藤沢市で見かけた「湘南クッキー」
湘南地域というと、海やビーチをイメージする方が多いだろう。まぁ、実際その通りなワケで、神奈川県の市町村のうち相模湾に面した部分、藤沢市、茅ケ崎市、平塚市、大磯町などが一般的に「湘南」と言われるエリアである。
そのうち江の島や片瀬海岸を擁する藤沢市はどこからどう見ても「湘南」な地域であり、もちろん「湘南クッキー」の自販機も随所に置かれている。
小田急江ノ島線の長後駅
その東口バスターミナルに「湘南クッキー」の自販機があった
不思議なデザインのパッケージが目を引く
興味半分に覗いてみると、「湘南」っぽい名称のクッキーがずらずらと並んでいた。パッケージのデザインは手作り感に溢れ、その印刷はレーザープリンタのようである。
決して洗練された印象ではなく、ややB級感が漂う感じではあるものの、「色々頑張ってます」という雰囲気がひしひしと伝わってくる。
綾瀬市は「湘南」なのか?
さて、私が住んでいるのは藤沢市の北隣に位置する綾瀬市である。海もビーチも無く、あまつさえ鉄道駅すらも無く、畑と住宅地と厚木基地が広がるだけの陸の孤島だ。
そんな綾瀬市にも「湘南クッキー」の自販機は存在する。
普通の自販機と共に並ぶ「湘南クッキー」の自販機
黄色い筐体が妙に目立つ
長後駅は大袋のみだったが、こちらはより手頃な小袋もある
おそらく、すぐ側に小学校がある為だろう
湘南地域限定であるはずの「湘南クッキー」が置かれているという事は、綾瀬市もまた湘南地域だという事か。
私としては綾瀬市が湘南だと思った事は一度も無いが、まぁ、少なくとも「湘南クッキー」は綾瀬市が湘南だと認めているようである。
自販機で売られている全種類の「湘南クッキー」を買ってみた
というワケで、「湘南クッキー」の食べ比べである。この頃は天気が良く気温も上がってきたので、外に出て食べ比べる事にしよう。
この度「湘南クッキー」から晴れて湘南認定を受けた我らが綾瀬市、そこに吹く湘南の風を感じつつの食べ比べである。ウイ・アー・ショーナニアン!
綾瀬市は湘南じゃない
湘南の自覚を得るために綾瀬市の各所を周りながら「湘南クッキー」を食べてみたものの、やはり綾瀬市は湘南ではない事を確信した。湘南要素、一つも無し。まぁ、ムリに湘南と名乗らずとも、綾瀬市は綾瀬市のままで良いのである。
そんな綾瀬市にも「湘南クッキー」の自販機が置かれているのは、多少の範囲誤差など気にしないという「湘南クッキー」の懐の深さ故か、それともただの販売戦略か。
ちなみに今回食べた「湘南クッキー」の中では、全体的に柔らかく甘めのものが多い中、抜群の歯応えとシナモンの風味がキリっと効いた「湘南 LONG BOARD」がイチオシである。
湘南バニラ ‐ 3枚入り100円
まずは数あるラインナップの中で、最もオーソドックスなものだと思われる「湘南バニラ」から行ってみよう。
パッケージも極めてシンプルだ
その名前から想像するに、まぁ、バニラエッセンスの香りが漂うシンプルなクッキーといった所だろうか。そのお味やいかに。
普通の丸いクッキーである
……ん? バニラの香りはしない
バニラという名を冠してはいるが、バニラの風味は無く、むしろバターが香るクッキーである。
食感はサクサクと軽く、口の中でばらけていく。鳩サブレをもっと柔らかくしたよう感じだ。口に入れるとバターの風味が広がり、最後にうっすらバニラっぽい香りが漂うようなそうでないような。
まぁ、バニラというのはイマイチピンと来なかったものの、極々普通のバタークッキーといった感じである。
なぎさの小石 ‐ 3枚入り80円
これまた円形のシンプルなクッキーである。生地に練り込まれたピーナッツがなんとも嬉しい。
パッケージには湘南っぽく海が登場
クッキーを砂、ピーナッツを小石に見立てているのであろう。ネーミングも直球で安定しており、定番商品として開発したのであろう制作側の意図がうかがえる。
ゴツゴツした見た目が食欲をそそる
おぉ、なかなかおいしいぞ
