特集 2013年3月26日

スペイン「コウノトリの巣」事情

なんでそんな所に作っちゃうの? と思えるコウノトリの巣の面白さ
なんでそんな所に作っちゃうの? と思えるコウノトリの巣の面白さ
去年の春から夏にかけて、フランスとスペインのサンティアゴ巡礼路を歩いてきた。現在は個人サイトでその記録をセコセコと書いていたりするのだが、その為に写真を見返していて、ふとコウノトリの巣の写真ばかり撮っている事に気が付いた。

コウノトリは体長1m、翼を広げると2mにもなる大きな鳥であるが、スペインの田舎ではさも当たり前のように町中でその巣を目にする事ができる。日本では見慣れない巨大な鳥の巣はなんとも面白く、ついついレンズを向けてしまうというワケだ。

今回は、そんなスペインで見かけたコウノトリの巣を見てみようと思う(ちなみに、ヨーロッパのコウノトリは正確にはシュバシコウというらしいですが、ここではより馴染みのあるコウノトリと呼ぶ事にします)。
1981年神奈川生まれ。テケテケな文化財ライター。古いモノを漁るべく、各地を奔走中。常になんとかなるさと思いながら生きてるが、実際なんとかなってしまっているのがタチ悪い。2011年には30歳の節目として歩き遍路をやりました。2012年には31歳の節目としてサンティアゴ巡礼をやりました。

前の記事:上野には博物館(の建物)を見に行こう

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営巣場所の一番人気は教会の塔

コウノトリの巣を見かけるようになったのは、スペインに入って少し経ってからの事である。フランスでは一切見る事はなく、またスペインでも山がちな序盤と終盤では見られなかった。

どうやらコウノトリは、ある程度のまとまった広さのある平地が好みらしい。私とコウノトリのファーストコンタクトも、周囲に麦畑が広がるプエンテ・ラ・レイナという町であった。
なんとも風情あるプエンテ・ラ・レイナの朝
なんとも風情あるプエンテ・ラ・レイナの朝
ふと教会の塔を見ると、そこにはコウノトリが
ふと教会の塔を見ると、そこにはコウノトリが
塔の縁ギリギリに作られた巣に立つコウノトリ。町中に営巣する鳥にしてはあまりにも大きく立派な姿で、私は大層驚いたものだ。

私がその巣の写真を撮っていると、通りかかった女性巡礼者に「あれは赤ん坊を運んでくる鳥なのよ」と教えてもらった(それで、この鳥がコウノトリである事を知った)。

ヨーロッパでは幸せを運ぶ鳥として昔から大事にされているそうで、だからこそ人に慣れ、町中に住むようになったのだろう。
その先のロス・アルコスという町でも――
その先のロス・アルコスという町でも――
塔の上にはコウノトリが
塔の上にはコウノトリが
お、こちらはツガイだ
お、こちらはツガイだ
とまぁこんな感じで、コウノトリが生息する地域の教会には、ほぼ間違いなくコウノトリの巣が作られていた。

木の枝で複雑に編み上げた巣は、足場の悪い屋根の上に絶妙なバランスで作られており、なかなか感心させられる。
あんなにはみ出して、よくもまぁ落っこちないものだ
あんなにはみ出して、よくもまぁ落っこちないものだ
一際うずたかく積まれた巣。立派である
一際うずたかく積まれた巣。立派である
こちらの塔はコウノトリの巣を二個搭載
こちらの塔はコウノトリの巣を二個搭載
案内板にもそっくりそのまま二個の巣が描かれていた
案内板にもそっくりそのまま二個の巣が描かれていた
どうやらコウノトリは、毎年新たに巣を作り直すのではなく、同じ巣を代々使い続ける習性があるようだ。

その為、かなり前に設置されたと思われる案内板にも現在と全く同じ位置でコウノトリの巣が描かれているし、また時折見かける高く積み上がった巨大な巣は、コウノトリが居心地を求めて少しずつ修繕を重ねた結果なのだろう。

高くて見晴らしの良い場所に作るっぽい

巡礼路上では、教会の塔以外でもコウノトリの巣を見かける事が多かった。基本的に高くて見晴らしの良い場所ならば、どこにでも巣を作るようである。
橋の先に見えた煉瓦造りの煙突
橋の先に見えた煉瓦造りの煙突
その先っぽにもコウノトリの巣が
その先っぽにもコウノトリの巣が
現在は使われていない煙突なのだろうが(現役の煙突だったら卵が燻製になっちゃうし)、しかしまぁ、筒状の煙突の上に器用に巣を作るものである。

