特集 2013年3月4日

絶品、干しプリン

干してうまくなるお菓子はあるのか。
干してうまくなるお菓子はあるのか。
先日、冷蔵庫の奥でからからに干からびたマシュマロを見つけた。

食べてみるとこれが独特の食感でうまいのだ。いや、もしかしたらうまさとは別かもしれない。新しい、とでも言おうか。とにかく興味深い食感だった。

この一件をきっかけに考えた、もしかしたら干してうまくなるお菓子、というジャンルが存在するのではないか、と。

いろいろ干してみました。
1975年愛知県生まれ。行く先々で「うちの会社にはいないタイプだよね」と言われるが、本人はそんなこともないと思っている。(動画インタビュー)

前の記事:から揚げ粉でクッキーを作る

> 個人サイト むかない安藤 Twitter

きっかけはバレンタイン

冷蔵庫の掃除をしていたら干からびたマシュマロが出てきた。バレンタインデーに妻と娘が作ったやつだ。おそらく余ったけど捨てるには忍びない、ということでそのままとって置かれたものだろう。
マシュマロにチョコ、そしてちょっとしたデコ。マシュマロ部分はすでに干からびている。
マシュマロにチョコ、そしてちょっとしたデコ。マシュマロ部分はすでに干からびている。
ちなみにこのチョコマシュマロ、僕はもらっていない。

今うかつにすごい深い闇を見せてしまったような気がするのだが、そこは僕の中ですでに折り合いがついているので先に進みたいと思う。

このマシュマロを(もらえなかった)僕は、何の気なしに一つ食べてみたのだ。

……むぐむぐ

…!

うまい。

干からびたマシュマロは硬めのグミくらいの弾力があり、しかしいったん歯が入ると内部ではやわらかさを保っていて、これは意外な食感だった。

とはいえ味はほとんど同じである。若干甘さが凝縮されたような気もするが、単純に水分が抜けたおかげだろうか。なにしろ食感が独特なことが「うまい」という感覚につながったのだと思う。

これ、他のお菓子にも当てはまらないだろうか。干して美味くなるお菓子が見つかれば、それは発見であろう。父としての面目も保たれ、来年は干からびる前にチョコをもらえるかもしれない(けっこう引きずっています)。

いろいろ干してみる

というわけで主に水分の多そうなお菓子から、いろいろ選んで干してみることにした。
ゼリー各種。
ゼリー各種。
まずはカップ入りゼリー各種。

果汁の入ったゼリーとこんにゃくゼリーである。このまま干して水分を飛ばせばグミみたいにになるんじゃないかと期待している。以前当サイトでもグミは干した方がうまい、という結論を発表しているが、これはさらにさかのぼってゼリーを干してみる実験である。絶対うまくいく気がする。

しかしどうやって干すか、だ。

今回、お菓子を干すにあたり干物などを作るための「干し網」を使用した。まずはその干し網を見てほしい。
こんなにコンパクトなのだ。
こんなにコンパクトなのだ。
これがバッグから出すとバネの力で勝手に広がって。
これがバッグから出すとバネの力で勝手に広がって。
一瞬でこの形になる。感動。
一瞬でこの形になる。感動。
久しぶりに干し網を使いたくて新しいものを買ったのだが、ものすごい進化していて驚いた。

こういうニッチな商品ですら常に改良がなされているのだ。人類の可能性は無限大である。

うっかり干し網を見つめて人類の未来を想像してしまったが、そんなすばらしき干し網を使って、今日はゼリー各種を干してみることにする。
いい天気です。
いい天気です。
ゼリー各種に加え、羊羹も干してみた。
ゼリー各種に加え、羊羹も干してみた。
ちょうど天気も冬晴れ、ゼリーを干すには絶好の気候である。果たして、干してうまくなるお菓子は見つかるだろうか。
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その日、春一番が吹いた

僕がゼリーを干していたちょうどこの日、関東地方に春のおとずれを告げる強風が吹いた。
干したその日のことである。
干したその日のことである。
この日はベランダにゼリー各種を干したまま仕事に行き、次の日の朝まで干しっぱなしにしておいた。風の強い一日だった。あとからニュースを見たらその日が関東では春一番だったらしい。

干しゼリーの存在を忘れていたわけではない、この風が水分をより蒸発させてくれるだろうと期待していたのだ。

しかしそこには落とし穴があった。
強風の中、一日干したコーヒーゼリーは明らかに縮んだ。
強風の中、一日干したコーヒーゼリーは明らかに縮んだ。
ゼリーも形は同じまま、ぎゅっと小さくなった気がする。
ゼリーも形は同じまま、ぎゅっと小さくなった気がする。
一見うまく干されているように見えるのだが、よく見ると
これは…。
これは…。
すごいホコリなのだ。
皿に残った黒い点がホコリ。
皿に残った黒い点がホコリ。
干し網はできるだけ目の細かいものを選んだつもりなのだが、強風に運ばれた細かいホコリは網の目をくぐった。

しかも干しているのはゼリーである。ホコリウェルカムの超吸着材だ。どうしよう。

最初からやり直そうかとも迷ったが、もったいないのと時間がないのとで、考えた末きれいに洗って実験を続けることにした。
その代わりものすごい丁寧に洗った。もう一度水分を吸ってしまわないか不安になるほどに。
その代わりものすごい丁寧に洗った。もう一度水分を吸ってしまわないか不安になるほどに。
この失敗に学び、次の日からは室内で干すことにした。場所は浴室である。家族が全員使用したことを確かめた後、干し網を吊るし風を当てる。
風を当てて強制的に乾燥させる。このまま3時間回し続けた。
風を当てて強制的に乾燥させる。このまま3時間回し続けた。
その後浴室の乾燥機を3時間セット。
その後浴室の乾燥機を3時間セット。
そのまま次の朝まで乾かす。
そのまま次の朝まで乾かす
ゼリーにとっては干されてから2日目の朝である。

