特集 2012年12月18日

だんだんペイズリー柄になっていく旅

ペイズリーを探して全身ペイズリーになる。それで池に行くと微生物に見えるか。
ペイズリーを探して全身ペイズリーになる。それで池に行くと微生物に見えるか。
ペイズリーだって生きている。

ペイズリー柄の愛好家はそう言ってるんじゃないだろうかとふと思った。ゾウリムシやミドリムシと見まごうあの微生物っぽさ。微生物でないとしても、あふれでるあの生命感はなんだ。

生物が死にゆく季節に生き生きとした装いを。ペイズリーを探してかたっぱしから着ていきたい。
2006年より参加。興味対象がユーモアにあり動画を作ったり明日のアーという舞台を作ったり。

前の記事:銭湯に牛乳があるのは北大生のリクエストから?

> 個人サイト Twitter(@ohkitashigeto) 明日のアー

できればぶらぶら探したい

ペイズリーをぶらぶら探したいなと思い、同じくデイリーポータルZライターの西村さんに声をかけた。

西村さんはデイリーポータルきってのぶらぶらしてるおじさんで、ぶらぶら探しにはうってつけの人物だ……ああ、この一文のめくるめくあたまのわるさよ。

しかし私たちがぶらぶらしてるのは事実で、金曜の朝に声をかけて昼に集合というご隠居さんみたいなことが実現したのだ。

(さらに悲しいのはふたりのおしりの時間がともに子供のお迎えであることだ)
朝声かけて昼集合が実現する
朝声かけて昼集合が実現する

日暮里で

西村:ペイズリー柄ってどこで探すんですか?
大北:ペルシャ雑貨店とか原宿の古着屋さんですかね
西村:日暮里あたりも服屋さん多いんじゃないかなあ
大北:繊維街あるしペイズリー柄の生地見に行きましょうか。それでそこからぐるぐる移動しましょう
日暮里の駅前にあった激安衣料品店をのぞいてみた
日暮里の駅前にあった激安衣料品店をのぞいてみた

初ペイズリー

先は長そうだが、とりあえずまあ入ってみるかと駅から一番近い激安衣料品店に入ってみると、なんといきなりあった。

西村:あったあったあったあった
大北:あったあったあった

普段ならなんとも思わないペイズリー柄も、いざ探すとなると宝物に見えてくるのはなぜだろうか。ふたりともホクホクのおいもさん状態であった。
「これ見てくださいよ、なんて生き生きとした柄なんだ」
「これ見てくださいよ、なんて生き生きとした柄なんだ」
大北:すごい! あらためて見るとなんて生き生きとした柄なんだ
西村:これ大丈夫ですかね。肩にひもをかけるタイプだ
大北:ゴムだから着れちゃいますね、うわ~、いきなりあったな~
西村:980円だ、安い
大北:買えちゃうな~うわ~どうしようかな~
西村:大北さん、こっちこっち、こっち見てくださいよ
ジップアップスウェットまで見つかってしまった
ジップアップスウェットまで見つかってしまった

終わってしまうのではないか

大北:アウターまで見つかってしまった!
西村:1980円ですよ
大北:ちょっと待ってくださいよ、もう全身ペイズリーじゃないですか
西村:完了してしまいますね
大北:早すぎる。原宿だペルシャ雑貨だ、なんて言って日暮里徒歩二分で終わるなんて……
繊維街ではペイズリー柄の生地がバンバン見つかる
繊維街ではペイズリー柄の生地がバンバン見つかる

日暮里はペイズリーの街だ

最初の店で上下見つかってしまった。とりあえずスルーしたが、その後も生地屋でペイズリー柄がバンバン見つかる。

大北:あれもペイズリー、これもペイズリー
西村:もう日暮里はペイズリーの街だ(※)と言ってもいいかもしれませんね
大北:まったくなんですが、でも問題はね、これ全体として早すぎるだろうってことなんですよ
西村:もう記事が終わってしまう
大北:まとめで書くことですよ、日暮里はペイズリーの街って

※ちなみにペイズリーとはイギリスの街の名前である
新コンビ「ヘラジカと西村」の結成である
新コンビ「ヘラジカと西村」の結成である

銃にかこまれる

大北:西村さん、そこ立ってみてください。そう、うわ、でか~っ、ヘラジカってこんなにでかいのか~
西村:これアメリカにいるやつですよね
大北:もしくは西村さんってこんなに小さいのか~
店長:ほぼウシだね、種族的にもウシの仲間だよ

