毎日オクトーバーフェストだと思って飲んでいます
全国13会場で開催とあって、今年は知人友人からのオクトーバーフェスト参加報告が相次いでいてうらやましい限りだ。先日の東京、駒沢公園で開催の際は通りがかったにもかかわらず都合で参加できなかった者として胸がくすぶる。
しかし本音を言うと、会場に行かずとも毎晩オクトーバーフェストくらいのテンションでビールを飲んでいるよな、とも思うのだ。
私んちのオクトーバーフェスト(勇気をもって大きなサイズの写真で乗せる)
ビール(発泡酒やそのほかのリキュール的ビール飲料含む)っておいしい。おいしいビールにハレもケもないだろう。飲めばハレである。
自宅なら席を取る必要もなく、テレビを見ながらビールが飲める。酒屋で好きなビールを買えば安いし、ソーセージだってスーパーで買ってくればいい。
(ウィンナーはちゃんと茹でてから炒めた)私んちのオクトーバーフェスト
同じ写真が続いたが間違いではないわざとだ。
オクトーバーフェストは、毎日うちでやる。
完。
……。
す、すみません。
本音は以上の通りなのだが、お祭りというものは会場の雰囲気を楽しむためのものであるからして「家でいいじゃん」と発言することは大幅に野暮なのだった。
どこからがオクトーバーフェストか
さて、そんな野暮を承知でちょっと今日はやってみたいことがある。
「私んちの晩酌」がどうすれば場所は自宅のままもっと「あの楽しいオクトーバーフェスト」に変化するか試したいのだ。
せめてグラスに注ぎました。さあ、ここがスタート地点。「ビフォー」である
上の写真、この一見やさぐれた晩酌でしかない様相をどこまでオクトーバーフェストに変えられるだろうか。
第一段階:ザワークラウト
オクトーバーフェストへの道、まず手始めに簡単なところからはじめよう。
オクトーバーフェストもそうだし、ドイツ料理の店などいくと、ちょいちょい酸っぱいキャベツがついてくる。ザワークラウトだ。
なにしろ「なんか酸っぱいキャベツだなあ」という印象の漬物であるが、“ザワークラウト”というのがそもそも「酸っぱいキャベツ」という意味だそうだ。
カルディのような輸入食材店で売っておりますよね。普通にスーパーにもあるか
どうだ
結果:晩酌感が増幅した
ドイツっぽくなったというか、単純に晩酌感が増したか。ザワークラウトとはいえいってしまえば漬物である。
うん。あたりは静かだ。住宅街にある我が家は夜は静かでこうしてビールを飲んでいると寝てしまいそうになる。
いかん! 寝るな! 寝るとオクトーバーフェストもなにもないぞ!
進捗としては胸を張って0%といったところだろうか。
と、いま編集しながら7年前に行ったミュンヘンのオクトーバーフェスト(
レポート記事もあります)の写真を見返してはっとした。雑に盛るのがコツだったか
でも大丈夫。ここはまだ入り口である。ドイツ旅行で言ったらまだ成田に行くのに成田エクスプレスに乗ろうかスカイライナーに乗ろうか迷ってるくらいの段階だと思ってほしい。
と、自宅から成田へ行く方法を検索しはじめて
ヘリコプターを飛ばすという手段が民間でもあると知って驚きながらさらにオクトーバーフェストへ近づいていきたい。
ここまででかかった金額 861円
ザワークラウト 398円
ビール(麦とホップ)165円
ソーセージ(丸大 燻製屋)298円
第二段階:グラスを変える
オクトーバーフェストをオクトーバーフェストたらしめている要素の、どうだろう、3分の1くらいは個性的なビアグラスの存在感が占めているのではないか。
今年2013年に駒沢公園でのオクトーバーフェストに行った友人に見せてもらった写真。グラス、でかい!
ビールの銘柄ごとにそのビールの味を引き立てる個性的な形状をしたグラスがあるのだ。
で、このグラスが意外と楽に買える。ネットはもちろん輸入系のビールが充実している酒屋さんに置いてあることも多い。私はチェーン店の「やまや」で探した。
ヴェルテンブルガーという銘柄のグラスをご準備いたしました
これぞビアグラスという背の高さ。背が高すぎて、写真の背景に夫が育てているその辺から掘ってきた雑草が写りこんでしまった。この雑草がオクトーバーフェスト感に影響しないといいが。
注いでみよう。
お!
