特集 2013年5月14日

ハブを食べる

おっ、ハブじゃん。いただきまーす!
おっ、ハブじゃん。いただきまーす!
沖縄でハブを見つけたので拾って食べてみたらすごくおいしかった。
そういうおはなし。

絶対に真似しないでください。

※編集部注:専門的な知識と経験のあるライターが取材しています!
1985年生まれ。生物を五感で楽しむことが生きがい。好きな芸能人は城島茂。(動画インタビュー)

前の記事:公園とかグラウンドに落ちてるワカメみたいなアレを食べる

> 個人サイト 平坂寛のフィールドノート

沖縄でキャンプをするなら食料調達から!

僕は珍しい生き物を探すため、毎年のように沖縄へ行っている。特に沖縄本島北部は自然が豊かなので、友人たちとそこでキャンプをすることもしばしばだ。
キャンプ地は山の中。
キャンプ地は山の中。
キャンプを張るのは山中なので、道中は林道や川沿いが続く。となると必然、色々な生き物に出会うわけだが、中には食べられるものもいる。目の前に晩餐の食材が現れたとなれば当然ピックアップしていくのだが、これがまた楽しい。
スッポンもいるし…
スッポンもいるし…
地元で「タナガー」と呼ばれるテナガエビは塩焼きかから揚げがおいしい。
地元で「タナガー」と呼ばれるテナガエビは塩焼きかから揚げがおいしい。
潮の影響がある場所にはノコギリガザミという巨大なカニがいる。シンプルに塩茹でで。
潮の影響がある場所にはノコギリガザミという巨大なカニがいる。シンプルに塩茹でで。
当然、米や野菜をはじめスーパーで買った食材が食事のメインではあるのだが、そこに自分たちで採った獲物が加わるとなお盛り上がるのだ。
美味そう…。だけどさすがにこれは獲っちゃダメだな。
美味そう…。だけどさすがにこれは獲っちゃダメだな。

ヘビもたくさんいる!

林道では爬虫類から昆虫まで。食材以外にも色々な生き物を見つけることができる。
特に多く目につくのがヘビだ。沖縄本島北部の山間では本土の常識では考えられないほどの頻度で大小のヘビと遭遇できる。
沖縄で一番よく見るヘビ、アカマタ。毒は無いけどものすごくクサい。
沖縄で一番よく見るヘビ、アカマタ。毒は無いけどものすごくクサい。
クサいアカマタも子ヘビのうちはこんなにかわいい。クサいけど。
クサいアカマタも子ヘビのうちはこんなにかわいい。クサいけど。
これは緑色がきれいなリュウキュウアオヘビ。毒無し。
これは緑色がきれいなリュウキュウアオヘビ。毒無し。
ヘビは夜の路上にたたずんでいることが多い。放置していても車に轢かれてしまうので、見つけ次第とりあえず捕獲し、観察、撮影した後に林の中に逃がしてやる。
なお、晴天が続くとヘビはあまり路上に出てこない。ヘビに会いたければ雨上がりの晩が良いようだ。

「ハブを食べよう!」(by女子)

沖縄のヘビと言えば代表格はやはりかの有名な毒ヘビ・ハブだ。
ある晩、キャンプ地への道中で大きなハブをやはり路上で見つけた。
とぐろを巻いているヘビは臨戦態勢なので近付いたり刺激してはいけない。
とぐろを巻いているヘビは臨戦態勢なので近付いたり刺激してはいけない。
三角形の頭とそれを覆う細かいウロコ、そして派手な模様がいかにも毒ヘビ。
三角形の頭とそれを覆う細かいウロコ、そして派手な模様がいかにも毒ヘビ。
反射的に、そして半ば義務のように車から降りてハブを捕獲する。
写真を撮影していると背後から友人Y(女性)の声が。
「ねえ、これ食べよー?」
…は?
首をはねてなお身の丈ほどもある大物。
首をはねてなお身の丈ほどもある大物(本人の希望により目線を入れました!)
何言ってんだコイツ。どうかしているんじゃないのか。いや、確実にどうかしているのだろう。
でもまあヘビはおいしいと聞くし、試してみたい気持ちはわからないでもないので、ハブには申し訳ないがその場で頭を落としてビニール袋へと血を抜く。
毒牙と毒を貯め込んでいる腺は落とした頭部にあるので、埋葬と安全管理を兼ねて地中深くに埋めて処理した。

