もうひとつ、ゆるやかにカーブしている河原で遊んだのをぼんやり覚えている。砂利の河原は広くて、向こう岸は切り立った崖で、深いところは子供の腰くらいまでの水深があった。川の中に「蛭という皮膚に張りついて血を吸う恐ろしい虫がいるらしい」ことに怯えながら、でも途中から忘れて無邪気に遊んでいた気がする。
これが名栗川だろうか。
それぞれの場面は横に繋がっていないけど、実際に大人になって足を運んだら、当時の記憶を辿ることができるだろうか。それとも、もう景色も変わってしまって、手がかりもつかめないまま彼方に葬られるのだろうか。
というわけで、およそ30年ぶりに、天覧山と名栗川に行ってみた。
天覧山へ
天覧山は埼玉県飯能市にある山で、山頂からの景色を明治天皇が褒めたことからこの名がついた、らしい。
山とは言っても標高197m、飯能のあたりだって既に海抜は数十メートルあるだろうから、実際の高低差は100m程度の小山だ。 |