特集 2013年1月26日

夜の鹿のドラマを観察する

鹿の夜をのぞいてみたいと思います!
鹿の夜をのぞいてみたいと思います!
「今日の夜は何してる?」みたいな感じで誰かを飲みに誘うことがあると思う。それぞれに夜の過ごし方があり、中には明日に疲れを残さないための夜を過ごすコツみたいなものもあるだろう。

もちろん夜を過ごすのは人間だけではない。人間の場合は「あったかい布団で眠るんだろな」という予測はできるけれど、動物の場合はどうなのだろう。そこで、鹿の夜をのぞいてみたいと思う。
1985年福岡生まれ。思い立ったが吉日で行動しています。地味なファッションと言われることが多いので、派手なメガネを買おうと思っています。(動画インタビュー)

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> 個人サイト Web独り者 彼女がいる風の地主恵亮

夜鹿を観察してみよう!

夏になると動物園や水族館で夜の動物を観察しよう、という企画がよく催されている。明るい昼間の動物はよく知っているけれど、夜の彼らのことはよく知らない。サバンナにでも住んでいれば見れそうだけれど、日本では見ることができないのだ。
昼間の彼らしか知らない
昼間の彼らしか知らない
夜の彼らは何をしているのだろうか。夜の山に入れば勝手にナイトサファリ的なこともできそうだけれど、それは怖い。こっちはかわいい動物を期待しているのに、熊でも出てこようものなら、もはや夜の動物は何をしているのだろう、という疑問は吹っ飛び、僕は何をしていたのだろうという後悔しかない。しかし動物が好きな僕としては夜の彼らのことを知りたい。
そこで奈良公園の鹿です!
そこで奈良公園の鹿です!
夜の動物園は簡単に入れないので、目を付けたのが鹿である。奈良公園に行けば嫌でも鹿が目に入る。あの数の鹿を朝の山手線に乗せれば通勤ラッシュはさらに激しさを増すだろう。また奈良公園の鹿は野生だ。サバンナに行かなくても野生の動物を夜に観察できるのだ。
ということで、夜の動物(鹿)を観察します!
ということで、夜の動物(鹿)を観察します!

鹿をのぞきみ

日中はたくさんいた奈良公園の鹿だけれど、日が暮れると上手く掴めずスープの中に残ったコーンみたいにまばらになっていた。そんな数少ない鹿をこっそりと観察する。こっちの存在に気づかれると、人に見せる用の過ごし方をするかもしれない。なのでこっそり。それと、とにかく寒い。夜の動物を観察するイベントが夏に多い理由を理解した。寒いのだ。
ひとつのところに集まっている
ひとつのところに集まっている
基本的には数頭で集まって身を寄せ合っていた。座っているか、何かを食べているか。夜の過ごし方としては人間と似ている。僕もだいたいこんな感じだ。そして、動きがない。夜の鹿を見ていたのは僕だけだったが、その理由を理解した。動きがなさ過ぎて退屈。テレビなら放送事故だ。
少し離れたところに一頭だけいる
少し離れたところに一頭だけいる
先の群れにから少し離れたところで、一人夜を過ごす鹿がいた。大人数の飲み会などに馴染めないタイプ。僕に近い気がして、応援したくなった。彼の目線の先には先の群れがいる。本当は群れたいのだ。でも、群れられない。ドラマのようなシチュエーションではないか。ここから恋の物語が始まるのだ。
始まらなかった
始まらなかった
ドラマだとここから会社のマドンナ的な人と恋仲になるはずなのだけれど、この鹿はピクリとも動かない。何のドラマも始まらないのだ。見ているコチラとしては退屈で仕方がない。

学生時代に友達が作っていた自主制作映画がこんな感じだったと思う。最後まで特に何も起きず、家族で食事をして終わりだった。休日か! と思ったのを覚えている。この鹿の物語もそんな終わりなのだろうか。
立った!
立った!

ドラマが始まる

一頭だけ離れていた鹿が急に立ち上がり先の群れを目指した。東京ラブストーリーで言えば「トゥクトゥーン」と音楽がかかるところである。やっと物語が動き出した。夜は長いのだ。そんなに焦る必要はなかったのかもしれない。ここから名作と言われるような展開が待っているのだ。
群れを目指す
群れを目指す
名作の予感を感じる。一歩一歩確かな足取りで群れを目指す。その視線はまったくブレない。群れを見ている。映画なら「事件は現場で起きているんだ」だし、ドラマなら「僕は死にません」で、アニメなら「チャララチャッチャラー、スモールライト」である。そんなクライマックスを僕は生で見ているのだ。これぞ自然のドラマである。
普通に座った
普通に座った
名作ではなかった。群れに合流しても静かだった。人間の飲み会だったら、合流後に乾杯をしたりして、盛り上がると思うが、鹿の合流はそうでもない。静かな合流。実はこの合流の前にもこの鹿は一度合流して離れている。そして、今回の合流である。その時も静かな合流で今回も静かな合流。鹿界のブームなのだろうか。静かな合流。
とにかく記念撮影はしてみた
とにかく記念撮影はしてみた

繰り返されるドラマ

座った鹿はまたしばらくそこで時間をつぶし、急に立ち上がり、先の場所に戻った。彼にしても、来たのに盛り上がりがないぞ、と疑問に思ったのかもしれない。これでこの夜3回目の離れるである。夜の動物を見ようブームが起きないのは盛り上がりがないからが理由かもしれない。
さらに1時間後、また一人になっていた
さらに1時間後、また一人になっていた
奈良の方に話を聞いたら、基本的に奈良公園の鹿は夜になると山に帰り、一部が公園に残るそうだ。中には夜でも道路を闊歩してひかれてしまう鹿もいるらしい。盛り上がりこそないけれど、それがリアルかもしれない。人間の夜もだいたいはこんな感じだ。そんなに分かりやすいドラマは起きないのだ。分かったことは冬の夜に鹿を観察すると、人間は次の日風邪をひくである。
とにかく寒かった!
とにかく寒かった!

映像科の人はぜひ!

夜の鹿は何をしているのかと思い観察をしてみた。その結果、美大生の作った自主制作映画のような盛り上がりがあまりないドラマであることが分かった。ちなみに美大・映像科あるあるとして、魚をやたらと陸で跳ねさせる、というのがある。信じられないけれど、3本に1本は、何の脈絡なく魚が陸で跳ねているのだ(金魚、フナ、鯉などの淡水魚が多い)。ネタがない映像科の人は鹿の横でぜひ魚を跳ねさせて欲しい。映像科の王道のような作品が撮れるはず。僕は映像科だったので、学生時代にやればよかったと後悔している。
昼間の鹿も夜の鹿も動きにはあまり違いがない
昼間の鹿も夜の鹿も動きにはあまり違いがない
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