おお!
結果:いつものリキュール(発泡性)(1)が輝きだした
このグラス、500ml分が入る。先ほどから撮影している愛飲の「麦とホップ リキュール(発泡性)(1)」500mlを注いでみたのだが、注ぎながら「おお」と声が出た。
いつものビールが輝きだした。こんな琥珀色だったっけ? 上の写真では「麦とホップ」の缶がグラスに注がれたわが子をまぶしく見つめるように立っているように見えるではないか。
ここまででかかった金額 1459円
ザワークラウト 398円
ビール(麦とホップ)165円
ソーセージ(丸大 燻製屋)298円
ヴェルテンブルガー グラス 598円
ビアグラスめ、598円でなかなかのドイツ風を吹かせてきた。コストパフォーマンスは十分だ。
第三段階:プレッツェル投入
ここいらでおつまみにも切り込んでいこう。オクトーバーフェストというとつまみはやはりソーセージや豚肉の煮込み料理のアイスバインだと思うが、見た目のドイツさをアピールするうえで外せないのがプレッツェルじゃないか。
通りかかった駒沢公園でのオクトーバーフェストでもプレッツエル
袋菓子として売られる硬くて小さなものとは違い大きめで噛みごたえはあるものの軟らかいあれだ。パンで酒を飲むのか! という衝撃に続き うん、気持ち分かる!という賛同が沸き起こる一品である。
日本で手に入れるには作るか、基本的にはドイツパンの店に行くのが近道だと思うので各自調達にあたって欲しい。
私は広尾のナショナル麻布へ走った。ここ、都内にある複数のドイツパンの店のパンが降ろされているのだ。
隣にドイツ大使館があるからでしょうか
さらに精肉とお惣菜のカウンターでケースに入って温められたプレッツェルも売っている。
肉まんか
このSUPER PRETZELというのはアメリカのメーカーの商品のようだ。うーん、アメリカかーと、思っていると外国人の店員さんに「Which one?」と聞かれた。 オー。
ソルトとチーズの2種類があったので震える声で「い、いーちわん……」とお願いする。お店の方は(あ、日本人だった)とはっとしたようで日本語でもう一度「どれにしますか」と聞いてくれたのだった。
オクトーバーフェストに行こうとして間違えてアメリカにたどり着いていないか大丈夫か。
さらにこのスーパーでは大岡山にある「ヒンメル」というドイツパンの店のプレッツェルもゲット
こちらが肉まん風販売法のSUPER PRETZEL
ヒンメルのプレッツェルはみっしりしていてまごうことないドイツ感であった。よしよし。
SUPER PRETZEL、写真左のソルトは通常まぶしてある塩を落として食べるもの(残った塩味で食べる)。調味するのではなく、調味を落として食べる。落とした塩はどうするの?! とあたふたしてしまうのは世界で日本人くらいなのだろうか。思わぬところで発動されるMOTTAINAI精神よ。
チーズ味はどの辺がチーズなのかなと思ったら、中が空洞になっていて中に甘いクリームチーズが入っていた。
これ、どっかで見たことあるぞと思ったのだがあれだ。ピザハットの耳にチーズが入っているやつ(こんがりチーズクラスト)だ。
チーズのしょっぱさを想像していると驚かされる甘さ
アメリカは穴を掘ってチーズを入れがちということでいいだろうか。
結果:期せずしてアメリカ上陸
ここまででかかった金額 2069円
ザワークラウト 398円
ビール(麦とホップ)165円
ソーセージ(丸大 燻製屋)298円
ヴェルテンブルガー グラス 598円
プレッツェル3種 610円
現在のオクトーバーフェスト会場(我が家)。いまだ寂しさは残る
思わぬ吹いたアメリカの風。
ドイツ行きのつもりがうっかりである。私んちオクトーバーフェスト計画もこれではじりじりと崖っぷちか。
アメリカに上陸したならそれもまたよしなどとも思うが、気持ちを強く持って今日はドイツへ行こう。
次の施策には自信がある。
第四段階:ぬるいドイツビールで一気に攻める
撮影をするうち、麦とホップ500mlが少々ぬるくなってきた。ぬるいビールをドイツビールのビアグラスで飲む。
あっ?!