いきなりなんだという話だろうが、どうしようかと考えながら歩いていたら「三進小銃器製作所」とあった。銃器?なんだろうと思ってついぶらぶら入ったら銃砲店だった。

こうした記事と関係ないことをしはじめるといけないのはわかっている。それはわかっているが、それでもぶらぶらは止められない。

ぶらぶらは坂道用のギアみたいなもので、歩みは遅い分推進力は強いのだ。(今、なんとかぶらぶらを正当化しようとしているがなんの根拠もない)
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ぶらぶら力があまってつい銃砲店に入ってしまった
ぶらぶら力があまってつい銃砲店に入ってしまった

銃って買えるんだな

西村:お父さん、そもそもなんですけどこれって一ついくらくらいするんですか?
店長:新品で20万円くらいで、中古で探せば5万くらいからあるよ
大北:安い、モデルガンでもそれくらいするんじゃないですか
店長:モデルガンよりも安かったりするね
大北:弾はいくらくらいするんですか?
店長:むかしは弾一発ラーメン一杯分、なんていってたけどね、今は40円。
大北:安いな~。ラーメンも40円で食えないかな

さすがぶらぶらおじさん、西村さん。ただぶらぶらしているだけで、弾丸一発ラーメン一杯分なんてトリビアが集まってくる。

いずれぶらぶらするだけで花が咲き病人が全快するブッダ級の聖人になったらいいなと思う。いや、ぶらぶらはいい、ペイズリーの話だ。
スタート地点はこの服装。柄がなく生命感がない。
スタート地点はこの服装。柄がなく生命感がない。

ペイズリーとはなにか

西村:ペイズリーってなんなんでしょうね。ミドリムシみたいだなーって思ってたけど
大北:ぼくもそう思ってたんですけど、調べたら松ぼっくり説、アーモンドやマンゴーの種説、花、葉、魚、生命の樹説などなどたくさんありますね。

大北:インドとかペルシャとかにあった柄で、西欧の人に好まれてペイズリー地方で生産されたからペイズリーらしいですよ。

大北:「どのような由来であろうと、ペイズリーは有機的な形をもっていて、生命そのもののように見える」ってまとめてるサイトがあった。たしかにそう。生命感がある。

西村:生命力の象徴ということでいえば、泥棒の風呂敷の唐草模様も蔦の生命力にあやかったっていう話ありますね
大北:唐草模様もシルクロード由来だし、ペイズリー自体「勾玉の唐草模様」だから
西村:ルーツは一緒なのかもしれませんね
ザ・おばちゃん用「大型ショール」を発見
ザ・おばちゃん用「大型ショール」を発見

ついに第一号ペイズリー

大北:あ、ペイズリー柄ショール980円か。もうここらで買っておくべきですかね
西村:ついにいきますか
大北:あら、ペイズリーだわ。って軽く買う感じで
西村:お花がきれいだから摘んでく、みたいなね
大北:ペイズリー自生してたらいいんですけどね
西村:大自然感ありますよね、ペイズリーって
大北:大草原の小さなペイズリーの家に住みたい……
お母さん、ペイズリー柄の起源ってなんですかね? 「え?ペイズリーって何?」
お母さん、ペイズリー柄の起源ってなんですかね?
「え?ペイズリーって何?」

誰も知らないペイズリーの起源

雑貨店のお母さんにペイズリーってそもそもなにを意味してるんですかね?と聞いてみたところ「ペイズリーって何?これペイズリーっていうの?」という答えだった。

意外と認知されていないぞ、ペイズリー。今記事としてこんな真正面から紹介していて大丈夫なのか、ペイズリーよ。
(モデル私物)とか書いているなあ、とストリートスナップ風に
(モデル私物)とか書いているなあ、とストリートスナップ風に
これが今回ゲットしたペイズリー。大きな柄がオオサンショウウオのようだ。生命力とカーテンっぽさを兼ね備えたペイズリー。
これが今回ゲットしたペイズリー。大きな柄がオオサンショウウオのようだ。生命力とカーテンっぽさを兼ね備えたペイズリー。