この辺りは降水量の少ない地方ではあるが、しかし風は結構強く、帽子が飛ばされる日もままあった。そのような中であっても、飛ばされたり底が抜けたりしないのを見るに、コウノトリの巣は見た目以上に丈夫で、がっしりと建物に引っ付いているのだろう。
給水塔の上にもコウノトリの巣
給水塔の上にもコウノトリの巣
城壁の塔の上にもぞれぞれコウノトリの巣
城壁の塔の上にもぞれぞれコウノトリの巣
極めつけは建築現場の巨大なクレーン
極めつけは建築現場の巨大なクレーン
そのカウンターウエイトの上にもコウノトリの巣
そのカウンターウエイトの上にもコウノトリの巣
給水塔や古い城壁の上といった、当分は取り壊される事の無いであろう静的な建物に巣を作るのは分かるが、クレーンのような工事が終わったら撤去される動的なものにまで巣を作るのだから驚きである。

クレーンの所有者も所有者で、たとえクレーンの動作に影響の無い位置とはいえ、巣を撤去しようとは考えないのだろうか。これもまた、コウノトリが人々に大事にされているという事なのだろうか。

大きな建物には巣を作らない

コウノトリは都会の町中にも堂々と巣を作る。しかし、あまりに大きすぎる建物には興味が無いようで、カテドラルの巨大な塔よりも小さい手頃な教会の塔を好むようだ。

身の丈に合った場所を選ぶ、なんとも謙虚な鳥ではないか。
アストルガという町の例。小さな教会の方に巣を作っている
アストルガという町の例。小さな教会の方に巣を作っている
大都市ブルゴスのカテドラルにもコウノトリの巣は見当たらない
大都市ブルゴスのカテドラルにもコウノトリの巣は見当たらない
けれどカテドラル近くの門には巣がある
けれどカテドラル近くの門には巣がある
同じく大都市、レオンもまた同様
同じく大都市、レオンもまた同様
カテドラルより町中にポツンと立つ柱の方がお好みのようだ
カテドラルより町中にポツンと立つ柱の方がお好みのようだ
本人たちは素知らぬ顔である
本人たちは素知らぬ顔である

コウノトリに最も好まれる建物とは?

とまぁ、コウノトリの巣はあちらこちらにあるワケだが、コウノトリが特に好む建物は何かと言うと、それはズバリ「平べったいタイプの鐘楼を持つ教会」である。
ベロラドという町の小さな教会
ベロラドという町の小さな教会
その鐘楼には、なんと四つも巣が作られていた
その鐘楼には、なんと四つも巣が作られていた
教会の模型にもコウノトリの巣が付く公認っぷりである
教会の模型にもコウノトリの巣が付く公認っぷりである
規模の小さな教会では高い塔を持たず、教会の正面上部に平べったい壁のような鐘楼を立てている所が多い。

コウノトリはこの平べったい鐘楼が好きらしく、このタイプの教会には鐘楼を覆わんばかりにコウノトリの巣が作られていた。
もしゃもしゃとえらい事になっている教会もある
もしゃもしゃとえらい事になっている教会もある
こちらは一個だけだが、そのでかさに並々ならぬ迫力を感じる
こちらは一個だけだが、そのでかさに並々ならぬ迫力を感じる

人工巣塔を設ける所も

最近では、コウノトリに巣を作らせる為の人工的な塔を立てている所もあるようだ。

屋根の上の不安定な場所だと巣が落下してしまう危険がある為だろうか、理由はよく分からないが、まぁ、そのような人工巣塔を目にする事も少なからずあった。
いかにも巣が作られそうな鐘楼を持つ礼拝堂の隣に人工巣塔
いかにも巣が作られそうな鐘楼を持つ礼拝堂の隣に人工巣塔
小さな円盤の上に、器用に巣が作られている
小さな円盤の上に、器用に巣が作られている
この円盤の大きさが、巣作りの足場として理想的なのだろう
この円盤の大きさが、巣作りの足場として理想的なのだろう
教会はまだ未完成でも、隣に立つ人工巣塔には既に巣が
教会はまだ未完成でも、隣に立つ人工巣塔には既に巣が
わざわざ鐘楼の屋根と同じ高さに作るあたり、コウノトリ愛を感じる
わざわざ鐘楼の屋根と同じ高さに作るあたり、コウノトリ愛を感じる

町に馴染むコウノトリ

巣を作る場所の面白さもあるが、コウノトリ自体もなかなか愛嬌のあるかわいらしい鳥である。

日本のコウノトリ(ニホンコウノトリ)は数が少なく、絶滅危惧種であったり国の特別天然記念物に指定されていたりするが、ヨーロッパのコウノトリ(シュバシコウ)は比べてものにならないくらいに数が多く、人々の生活の中に馴染んでいる。

私が訪れたスペイン北部も結構な数のコウノトリがいたが、ドイツやポーランドあたりになるとさらに増え、家の屋根やら電柱やら、そんじょそこらに巣があるそうだ。それもまた面白そうである。
こういう原っぱで餌を確保しているようだ
こういう原っぱで餌を確保しているようだ
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