特集 2013年6月6日

滝まで案内してくれる犬がいる

滝はこっちだワン!
滝はこっちだワン!
美しい大自然に囲まれた渓谷に、滝まで道案内してくれる犬がいるとTVの再放送で見た。まさかこんな夢の様な光景があるなんてっ!

ほんとにほんと? 悪いディレクターが餌使ったとか、撮影用の犬とか、そういうのじゃない?

本当に案内してくれる犬がいるなら見てみたい! この目ではるばる確かめに行ってきた。
東京葛飾生まれ。江戸っ子ぽいとよく言われますが、新潟と茨城のハーフです。
好物は酸っぱいもの全般とイクラ。ペットは犬2匹と睡魔。土日で40時間寝てしまったりするので日々の目標は「あまり寝過ぎない」(動画インタビュー)

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まずはダイジェスト

いきなりですが感動のダイジェスト版をご覧ください。
犬「ではそろそろ行きますよ、しっかりついてきてください」
犬「ではそろそろ行きますよ、しっかりついてきてください」
犬「はいここ気をつけて」
犬「はいここ気をつけて」
犬「はいこっちー」
犬「はいこっちー」
犬「もう少しです、頑張って!」
犬「もう少しです、頑張って!」
犬「ほら見て、あそこ」
犬「ほら見て、あそこ」
私「うわあー! こんなキレイな滝見たこと無いー!!」
私「うわあー! こんなキレイな滝見たこと無いー!!」
遠い目をして仙人のように佇む犬。ここは桃源郷か夢の中?!
遠い目をして仙人のように佇む犬。ここは桃源郷か夢の中?!
…なーんて都合のいい展開になる訳もなく。今度は順を追って書いてきます。

ここは長野県、南木曽(なぎそ)

滝までガイドしてくれるというので有名になったその犬、マリちゃんは長野県南木曽町の大自然の中にいる。

犬好きの私は東京から新幹線と電車を乗り継ぎ、最寄りである十二兼という駅から約1時間半歩いてマリちゃんを訪ねた(普通の体力だと1時間くらい)。
最寄駅を降りると目の前にある川。キレイ過ぎて驚いた
最寄駅を降りると目の前にある川。キレイ過ぎて驚いた
なだらかな登りをひたすら歩く。駅から店が一軒も無い。
なだらかな登りをひたすら歩く。駅から店が一軒も無い。
小さい神社にいたトカゲに悲鳴をあげる東京っこ
小さい神社にいたトカゲに悲鳴をあげる東京っこ
ポツンポツンと宿や温泉、そして今回の最終目的地である滝なんかの案内板がある。他の名所としては上の写真にある水路橋や、古い小さな神社など。しかし何と言っても大自然こそが見所の場所だった。
空気も水もキレイすぎるよ
空気も水もキレイすぎるよ
車はたまに通るけれど人とはほとんどすれ違わない。店も駅から1つも無く、自販機を見つける毎にリアルゴールドを買って一気飲みした。何かあったときのための栄養補給だ。
人は滅多に会わないのに熊は出るらしい。それにしても可愛い絵だなこれ
人は滅多に会わないのに熊は出るらしい。それにしても可愛い絵だなこれ
なんでも、長野県下の町では最も人口が少ないそうだ。 それでも所々に民家はあって、畑仕事や庭の手入れをしている人を見つけては道を確認しながら進んだ。
と言っても間違うほど道は無いけど。
と言っても間違うほど道は無いけど。
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貞子が出てきそうな井戸があるぞ! と恐る恐る中を覗いたら単なる土管だった。無駄なドキドキを返してほしい
途中、貞子が出てきそうな井戸があるぞと恐る恐る中を覗いたら単なる土管だった。無駄なドキドキを返してほしい
道が合ってるか尋ねる。この犬はマリちゃんではなかった
道が合ってるか尋ねる。この犬はマリちゃんではなかった
1時間ちょっと歩いた辺りで犬と目が合い近寄ると、家の方がマリちゃんはもうちょっと先にいるよと教えてくれた。

TVで見たあのマリちゃんにいよいよ会える…! うちの実家の犬達が知ったら嫉妬しそうなくらいに、マリちゃんに早く会いたい気持ちが膨らむ。なんせ家を出てからもう6時間以上経ってるのだ。

忠犬マリちゃん

マリちゃんの事だ! 本業はガイドではなく猿や鳥を追い払う仕事だった
マリちゃんの事だ! 滝へのガイドは趣味だろうか
マリちゃんの事が書かれている立て札を見つけた。マリちゃんは、本来は猿や鳥を追い払う仕事を持った犬だったようだ。ということは滝へのガイドは趣味?