なんかいま、今日一番のオクトーバーフェストっぽさを感じた気がするぞ。
オクトーバーフェストというものはいかんせんビアジョッキが大きいので次第にビールがぬるくなるというのがその実態なわけだが、まさにあの感じである。
これだ! このぬるさだ。これ大事だぞ。私のなかのオクトーバーフェストに対するカンが働いた。どんなカンかは分からないが今はすがろう。
よし、このタイミングでいよいよドイツビールを投入だ。
「おそいわよ!」「いやー、ごめんごめん」という写真になっていた
ヴェルテンブルガーの、種類はアッサムボックというコクがあって重い黒ビールを選んだ。
メーカーの推奨飲みごろ温度は13度。ぬるくする気満々のセレクトである。
きたぞきたぞ
苦くて甘くてもったりしている。このグラスに黒ビールでよかったのか疑問も残るがこれぞぬるいビール。
オクトーバーフェストのしっぽをつかんだという手ごたえは、確かにあった。
結果:ぬるさで(個人的なイメージ上では)オクトーバーフェストらしさアップ!
ここまででかかった金額 2567円
ザワークラウト 398円
ビール(麦とホップ)165円
ソーセージ(丸大 燻製屋)298円
ヴェルテンブルガー グラス 598円
プレッツェル3種 610円
ヴェルテンブルガー アッサムボック 498円
第五段階:ソーセージをドイツ版に変更
ぬるくても美味しいビールに、塩を振るのではなくあらかじめ付いた塩を落としながら食べるプレッツェル。
異文化感も加速しいよいよ我が家とミュンヘンの距離も縮まってきた(と思う)。あとできることはなんだろう。いっちゃいますか、ソーセージ。
ドイツといえば、そしてオクトーバーフェストといえばソーセージ。駒沢公園会場でもさすがのラインナップ。そしてお祭り価格にひるむ
ドイツのソーセージを食べるには輸入物を探すか、日本でドイツの手法でもって作っているお店を探すことになる。
さすがみんな大好き加工肉とあって全国各地に専門店があるようだ。さあ、急いで各自調達に散って欲しい。
私は桜新町にある「ファインシュメッカー サイトウ」というお店に乗り込んだ。頭はきちっとソーセージ1本600円のオクトーバーフェスト仕様にしてある。
どれも安い!
太いタイプを薄く切ってハムのように食べるスライスソーセージもごろごろ!
1本600円だと思っていたソーセージが3本で400円以下? 安い! 一人小芝居にも拍車がかかる興奮のラインナップ。
迷いまくり、試食させてもらいつつ4種類を買ってきた。1302円だが、オクトーバーフェスト会場で食べまくるよりはずっと安い。
「飲み会1回行ったと思って」といういわゆる飲み会換算というのはよく使われるが、ことソーセージの購入に関しては今後とも「オクトーバーフェストでソーセージを買うと思って」換算でいこうと思う。勇気りんりんだ。
丸大の燻製屋(右下)にスライスの角切り肉が入ったビアシンケン(上)とドイツの初夏の味だというベアーラオホブラートブルストを追加した!
当然ぜんぶおいしいので何と書けばいいのかわからないが、とりあえず角切り肉が入っているという反則でしょーよとも言いたくなるソーセージ、ビアシンケンについてはこれまで食べた加工肉の中で最もダイレクトに肉を感じたということだけ書かせてほしい。もぐりもぐり。
現在の会場の様子
買ってきたうち残りの2種類は、ちょっとこれはちゃんときれいな写真撮らなあかんぞということで朝を待って撮影すべく朝食べた。
ヴァイスヴルスト(上)はミュンヘン名物の軟らかいソーセージ。トスカーナブラートヴルスト(下)はレモンのハーブのもの。
朝一番、居間の中心ででかい声で「ソーセージが、うまい!」と叫ぶ。
自宅でオクトーバーフェストを開催すると翌朝にまで気分が楽しめることが分かった。
結果:翌朝までオクトーバーフェストが続く
ここまででかかった金額 3869円
ザワークラウト 398円
ビール(麦とホップ)165円
ソーセージ(丸大 燻製屋)298円
ヴェルテンブルガー グラス 598円
プレッツェル3種 610円
ヴェルテンブルガー アッサムボック 498円
ドイツ ソーセージ4種 1302円
(※後で知ったのだが、今回行ったソーセージのお店の近くにはおいしいドイツパンの店もあったようだ。なにごとか!)
