなみに36歳と26歳との回答)
「やりすぎだよね!」
自分も若作りしてるけど、という彼も30歳くらいとの回答だった。
こんな格好までして努力しているのに30と言われる辛さたるや半端ない。逆に老けて見えるという理論だ。
10代に見える距離
最後の手段である。
近くでは色々と見えてしまうアラも、遠ざかれば見えなくなるだろう。
どこまで遠ざかれば10代に見えるか試した。
これくらい離れればいけるのでは?
これでもダメらしい
光は逆効果らしい
ようやくOKをもらえた。もうシワどころか顔も見えないじゃん!
遠ざかれば10代に見える!
最終結論は出た。
一週間で若返るには、表情筋を鍛えるだけでなく、若い髪型と格好をして、できるだけ遠ざかればいいのだ。
ちなみに3メートル離れた別の女性には19歳と言わせる事ができた。見事大成功である。
しかし、なんだろうかこの空しさとストレスは。
同じ服でも聞いてました
ちゃんと一週間前と同じ格好で聞いてました。この3人組は本物の10代
結果は以下の通り。一週間で一歳老けた。
服装選びに5時間もかけたのに。(寝不足)
さっきの私の写真を見て大爆笑する安藤さん。憎たらしい
全ては時間が足りなかったせいだ
スーツさえコスプレみたいで嫌いな私に、この取材はダメージが大きすぎた。終わったあと3時間くらい頭痛がしていた。
こんな必死になってしまったのも、時間が足りなかった為だと思っている。どんなトレーニングだってたった一週間では効果は出にくいだろう。3ヶ月あれば違った結果が出たと思う。
ああ、色々と考えすぎて脳が疲れている。プロテインは脳の疲労に効かないのだろうか。
この夜、この黄色いキャップが燃える夢をみた。下手に10代を目指しては痛い目に合うのだ