特集 2013年6月12日

僕たちが東吾野駅で降りて幻の石塔を見つけるまで

人跡未踏の密林に幻の石塔は実在した!!
人跡未踏の密林に幻の石塔は実在した!!
2013年の春、突然「西武秩父線」というキーワードがニュースになった。

西武鉄道の大株主である外資ファンドが株を買い増しして、もし経営権を握ったら不採算路線として西武秩父線を廃止にするかも知れないというのだ。

それは大変だ!何とかせねば!と思ったのだけど、株も経営の知識も資金も持っていない僕にできることは、沿線に何があるのかを見てくることくらいだった。

というわけで、西武秩父線の各駅で降りて周辺を散策してきた。
1974年東京生まれ。最近、史上初と思う「ダムライター」を名乗りはじめましたが特になにも変化はありません。著書に写真集「ダム」「車両基地」など。
(動画インタビュー)

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西武秩父線とは

池袋駅から出ている西武池袋線に乗ると、練馬、所沢を過ぎてひとまず飯能駅に着く。路線はここでスイッチバックして、山あいを抜けて終点の西武秩父に至る。

このうち、途中の吾野駅までは昭和初期に開通した西武池袋線(当時の名前は武蔵野鉄道)、吾野駅から終点の西武秩父駅までが西武秩父線で、こちらは昭和44年に開通した。
とは言っても飯能から先は扱いが一緒くたである
とは言っても飯能から先は扱いが一緒くたである
正式には吾野駅を境に路線名が変わるのだけど、飯能駅より先は単線で特急以外はすべて各駅停車だし、営業的には一括りにされている感じがする。

そこで今回は、飯能駅から電車に乗って、ひと駅ずつ途中下車しながら進んで行くことにした。

頼もしい旅の友

ただ、事前にいくら調べても、西武秩父線沿線でおもしろそうな情報を掘り出すことができなかった。そこで人の手を借りようと同行者を募ったところ、当サイトライターで有毒生物などに詳しい伊藤さんが手を挙げてくれた。街歩きの趣味もある伊藤さんなら、きっと僕の目に見えないおもしろポイントを見つけてくれるだろう。

萩原「今日はすいません、たぶんキツいと思います」
伊藤「よろしくお願いします、キツい取材大丈夫です」

そうだこの人、同行取材で正月にエイを釣りにタイに行ったりしてるんだった。それに比べればお散歩感覚である。

というわけでアラフォーの男二人で記念写真を撮って飯能駅を出発、まずは隣の東飯能駅に向かった。
萩原「ポップデュオっぽくしたかったんですが」 伊藤「ひたすら哀しいですね」
萩原「ポップデュオっぽくしたかったんですが」
伊藤「ひたすら哀しいですね」

最大のターミナル、東飯能駅

萩原「事前情報では、東飯能の見どころは駅ビルくらいしか...」
伊藤「とりあえず降りてみましょう」
萩原「降りたの初めてです」 伊藤「なぜファイティングポーズなんでしょう」
萩原「降りたの初めてです」
伊藤「なぜファイティングポーズなんでしょう」
西武池袋線沿線で育った僕にとって東飯能は、というか飯能より先の各駅は30年前に小学校の遠足で通りがかったことがある、という記憶しかないのだけど、なかでも東飯能は「なんにもなかった」というイメージが残っていた。それが今や駅前に巨大なデパートやビルが鎮座し、立派な地方都市のターミナル駅、という風情である。

接続している八高線もオレンジ色のディーゼルカーだった気がするけど、ステンレスの電車が軽快な電子音を響かせながら走っていた。
僕の記憶ではここ空き地だった
僕の記憶ではここ空き地だった
萩原「丸広ってデパート初めて見るなあ」
伊藤「地方に来たな、って感じしますね」

