不思議なオートパーラー、ジョイフル24
群馬へ北上する私たち。
自然がどんどん多くなっていく。
「次に行くオートパーラーですけど、道の両側に、お店があるらしいですよ…」と、友人Yくんがスマホを見ながら言う。
結構細い道だけど、この先に、両側に? オートパーラーが??
と、ナゾに思いながら車を走らせると、衝撃の風景がそこにあった。
………え、これ? ここがオートパーラー?
ほんとうに、向かい合って、店がもう一店舗ある。でも誰もいない……。
「ヤバイ、なにここ!」とYくん。
「ちょっとしたコンビニくらいの大きさ…×2、ですね」とSくん。
「夢っぽい風景だけど、これ夢じゃないよね?」とTさん。
……夢っぽいけど、夢じゃないよ、2013年初夏の現実だよ。
というか、片方の店には、ゲーム機がほとんどない。
もう片方の店は、ゲーム筐体はあるけど、電源が入ってない。動かしてないだけなのか、壊れているのか…。
電気ついてるのもあるけど……。
「ねえねえ大塚さん!」と、嬉しそうにTさんがゲームの一台を指差した。
「ねえ、このマージャンゲーム! ちょっとセクシーな画像が見れるやつだと思うんだけど、四方を段ボールでかこってあるよ、隠れてプレイ出来るようになってるよ!」
……え、ここで、何から隠れるというのか!?
っていうか、今の時代、やる気を出せば、ネットでいくらでも画像が見れるだろうに、ここのマージャンゲームでセクシーな画像を見たい人って、かなり珍しいと思うよ!?
そしてここにも、うどんがあった。
カップヌードルの古い筐体と並んでいた。
なつかし自販機のほとんどは、中身がオリジナルなのだが、ここは館林のうどん、というのが売りらしい。 (館林はうどんの産地、日清製粉も館林発祥だそう。)
ごまの瓶がぶらさげてあったので、何だろ? と思ってよく見たら、中に七味が入ってた。なんでだよ! ……七味の瓶に入れようよ~!
「大塚さん食べる?」とTさん。
うーん、食べておかないと後悔するかもしれない…と、コインを入れる。
しかしこう、アレだな……。
飲食用テーブルがないので、ゲーム筐体の上で食べるしかないのだが、埃っぽいので、神経質な人はダメかも…。なんだろう、この、ちょっとシュールな絵面。
うどんは細めで、なかなかに美味しかったです。さすが館林のうどん。
「しかしここ、営業ってどうやって成り立ってるんすかね…?」とYくん。
電気代だけでも、結構するはずだ…。
ずっとむかし、ゲームセンターでしか高度なゲームが出来なかったころ、
栄えた時もあったんだろう。
近所のコドモが大集合した時期もあったんだろう。
しかし、その面影がなかった。
ただ、なつかし自販機だけが、現行のピカピカのジュースの自販機と並んで、
稼働しているのだった。
私たちみたいな、物好きな人たちが、次々と現れて、うどんを買っていくのかな…。
と思いながら、ふと自販機を見つめると「売り切れ」のランプが光ってた。
これ、ラストワンだったのか! やっぱり人気なのね!?
当たりつき自販機?
「次はオレンジハット沖之郷店に行くよ。オレンジハットはチェーンらしくて、群馬に幾つかあるみたいなんだけど…」とTさん。
オレンジハットには、お客さんが、結構来ていた。お店もキレイだし、なんだか安心した。
あ、当たり…?
っていうか、当たりって何?
「当たりって何だろう?」
「いや、何かチーズが2枚入ってるとか?」
「パイナップルがはさまってるとか」
「もう1個出て来るとか?」
「景品が入ってるとか?」
「スペシャル待ち受け画面のQRコードが入ってるとか?」
「自販機グルメのトレカがランダム封入?」
「パンとか麺が青い色に練り込まれてるとか」
「ん~??」
わからない。
とりあえず、買ってみることにしたが、
ん、当たりってもしかして…。
……辛いのが当たりなのかな?(ちなみにこれは、自分から選んで買った激辛です。)
これが辛い! かなり辛い!
埼玉のオートパーラーで食べたハンバーガーと、味比べしたかったのだけれど、
味が冷静に味わえない!! あはは!! からっ!!
