区の鳥をウォッチングしよう
東京23区のうち、区の鳥が指定されているのは次の6区。
千代田区のハクチョウっていうのはあそこの...
東京23区のうち、区の鳥が指定されハクチョウをのぞいて普通に野山や公園でウォッチングできる野鳥達だ。しかし、ポピュラーな鳥ばかりとはいえ、広い区の中でターゲットを発見するのは容易ではない。
ここは幸先よいスタートを切る為にも、一番ピンポイントな生活を営んでいるであろう千代田区のハクチョウから攻める事にした。ているのは次の6区。
その1:千代田区のハクチョウ
もうここしかないですね
千代田区のホームページによれば、ハクチョウがやって来たのは昭和28年、
「白鳥をお濠に放つ会」の寄贈により、ドイツからはるばるやってきた24羽のこぶはくちょうが放されたという。
近年はその数を大きく減らし、牛久沼から寄贈を受けるなど、命脈を保つ努力がなされているらしい。
がんばれハクチョウ。あんなでかい鳥にここまで必要なのかどうかわからないが、むやみにでかい望遠レンズを携えてウォッチングに行こう。
すごいスペースバトルシップ感。目を離すと外宇宙まで飛んでいきそうな。
●飼育しているということは飛んで行かずに確実にお堀にいる。
●白くてでかいので目立つ。
等の理由からして楽勝じゃんかこれと判断し、ろくにポイントも絞らずにスタート。
ハクチョウの壕
お、たまり場。
(右から)マガモ、オオバン(こわい)、ヒドリガモの雄、雌
写真のキャプションにさりげなく書いたが、オオバンはとても怖いと思う。
なんか、ごめんなさい…アダムス・ファミリーを思わせる不気味さ。
皇居名物、ランナー。
見上げればいいジョロウグモ。
なんだかんだすずめがかわいい。
たかをくくっていたが、あんなに大きくてスローリーな白鳥が見つからず
半蔵門を過ぎ、北桔橋門に着いた所で不安のあまり警備の方に「すいません、このあたりに
白鳥って…いますよね」とたずねたところ、「そこまで気にしたことがないのでよくわかりませんが
どこかにいますよ」との事。でかい望遠レンズをかかえて、なんかすごく阿呆な質問をした気になった。
しかし、乾壕、平川壕を過ぎ、大手壕にさしかかった頃
お、あれに見えるは!
千代田区の鳥、ウォッチング!
ここまでの苦労を別段いたわる風でもなく、ぼく今泳いでますよみたいな顔をして千代田区の鳥、コブハクチョウが悠然とその姿をあらわした。
やっぱセレブ感あるなあ。
一見優雅に見えて、実は懸命に水かきを動かしている姿をパパラッチ!
これで第一のターゲットをクリアしたわけだが、そんなハクチョウの上を、品川区の区の鳥、ユリカモメの群れが飛び交っていた。千代田区の上に品川区、これはいったい何の予兆だろうか。
千代田区の領空を侵犯。まあ、都民の鳥でもあるのだけれど。
幸先のよいスタート。
その2:品川区のユリカモメ
次にイージーなのは品川区のユリカモメではないだろうか。
東京港を擁する品川区であれば、港の代名詞といわれるマドロスとカモメには事欠かないだろうし、なによりも会議で編集部の安藤さんが「あ、ユリカモメですか。しながわ水族館の裏の公園に
めちゃめちゃいましたよ」と言っていたからである。
駅の時計台に
カモメが!
