特集 2013年1月29日

4L(64センチ)の帽子を売る店

僕らにとっては夢のような店です
僕らにとっては夢のような店です
あいかわらず頭がでかい。店でかっこいい帽子を見かけるたびにかぶってみるが僕の頭に入る帽子はめったにない。

過去に2回、大きな帽子を探す記事でそのニーズの存在をアピールしてきたが、世間的にはまだまだ大きな頭には逆風である(頭が大きいから風の抵抗が大きいということではない)。

しかし、大きくてかっこいい帽子を扱う店を愛知県岡崎市で見つけたのだ。意外なところにエルドラドは、あった。

過去の大きな帽子の記事:大きな帽子をさがして 大きな帽子は岐阜にある
1971年東京生まれ。デイリーポータルZウェブマスター。主にインターネットと世田谷区で活動。
編著書は「死ぬかと思った」(アスペクト)など。イカの沖漬けが世界一うまい食べものだと思ってる。(動画インタビュー)

前の記事:なんでも星座に見える

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オーバー60トリオ

今回見つけたパラダイスに向かうのはこの3名。
・文房具コレクターで当サイトのライターも務めるきだてたく(61センチ)
・ライブハウス東京カルチャーカルチャー店長横山シンスケ(62センチ)
・林雄司(63センチ)
合計186センチ、どこに出しても恥ずかしくないでか頭グラマーである。行く電車のなかで Don't trust over 60 というユニット名も考えた。
左からきだて、横山、林。頭がでかいのに帽子が好きな3人
左からきだて、横山、林。頭がでかいのに帽子が好きな3人
きだてさんは当サイトに参加したのは昨年だが、僕はずっときっとこの人は仲間(頭が大きい仲間)じゃないかとにらんでいた。身体が目当てだったのね、みたいな話で申し訳ない。

きだてさんはバイクの免許をとるときに教習所にひとつしかない大きなヘルメットを奪い合ったという経験を持つ。

約束の地はろしなんて

今回の目的地はろしなんて、屋号がろしなんてで会社名が川口ぼうしだ。品川から新幹線と在来線、名鉄を乗り継いで3時間。たったの3時間で愛の国ガンダーラだ。

取り扱っているサイズは4Lまで。聞きなれないサイズ表記は間取りのようだ。4Lは64センチである。しかも熱中症予防とかスポーツの匂いがしない文化系のデザインが多いのが嬉しい。
帽子ろしなんて。夢の世界の入り口は一見普通である
帽子ろしなんて。夢の世界の入り口は一見普通である
ここが大きい帽子コーナー。写真に写ってる棚は一部でこの3倍の広さがある。こんな嬉しい氷山の一角はない。
ここが大きい帽子コーナー。写真に写ってる棚は一部でこの3倍の広さがある。こんな嬉しい氷山の一角はない。
嬉しいサイズ表記。僕はここに来るべくして来たのだと確信する。
嬉しいサイズ表記。僕はここに来るべくして来たのだと確信する。
帽子職人で社長の川口さん。
帽子職人で社長の川口さん。

大きいサイズの帽子のニーズは確実にある

大きいサイズの帽子が見つからないのでなんとかして欲しいという声に応えて大きいサイズ展開をはじめたそうだ。
しかも…
・小さいサイズを欲しいという人よりも大きいサイズが欲しいという人のほうが非常に多い
・12~3年前からインターネットでの販売をはじめ、いまではネットでの注文の8割は大きいサイズ
など大きい頭の仲間の存在を感じる事実が続いて興奮する。
おれたちはひとりじゃない。全国に散らばった同士がいるのだ。
社長にインタビューしているあいだもさりげなく帽子を選ぶ横山さん
社長にインタビューしているあいだもさりげなく帽子を選ぶ横山さん
インタビューを録音した音声の遠くに「すぱすぱ入る!」というきだてさんの叫び声が入ってた
インタビューを録音した音声の遠くに「すぱすぱ入る!」というきだてさんの叫び声が入ってた
おれたちはひとりじゃない、と書きながらも同行したふたりは社長の話を聞くふりしながら帽子を選んでいる。完全にいまおれひとりだ。

大きい帽子ノウハウ

大きいサイズの帽子は頭のまわりは大きくしするが、つばは大きくしていない。つばも大きくしてしまうと帽子が巨大に見えて、でか頭をアピールすることになってしまうのだそうだ。
「見た目はあんまり大きく見えずに、かぶってみるとサイズだけ大きくなるように工夫してます」
だそうだ。4次元ポケットのような帽子だ。

周囲のほかにも深さも大事である。頭まわりが入るからと言って深さのない帽子をかぶると、乗ってるようになってしまう。中折れ帽の場合はてっぺんの本来凹んでいる部分が凹まなくなってしまうのだ。
図解・頭の大きい人は深さにも注意
図解・頭の大きい人は深さにも注意
凹んでいる例
凹んでいる例
乗っかっている例・悲しそうな顔が特徴
乗っかっている例・悲しそうな顔が特徴
ちなみに横山はハットの凹みがなくなってしまうのを避けるために、凹みをスプレーのりで固めたことがあるそうだ。
「ガビガビになっただけだった」
と言っていた。頭が大きいエピソードは悲しいながらもどこか笑える空気が漂うのだろう。ちょっと痔の話にも似てる。
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売り場の奥で帽子を作っている

