その料理の名はリエット
その肉をあぶらで煮て、砕いて、あぶらで閉じ込めた料理はリエットと言います。フランスの料理です。
以前「
そうだ、肉を脂で煮ればいいんだ」という記事でライターの高瀬さんが紹介したコンフィとよく似た料理ですが、コンフィが肉を主に食べるのに対し、リエットは肉もあぶらも一緒においしく食べます。パンにバターのように塗って食べるのが一般的だそうです。
肉とあぶらをパンに塗るとは。是非食べてみたい。
アマゾンで売っていました。日が変わったぐらいの深夜に注文したらその日のうちに届けてくれたよ。アマゾン凄いね。
ということで、市販品を探したらアマゾンにあっさり売っていました。早速購入。
常温で2年以上保存できるそうだ。
肉とあぶらがギッシリ。
フタを開けるとあぶらの層の中に肉が詰まっていました。匂いは強くなく、豚肉だけにソーセージのような香りです。
肉とあぶらの競演。
スプーンを入れると意外に硬めです。少し荒い感じの肉とあぶらが層を作っています。
そのままで食べられるので、まずは直接食べてみましょう。
これはうまいな!肉とあぶらの旨味が凄い!
これはとてもうまいです!口の中に肉の旨味やあぶらの甘さがジワッと広がります。豚肉だからかコンビーフのようなクセは少なく、とても食べやすい。
味は皮なしのソーセージを食べているようです。ソーセージの中身と比べると、もっと噛みごたえがあって、肉独特の旨味が強く感じられます。
肉とあぶらを積極的に一緒に食うとは!リエット凄いぞ!
これは酒を開けずにはいられない。
続いてパンに塗って食べてみました。レバーペーストよりもクセが少なく、果物のジャムより食べ応えがある。
とにかく酒が飲みたくなる味です。ビールもいいがやはりワインか。日本酒にも合うでしょう。長期保存も出来るし、いざと言う時の酒の肴として冷蔵庫に常備しておきたい一品だ。
自分で作ってみよう
さて、この実にうまいリエット。買ってきて家に置いておくのもいいですが、どうせなら自分で作ってそれを常備しておきたい。
ということでリエットの作り方が解説された本を買いました。
コンフィの作り方も詳しく書かれています。プロ向けの本。
どうせなら本格的に作ってみるかとアマゾンでザックリとレビューを見ながらプロ向けと思われる本を購入。
「肉のやわらかさにおよぼす加熱温度の影響」などコンフィの科学的な解説も載っていた。
プロ向けだからか手順説明は割と大雑把。しかし写真が多く見やすい。
うまそうな肉写真が並ぶ。料理本見ると腹が減るね。
とにかくこの本を使ってリエットを仕込んでみましょう。
プロ仕様はハードルが高い
それでは本を見ながらリエットを作っていきます。しかし、一つ問題が出てきました。
10人前のレシピ。店で仕込む分量だ。とはいえ、
うちの店は小さいから一度にこんな分量仕込んだことがほとんどない。
仕込む量がやたらに多いです。肉が塊で2kg。かなりの大きさです。そしてさらに自作実現を阻む大きな問題が出てきました。
ガチョウの脂6リットル。サラダ油6リットルとかでも結構大変な量なのに…
グレス・ドワなる脂を6リットル用意しろと軽く書いてあります。調べてみたところこれも
アマゾンで売っていました。
しかし、320g入りで1200円と高額。6リットルなんてとても用意できません。
肉は量を減らし、ガチョウのあぶらは豚の背脂で代用。
しかたがないので豚の背脂を1kgほど買ってきました。ここから豚ラードを取り出します。本によると、ガチョウの脂は熱伝導がゆるやかで香りがよいが無ければ豚の脂でも構わないとのこと。
いずれにしろ6リットルも用意するのは大変なので、肉も2kgから500gに減らします。
下処理に12時間
肉の塊を切るのはなんだかテンション上がる。
まずは肉の下処理をします。肉を3cm角ぐらいの大きさに切り分けます。
タイムの香りは肉によく合う。