第六段階:あの乾杯の歌
できることはやった。原状以下の写真のところまで持ってきた。
少なくとも我が家ではない事態
明らかにいつもの晩酌ではない。ではオクトーバーフェストかといわれればそうでもない気もする。
正直、なんだどうした、という状況である。
足りないのは祭り感だろうか。イベント事といえば日頃の常識のたがが外れるあの感じである。
財布のひもはソーセージの店ですでにゆるんだが、いつもしないことをしちゃう感じ、テーブルの上に立ってわーわー歌ったりとか、うっかり知らん人を好きになるみたいなイベント感まではさすがに演出できていない。
この大盛り上がり感よ
それで思いついたのが日本のオクトーバーフェストの
サイトでも紹介されている「乾杯の歌」だ。
よく宴会で盛り上がってくるとやたらに乾杯しはじめるという文化は日本にもあるが、ドイツでも同じらしい。そのときに歌われるのがドイツの乾杯の歌、「Ein Prosit」がオクトーバーフェストでもよく歌われる。
これだ……!
友人が撮影した乾杯シーン(2013年オクトーバーフェスト駒沢公園会場)
「Ein Prosit」、iTunes Storeであっさりあったぞ
よし。可能な限り音量を上げて再生してみよう。
「アイン プロージット アイン プロージット デル ゲミュートリッヒカ~イト」
おお。
アインス ツヴァイ ドライ ズッファ! プロースト!
うん。これは。
これは、さみしいぞ!
思った以上のさみしさにあわてた瞬間に「なに?! なんだ?!」と声がした。夫が帰ってきたのであった。
結果:家族が驚く
ここまででかかった金額 4019円
ザワークラウト 398円
ビール(麦とホップ)165円
ソーセージ(丸大 燻製屋)298円
ヴェルテンブルガー グラス 598円
プレッツェル3種 610円
ヴェルテンブルガー アッサムボック 498円
ドイツ ソーセージ4種 1302円
「Ein Prosit」音源 150円
さらにうかれたビアジョッキ帽子を投入したが、もはやオクトーバーフェスト感も頭打ちであった
楽しいですオクトーバーフェストin家
分かったことをまとめてみよう。自宅でオクトーバーフェストを開催すると…
・ (翌朝のソーセージを含め)だいたい4000円くらいかかる
・ いつもの安いビール(的飲料)はビアグラスに注ぐことによって輝き、しかしぬるくなる
・ プレッツェルを投入する際は気を付けなければドイツというよりアメリカの風が吹く
・おいしいドイツのソーセージを購入しようとすると財布のひもが緩むが超おいしくて翌日も楽しめる
・「乾杯の歌」を歌うと寂しくなり、家の者が驚く(一人暮らしの方はおそらく隣人が驚くだろう)
愉快な時間が過ごせるという意味においては実際のオクトーバーフェストと意味合いは違うものの同じくらいの感動があるのではないかと思う。
値段的には思いのほかかかってしまってしまって、合計額を見てちょっとひるんだ。
今回の記事を書くにあたり7年前のオクトーバーフェストの写真を見ていて「あ、夢じゃなかったんだ」と思ったことがあった。 移動遊園地のこの写真
なんとこの高さなのである。7年越しで「危ねっ!」と思った
家庭ごとにそれぞれのオクトーバーフェストがある
ビール、グラス、つまみ、BGMとオクトーバーフェスト要素を試してみた。
これは良さそうだというものがもしあったらぜひ晩酌に採用してほしい。そうやって家庭ごとにオクトーバーフェストが形成されるのである……ということでどうだろう。
我が家では今後も継続的にドイツパンの店とソーセージの店には行っておこうと思います!
ソーセージを買いに行く途中、偶然駒沢公園のオクトーバーフェストのトイレ撤収のトラックとすれ違った。ありがとうオクトーバーフェスト! と見送った