湘南バニラよりも少しだけ固めであるが、口の中で崩れていくのは同様だ。「湘南バニラ」もそうだったが、クッキーと言うよりサブレ寄りの食感である。
ザクザク噛んでいると、ゴロっとしたピーナッツが歯に当たり、それが良いアクセントとなっている。ピーナッツを噛んだ時に感じる油分とわずかな渋みも悪くない。
潮 ‐ 4枚入り120円
お次は細長いタイプのクッキー「潮」である。こげ茶と白のコントラストが印象的な、ココアパウダー入りのクッキーだ。
白い流線を潮の流れに見立てているのだろうか
ぶっちゃけ潮とあまり関係が無い見た目のクッキーであるが、できるだけ海を連想するような、湘南っぽい名前を付けたかったのだろうか。
パッケージを水色にする事によって、なんとか潮という雰囲気を保っている。
むしろシックで上品な見た目である
思ったよりビターなチョコレートクッキーであった
パッケージに「パイとココアのサクサククッキー」とあるので、パイ生地のようなパリパリ系なのかと想像したが、食感は至って普通のクッキーであった。
ココアパウダー入りなので甘いのかとも思ったが、むしろビターな大人向けのチョコレートクッキーである。子どもが食べるとしたら、牛乳は必須だろう。
湘南KIDS ‐ 6枚入り110円
続いては「湘南KIDS」。その名の通り、子どもの形をした不思議なクッキーである。
なぜ子どもの形にしたのかは分からない
子ども向けの商品……なのだろうか。となると、甘口のミルククッキーと想像するが、さてはて、どのような味なのだろう。
厄祓いの儀式に使う形代(かたしろ)のような見た目である
これが意外や意外、シナモン系の味であった
これにはかなり驚かされた。シナモンというか、ショウガというか、その形からはとても想像できない程にスパイシーな味である。
私としてはその意外性がおもしろいと思ったが、子どもが知らずに食べたらびっくりするに違いない。
しかし、なんでまた子ども型のクッキーをこの味にしたのだろう。最近の子どもは一筋縄でいかずにピリッと辛い、そのような事を暗示しているのだろうか。
和賀江島 ‐ 4枚入り80円
続いては、何とも渋いネーミングの「和賀江島」である。和賀江島とは、鎌倉にある日本最古の築港遺跡の事だ。
パッケージにも「日本最古の築港遺跡」とアピール
満潮の時だけ渡る事ができる港の遺跡としてなかなか面白く、私も以前和賀江島について記事を書かせていただいた(参照→「
潮が引くと現れる800年前の港の遺跡」)。
なかなか思い入れの深い遺跡なだけに、その名が付いたお菓子にも興味がある。さてはて、どのようなクッキーに仕上がっているものか。
ピーナッツ満載だが、少々崩れやすいようだ
石積みの崩壊が進んでいる和賀江島を忠実に再現……したのだろうか
サクサクと柔らかい生地に甘辛く味付けしたピーナッツが載っている。生地が柔らかく薄いのでかなり割れやすく、4枚入りのうち全てが大なり小なり割れていた。
醤油の香ばしさがピーナッツを引き立てておりなかなかおいしいのだが、崩れがちなので少々食べ辛くはある。指でつまむのではなく、袋を開けてそのままザーッと口の中に流し込む感じで食べた。
大磯の洗出 ‐ 4枚入り80円
こちらもまた渋いネーミング、ゴマが香ばしそうな薄手のクッキー「大磯の洗出」である。
なかなかインパクトの強い見た目だ
大磯ロングビーチで有名な大磯町で採れる大磯石は、左官仕上げの一種である「洗い出し」に用いられる事が多い。
このお菓子はゴマを大磯石に見立て、地面に石を埋め込む「洗い出し」を表現しているのだろう。
大磯ロングビーチで有名な大磯町で採れる大磯石は、左官仕上げの一種である「洗い出し」に用いられる事が多い。
このお菓子はゴマを大磯石に見立て、地面に石を埋め込む「洗い出し」を表現しているのだろう。
見た目はゴマ煎餅のようなカンジだ
んん、サクサク柔らかで、しかも甘い
ゴマという事で煎餅みたいな和風のお菓子を想像していたが、生地が甘いのでどちらかというと洋菓子である。