ちなみに立て札には「無視するように」とも書かれていたけど、今回は取材許可を得ているので大丈夫。ガン見してOKだ。

ただ、当のマリちゃんがどこにいるのか…すぐには見当たらなかった。
飼い主さんの管理している古民家。この辺りにいると聞いていたのだが…(飼い主さんは外出中。勝手に犬に会っていい事になっている)
飼い主さんの管理している古民家。この辺りにいると聞いていたのだが…(飼い主さんは外出中。勝手に犬に会っていい事になっている)
あ!
あ!
ああー!
ああー!
犬!
犬!
君がマリちゃん!!
君がマリちゃん!!
ようやく会えたマリちゃん(8歳)。すごく大人しい
ようやく会えたマリちゃん(8歳)。すごく大人しい
マリちゃんは、聞いていた場所よりも少し離れた所で昼寝していた。見ての通り優しい顔でとても人懐こい。ずっと会いたかった上にお触りサービス満点なので存分に撫でる。可愛いよー

いざ滝へ!

このとき紐に繋がられていたのだけれど、飼い主さんには特別に放してもいいという許可も頂いている。よし、張り切って滝に行こう!
さあ私を滝に連れてっておくれ(※しつこいですが、飼い主さんに許可を頂いています)
マリちゃんの後ろについて行く
東京じゃ犬を放せる場所は少ないのでとても嬉しい。しかもこれから滝まで案内してくれるというのだ、楽しみすぎる!

と一人興奮しているとマリちゃんはスタスタと、私の事などお構いなしで行ってしまうじゃないですか。
小走りで追いかける
小走りで追いかける
しかも違う道に行きたそうにしてる…
しかも違う道に行きたそうにしてる…
飼い主さんを探したかったのか、先ほど私が寄った古民家の辺りをうろついた後、滝とは違う方向に行きかけた。

その岐路には看板があったため、私は滝がある方向が分かり思わず立ち止まってマリちゃんに訴えた。出来れば滝に連れてってくださいと。
そしてまた離される。待ってー
そしてまた離される。待ってー
私の気持ちが伝わったか、マリちゃんは滝へ向かってくれた。かなりのスピードで向かっていって、視界から消えた。
追いついた時には滝への入り口で観光客にサービス中
追いついた時には滝への入り口で観光客にサービス中
想像していたのとは違う展開だ。こんなに走るんだったの? しかし今の所ちゃんと滝に向かっているのは事実。

ようやく彼女に追いついた時には、マリちゃんファンの観光客にサービス中だった。

実は飼い主さんには「他に観光客がいたりすると、滝に行ってくれるか分からない」と電話で聞いていた。大丈夫かな。
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案内される、というか犬を追いかけてる?

ひとしきりファンサービスした後、ついに移動! 待って~
ひとしきりファンサービスした後、ついに移動! 待って~
また離されない様に急ぎ追いかける。ああ、お尻が可愛い。

でもそっちは多分滝じゃなくて…
川ですね。水飲みたかったんだね!
川ですね。水飲みたかったんだね!
滝の前に、まず川にやってきた。ここもとてもキレイな水で美味しそうである。

何人かが川で泳いでいて気持ち良さそうだった。
まず川を見せてくれたんだね
まず川を見せてくれたんだね
またしても誘う
またしても誘う
来てくれた!
来てくれた!
と思ったら戻る
と思ったら戻る
またサービスをし、
またサービスをし、
また山の中へ…今度こそ連れてって!(走りながら撮ってます)
また山の中へ…今度こそ連れてって!(走りながら撮ってます)
犬は足が速い、改めてそう思った。全速力では無いものの、あちこちと素早く移動し翻弄されっぱなしである。