改札を出ると、そこはふつうの地方都市の駅前の風景だった。が、非日常感から来るテンションの高さもあって、見慣れないものに過敏に反応してしまう。
伊藤「あの整形外科ものすごくでかいですね」
伊藤「あの整形外科ものすごくでかいですね」
萩原「これ自動車店が教習所も経営してるんですかね」
萩原「これ自動車店が教習所も経営してるんですかね」
伊藤「しかも本当にあの日産か、というロゴ」
伊藤「しかも本当にあの日産か、というロゴ」
萩原「森林文化都市宣言した街にもピンク色の髪の人がいるのかー」 伊藤「鳥もジャングルの奥の方が派手になりますから」
萩原「森林文化都市宣言した街にもピンク色の髪の人がいるのかー」
伊藤「鳥もジャングルの奥の方が派手になりますから」
とその時、伊藤さんが足を止め、一心不乱にシャッターを切りはじめた。
伊藤「これいい!最近のぼりのベースを撮って集めてるんです」
伊藤「これいい!最近のぼりのベースを撮って集めてるんです」
正直、はじめは意味が分からなかったのだけど、このあと各駅でのぼりのベースを見つけて、今回の旅のひとつ大きなテーマとなるのだった。

駅前の目抜き通りを歩いていちばん気になったのがこれ。
伊藤「軽トラ市って何でしょう」萩原「軽トラと言えば飯能産だよね、とかあるんでしょうか」
伊藤「軽トラ市って何でしょう」
萩原「軽トラと言えば飯能産だよね、とかあるんでしょうか」
あとで調べたところ、荷台に特産物などの商品を載せた軽トラが集まって市が開かれることがあるらしい。なんとFacebookページまであった。

それはそれで取材してみたい催しである。

さて、まだあと8駅もある。この調子で見てまわっていると体力が持たないので、このあたりで次の駅に向かおう。
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のんびり住宅地、高麗駅

30分に1本の西武秩父行きを待って、次の高麗駅に向かう。その電車の中で。

伊藤「なんかいま駅前にものすごいものが見えたんですけど...」
萩原「そうなんです。高麗は大昔に高句麗から移住してきた人たちが住んだ土地で、駅前に朝鮮半島由来の道祖神が建っているんです」

というわけで、当サイトでも過去何度か出てきているランドマークを前に記念撮影。
ポーズ的にはいちおう男と女っぽくなってる。逆だけど
ポーズ的にはいちおう男と女っぽくなってる。逆だけど
萩原「事前に調べた高麗駅周辺の見どころは…、この将軍票(道祖神)と、巾着田、日和田山などですが、巾着田と日和田山は前に別の記事で書いてるんですよね」
伊藤「あのセメントのタンクがかっこいいので見に行ってみましょうか」
駅周辺唯一のランドマーク
駅周辺唯一のランドマーク
ということで、線路の向こう側のセメントタンクに向かって歩き出した。すると目の前に時間貸しの駐車場が。
一見何の変哲もないコインパーキングだけど
一見何の変哲もないコインパーキングだけど
料金箱がアナログ式だった
料金箱がアナログ式だった
伊藤「この駐車場、どういうシステムなんだろう」
萩原「料金箱が野菜の無人販売みたいですね」
伊藤「紙に番号書かせたり、すごく利用者に頼ってますよ」
駐車番号を書いた紙と料金を小さなビニールに同封した上で料金箱に投入
駐車番号を書いた紙と料金を小さなビニールに同封した上で料金箱に投入
看板を架けてある支柱は物干竿架け?
看板を架けてある支柱は物干竿架け?
萩原「性善説に則ったシステムですね」
伊藤「プリミティブなタイムズだ」
萩原「だけどせめてお金払う間に濡れないように、屋根が架けてあって優しい」
伊藤「この看板の支柱のアリモノ感もいいですね」

初めて見るアナログな方式の駐車場にひとしきり盛り上がった。高麗、きっといいところに違いない。

その後、線路をくぐってセメントのタンクに近づくも、だいぶ手前で立入禁止に。
しかしフラットな筒感がステキである
しかしフラットな筒感がステキである
萩原「いいタンクだなあ」
伊藤「登ってみたいですね」