ハブでバーベキュー

こうなってしまえばさすがのハブももはや完全に食材である。ジップロックに入れてクーラーボックスに放り込む。さあ、あとは調理するのみだ。
内臓を取り除き、皮を剥く。皮は靴下を脱ぐように綺麗に剥ける。
内臓を取り除き、皮を剥く。皮は靴下を脱ぐように綺麗に剥ける。
ヘビ皮細工にできそう。
ヘビ皮細工にできそう。
とれた身はしばらく清流にさらしてみた。なんとなくにおいが落ちる気がしたから。
とれた身はしばらく清流にさらしてみた。なんとなくにおいが落ちる気がしたから。
適当な大きさに刻んで、塩こしょうで味をつける。あとは網で焼けば完成!
適当な大きさに刻んで、塩こしょうで味をつける。あとは網で焼けば完成!
誰が見ても一目で「ハブ」と分かる仕上がり。
誰が見ても一目で「ハブ」と分かる仕上がり。
味は意外にも(と言うとハブに失礼だが)とてもおいしかった。
実は食べている場面の写真が一枚も無いのだが、これは予想だにしなかったおいしさに、その場にいた全員が撮影を忘れて奪い合うように食べ尽くしてしまったためなのだ。

というわけで、お味の方は文章で説明させていただく。
味は脂がたっぷりと乗っていて濃厚であった。調味を塩とコショウのみにしておいたのは正解だったようだ。他の食べ物に例えるなら豚のスペアリブの塩焼きに近い。「ヘビは鶏肉や白身魚のようにさっぱりとした味わい」という噂を聞いていたので、このこってり具合は予想外だった。でもうまいのでよし。
また食べたいと思えるような味だった。

ちなみに肉付きが良いのは背中で、そこ以外はほぼ骨と皮だった。

ヒメハブもおいしい

ハブ肉のおいしさに文字通り味をしめ、その後も何度かハブを捕まえては捌いて食べてきた。
ところで、沖縄には先程紹介したハブ(いわゆるホンハブ)の他に、ヒメハブという種類のハブがいる。
これがヒメハブ。模様や体形が本土のマムシに似ている。
これがヒメハブ。模様や体形が本土のマムシに似ている。
ヒメハブは水辺に棲み、主食はカエル。
ヒメハブは水辺に棲み、主食はカエル。
一方、林に棲むハブは主に小型の哺乳類を食べる。
一方、林に棲むハブは主に小型の哺乳類を食べる。
家畜も与える餌によって肉の味が大きく変わるというし、ヘビでも同じことが言えるのかもしれない。
慣れ親しんだ生物でも、口に運んでみると色々な発見があるものだなあ。

危険だから真似しないように!!

確かにハブはおいしかった。だがしかし、ハブを食べるにはまず野生のハブを捕まえなければならない。それは言うまでもなくとても危険な行為である。そんなリスクを冒してまで食べるようなものかと問われれば疑問である。お店で豚のスペアリブを買ってきた方が早いしお腹も膨れる。この記事を読んでハブを食べてみたくなったそこのキミ!真似しようなんて思わず、お肉屋さんへGOだ!
本島南部の琉球大学構内にはハブ注意の看板が。緊張感のあるキャンパスライフを送れることだろう。
本島南部の琉球大学構内にはハブ注意の看板が。緊張感のあるキャンパスライフを送れることだろう。
▽デイリーポータルZトップへ

banner.jpg

 

デイリーポータルZのTwitterをフォローすると、あなたのタイムラインに「役には立たないけどなんかいい情報」がとどきます!

→→→  ←←←
ひと段落(広告)

 

デイリーポータルZは、Amazonアソシエイト・プログラムに参加しています。

デイリーポータルZを

 

バックナンバー

バックナンバー

▲デイリーポータルZトップへ バックナンバーいちらんへ