現代の錬金術だ
一部ではハッピーパウダーと同じ重さの金が取引されているというまことしやな風説の流布もあると友達の弟が言っていた。そんな、みなが愛してやまないハッピーターンの粉を自分で作っちゃうのだ。まさに錬金術と言って過言ではない。
しかして作り方は単純である。塩と砂糖、うま味調味料を味見しながら混ぜ合わせるのだ。
昔ながらの個包装タイプを買ってきた。最近は剥き出しのハッピーターンがガサッと入ってるのもある。
実は、材料はわかっている
ハッピーパウダーがなにで出来てるのかは大体判っている。袋の裏側に原材料が載ってるし、以前テレビで亀田製菓の人が「砂糖、塩、特製のうま味調味料です」って言っていた。素材自体はなんの変哲もないしありふれている。ただ、その人は同時にこうも言っていた。
「素材が判っても配合が判らなければ同じ味にはなりません」
なるほど、コカ・コーラとかケンタッキーフライドチキンみたいなもんだ。そんな事言われるとますますやる気になっちゃうじゃないか。
包み紙には「ちゃおハッピー王国」という謎の一言情報が載っている。
これがハッピーパウダーだ。
って事で作ります
多分ネットで調べればおおよその配合は出てきちゃう気がするので調べずにやってみよう。まずは甘味と塩気を決める。
ハッピーターンを味わってみるとあからさまに甘味の方が強い。多分砂糖の方が多そうだなって事で、まずは砂糖をスプーン2杯。
塩、味の素、砂糖。この3つでかなり近い物は出来るはず。重さを量りながら混ぜます。
スプーン2杯の砂糖はおよそ4gだった。そこに塩を足しながら味見をしていった。甘味と塩気がせめぎ合いながら、ちょうどハッピーターンと同じ感じになったのは、塩が1gちょうどになった時だ。砂糖4g、塩1gがハッピーパウダーの基礎となる。ここにうま味調味料などを足せばいい。
ちなみに、この原稿を書きながらハッピーパウダーのレシピを調べたら同じように砂糖と塩の割合を4:1と書いてる人がいた。同じ味を目指して味見をしながら試せばみんな同じ結果になると思う。
まだ味に深みはないが、甘味と塩気のバランスは判った。
砂糖4g、塩1g、味の素1gをすり鉢で混ぜ合わせた。味見してみるとかなりハッピーパウダーに近い。が、色々と足らない。本物はコクとかうま味が深い。もうちょっとだけ複雑な味だ。
次のページで更に追求します。
うま味を足していく
塩味と甘味のバランスは悪くないのだが、いかんせん本物と比べる味に深みがない。これじゃアンハッピーパウダーであるので更に追求していきたい。
まずは顆粒のコンソメを混ぜてみた。
コンソメを入れてみた。
しかしどうも違う。コンソメは香味野菜の香りが強い。ハッピーターンは余計な匂いが無い。じゃあってんで中華味の素に替えて再配合。
これを掛けると大体なんでも中華味になる。
一向に近づかない
コンソメハッピーパウダーは別の容器に移して、砂糖と塩のとこからやり直し。次はコンソメではなく中華味の粉末を混ぜた。
しかし、これもどうも違う。ハッピーパウダーに無い風味が加わり、ハッピーパウダーにある風味がない。的外れなのだ。
やっぱ違う。ハッピーパウダーとは言い難い。
今度は鶏ガラスープ。
最後の2割が難しい
中華あじは強すぎた様なので、今度は鶏ガラスープの素にしてみた。しかしこれも違う。鶏のうま味と香りが、ハッピーターンっぽさを消してしまった。
何事も8割までは結構簡単に出来る。山登りでも8合目までは結構簡単だけど、最後が危険で難しかったりする。
なんかそんな感じ。
違う!これも違う!
だしの素である。これがあるとみそ汁作るのが楽。
かつおだしはどうだ?