あたりを見回すと、観光地っぽい看板が立っていた。
萩原「石器時代住居跡があるみたいです」 伊藤「行ってみましょう」
萩原「石器時代住居跡があるみたいです」
伊藤「行ってみましょう」
住宅地の脇に伸びる小径を進むと、遺跡らしい場所に出た。
伊藤「跡!跡だなあ」 萩原「跡としか言いようがない」
伊藤「跡!跡だなあ」
萩原「跡としか言いようがない」
伊藤「この土台の石、石器時代の石ってことですかね」 萩原「その辺の河原の石とかも意外と大昔のなんですよね」
伊藤「この土台の石、石器時代の石ってことですかね」
萩原「その辺の河原の石とかも意外と大昔のなんですよね」
その後いったん駅に戻り、駅前から住宅地に伸びるメインストリートを進んでみた。
萩原「中央通りに郵便局と交番が並んでる、ここ高麗の官庁街ですね」
萩原「中央通りに郵便局と交番が並んでる、ここ高麗の官庁街ですね」
伊藤「ショッピングセンターもありますよ。朝採れにこだわってますね」
伊藤「ショッピングセンターもありますよ。朝採れにこだわってますね」
萩原「朝採れで思い出したんですけど、前スーパーで売ってるケーキに『産みたての卵使用』と書いてあったんですよ」
伊藤「あまり嬉しくないですよね」
萩原「なんとなくヌメヌメしてそうで、売りとしてどうなのかと」
萩原「これ、どう見ても元銀行ですよね」伊藤「居抜きだなあ」
萩原「これ、どう見ても元銀行ですよね」伊藤「居抜きだなあ」
伊藤「あ、こののぼりベース珍しい!」
伊藤「あ、こののぼりベース珍しい!」
伊藤「ツートンカラー!かわいい!」
伊藤「ツートンカラー!かわいい!」
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ヤギを飼う武蔵横手駅

散策を終えた高麗駅から電車に乗って先に進むと、徐々に山あいの色が濃くなってきて、グーグルマップの航空写真も解像度が粗くなる。

と、車窓から見える山肌に、大勢の人がいるのが見えた。
ん?あの白い点々は何だ...?
ん?あの白い点々は何だ...?
ん?あの白い点々は何だ...?
斜面に大勢の人がいる!
萩原「あれ何ですかね」
伊藤「鷺が群れてるのかと思いました」
萩原「きっと...山狩りですよね」
伊藤「何かの儀式やってて、生贄が逃げ出したとかでしょうか」
萩原「ああ、表沙汰にはできない、でも放ってもおけない、みたいな事態」

この原稿を書いているいまの時点でも分からない。あれは何だったのだろう。

萩原「次の武蔵横手駅の見どころは、ヤギです。駅でヤギを飼っています」
伊藤「それは見たい」
この時点でヤギ以外の見どころを見つけていない
この時点でヤギ以外の見どころを見つけていない
電車が駅に着きホームに降り立つ。そこは、飛騨高山に着いた、と言っても信じられるような深い山あいの景色だった。
山深いところまで来てしまった
山深いところまで来てしまった
目の前の草原には草を食むヤギの姿が。ホントにいた!
目の前の草原には草を食むヤギの姿が。ホントにいた!
伊藤「あの看板、誰に向けてるんですかね。ぜんぜん見えない」 萩原「もっと近くでヤギを見られる場所があるかも知れない。行ってみましょう」
伊藤「あの看板、誰に向けてるんですかね。ぜんぜん見えない」
萩原「もっと近くでヤギを見られる場所があるかも知れない。行ってみましょう」
改札を出ると、目の前には西武線と並走して飯能と秩父を結ぶ国道299号線が通っている。しかし駅前にはお店の1件もなかった。駅があって、人が住んでいる家もあるのに、買い物ができる店がまったくないのはすごい。

アマゾンとヤフオクだけで生活しているのだろうか。
駅前通りなのだが何もない
駅前通りなのだが何もない
駅前広場から国道に出るところで、伊藤さんがまたのぼりベースを見つけた。今度のは根元が変な形で固定されている。
伊藤「これは初めて見るタイプです。何でこんな複雑な形なんだろう」
伊藤「これは初めて見るタイプです。何でこんな複雑な形なんだろう」
そのとき直感的に閃いた。「これ、もしかして金属板を回転させればポールの太さを変えられるんじゃないか?」
やっぱりそうだ!それぞれポールの直径が書いてある!
やっぱりそうだ!それぞれポールの直径が書いてある!
思わぬ発見に2人で大喜び。スゲースゲー言ってるけど、相手はのぼりのベースである。日本は平和だ。