品川区の区の鳥にユリカモメが決定したのは昭和53年のこと。千代田区よりも歴史は浅いが、より区の鳥をフィーチャーしている印象がある。
駅ビルの窓もカモメをイメージしているのか(真偽は不明)
しながわ水族館の裏に広がる品川区民公園に足を踏み入れると、池はユリカモメでにぎわっていた。
おお、いるいる。
区民か!っていうくらいいます。
すごいながし目をあびせられた。
あっけなくウォッチングできたユリカモメだが、こうして水にぷかぷかしているところを見ていると、ふだんあまり意識しない能力にあらためて驚かされる。
撥水力である。
はじける水滴とわかさと白さ。
撥水すげー。
はじける勢いで連続ウォッチング成功、しかし難関はこれからだ。
スズメもいた。かわいい。
いい調子ですね。
その3:大田区のウグイス
「ホー、ホケキョ」というキャッチーな鳴き声で春を告げるあまりにも有名な野鳥。
それ以外の季節にホーホケキョが聞かれないからといって、別にいなくなっているわけではなく、冬は薮の中などで「チャッ」「チャッ」といった「笹鳴き」とよばれる地味な鳴き声を発しながらひっそりと暮らしているのだ。
そんな空気読めないシンボルを探すスポットといえばここしかない。
東京都立港野鳥公園
埋め立てによってうまれた都内有数のバード・サンクチュアリである。山林や野原の鳥から水辺の鳥まで、これまでに200種類を越える野鳥が観察されているのだ。なんと豊穣なことだ。常駐しているガイドさんに「すいません、ウグイスっていますかね」とたずねて見たところ、「たくさんいますよ!」との事。
こういった薮の中に…
この薮のどこかに…
この時期はなかなか顔を出す事もなく、薮の中から聴こえる鳴き声で存在を確認するらしい。
どこで見てもなんかうれしいカワセミ
季節はずれのハラビロカマキリ
カワウが群れてると荒廃感すごいな。
そんな中に平気で一羽混じって突っ立っているアオサギ。
アオサギの鈍感力すごい。間違えて女性専用車両に一人乗り込んでいるおっさんを見る目でカワウ達が見ている。関連会社へ出向の辞令を受けてもまったく動じなそうだ。いや、むしろ何もなかったように翌日も本社に出勤するタイプか。
と、たびたび逃避しながら、園内の薮という薮を行脚したがついにウグイスを発見する事はできなかった。無念…
「チャッ、チャッ」という「笹鳴き」は確認できたのだが(すごく小さい音です)
帰り道、ウグイス色の鳥が街路樹に飛んできて「すわ!」とばかりにカメラを向けたらメジロだった。
ややこしい話だが、いわゆる「ウグイス色」には当のウグイスよりもこのメジロの方がだんぜん近い色彩なのである。
メジロの目は実はこわいと思う。
スズメが2匹。かわいい。
冬の生態が地味過ぎなんだよウグイス…
その4:板橋区のハクセキレイ
都内でも簡単に見られるセキレイ科の鳥で、長い尾を上下に振りながら地上を小走りするように移動する姿が印象的である。
「日本書紀」によると、日本誕生の神話において、男神のイザナギと女神のイザナミは、子供(神)の作り方を知らなかったが、セキレイが腰を振る動作を見て、その方法を知ったという。
さらりと下ネタを混ぜたがこれは益鳥どころか恩鳥ではないか。この鳥がいなかったら我々の存在はなったかも知れないのだ。
区の鳥に決定したのは平成14年と新しく、板橋区内では川辺などでよく見られるとの事。よって、探索ポイントは区の西側にある、石神井川に面した城北公園にした。
上板橋駅から向かいます。
季節の風物詩貼り紙。
ただし、ひとつ問題があって、現地で地図を拡大して気付いた(すごくおそい)のだが、この公園は練馬区と板橋区の区境をまたいでおり、ハクセキレイ出現ポイントの川は区境が横断し、ばっつりと分断されているのだ。
「区の鳥をウォッチング」というコンセプト上、是が非でも板橋側でハクセキレイを発見しなくてはならない。
板橋区にあらわれろよー
いきなりいた!(ちいさくてすいません)
ハクセキレイ!
さっきの写真だとこのあたり、なんとか板橋だ!
