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ロマンの木曜日
 
小学校の遠足にもう一度行ってみる
本当にこんな屋久島みたいなとこに行ったのか

小学校の頃に行った遠足を覚えているだろうか。

僕はもうほとんど覚えていないけど、記憶の隅にいくつか断片的な場面が残っている。

大人になって同じコースを辿ってみたら、その記憶が蘇ったりするだろうか。あと、実際の景色はどう見えるのか、体力的にはどうか、いろいろ気になった。

というわけで、30年ぶりに再訪してみた。

萩原 雅紀



遠足の記憶

僕は東京の練馬区というところで育った。近くを西武池袋線が走っていて、遠足と言えば西武線に乗って郊外に行くことが多かった。


ひさびさに西武線に乗った

小学校1年生のときの遠足は、西武球場の近くにあった「ユネスコ村」というテーマパークに行った。...らしいけど、まったく覚えていない。オランダっぽい風車が目印だったユネスコ村自体も、バブル崩壊の頃になくなってしまった。

いちばん古い遠足の記憶はたぶん小学校2年生のときのもので「天覧山と名栗川」というコース名と、あとは行った先でのいくつかの場面を覚えている。


飯能駅に来たのも20年以上ぶり

ひとつは、列になって森の中の緩い坂を登っているとき、左側の沢に砂防ダムがあって、列から抜けて見入るくらい気になった。土と木と草と水、という自然素材の光景の中にドーンと現れるコンクリートに心ときめいたのを、今でも割とハッキリ覚えている。思えばこの頃からダム好きという今の下地はあったのだ。


遠足のしおりも作った
確かこんな感じだったよね

それから、山を下りてちょっとした草原みたいなところに出たとき、同級生のK君が「腹痛するから用を足してくる」みたいなことを小2なりの言葉で言い、木の陰に隠れて数分後に何事もなかったように戻ってきたこと。

野外で腹の方の用を足すという衝撃と、彼のあまりの自然な振る舞いに「腹具合はどうだったのか」、「後処理はどうしたのか」というようなことも(小2なりの言葉で)訊けず、生まれて初めて人間としてのポテンシャルの違いを見せつけられた体験だったことを覚えている。

K君はその後転校してしまったけど、元気にしているだろうか。


当日の朝に弁当も作った
子供の頃のお弁当を再現して

もうひとつ、ゆるやかにカーブしている河原で遊んだのをぼんやり覚えている。砂利の河原は広くて、向こう岸は切り立った崖で、深いところは子供の腰くらいまでの水深があった。川の中に「蛭という皮膚に張りついて血を吸う恐ろしい虫がいるらしい」ことに怯えながら、でも途中から忘れて無邪気に遊んでいた気がする。

これが名栗川だろうか。

それぞれの場面は横に繋がっていないけど、実際に大人になって足を運んだら、当時の記憶を辿ることができるだろうか。それとも、もう景色も変わってしまって、手がかりもつかめないまま彼方に葬られるのだろうか。

というわけで、およそ30年ぶりに、天覧山と名栗川に行ってみた。


天覧山へ

天覧山は埼玉県飯能市にある山で、山頂からの景色を明治天皇が褒めたことからこの名がついた、らしい。

山とは言っても標高197m、飯能のあたりだって既に海抜は数十メートルあるだろうから、実際の高低差は100m程度の小山だ。


名峰 天覧山

西武線の飯能駅から20分ほど歩くと登山口に着く。飯能駅が昔とは大きく様変わりしていて、とりあえずここまでの間に記憶に引っかかるようなものはなかった。


まさか飯能駅がビルになってたなんて
渋い商店街だけどまったく記憶になし

やたらざっくりした表記の看板
登山口についた

ここからは急な坂道が上に伸びている。日頃の運動不足もたたって、あっという間に息が上がった。本当に小学校低学年でこんなところを登ったのだろうか。


いきなり重々しい足取り

まだ登りはじめたばかりだけど、あずまやを見つけていきなり休憩。買っておいたおやつのチョコレートでエネルギー補給だ。


おやつをいつ食べてもいいのが大人の遠足

おやつも本気でチョイス

ところで、今回の遠足では当時と同じように金額を決めておやつを準備していた。上限は300円。昔ならこまごましたお菓子をたくさん買ってしまうところだが、大人なりの目線で、大人の遠足にふさわしいおやつをチョイスしようと企んだ。スーパーのお菓子売り場で数十分熟考した。


子供ならこんなお菓子を細々買ってしまうところ
このあたりで簡単に済ませる考えも頭をよぎったが

そこで選んだのが以下のお菓子達である。


大人遠足渾身の勝負おやつ

メインはチョコレートでカロリー補給しようとキットカット。大きな袋詰めだとそれだけで270円してしまうけど、約200円でミニの袋詰めが売られていた。

甘いものとくれば反対に塩気もほしい。汗もかくし塩分は必要だ。そこで45円のサッポロポテトのミニ袋を確保。

また、疲れにはクエン酸、つまり酸っぱいものが効果的だ。そこで懐かしいミニコーラ(29円)である。クエン酸入ってない気もするけど。

糖分と塩分とクエン酸。これでチョイスとしては完璧のはずだ。予算が少し余ったので甘いか(21円)も追加した。キムチ味なので、万が一遭難して寒風の中ビバークを余儀なくされても、身体を温めることができるかも知れない。


予算を7円も余らせてしまうところも大人

それにしても300円というのは1回のおやつとして考えるとかなりの金額だ。ぜったい食べきれないと思う。遠足という大義名分でお菓子を大量に買える。きっと、だから遠足が待ち遠しかったんだ。

キットカットで文字通りハブアブレイクし、山頂目指してふたたび登りはじめた。


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