ハッピーターンをいくつも食べてて思ったのだが、ハッピーターンって結構和風だ。醤油っぽい風味がある。粉末醤油を持っていれば使うのだけど、そんなものはないのでだしの素を混ぜてみた。
でも、これも違った。ハッピーパウダーに余計な香りは不要なのだった。方向性は間違ってないと思うが香りが強くてコクが足らない。
味見しながら作っていたらテーブルがゴミだらけに。
これを掛けると全てがカレー味になる。
もう、カレー粉でいいや
近づけるようで近づけない。掴めるようで掴めない。もうなんか、いいやって気持ちになってきたのでいっそ遠ざかってやれ!と思ってカレー粉を混ぜてみた。
インド版のハッピーターンが発売されたら、きっとこんな味。
カレー粉ってすごい。もう、一振りでカレーになっちゃう。これはもう、味の暴力だと思う。
ハッピーパウダーには8割方近づいたので、これを使って料理をしてみようと思います。
ハッピー豚肉
最初はハッピーターンと肉の相性を見る為に、シンプルに豚肉に振りかけて焼いてみた。
肉じゃがとか煮物って砂糖を入れるし、甘味系の味付けと相性は悪くないと思う。
砂糖が入ってるので良い感じに茶色くなった。
味は悪くない。むしろ美味い。やっぱり甘味と塩気は肉に合う。味の素なんかも混ざってるのだから美味しくならないわけがない。特にカレー粉入りのが美味い。
これは唐揚げにも合うんじゃないかって事で、鶏肉に自作ハッピーパウダーをまぶして味付けをして揚げてみた。
ハッピー唐揚げ定食。
美味いのかなー。不味いのかなー。美味いといいなー。
いただきまーす。
あー、これ、どっちだろう。
美味い!と、しておこう。
甘じょっぱい味付けの唐揚げは、味わってみるとなんとも竜田揚げである。甘味が強めでお菓子っぽいが、不味い!とキレるほど不味くない。「美味い」というよりは「面白い」という言葉の方がしっくりくる。
味付けにはカレー味のハッピーパウダーとかコンソメ味、だしの素味など各種の自作ハッピーパウダーを使っている。なので、それぞれ違う味わいだ。
カレー味のハッピーパウダーで味付けした唐揚げが特に面白い。カレーパウダー、すごい。
次はハッピーターンもどき
ハッピーパウダーっぽい粉をソフトせんべいっぽいものに掛けたら近い物になるんじゃなかろうか。そう考えて、揚げえびせんに自作ハッピーパウダーを振りかけてみた。
カルディで買った揚げえびせん。揚げるとサクサクで美味しいよ。
揚げたての揚げせんに粉を掛けましてございます。
食べてみた。あー、どう言うべきか、これ。
アリ!という事にしておこうか。
はっきり言って、ハッピーターンとはほど遠い物だ。が、これを誰かに食べさせて「なにを目指した食べ物でしょうか?」って質問をしたら、100人に3人くらいは「もしかしてハッピーターン?」って答えてくれるくらいにはハッピーターンだ。どうだ、ほど遠いだろう。
と、ここで急に思いついた。インスタントラーメンのスープでハッピーパウダーを作れるんじゃないか?
しょうゆラーメンのスープは粉末醤油そのものだろう?
これ1個が欲しくて袋ラーメンを1パック(5食)買った。
ハッピーターンは本質的には砂糖醤油である
ハッピーターンを食べて思ったのだが、味わいとしては砂糖醤油である。煎餅で言えば「おばあちゃんのぽたぽた焼」に近い。ぽたぽた焼に塩気とうま味を足して洗練させたのがハッピーターンだろう。
という事は、やっぱり醤油的なうま味と塩気が必要で、考えてみたら醤油ラーメンの粉末スープがそれなんじゃないかと思ったのだ。
早速試してみた。
砂糖4g、塩0.5g、味の素0.5g、ラーメンスープ1gをまぜた。乾燥ねぎはピンセットで取り除いた。
すり鉢でゴリゴリ。果たして結果は?
出来上がった粉を味わってみて、9割は近づいた感触を感じた。が、やっぱ違う。なんでかって、鶏ガラのうま味と胡椒の香りが余計なのだ。所詮ラーメンスープの素である。ハッピーターンに必要がない味と香りが残ってしまった。
ここが僕の限界かなって事で、餅を焼いて粉を振りかけてみた。
平行世界ではこれがハッピーターンとして流通しているかも知れない。
味としては、砂糖醤油で焼いた餅に近い。方向としては、ハッピーターンと同じ方法を向いていると思う。
そう、ハッピーターンとは砂糖醤油で焼いた餅をスタイリッシュにした物だったのだ(今日の結論。あれ、そんな話だったっけ?)。
結局100%の再現は出来なかった
悔しい。テレビで見た亀田製菓の人が自信満々に「材料が判っても作れませんから」みたいな事を言っていて、その通りに作れなかった。
でも満足だ。それなりに近い物が出来たし、そもそも全く同じ物を作る必要なんてない。みそ汁や漬け物、カレーの味が家庭ごとに違うのと同じである。「その家のハッピーパウダー」でいいじゃないか。みんなが同じハッピーパウダーを作る必要なんてないのだ。
以上です。こういう記事を書くと言い訳のスキルばかり高まっていきますね。