まだまだおしゃれ

もともとペイズリー柄は一点だけ取り入れてアクセントとして使うのが本来のおしゃれなようで、今回のショールは正しい着こなし方と言える。(おしゃれをしたいわけではないが)

そして一点買ってペイズリーが仲間を呼ぶように、隣のジーンズショップでもまた発見したのだ。やはりペイズリーは生きている。
ペイズリー柄のシャツってあるな~
ペイズリー柄のシャツってあるな~

誰も知らないペイズリーの起源

大北:またあった~!
西村:いいじゃないですかこれ。1980円?買えますよね
大北:は~、人の買い物だと思って
西村:これあとから着れるしいいじゃないですか
大北:……

大北:いけないいけない、買い物するたびにテンション下がってしまってる
西村:いいですよ、これは。着られるし
大北:だったら西村さんが着ればいいじゃないですか!
西村:……
大北:実際、ふつうに着たくて買ったものとならべたら着なくなるでしょう!
西村:はい、すいませんでした
たしかに生き生きとしてきたが、まだおしゃれの範囲内じゃないか
たしかに生き生きとしてきたが、まだおしゃれの範囲内じゃないか
このペイズリーは生命感がうすい。「日常でも着こなせそう」は「生命力」と対極にあるのではないか。
このペイズリーは生命感がうすい。「日常でも着こなせそう」は「生命力」と対極にあるのではないか。
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生地屋さんで衝撃のペイズリーを発見。生きているぞこれは!
生地屋さんで衝撃のペイズリーを発見。生きているぞこれは!

生地屋でこの日一番のペイズリーを発見

日暮里繊維街のはしまでいき、ぶらっと入った生地屋さんでこれぞというペイズリー柄を見つけた。

大北:これはすごい、精細だしなんてきれいなんだろう。ここまでくればもうこれ生きてるでしょ
西村:蝶も飛んでますからね
大北:実写なんじゃないかこれは
西村:うん、プリントですね
大北:こんなきれいなものあるのか~って。今シルクロードから伝わってきたものを見た正倉院の人と同じ思いです……
使うあてもないが思わず購入。天国にいったらこんなペイズリーが舞ってるのではないか
使うあてもないが思わず購入。天国にいったらこんなペイズリーが舞ってるのではないか

まだまだおしゃれ

西村:まだまだおしゃれですよね
大北:ペイズリー柄着てペイズリー柄探すの、はずかしいなあ
西村:ペイズリーをもっと着たいって欲望まるだしですよね
大北:もうこれはペイズリーどスケベですよ
西村:どスケベがペイズリー着て歩いてる
大北:あ~、はずかし
ペイズリー柄を着てペイズリー柄を探すペイズリーどスケベ
ペイズリー柄を着てペイズリー柄を探すペイズリーどスケベ

売れちゃってるのではないか

そろそろあきらめて駅前の店でペイズリー柄を買うときがきた。ズボンを買ってしまえばほぼ全身ペイズリーになってしまうことだろう。

大北:もしかして、もしかしてですよ、売れちゃったって可能性ありませんかね
西村:うわ~、ないでしょうね~
大北:ないかな~
西村:ないですよね~
大北:ペイズリーマニアの通ったあとは、池にゾウリムシさえいないみたいな話があるんじゃないですかね
西村:ペイズリーマニアがまれですから通らないでしょうね~
きっちりあった。「こいつやっぱりペイズリー買うんだな」という見た目である
きっちりあった。「こいつやっぱりペイズリー買うんだな」という見た目である

人からペイズリーに進化

西村:ズボンをはいてから一気にきましたね
大北:あ~やだやだ
西村:ヤカンが沸騰してずっとピーッて鳴ってるみたいな、そんな状態ですよ
大北:ペイズリー沸点超えかあ~
西村:水からお湯になるみたいに
大北:人からペイズリーに……もう人間としての記憶はここまでかもしれない
これが全身ペイズリーか。生命感に満ちあふれていて、圧倒的な見た目のうるささ
これが全身ペイズリーか。生命感に満ちあふれていて、圧倒的な見た目のうるささ
アウターのペイズリー。これぞ正統派。
アウターのペイズリー。これぞ正統派。
ズボン(ワンピース)はギザギザのペイズリー。よく見ると頭がおかしくなってくる。
ズボン(ワンピース)はギザギザのペイズリー。よく見ると頭がおかしくなってくる。
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上野に移動。「この街は地味だな~」と師走の街に生命感あふれる男が一人
上野に移動。「この街は地味だな~」と師走の街に生命感あふれる男が一人
色んな柄の人形が駅にかざってあったが「こんなものは柄とは呼べない」
色んな柄の人形が駅にかざってあったが「こんなものは柄とは呼べない」