東京では紐で繋がられた犬ばかりしか見ていないからこんなに自由に動き周るマリちゃんが羨ましい。

私は背中のでかいリュックを弾ませマリちゃんの名前を呼びながら追いかけた。
つり橋を渡るところまできた。しかしいつもの道は今封鎖されているようだ。右に行くのが正解。
つり橋を渡るところまできた。しかしいつもの道は今封鎖されているようだ。右に行くのが正解。
町の観光課に聞いていたのだが落石のためいつものルートは現在封鎖中である。しかしマリちゃんはそんな事情はお構い無しで柵を抜けて行ってしまった。
人間は通れません
人間は通れません
なんで来ないのか不思議そうな顔。戻ってきてくれた
なんで来ないのか不思議そうな顔。戻ってきてくれた
そしてまた振り出しに戻る
そしてまた振り出しに戻る
そのまま一匹で滝に行ってしまうという事は無く、待ってくれたし戻ってきてくれた。しかし戻るのはスタート地点であった。
もう滝に行く気は無くなってしまっただろうか…みんなが協力して滝に行こうと声をかけてくれた
もう滝に行く気は無くなってしまっただろうか…みんなが協力して滝に行こうと声をかけてくれた
「まだ行きたいの? さっきついて来なかったでしょ。」と言いたげ。
「まだ行きたいの? さっきついて来なかったでしょ。」と言いたげ。
そのあとまた橋まで行ってくれたが途中でUターンされてしまい、一人綱を握りしめる…マリちゃんどっか行っちゃったんだもの
そのあとまた橋まで行ってくれたが途中でUターンされてしまい、一人綱を握りしめる…マリちゃんどっか行っちゃったんだもの
ちなみにこの橋の名前は「恋路のつり橋」。そんなロマンチックな橋の上を、さっきから私は一人で行ったり来たりしている。二重の意味で悔しい。二重の意味でそろそろ渡りたいのだ。
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古民家に戻っていたマリちゃん
古民家に戻っていたマリちゃん
滝の入り口にもおらず、古民家に戻っていたマリちゃん。今日ここに泊まるというドイツ出身の方に頭を撫でられていた。一緒に縁側でしばし休ませてもらう事に。ふー、疲れた。。

しかしもう時間も時間だ。こりゃもう諦めて一人で滝に行くしかないか?ひとまず飼い主さんの帰りを待つ事にした。

飼い主の飯嶋さんが帰ってきた

飯嶋さん「今日はもうダメだなあ」 …ガーン!
飯嶋さん「今日はもうダメだなあ」 …ガーン!
マリちゃんは疲れてしまったか、もう今日は滝に行きそうにないねとの事だった。ショック! しかし飯嶋さんはせっかく東京から来たのだから明日の朝に一緒に行く? と誘ってくれた。なんて親切なんだ。もちろん喜んで!

そして予想外の展開に

では宿を探そう、としたところ、気を遣っていただきその古民家(宿として使っている)に急遽泊まらせてもらえる事になった。今日はたまたま飯嶋さんの知人達が集ったそうで、年齢も近いということで皆さん快くパーティに入れてくれたのだ。

感謝感激である。
しかも温泉まで連れて行ってもらう事に。途中、妻籠宿という昔そのままの宿場町を通ったり木製の珍しい橋を見たりとプチ観光
しかも温泉まで連れて行ってもらう事に。途中、妻籠宿という昔そのままの宿場町を通ったり木製の珍しい橋を見たりとプチ観光
帰ったあとは自分達で食事を用意。プラス、近所の方が地元ならではの料理を差し入れしてくれた。飯嶋さんの天ぷらも最高!
帰ったあとは自分達で食事を用意。プラス、近所の方が地元ならではの料理を差し入れしてくれた。飯嶋さんの天ぷらも最高!