上流(練馬方面)へ走りだした。
何枚か撮影するとちょこちょこと走り出し「記事的にはこれがいいんでしょ」とばかりに区境を越えて練馬区内へ飛んで行った。いや、練馬からこっち来てもらったほうが記事的にはありがたかったけどね。ありがとう。
なにはともあれウォッチング成功だね、やったねと引き返そうとしたその時、
「チャッチャッ!」
街路樹から「チャッ チャツ」という、ウグイスの「笹鳴き」の声が。
いた!板橋で現れおってこいつめ。せめてホケキョと言え。
このまま街路樹から街路樹へと追い立てて大田区までいけないだろうかとすら考えた。まあ、なんとか姿を見る事ができてよかった。
街路樹の中には丸丸太ったスズメも。
負け越しは無くなった。
その5:目黒区のシジュウカラ
ご当地バードウォッチングもいよいよ5カ所目となり、原稿を書いている私も疲労困憊の様相をていしてきたが、もう少しおつきあい願いたい。
つづいては目黒区でシジュウカラを探す。最南部、不動尊の近くによさげな公園を発見した。「林試の森公園」ここも区境をまたいでいる。
より大きな地図で 目黒シジュウカラ を表示
シジュウカラを品川と目黒で取り合いである(違う)
ムクドリ。ときおり尋常でなく群れていますね。
アトリ科の渡り鳥であるシメは京劇の役者のような大げさなたたずまいが素敵だ。
目もとのメイクが「さらば、我が愛」
「 覇王別姫」みたいな。
ペットが逃げてそのまま定着したワカケホンセイインコ。ほんとに日本の空が似合わない。
松の枝の間をホバリングするように飛び回る小さな鳥、キクイタダキ。
頭の黄色い冠羽根が「菊を戴く」ように見える事から命名された。
私が発見者だったら普通に「黄モヒカン」とかいっちゃうだろうな。高尚な方に命名されて何よりである。
お、発見!と思ったらシジュウカラでなくてヒガラだった。
よく似ている。見分け方は、こういっては何だがシジュウカラより「作りがなんか雑」
ウォッチング!ほら、なんかヒガラより丁寧でしょ。毛並みとか。
ピンぼけしたスズメかわいい
坂道の丸い滑り止め思い出した。
その6:世田谷のオナガ
いよいよファイナルウォッチングである。
オナガはカラス科の鳥で、漆黒の頭とスマートな体躯に、名前の由来となっているサックスブルーの長い尾がかっこいい、鳥類のモッズ系だ(勝手に言ってます)
ウォッチングの舞台は都立砧(きぬた)公園。東急田園都市線用賀駅から高級住宅街を歩いて向かう、ファイナルにふさわしいセレブリティなバードウォッチングである(なにが)
ヨガ 用賀。
区の樹(けやき)は引く手あまた。
さすが高級住宅街、なんかゆったりした感じだなあ。
一方通行でこのゆとり!
ポイ捨て かっこ悪いぞ。
そんなこと言ってたら着きました砧公園。
ヒヨヒヨけたたましく鳴くからヒヨドリ。群れで木の実をつついていた。
「おれのツイートめちゃめちゃRTされてんじゃん!」(ハシボソガラス)
昭和43年7月に晴れて区の鳥に。
世田谷区スポーツ振興財団という団体のマスコットキャラクターにもなっていたり、
オナガの「アイディ」、財団の主催するスポーツサポーターズクラブ 「アイディクラブ」に由来しているらしい。
園内のバード・サンクチュアリでは情報パネルにナビゲーターとして登場。
左上にいます。
「ハトのフンにご注意」とかいいそうな。
グラフィックではかなりの露出を見せるが、本物に出会えない。
「さらば、我が愛 覇王別姫」またいた(シメ)
小さなキツツキ、コゲラ。かわいい見た目と裏腹に鳴き声が「グェー」と死にそう。
ヤマガラ。いっぱい撮りましたよー、オナガ見つからない腹いせに。
日暮れ前まで探したが結局オナガのウォッチングは失敗に終わった。バードウォッチングをしていたおじさんに「オナガはまだ時期がはやいよー」と言われたしかし、実は目黒区の「林試の森公園」でオナガの群れに遭遇していたのだ。
木の実の食べ方もモッズですね。タバコに火つけるみたいな。
それだけに悔しさもひとしおだったのだが、同時に「まあ、見られたんだからいいや、その区でって所詮マイ・ルールだし」という身も蓋もない思考が一瞬、頭をよぎった事も告白せねばなるまい。すみませんでした。
スズメがやっぱりかわいい。
トータル4勝2敗。
スズメすごい。
今回、ウォッチングした鳥達を調べていると、大半が分類学上で「スズメ目(○○科)」に属している事がわかった。なんと現存の鳥類約1万種のうち、六割近くをスズメ目が占めているという。
みんなスズメさんの屋号を借りて営業しているのだ(ちがう)スズメかわいいのになんか支配的ですごい!という思いをこめてスズメの写真を撮影したのだった。