フリー素材界を牛耳るガラスの地球
たとえば無料の写真素材サイト、足成で「地球」と検索すると こういっった写真がたくさん見つかる。
ザ・テレビジョンのレモン風。
地球のことを考えてる風。
意図不明。
また同じく写真素材サイトの.foto projectで女性モデルの「環境保護・エコ」カテゴリーを覗いても、このガラスの地球を持った写真を大量に確認することが出来る。
顔が怖い。
両手で持つと「地球を大切」という雰囲気が出る。
「お前にぶつけてやろうか?」
モデルさんがガラスの地球を持つことで、環境とか世界などのテーマが明白になってる。 これは素材として使いやすい。
またモデルがいなくても、単体でも使えるほど万能だ。
誰がどう見てもエコなイメージ。
かと思えば世界を股にかけるイメージにもなる。
他にも有料写真素材で有名なAfloや amanaimagesでももちろん見かけることが出来る。 それだけアイコンとしての地球は破壊力絶大なのだろう。
2310円の地球
気になるのは、なぜみんなこのガラスの地球儀なのか?だ。
もちろんこれ以外に別の地球儀が使われている写真もなくはない。なくはないのだが、 「どこでも見かける」地球儀はこのガラスの物が圧倒に多い。
いま考えられる理由は「普通の地球儀はでかすぎるから」しか思いつかない。 実際に撮影してみると理解できるかもしれない。
池袋のハンズで購入。2310円でした。
大変ラグジュアリーな箱に収まっている。
正式名称は「オプティカルグローブペーパーウエイト」。予想だにしない名前のかっこよさ以上にペーパーウェイトであったことに驚く。
よっぽど重要な書類のときに使うのだろう。勝負下着のようなペーパーウェイトだ。
わぁキレイ。
現物を見るとなんとなく写真に使われる理由が分かる。物として美しいのだ。 これは撮ってしまう。
手に持って撮影してみる。
“自然はボクの大好きな日本語です”
by C.W.ニコル
撮った写真をカメラでプレビューした瞬間、突然小説家でナチュラリストのC.W.ニコル氏の言葉(注1)が頭の中で囁いた。
なんの意識もなく撮った写真なのに、もうエコや自然をイメージした写真になってしまったのか。なんて破壊力だ。地球、とんでもない。
(注1)むかしラジオの合間に流れていたCMでニコル氏が言っていたセリフ。独特のイントネーションがおもしろく、狭い範囲で物まねが一時的に流行した。
これはかなりフリー素材らしく撮れた。
イメージとしては、サラリーマンが世界を相手にマネーウォーを繰り広げるみたいな感じだ。「ビジネス、ワールドワイド、島耕作」のタグが付くに違いない。
これは普通にフリー素材として使えそう、と思ったので大きいサイズの物も用意した。 上のDonload Now!!ボタンからダウンロードしたら、後は煮るなり焼くなり好きに使ってください。
圧倒的フリー素材力
このガラスの地球儀、本当にどんな写真でもフリー素材化してしまうのか。
マクドナルド・ポテト・ファーストフード
普通の昼食といった感じであまりフリー素材らしさはない。 素材としてタグを付けるならば、上に挙げた3つぐらいのものだろう。 どこにもエコとか世界とかが出てくる印象はない。
ここにあの地球を置いてもそんな一気に変わるわけが…。
“マクドナルド、その味は世界を席巻する”
そんなナレーションが聞こえてきそうな雰囲気になった。 なにこのグローバル感?思わずDownload Now!!である。
荒涼とした公園
食べ物は難なくフリー素材にした。 ではここはどうだろう。
ハトとゴミしか写ってない。
どうしたって素材にはなりそうもない。
地面に投げ捨てられたペットボトルなんて、 フリー素材じゃなくても撮ったところでどうしようもない。
この隣に地球を置いてみるけど、これはさすがに厳しいんじゃないんですかね。
“大切にしたいたった一つの地球。ゴミはきちんと分別を”
そうか、ゴミは分別という糸口から地球と結びついて、エコロジーなメッセージが出てくるのか。
ペットボトル単体で撮るとあんなにどうしようもないのに、なんてフリー素材力だ。地球。
どう足掻いてもフリー素材
なにがフリー素材になりやすくて、なにがなりにくいのか。
そういったことを少しは考えながら撮影対象を探していたのだが、 あまり意味のないことだと悟った。
単なるブランコでしかないのに。
“宇宙でひとりぼっちの地球。私たちの手で守っていきたいですね”
こういうセリフが撮った写真を確認する度に頭に浮かぶ。 女優の小雪さん似の人が言ってるイメージだ。
水飲み場。あ、水…。
“水であふれた奇跡の星。我々はその資源を大切にしてると言えるだろうか”
やっぱりそんなセリフが出てきた。今度は渋い男性のナレーションだ。
水とかゴミとかが環境保護的なイメージを持つのは分かる。 ただブランコとか遊具でもフリー素材にしてしまう地球のフリー素材力、底知れない。
しかし次のこれはどうだろう。
なんにもない砂場。
おもちゃが転がってたり、ゴミが捨ててあったりしない。 オール砂場である。いくら圧倒的フリー素材力を持つ地球でも、これは無理だ。
“あなたは地球の何パーセントが砂漠化しているか知っていますか”
無理じゃなかった。すごく自然にフリー素材になっている。