そうそう、降りた目的はヤギだった。少しでも近づくため、駅の反対側に回り込んでみることにした。
伊藤「このロータリーがいいですね、小さくて」 萩原「入口と出口がこんなに近い!」 伊藤「真ん中の駐輪場もいいです」
伊藤「このロータリーがいいですね、小さくて」
萩原「入口と出口がこんなに近い!」
伊藤「真ん中の駐輪場もいいです」
ヤギの近くを目指して、小さな集落の中を通る細い道を進む。でもヤギの広場に至る道は立入禁止。近くから眺められそうな場所も見つからなかった。
アラフォー男2人とヤギを隔てる鎖
アラフォー男2人とヤギを隔てる鎖
結局、武蔵横手駅ではヤギ以外の見どころは見つけられず、30分に1本の西武秩父行きに乗るため、走って駅に戻った。
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こんなはずじゃなかった東吾野駅

続いて、さらにひとつ先の東吾野駅で降りた。このあたりの駅、どこも雰囲気が似ていて、目隠しして降ろされたらどこがどこだか分からないかも知れない。
まだ午前中なのに深夜テンション
まだ午前中なのに深夜テンション
萩原「この東吾野駅なんですが…、ここも見どころが出てこなくて、何とか見つけたのが、源流っぽいところ…。」
伊藤「源流っぽいところ?」
萩原「グーグルマップで川が始まっている場所が駅の近くにあるんです」
伊藤「なるほど、行ってみましょう」

恐る恐る出したどうしようもない案に対しての、伊藤さんのフットワークの軽さがすごい。
丸太が山積みの市場があって木の香りがすごい
丸太が山積みの市場があって木の香りがすごい
そこにあった用途不明のかっこいいマシーン
そこにあった用途不明のかっこいいマシーン
源流に向かう道は途中から森の中に入り、上り坂になった。こういうところってクマとか出るんじゃないか、と思った途端にクマ出没注意の看板が。僕は背筋に緊張が走るものの、伊藤さんは何食わぬ顔で先を歩いて行く。

と、とつぜん伊藤さんが立ち止まり、森の中を凝視している。来た!?クマ!?
何かを凝視する伊藤さん
何かを凝視する伊藤さん
これほど脱力する注意書きもそうない
これほど脱力する注意書きもそうない
ヘビ好きでもある伊藤さん、さっきから「マムシ出ないかなー」などと呟いていただけに、俄然足取りが軽くなったようだ。僕としてはあまりお目にかかりたくないのだけど。

しばらく坂を登って、グーグルマップ上で川が途切れている場所までやってきた。確かに道の脇にほとんど水の枯れた小さな沢があるけど、そこが始まりでもなく、さらに上の方まで沢筋は伸びていた。
水の枯れた沢が続いていた
水の枯れた沢が続いていた
仕方ないので駅の方へ戻って出直すことにした。この駅も特に見どころはないのか、と帰り道をとぼとぼ歩く2人の目に、ほぼ同時にある看板が飛び込んできた。
特に(バクチ岩)というのが気になった
特に(バクチ岩)というのが気になった
伊藤「バクチ岩って何でしょうね」
萩原「これ行ってみましょう」

しかし看板通りに進むと、道は民家の敷地みたいな場所に入ってしまった。ちょうど、家の前でおじいさんが作業をしていたので、バクチ岩について話を聞いてみた。


・この先にあるけど急な岩場を登らなきゃいけない
・少し戻って林道を登った方がいい
・ぜひ行ってみなさい
・山の中に上が平らな岩がある
・昔、幕府から博打を禁止されたときに、そこに集まって密かに博打をしていた
・ぜひ行ってみなさい
・岩からは太いケヤキが生えている
・岩の上には立派な五輪塔が建っている
・ぜひ行ってみなさい


おじいさんは目を輝かせてバクチ岩について語ってくれ、何度も「ぜひ行ってみなさい」と推してくれた。

それにしても禁止されてるのに人目につかない場所で博打を続けるとは。現金が底をついた人は土地を賭けたりしたらしい。本当にしょうがない人々である。この駅のまわりの土地、みんな博打で手に入れたり失ったりしたんじゃないか、という目で見てしまう。