お話を聞く

地産ワインをいただきながら、飯嶋さんに話を聞いた。

私「TVで見て、本当に案内してくれる犬がいるのか確かめに来たんです。」
飯嶋さん「ほんとに案内しますよ。今日行けなかったっていう通行止めの所も、ちゃんと迂回してくれたって言ってる人もいましたし。でも観光客が他にいる時とか連れてってくれない事もあるだろうね。」

私「そうなんですね、じゃあ行く時もあるし、行かない時もあるって事か。そもそもなんで滝まで案内するようになったんでしょう?」

飯嶋さん「たぶん、猿追いしてたら猿が来なくなって楽しみがなくなっちゃったんじゃないかなと。その代わりに今は滝に来た人を案内する、というか一緒に散歩するのが楽しいんだろうね」

私「なるほど~、とにかくコミュニケーションが好きなんですね。 TVではうまく撮影してましたが、飯嶋さんが一緒にいたとか?」

飯嶋さん「いや、僕がいると(離れなくて)逆に行かなくなっちゃうから行ってない。やっぱりTVも一日がかりだったみたい」

私「TVは数分でまとめないといけないし大変そうですよね。餌とか使ったのかとも思っちゃいました」

飯嶋さん「餌とか食べ物は絶対ダメ。観光客の人であげようとする人いるけど、それだけはしてほしくないな」

そうですよね、もしマリちゃんが観光客についていこうとしたり事故にあったら大変だもんな。
こちらに来て12年の飯嶋さん
こちらに来て12年の飯嶋さん
東京出身の飯嶋さんは、退職後にこの南木曽に住み始めたそうだ。いつか犬を飼いたいと思っていた所へ、知人の犬の赤ちゃんが生まれたと聞きマリちゃんを引き取った。

「だけど最初は犬の飼い方なんてどうしたらいいか分からなくて、当時は厳しくしてたね。今思えば可哀想だったな…」 犬を甘やかしがちな私はその言葉だけで胸がキュンとなった。

そんなある時、町が猿追いの特訓を受ける犬を募集。3ヶ月預けた所、マリちゃんは立派になって帰ってきたそうだ。偉い!
早朝の光景
早朝の光景
飯嶋さんとは他にも夜中までたくさん話をした(ハネムーンの話とかも聞いた)。

色々大変な事もあったようだけど、マリちゃんとの今のこの生活は三重丸だ、と言っていたのが印象的で羨ましかった。
さて、改めて滝に行きましょう
さて、改めて滝に行きましょう
やっぱり飯嶋さんといるとベッタリ
やっぱり飯嶋さんといるとベッタリ
やっと橋を渡れました!
やっと橋を渡れました!
今日は走らなくて良いのだ
今日は走らなくて良いのだ
もう飯嶋さんについていく感じだもんね
もう飯嶋さんについていく感じだもんね
そしてこの美しい『牛ヶ滝』を無事見る事が出来たのでした。色にも音にも空気にも癒される場所だった。
そしてこの美しい『牛ヶ滝』を無事見る事が出来たのでした。色にも音にも空気にも癒される場所だった。
実はその直前で止まっていたマリちゃん。いつもそうらしい。ちょっと怖いのかも
実はその直前で止まっていたマリちゃん。いつもそうらしい。ちょっと怖いのかも
そして仙人のような顔
そして仙人のような顔
こんな感じで、ガイド犬マリちゃんとの滝までの旅は終了。東京を出発してちょうど24時間後だ。

現実は滝まですんなり行けなかった(私の場合)。だけどマリちゃんのお陰で、大自然を堪能し、初めての方達となぜか露天風呂に入ったり美味しいお酒を酌み交わすという思いがけない体験ができた。
帰り道。蛇を見つけるが特に何もしないマリちゃん
帰り道。蛇を見つけるが特に何もしないマリちゃん
結局、私にとっては夢のような場所だったのだ。また絶対来よう。

ああ、現実(東京)に戻りたくないなあ~
マリちゃんありがとね!
マリちゃんありがとね!

取材協力

南木曽町観光協会
http://www.town.nagiso.nagano.jp/kankou/

きこりの家(飯嶋さんの管理している古民家)
http://www.kisoji.com/kisoji/spa/nagiso/kikorinoie.html

マリちゃん情報が欲しい方は観光課に問い合わせてみて下さい。それと、行くなら車かバイクがオススメ!
家の中に入るのを我慢するマリちゃん。偉い!
家の中に入るのを我慢するマリちゃん。偉い!
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