個人的にはもう少し甘さを抑えた煎餅路線の方がゴマとマッチするんじゃないかと思うが、まぁ、これはこれでアリなのかもしれない。緑茶か砂糖抜きの紅茶が飲みたくなった。
潮風と太陽 ‐ 8枚入り150円
お次はいかにもクッキーというような見た目の「潮風と太陽」だ。中央に盛られたきいちごジャムが印象的である。
「たっぷり♪ きいちごジャム」の♪がちょっとアレだ
まさに太陽といった見た目である
これはびっくり、生地にうっすら塩味が付いているのだ
ジャムはぐにぐにと固いが、甘酸っぱい味でどこか懐かしく感じる。そして何より、クッキーの生地とマッチしていてなかなかおいしい。
生地にはほんのちょっぴり塩が入っているようで、後に残るほのかな塩味もまたさっぱりとしていて好印象。なるほど、これが潮風か。
湘南 LONG BOARD ‐ 5本入り110円
サーフィンのロングボードを模したクッキーなのだろう。クッキーのボードに乗るサーファーがなんともシュールなパッケージである。
カリッポリッの文字が不思議な面白さを醸し出す
背後には江の島のシルエットが描かれており、これ以上無いというくらいに湘南を意識したデザインである。
これまでのものは柔らかいクッキーばかりであったのに対し、どうやらこれは固めのハードクッキーのようである。
細長いスティック状で、新幹線のようだ
ガッツリ歯応えがあり、味も好みである
写真では犬が棒をくわえるように食べているが、かなり固いので端からポリポリ食べるのが吉。
シナモンの香りが心地良く、散りばめられたヘーゼルナッツが味にコクと深みを出している。うん、これはおいしいクッキーだ。
じゃこ瓦 ‐ 8枚入り130円
続いては、相模湾で捕れたじゃこを使ったと思われる煎餅状のクッキーである。
見た目はどうみても煎餅だ
パッケージには「瓦の上でみりん干しになった」とあるが、本当に瓦で干しているのだろうか。その真偽はさておき、「じゃこ瓦」という語感はなかなか良い。
じゃことゴマが散りばめられている
見た目以上に甘く濃厚なクッキーである
煎餅のような見た目の割に、これがかなり甘く柔らかい。「大磯の洗出」もそうだったが、これは煎餅ではなくあくまでクッキーなのである。
生地自体に甘みがある上、みりんの甘みが加わって、想像を遥か上行く甘さで驚いた。生地はサクサク柔らかく、その点でもちょっとびっくりする。
じゃこは香ばしいが……個人的にはやはり、和風のモノをトッピングするなら、甘さを控えた煎餅路線の方が良いかな。
あおさの磯 ‐ 8枚入り110円
お次も海産物繋がり。あおさを使ったクッキーである。
「大磯の洗出」や「じゃこ瓦」と同様、薄手のクッキーにあおさがたっぷり塗られている。緑が濃いその見た目は、なかなかにインパクトが強い。
パッケージの写真はあおさの量が控えめだが……
実物は、さらに厚くあおさが塗られている
……ん、へー、悪くは無いな
生地がかなり甘いのは「じゃこ瓦」と同様だが、その甘さがあおさの風味と意外に合うのだ。海苔の佃煮が好きな人ならばいけるんじゃないだろうか。
ただし、やはり煎餅ではなくクッキーといった味なので、ダメな人はダメかもしれない。口の中に甘さとあおさが残るので、お茶が欲しいと思った。
波がしら ヨーグルト味 ‐ 6枚入り110円
今度はなんとも男らしいパッケージとネーミングの「波がしら」である。
その字面だけ見ると、塩っけの強そうな和風クッキーのように思えるが、実際はヨーグルト味。その意外性が何となく楽しい。
男らしい見た目ではあるが、ヨーグルト味
見た目も可愛らしいクッキーだ
サクサクした歯応えのおいしいクッキーである。周囲にまぶしてある白い粉がヨーグルト風味で、程良い甘さと酸味がバター風味のクッキーと良く合っている。
綾瀬市の住宅街には牧場がある
どうでも良い余談であるが、私は赤ん坊の頃、はいはいで窓から家を抜けだし、写真の牧場に侵入したそうだ。
牛の足元で遊んでいる所を発見され、両親は牧場主にこっぴどく怒られたそうである(一歩間違えたら牛に踏まれて死んでいた)。