このまま進んで岩場を登った方が近そうだけど、おじいさんの言う通り林道からまわることにした。
予言通り林道があった
予言通り林道があった
林道を少し進むと、ふたたび伊藤さんが立ち止まった。側溝の中を凝視しながら僕を手招きしている。
伊藤「タヌキが死んでます」
伊藤「タヌキが死んでます」
おそるおそる覗き込むと、まだ小さい、毛並みのきれいなタヌキが眠っているように倒れていた。まだ死んでからそれほど経っていないようだ。

伊藤「外傷ないし車じゃないな。死因なんだろう」

専門じゃないのに生き物全般に詳しい伊藤さんは写真を撮りまくっている。

伊藤「あー、この死体ほしい研究者大勢いるだろうなあ」

その発想はなかった。専門じゃないのに生き物全般に詳しい伊藤さんは研究者のニーズまで考えている。

伊藤「やっぱ側溝の中はロマンがあるなあ!」

気持ちいいくらい理解不能な叫びである。

林道をさらに登って行くと、突然片側が崖になった。20mくらいある岩の壁の下に何人かの人が溜まっていた。
「これが平戸の岩場ですよ、さっきあなた達が話してた」
「これが平戸の岩場ですよ、さっきあなた達が話してた」
行動を見透かされているかのように声をかけられて驚いた。どうやらこの下はさっきのおじいさんの家のすぐ裏で、僕たちの話し声が筒抜けだったようだ。

下にいる人に聞いたところによると、もともとバクチ岩と呼ばれていた大岩の途中に林道を通すことになったとき、バクチ岩という名前じゃあんまりなので、地名をとって平戸の岩場という名前にしたらしい。今ではクライミングの練習に使われているそうだ。

あのままおじいさんの家の先に進んでいたらここを登ることになったのか。まさに急がば回れである。

ということは、上が平らで五輪塔が建っている場所はこの上にあるということか。確かに岩の途中からは太い木が生えている。おじいさんの言った通りだ。
ケヤキかどうかは分からないけど岩から木が生えていた
ケヤキかどうかは分からないけど岩から木が生えていた
しかし、上に登る道が分からず、しばらくの間さまよった。林道をさらに登って見つからず、降りてきたときに伊藤さんが言った。

伊藤「もしかして、これじゃないですか?」
これ、道か?
これ、道か?
言われてみれば獣道があるような...
言われてみれば獣道があるような...
伊藤「ちょっと登って見てきます」

と言うなり、軽い身のこなしで伊藤さんが山に入って行った。一人で待っていても仕方ないので僕も後に続いたけど、既に伊藤さんの姿は山の中に消えていた。
おーい
おーい
イトーさーん...
イトーさーん...
遭難を少し覚悟しながら(レベル低すぎ)、慣れない足取りで急斜面を登って行くと、先の方から伊藤さんの「あっ!」と叫ぶ声が聞こえた。

なに!?今度こそクマ出た!?
まさかこんな山の中に本当にあるとは
まさかこんな山の中に本当にあるとは
これを探しに来たワケじゃないのに、嬉しい
これを探しに来たワケじゃないのに、嬉しい
傾斜が緩やかになったところに岩場があって、その上に五輪塔が建っていた。ということは、この場所で江戸時代に土地と意地を賭けた闘いが行われていたということか。

偶然見つけた情報について、長老から詳しい話を聞き、通りすがりの人から手がかりをもらって、険しい道を進んだところで、目的のものを見つける、という、リアルドラクエみたいな体験をしてしまった。何だこの充足感。何が川の源流だ。

もし今度知り合いと東吾野に来ることがあったら、何も言わずあのバクチ岩の上に連れて行ってみたいと思う。

思ったよりいろいろある

というわけで、西武秩父線各駅停車の旅、今回は前半でここまで。

家でパソコンのモニター越しにいくら調べても出てこない見どころが、現地に行くとぽろぽろといろいろ出現してものすごく楽しかった。

次回は後半、吾野駅から先の「ディープ秩父線」を探索します。
この路線ほとんどの駅で熊鈴が売られていた
この路線ほとんどの駅で熊鈴が売られていた
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