さすが地球、フリー素材力の懐が広いというか、スケールが違う。
しかももう一枚フリー素材ぽく撮れたから、これもDownload Nowだ。
フリー素材にならない場合はあるのか
どんな被写体でもフリー素材写真にしてしまうガラス地球儀の破壊力。
こうなるとむしろフリー素材にならない場合があるのかが疑問だ。 そんなものがこの世に存在するのだろうか。
ゴリラを乗せてみた。
お、これはあまりフリー素材らしくない。
「世界を牛耳るゴリラ」「大切にしたい地球でたった一つのゴリラ」などテーマを考えてみてもムリがある。 これはいきなり見つけたか。
ただ、ゴリラは環境破壊の影響でその数を減らしつつあるのだ。
“ゴリラが安心して暮らせる世界へ”
いやその言葉もちょっとどうかと思うが、 これもまた環境やエコをテーマとしたフリー素材になる要素が入り込む余地はある。
もっと完全に「このフリー素材はないわ。これは使えんわ」という写真が撮れないものか。
緑に覆われた地球…
考えもなくキャベツを盛ってみたら、それはそれで豊かな自然とかそういうキーワードと 結びついて、フリー素材的な雰囲気がまた漂ってくる。 ただのキャベツなのに。
これはマズイ、もっと全然関係ないものを盛ってみないと。
地球とウインナーの盛り合わせ。
この状況ならどうだ。フリー素材としては意図不明すぎるだろう。 さすがの地球も厳しいはずだ。
“……”
よし、なんのセリフも浮かんでこない。 これはノンフリー素材化に成功したと言えるのではないだろうか。
でもウインナーと地球を拡大して見たいという方のために、一応Downloa Nowも付けておいた。
VS世界や自然と関係ないオブジェ
地球がグローバルとかエコロジーの印象を持っているのなら、 それと正反対とは言わないまでも、印象が遠いオブジェと合わせてみたらどうだろう。
お相撲さん。
これならテーマは日本だから、地球とはまあまあ遠い。 自然に対しても、人間の力と技を表現した物だから、これも遠いはず。
“日本が世界に誇る国技、相撲”
しまった、そういう視点があったか。
地球を置いたときは「超巨大力士が地球を襲うイメージ、これはフリー素材としてないよな」と思ったのに、半端にカメラアングルに凝った結果、またフリー素材ぽくなってしまった。
しかも結構良く撮れた気がするので、さらに3つDownload Nowだ。
変なのを映り込んで台無しにする
ガラス地球儀はほぼなんでもフリー素材化するが、 大量のウインナーなどのものはさすがに難しい。というところまでは明らかになった。
しかしいま一歩そのフリー素材になるかならないかの境界線が分からない。 もっと確実に「こうするとフリー素材じゃなくなる!」という確証が欲しい。
そしてそのヒントは1ページ目に載せた写真に隠されていた。
1ページ目の最後の方に載せた写真。地球儀の下の辺りを拡大すると、
ひょっとこが映り込んでいる。
これはいつぞやの記事で作ったひょっとこだ。 あれ以来部屋の壁にかけてあるのだが、それが映り込んでいる。
一見きれいでフリー素材になりそうな写真なのに、こんなのが映り込んでたら台無し。 フリー素材にならないよ。
地球と相反するひょっとこ。
しかしこれで確証を得た。地球になにか台無しにするような物を映り込ませればいいのか。
じゃあこういうのはどうだろう。音が情けない文字だ。
この画像データをiPod Touchに表示して映り込ませてみた。
太平洋がぷ~ん。
うん、これはフリー素材として使えない。 使えないけどむしろ使って欲しいのでDownload Nowにしておいた。
次に、地球自体の意味を変えるような文字はどうだろう。
さすがに梅干には見えないけど。
モニターの青白い光に照らされて幻想的に光る地球。そしてアラビア海に浮かぶ特大梅干の文字。梅干に見えるかどうかはともかく、フリー素材として使えないことは確かだ。
文字ではなく人の顔ならどうか。
やけに顔が長いのは、iPodの画面に合わせて縦に伸ばしたからです。
インド洋の主。
「留学先で頑張るあいつ」みたいなテーマならフリー素材としてありえるかもしれない。
と思ったけど、インド洋にぼんやり浮かびあがるイメージは全然そんな印象ない。
人物写真ではなく、人のイラストも試してみよう。
特に誰をイメージしたわけでもない。もし偶然似た人が見てたらすみません。
これはかなり台無し。
ひょっとしたらアフリカ旅行の思い出のようなテーマで使えるかもしれない。 ただし人はかなり選ぶ。
フリー素材=台無しではない写真
地球が持つアイコンとしての力と、ガラスの地球儀の写りの良さ。 それがなんでもフリー素材にしてしまう主要な原因なのだろう。
文字や人を映り込ませたり、ウインナーを盛ったりしてフリー素材になるならないの境界線を探ると、とにかく台無しにするというのが肝らしいことが分かった。
確かにフリー素材でよく見かける、スーツを着た外国人のサラリーマンから鼻毛が伸びてたら素材としては使えないだろう。
そこから考えると、フリー素材写真というのは全て「台無しではない写真」とも言える。 すっごい当たり前!
雑に撮ればだいたいフリー素材にならない、ということにもちょっと気づいた。