干し場所を変えたついでに、ゼリー以外にもうまくなりそうなものたちを追加してみた。

和菓子である。
ゼリー類に関しては2日目の干し。
ゼリー類に関しては2日目の干し。
追加で各種和菓子も。
追加で各種和菓子も。
プリンも干した。
プリンも干した。

3日間の干し、終了

ベランダで1日、ホコリを洗い流して浴室で1日、さらに日の当たる室内で1日、ゼリーに関しては合計3日間、その他のお菓子は2日間それぞれ干してみた。
こまめに窓を開けたり閉めたりした。
こまめに窓を開けたり閉めたりした。
見た感じからっと干されています。
見た感じからっと干されています。
プリンも高さが低くなった。
プリンも高さが低くなった。
一番長く干しているゼリーたち。しっかりとした意思すら感じる。
一番長く干しているゼリーたち。しっかりとした意思すら感じる。
市販のお菓子を食べるのにこれほど手間をかけたことがあっただろうか。

いよいよ期待と不安の試食である。
※お菓子は賞味期限をしっかり守って干しましょう。生菓子を干すときには特に品質に注意してください。
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絶品、干しプリン

干した結果、うまくなったものだけを紹介します。ここに上がらなかったものは(ああ、だめだったんだな)と理解してください。

まずはプリン。これはうまい。ぜったい干した方がいい。
濃縮された旨み。
濃縮された旨み。
プリンは干すことで見た目3割くらい「かさ」が減ったように思う。それだけ水分が飛んだということであろう。上部のキャラメルもいい照り具合となっている。

フォークを入れてみて驚いた。
フォークで刺して持ち上げられるくらいの硬さになっています。
フォークで刺して持ち上げられるくらいの硬さになっています。
硬さと食感はレアチーズケーキのそれと同じくらいになった。味に大きな変化はないが、キャラメルの匂いが濃くなったように思う。

なにしろ舌にしっとりとまとわりつく食感がたまらないのだ。プリンにしょうゆでウニ、っていう話を聞いたことがあるが、食感だけで言うと干しプリンこそがウニだ。干しプリン・イズ・ウニ。お菓子屋さんも表面とか焼いている場合ではない。

まるでピータン、コーヒーゼリー

次は干しコーヒーゼリーである。丹精こめて3日干した結果、こちらも「かさ」が半分以下に小さくなった。
硬さ的にはピータンくらい。
硬さ的にはピータンくらい。
これも味は大きくは変わらないのだけれど、とにかく食感が変わった。ねっとりとしている。ゼリーとグミとの中間くらいの硬さだろうか。

ただ、硬くなったのは表面の3ミリくらいだけで、内部はしっとりとした元のコーヒーゼリーの記憶をとどめていた。その食感の厚みがおもしろい。濃厚コーヒー風味の半生グミ、そんな感じか。ブラジルのお土産屋さんあたりで売れていそうだ。

アルデンテ、果汁ゼリー

果汁ゼリーも3日干してほとんどグミのような硬さになった。
すごい縮みようです(右は干す前)。
すごい縮みようです(右は干す前)。
果汁ゼリーは指でしっかりつまめるくらいまで硬くなっていた。だいたい耳たぶくらいの硬さである。アルデンテだ。
こうして手で持っても大丈夫な時点で干しゼリーの実力がうかがえる。
こうして手で持っても大丈夫な時点で干しゼリーの実力がうかがえる。
こんにゃくゼリーも同様にほとんどグミになった。
もともと歯ごたえのあるこんにゃくゼリーだが、干すことでさらに硬く、ハード系グミくらいの歯ごたえを手に入れていた。
もともと歯ごたえのあるこんにゃくゼリーだが、干すことでさらに硬く、ハード系グミくらいの歯ごたえを手に入れていた。
果汁ゼリーもこんにゃくゼリーも、干すことで味と香りが濃縮されて、硬い食感とあわせて本当にグミのようになっていた。

干しすごい。多少手間はかかるが、普段食べたことのない食感を体験することができるのだ。

ところで、途中から干し始めた和菓子の話がまったく上がってこないのは、おいしくならなかったからである。
単に硬くなっただけだった。
単に硬くなっただけだった。
和菓子を干したところ、一日放っておいた和菓子みたいになった。まあ一日放っておいただけなのでそうなって当たり前なのだけれど。ああ、乾いちゃったのね、という感想しかない。和菓子ばかりは新鮮なうちに食べた方がよさそうである。

冷蔵庫でもいいと思います

というわけでプリンとゼリーが干すとうまい、ということがわかった。

とはいえどちらも手間ひまかけて干したから、という気持ちの部分が味に加味されていたといえなくもない。たぶん先のマシュマロのように、冷蔵庫の中で放っておいても同じような干され方になると思うので(そしてその方が衛生上も安全)、試したい方は冷蔵庫内乾燥をおすすめします。天日干しは老後の楽しみにとっておいてもいい。

なにしろプリン

プリン、そしてゼリー。干したときに食感が変わりうまくなるお菓子たちである。手をかけた分、その変化が面白い。

一方、和菓子は干したメリットが見つからなかった。もともとの水分が少ないので、それを干しちゃうと単に乾いただけとなってしまうのだろう。逆になんでもかんでも蒸してみると、今度は和菓子に軍配が上がるに違いない。なんかいま当たり前のこと言っていませんかね。
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