ほかにもある
無駄にウキウキするのは件の「きつねとたぬき」だけではない。ざっと売り場を回ったところ、カレー界のカラーリングがすごいことになっていた。
金文字の輝きが、クリスマスっぽさに一層の華を添える
こちらの発色のいい赤と緑も「っぽい」。
レトルトも赤と緑推し。
この見事なまでのクリスマス感!
思わず「カレーといえば黄色だったはずだが…」と呟かずにはおれないほど、売り場は赤と緑で構成されていた。
(ただしカレー粉などは相変わらず黄色メイン)
食べ物にも当てはまるのでは
赤と緑がセットになっただけで、こんなにもクリスマスっぽさを演出できるなら、それはなにもパッケージに限ったことではないだろう。
たとえば見慣れたコレだって…。
考えてみればクリスマスカラーじゃないか。
うん。クリスマスだ。
さらに緑の分量が増えたら、ますますクリスマスっぽくはならないだろうか。
なかなかいいが、パセリが付け合わせ以上の分量で載っていて、いささか現実的でない。
ならば、これでどうだろう。…うん、一気に現実味が増した。全部食べられる。
ここに星形にカットしたチーズでも添えればクリスマス度はさらに加速するのだろうが、今回は純粋に赤と緑オンリーで進めてみたい。
そして大事なのは、実際に食べてみておいしいかどうかである。
食べ物として完成させるため、バジルソース(緑)を絡めたマカロニにトマトソースを乗せてみた。
さらに、その上から先ほどのプチトマトとブロッコリーを配置。
白もクリスマスカラーらしいが、なんだか「イタリア国旗をイメージしました」みたいなことに。
…ちがう。こういうことじゃない。よかれと思ってマカロニを加えたのが敗因だったか。余計な手間をかけることでクリスマスから遠ざかってどうする。
もっと簡潔に、パッと見ただけでクリスマスを連想せざるを得ない組み合わせってないだろうか…。
もしや、
こういうことでいいのでは。
筋子を大葉の上に乗せてみた。
お? キラキラ光る筋子とギザギザした大葉の形状とが相まって、なかなかのクリスマスっぷりじゃないか?
なんたってシンプルなのがいい。しかもウマイときたもんだ。
このままブローチとして胸元につけたくなるレベル。
クリスマスを意識するあまり「洋」の食材に目を向けがちであったが、もっと「和」で押し進めて構わないのかもしれない。それならいくらでも考えられるぞ。
とことん「和」でアプローチ
ならば、この組み合わせはどうだろう。
キュウリに格子状の切り込みを入れ、甘酢に漬けてみた。
同じく酸っぱい食べ物で赤といえば、コレなんてどうだ。
食べやすいかと串に刺してみたところ、なんだか妙なことになった。
なにこの珍妙なオブジェ。
うーん。普段なら「ふざけてる。あり得ない」と却下する形状だが、クリスマスツリーのオーナメントっぽいといえば、ぽい。
「クリスマスをイメージした純和風ピンチョスなんです」ということでゴリ推しさせていただこう。味の組み合わせとしては言わずもがな、合格だ。
さらに和を攻めてみよう。
年末になると売り場に出現する「酢ダコ」も見事に赤い。そしてどうしようもなく和だ。
対するは、わけぎのぬた。ツリーを意識して高く盛ってみた。
今度は酢×酢でキメてみた。ずぶずぶなまでの純和風である。
こういうツリーがあったっていいと思うんだ。
味の構成としても非の打ち所はまったくない。日本酒がうまくて仕方ないってのは、うまくいった証だ。
見た目も思った以上にクリスマスっぽい。酢ダコの赤の発色の良さを引き立たせるわけぎの深い緑。渋さ満点クリスマスツリーの完成である。
クリスマス、子どもにこれを出したら一生恨まれるであろうが、飲んべえには喜ばれると思う。
デザートでも成立するか
抹茶に代表されるように、和の甘味には思った以上に緑色が使われている。今回抹茶は使わなかったが、それ以外にも緑はある。
例えばこの、うぐいす豆。まさか私の人生でうぐいす豆を購入する日が来ようとは。
甘いモノを食べたら、次はしょっぱい物を食べたくなるのが人の常。
なんの工夫もせず、並べてみた。
…果たしてこれはクリスマスだろうか。
単に、お茶請けとして嬉しい一皿を作ってしまった感が否めない。渋すぎるチョイスがクリスマスを遠ざけてしまった。
緑といえば、草もちもある。
オーブンで焼いたら思った以上に膨らんだ。
どうせなら中の空洞に赤いものを入れてみたいが、なにがいいだろうか。
冷蔵庫を漁った結果、紅ショウガを少しだけ突っ込むことにする。
餅の中から熱気が吹き出し、妙に幻想的な写真が撮れてしまったが写っているのは草もちと紅ショウガである。ロマンのかけらもない。
何もかもが地味。地味。地味。
緑色の彩度がグッと下がった途端、クリスマスっぽさは木っ端微塵に。そして特筆すべきは、眉をしかめたくなるほどのマズさである。
心の底から「やるんじゃなかった」と後悔。
やはりビビットなカラーがいい
くすんだ緑はもうたくさんだ。そういえば、鮮やかな色の赤と緑といえば肝心のこれを忘れていた。
クリスマスの飾りとして、これだけで成立するんじゃないかというレベル。すばらしい。
来年のクリスマスリースをピーマンで作ったら、なにか問題があるだろうか。
ピーマンの表面が艶っぽいのもポイントが高い。
素材だけでここまでクリスマスっぽさを醸し出せているのだから、少しだけ違う色を足したところで全体に影響はないだろう…と豚肉を加え、青椒肉絲もどきを作ってみた。
クリスマスだ。誰がなんと言おうと、これはクリスマス色の中華だ。
「クリスマスの定番メニューとして、カラーピーマンを使った青椒肉絲を!」とピーマン業界が主張しない理由が分からない。こんなにクリスマス感満載で素晴らしくおいしいというのに。何故だ。
油がコーティングされたピーマンはキラキラと輝き、艶かしくさえある。嗚呼、ため息が出るほど美しい…。
ともあれ来年のクリスマス、私はこれを作ります。
最後に、すべての料理を並べてみた。
七面鳥などなくとも「これはクリスマスメニューです!」と胸を張りたい。
赤には交感神経を刺激して興奮させる働きがあるという。補色としての緑が、それをさらに加速させるという脳内メカニズム。
確かに無駄にワクワク感がある食卓となった。
当然ですが、意味がある
そもそもクリスマスカラーには「赤=キリストの血、緑=永遠の命」という意味があるのだそうだ。それを意識しようとしてなかろうと赤×緑で心が躍ってしまうのは、もう致し方のないことなのだろう。直接脳を刺激されたら為す術がない。
…となると、冒頭で紹介した「カレーのパッケージに赤と緑が多い」というのも、納得のカラー選択なのであった。
確かにイチゴもヘタ付きの方が「わあ!」という気分になる。