おからと豆乳のわ ‐ 8枚入り110円
その名の通り、おからと豆乳を使ったドーナッツ状のクッキーだ。8枚入りとあるが、2枚ずつ舗装されているので入っているのは4袋である。
体に良いという事を強調しているパッケージ
食物繊維が豊富なおからと、栄養満点な豆乳を使い、さらにオリゴ糖を加えた事でヘルシーなおいしさを作ったという。
体に良いとか、ヘルシーとか、そういう点を強調する食べ物は肝心の味が残念な事が無きにしも非ずだが、果たしてこれはどうだろう。
見た目は極めてシンプルなクッキー
これがなかなかおいしかった。サクサクした食感は他のクッキーと同じだが、口の中で噛んでいるとねっとり濃厚に変化し、バナナのような後味が残る。
パッケージに記載されていなければ、おからと豆乳が使われているとは思わなかっただろう。子どものおやつとしても良さそうである。
飲み物が欲しいと思ったら、自販機が湘南ベルマーレ仕様だった。キリンも綾瀬市を湘南と認めているのだ
温帯林リーフパイ ‐ 5枚入り210円
大袋でも130円前後が多い「湘南クッキー」の中で、やや高めな値段が設定されているのがこの「温帯林リーフパイ」である。
温帯林は湘南……なのだろうか
パッケージには「湘南の暖かい海風を浴びた温帯林」とあるが、温帯林と湘南のイメージを結びつけるのは、若干苦しいようにも思う。
しかしまぁ、とことん湘南で押し通そうというその姿勢には潔さを感じる……かな。
これはクッキーではなくパイである
うん、サクサクおいしいパイですな
これぞパイという感じのパイである。サクサクした軽い歯応えが楽しく、また甘さも控えめで安心感のある味わいだ。
バターが多めに使われているのか風味が良く、やや高めな値段設定であるのも頷ける。
湘南ビーチdeコーヒールンバ ‐ 12枚入り130円
またなんとも凄い名前のクッキーである。もはや湘南とは微塵も関係が無いように思うが、半ば無理やり湘南ビーチを持ち出して関連付けている。
しかし、湘南ビーチでコーヒールンバ……? う~ん、イマイチ分からない。そんなイメージ、湘南にあったっけ?
まぁ、コーヒー味のクッキーなんだろうな、とは分かる
12枚入りだが、2枚ずつの包装なので6袋入りだ
想像以上にビターなコーヒークッキーである
サクサクした食感にビターなコーヒーの風味が漂う、若干大人向けのクッキーである。
砕いたココナッツが入っており、シャリシャリした繊維を噛むのが気持ち良い。完成度の高い、良くできたクッキーである。
箱根旧街道 石だたみ ‐ 8枚入り130円
ついに湘南を越えて箱根まで行ってしまった。箱根旧街道の石畳をモチーフにしたクッキーである。
なんか、一気にイメージが変わった
平べったいクッキーに、アーモンドが散りばめられている。パッケージだと色が濃い目で微妙に和風のような印象があるが、実物はもっと軽いきつね色で洋菓子の風情だ。
実物の方がおいしそうじゃないか
うん、普通においしいクッキーだ
サクサクしたクッキーにジャキジャキしたアーモンドの歯応え。まぁ、ハズレの無い、安定感のある組み合わせと言えるだろう。
アーモンドを接着するのに水あめが使われているのか上部は若干甘めだが、それも噛んでいるうちに気にならなくなる。
箱根菓子 寄木細工 ‐ 12枚入り130円
最後もまた箱根から。箱根土産の定番である寄木細工を模したクッキーである。
これまたスタンダードなクッキーと言えるだろう
丸みを帯びたツートンの市松模様クッキーは、寄木細工というよりサッカーボールのように見えてしまうが、まぁ、それは黙っておこう。
「コーヒールンバ」と同様、2枚ずつの包装である
コロコロと可愛らしいクッキーだ
可愛らしい見た目とは裏腹に、それほど甘くはなくむしろビターなチョコレートクッキーである。しかしビター過ぎるという感じもせず、子どもにもウケる味だと思う。
噛むのはサクサクだが、口の中へ入れるとふわっと溶けてなくなる不思議なクッキーだ。タマゴボウロのような感じでもある。こういうクッキーも面白いなぁ。