このお店のすごいところは売り場のすぐ奥で帽子を作っていることである。
店の奥で大きいサイズの帽子が作られている
店の奥で大きいサイズの帽子が作られている
帽子は手作りなのだ。分業にはせず、ひとりの職人さんがゼロから完成まで受け持っている。
はじめて見る帽子工場には見たことがない道具がたくさんあって、いちいちこれなんですか?と聞きたくなる(聞いたんですが)。
黄色いタコウインナーのような形の紙とその下のグレーの紙がハンチングの型紙。
黄色いタコウインナーのような形の紙とその下のグレーの紙がハンチングの型紙。
布を切るのに使う裁ち包丁。手前が新品で1年使うと奥の裁ち包丁ぐらいの短さになる。
布を切るのに使う裁ち包丁。手前が新品で1年使うと奥の裁ち包丁ぐらいの短さになる。
帽子を成形するための装置。熱源が入っていてアイロンのような役割を果たす
帽子を成形するための装置。熱源が入っていてアイロンのような役割を果たす
電気で成形する装置ができる前に使っていた木型。かなりの年代物。いまはできあがった帽子を置く台として使用
電気で成形する装置ができる前に使っていた木型。かなりの年代物。いまはできあがった帽子を置く台として使用
帽子をひとりで作れるようになるまでに5年はかかるという。なのにお店の帽子は3000円から4000円ほど。国内生産で手作り、もうちょっと高く売ってもいいんじゃないかと思ったが
「国内で作っても安い中国製のものと競争しなければならないので」
とのこと。うーむ。
ぼうしのてっぺんについてるあれ(川口ぼうしでは「ぼっち」と呼んでいる)も手作り
ぼうしのてっぺんについてるあれ(川口ぼうしでは「ぼっち」と呼んでいる)も手作り
ぼっちを作る装置、缶バッジを作る装置に似てた
ぼっちを作る装置、缶バッジを作る装置に似てた

布を送ってぼうしにしてもらうことも可能!

ちなみに川口ぼうしでは好きな布を送って帽子を作ってもらうこともできるのだ。ハンチング類は4200円から、90センチ幅の布50センチでできるそうだ(布代は発注者の負担)。
きだてさんはタオル地で帽子を作りたいと話していた。
「夏に頭に汗かくんですよ。タオル地だったら吸ってくれるし!」
と理にかなっていたことを言っていたが、横山さんが「だったらタオル巻いたほうが早い」ともっと理にかなっていることを言っていた。
布に芯地をはりつけるための装置
布に芯地をはりつけるための装置
テープを縫い付けるための針が2本あるミシン
テープを縫い付けるための針が2本あるミシン
この日働いていた職人さんは4名。忙しさによって働く人数を変えているのかと思ったら職人さんの都合だそうだ。
「今日来れるよ、という人に来てもらってます」
とのこと。デイリーポータルZの企画会議も同様のシステムである。シンパシー。ちなみにシーズン的に忙しいのは春と夏だそうです。

帽子作りの現場をすっかり堪能した。次はいよいよ僕らのぼうしを選ぶ番だ。
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いやー、帽子選ぶのって大変ですね

3人で帽子を選んでいると人生で初めての困難さに出会う。帽子を選ぶのが大変なのだ。

これまで「かぶれる帽子=買う帽子」だったので店で買える帽子は1~2個しかなかった。かぶってみたらなにも考えないでレジに持っていけばよかったのだが、これだけ種類があると似合う似合わないを考えなくてはならない。

さすが21世紀は考えて働く時代である(適当なこと言いました)。
すべてがかぶれるわけで、テンション上がりつつも戸惑う3人
すべてがかぶれるわけで、テンション上がりつつも戸惑う3人

言ったことのないセリフを言うときが今だ

「ちょっと大きいかな」「ゆるいな」などこれまで言ったことのないセリフも言ってしまう。そのセリフを口にしたあと余韻を楽しんでいるので、会話がいちいち遅い。
「これ、大きいかな」
(じーん)
「もうひとつ小さいの、ないかな」
(じーん)

(頭が通常サイズの皆さんにつきましては 「どうしたんだ子猫ちゃん」「1億でいいかな」「そのまさかだよ」などこれまで言ったことのないセリフに置き換えて上記の会話を読んでもらえると助かります。)
これゆるくて指が入っちゃうなー
これゆるくて指が入っちゃうなー
ニットキャップもたるみが出る!
ニットキャップもたるみが出る!
でかい頭あるあるとして、ニットキャップがぴちぴちというのがある。たるませて余裕があるようにかぶることができないのだ。
「ローマ法王の帽子みたいになっちゃいますよね」
と川口さん。全員がそうそうとヘッドバンギングなみのスピードで首を縦に振った。
きだて「横山さん、ハンチングも行けると思いますよ」
きだて「横山さん、ハンチングも行けると思いますよ」
横山「どうかな」 振り返ったときにはきだてさんは別の帽子に夢中
横山「どうかな」 と振り返ったときにはきだてさんは別の帽子に夢中
これまで避けてきた革の帽子ですら余裕である。革は伸縮性がないので試着しようとしても入らなかったのに(無理に試着すると壊れる)。

自転車が急に乗れるようになった日のことを思い出す。つまりこれはディズニーランドなのではないか。僕らにとっての夢と魔法の国である。興奮気味に取材メモにそう走り書きしてあった。
この日撮影したデジカメには帽子をえらぶ3人のおっさんの写真が398枚記録されていた
この日撮影したデジカメには帽子をえらぶ3人のおっさんの嬉しそうな写真が398枚記録されていた

ウラシマ効果あり

あっというまに2時間が経っていた。頭が大きい人は行くとウラシマ効果が起こるお店である(取材時間の半分を帽子選びに費やしていたことは秘密)。
ひとり3つ買って帰った。
ひとり3つ買って帰った。
ろしなんて工房(川口ぼうし)
444-0044 愛知県岡崎市康生通り南1-33 TEL:0564-24-2318
営業時間 9:30-18:00 日曜・月曜休業
ホームページ(ネット通販あり)
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