切り分けた肉に塩をしたらタマネギ、ニンニク、ローリエ、タイムなどと一緒に混ぜ合わせます。
保存食作りは手間がかかる。
混ぜ合わせたものは空気に触れないように袋に入れるなどして12時間冷蔵庫に放置。リエット作りは時間がかかります。
家じゅうあぶらの香り
12時間保存した肉は豚背脂から取り出したラードで煮ます。まずはあぶら取り出し作業。
肉屋で1kg20円で売ってくれた。
このあぶらで揚げ物すると凄くうまい。しかし今日は肉を煮る。
鍋を火にかけると徐々にあぶらが染み出してきます。部屋中がラードの香り。
低温を保つにはやはりこれ。断熱調理鍋。油を80度ぐらいに保つ。
ラードが溜まったらそれを肉が入った鍋に移します。材料にかぶるぐらいあぶらが入ります。
IHのコンロなら鍋を80度ぐらいに保つのが楽らしい。
あぶらを入れたら80から85度ぐらいに加熱して、その温度を保ったまま8時間煮ます。
このまま食べてもいいのではという、うまそうな香りがする。
断熱調理鍋を使ったので、時々再加熱しながら8時間保温調理。
箸でつまんで切れるぐらいの柔らかさ。
低温のあぶらで8時間煮た肉は驚くほど柔らかくなっています。このままで食べてもいいぐらい。
ここまでで保存12時間、煮るのが8時間。20時間以上かかっています。しかし、まだ作業が残っている。砕いてあぶらで閉じ込めます。
分けたあぶらはこの後使うので大事に保存。
まずは肉とあぶらを分けます。分けた肉からローリエを取り出し、続いて肉を砕きます。
あぶらは素晴らしい調味料。
本ではボールに入れてホイッパーやヘラでつぶしていくとあるのですが、手間がかかるのでここはフードプロセッサーを使用。
混ぜ合わせながら煮る際に使ったあぶら、塩、黒胡椒で味を調えていきます。
本当は陶製の容器に入れると書いてあったがタッパーで代用。
味を調え、あぶら混ぜ合わされた肉は容器に押し付けるように詰めます。
さらににあぶらをかけて封印。このあぶらも食べるとは、フランス人どんだけあぶら好きなんだ。
肉を詰めた上から残っているあぶらをかけて空気を遮断します。このまま放置しているとあぶらが固まってくるので、白く固まれば出来上がり。
長かった…
白い、茶色い、うまい!
それでは、出来上がった物がこちらです。
白いあぶらの毛布の下には肉の大地が眠っている。
あぶらに覆われた肉からほんのりとスパイスの効いたいい香りがしてきます。
肉とあぶらが美味しい層を形成している。
美しい肉とあぶらのセパレート。まずはこのまま食べてみます。
これはうめえ!肉とあぶらの旨さが口の中に全力で広がるぞ!
凄くうまい!少しスパイスのきいた肉の旨味。深みのあるあぶらの甘味。それが口の中でうまく合わさり、調和がとれた美味しさとなって長く続きます。
肉をあぶらで煮ただけでは飽き足らず、あぶらと混ぜて一緒に食べるとは。フランス人恐るべし!
寄りに寄った大きめの写真でおいしさをお伝えします。
つづいてパンに乗せて食べてみました。肉とあぶらの味が炭水化物に更なるうまさを与えている!背脂から加熱して取り出したあぶらの為か、くさみみやしつこさがなく、サラッとしていて味があります。これなら米の飯に合わせてもいいかもしれない。
米の飯ではなく米の酒に合わせてみた。うまい物を食べてうまい酒を飲むと幸福な気持ちになる。
試しに日本酒と合わせてみたところ、非常によく合いました。リエットはワインだけでなく日本酒でもいけます!
また作ろう
リエットは非常にうまかったです。作るのは手間がかかりますが、冷蔵庫に入れておけば20日ぐらい保存が出来るのでしばらく楽しめます。小分けにして冷凍しておけば1か月ぐらい使えるそうです。
今回はフードプロセッサーを使用したので肉がかなり細かく、購入したものより柔らか目だったので、次回作る時はヘラで根気よく崩す方法も試してみたいです。
ぜったいまた作ろう。
残ったあぶらは瓶に詰めて保存。これは何かを炒める時にでも使う。