そして、ついに初めて出会えましたよ、ラーメン自販機。
ラーメン筐体。
300円でございます。
自販機で買い物してると、張り紙と会話することが多いなあ、と思った。
そうですか、うどん硬かったんですか。改良されたんですね。
中の人の苦労がしのばれる。
ラーメンを食べてみる。ラーメン、このミニサイズで食べられるのはたいへんに嬉しい(CDくらいの大きさです)。ナルトもうれしい。
……しかし、食べてみて思った。
自販機の構造とか、麺の太さの問題かもしれないけれど、うどんのほうが、クオリティが高いのである。
ラーメンはあまりに素朴な味わいなので、これだったらインスタントラーメンの自販機で買っちゃうかなあ~、という感じはした。
ラーメンという異常な食べ物のここ20-30年の進化に、なつかし自販機は、追いつけないのかもしれない…。
だから、うどん自販機は生き残ってるけど、ラーメン自販機は数が少ないのかな…。
うどんにもナルトが! 麺はシコシコしていました。
ハムトーストがあった。っていうか、PKGMって何?
贅沢にも、飽きて来る
次は、「ドライブインセゾン」へ。
ネオンがかっちょいい! セゾンって文字がかっこいい!
ハンバーガーがありました。
このオレンジのデザインの箱は初めて見た! でも売り切れじゃん!
チーズバーガーを食べる。う~ん、埼玉と同じ味がするような気が…。
あっ、ピザトーストがある! ピザいいねえ。でもおなかいっぱいだわ、うふふ。
うどんは食べておきましょう。
……おそろしいことに。
朝、埼玉で、なつかし自販機と出会った時は、あんなにピュアに感動してた一行が、
完全に自販機に慣れてしまい、
「めずらしくもなんともなーい!」「うどんやハンバーガーの自販機って別にレアじゃないでしょ?」という感じに、麻痺してしまっていた。
疲れのピークに達していた。
ちょこちょこ自販機ゴハンを食べているせいで、食事休憩も出来なかった。
「はい、もう2件行っておこう、次、次!」
我々はストイックに、車を走らせた。
ふたたびオレンジハット
次に行ったのは、オレンジハット太田藪塚店。
「オレンジハットということは…前のオレンジハットと、中身を作ってる人も同じ、ってことだね」とTさん。 ということは…。
ハンバーガー自販機、違う筐体だけど、あるぞ!
味わい深いディスプレイ。そして辛いハンバーガー!
っていうか、激辛バーガーの写真の後ろにうつりこんでいるのは、デスソースじゃないですか! デスソースってあの超辛い、タバスコよりも辛いソースでしょ? どうりで鬼辛いと思った!!
うどん、ラーメン、ハンバーガーと自販機が並んでいるのに、見慣れてしまって、もうレア感を感じない。
ゲームセンターなのに、なぜかマンガが置いてあった。『NY小町』とか、ここで読む人がいるのかな。
大辛バーガーを食べてみる。
……激辛よりは辛くないですよ。
こちらの店も、ネオンがイカス。
ん、エヴァンゲリオン風のチラシ。
PKGMって、ピリカラガーリックマヨネーズの略だったのか…!!
どうも、この店も、中の人はオレンジハットの人と、同じみたいだった。
ぱっと張り紙を見てわかった。
ラーメン、うどん…。
アイスクリームの自販機も!
東京で見たら「珍しい~」って、テンション上がるんだろうな…。
細やか過ぎる説明。
売り切れていて食べられなかった、ベーコンポテチバーガー。ポテチ入ってるのかな?
東京に戻る道中。スマホを見て、Yくんが言った。
「群馬って、なつかし自販機の聖地なんですって…。」
へええ。
「たくさん残ってる場所なので、マニアははしごするみたいですよ。」
確かに。こんなにたくさんあると、「日本中に残ってるんじゃないか?」と思ってしまう。
でも多分、違うのだろう。
調べたところ、オレンジハットの中の人は、聖地・群馬に、自販機マニアのための、自販機の店を、開店順日中らしい。
とても応援したい。
帰路、深夜、埼玉「鉄剣タロー」の前を通ったので、トイレを借りに寄ったら、
ハンバーガー自販機目当てで来てるグループが、2組いた。
なつかし自販機、ひそかに大人気である。
渋谷のヒカリエとかの中に、期間限定ショップとしてオートパーラーが出現したら、話題になるだろうなあと思うのは、私だけだろうか…?
だって、買ってみたくない? 買ってみたいでしょ? ねえ!?