街の柄をバカにしはじめるペイズリー

西村:あ、色んな柄の人形がかざってありますよ
ペイズリー(大北):柄といってもどれもこれも生命感のない……こんなものは死んでますよ
西村:ペイズリーないんですかね
ペイズリー:ない。これは柄とは呼べませんよ、シミです、シミ
西村:そんなことはないでしょう
ペイズリー:たしかに、作った人に悪い発言でした。これも柄です。僕がペイズリーなだけなんです。
「西村さん、これおもしろいんですか?」「大丈夫、大丈夫ですよ」
「西村さん、これおもしろいんですか?」「大丈夫、大丈夫ですよ」

ペイズリーなまはげあらわる

西村:ちょっと、この前に立ってもらっていいですか?
ペイズリー:これですか?こうですかね?
西村:あ、いいですね~。大北さん、なまはげみたいですよ
ペイズリー:せ、生命感のない柄はねえが~
西村:ペイズリーなまはげ
ペイズリー:これ大丈夫なんですかね、だいぶこっぴどくやられてませんかね
西村:大丈夫、大丈夫です
アメ横のネクタイ屋でペイズリー発見
アメ横のネクタイ屋でペイズリー発見
見てるだけで利息がトイチで発生しそうなペイズリー。
見てるだけで利息がトイチで発生しそうなペイズリー。
ギャル系の店だとものすごくなじむペイズラー(ペイズリーを着る人)
ギャル系の店だとものすごくなじむペイズラー(ペイズリーを着る人)
ダイソーでバンダナも購入。もっとも身近なペイズリーを最後に買った。
ダイソーでバンダナも購入。もっとも身近なペイズリーを最後に買った。

ペイズリー、池のそばにたつ

日暮里から上野に移動して、あらたに二点ペイズリー柄を増やした。ペイズリーにペイズリーを重ねて生命力が限界を超えはじめている。このままだと新たな生命をうんでしまいそうなのでここらで終わりにしたい。

そして上野に移動したのには目的があった。

全身ペイズリーで池のそばに立つと、ゾウリムシみたいに見えるかなと思ったのだ。
そして全身ペイズリーに。見ているだけで、心がざわざわする
そして全身ペイズリーに。見ているだけで、心がざわざわする
ぼくはゾウリムシに見えると思う
ぼくはゾウリムシに見えると思う

ペイズリーとして生きていくこと

ペイズリー:う~ん、最後の最後になってあれですけど、こういう人いなくもないですね
西村:高円寺あたりだといるんじゃないかという気も
ペイズリー:あの人たちはペイズリーなのか
西村:でも間近で見ると柄の威力ありますね
ペイズリー:着てるだけで視力さがりそうですよ

ペイズリー:こうやって池のそばに立つとゾウリムシみたいに見えてきませんか?
西村:え、う~ん、そうかな~
ペイズリー:なんとな~く微生物っぽくはあるでしょ
西村:自然にとけこんでるのはそうですね、ちょっとあっちの木陰にいってみましょうか
ウォーリーを探せ(ペイズリー版)
ウォーリーを探せ(ペイズリー版)

人からペイズリーに

西村:あ、やっぱりカモフラージュになりますね、ピンクが目立ってますけど
ペイズリー:やっぱりペイズリーは自然のものなんだ
西村:はからずも起源にたどりつきましたね
ペイズリー:ペイズリーは生きている。その思いをもとにぼくは生きます。そしてこの服は保育園のバザーに出します。
西村:え、このシャツは着れるんじゃないですか~
ペイズリー:だったらあなたが着ればいいじゃないかと何度言わせるんだ

ペイズリーを着て「あたし、生きてる……」

全身ペイズリーになって池のそばに立ってみればゾウリムシみたいに見えるかなと思っていたが、なんとなくそんな風に見える。気がした。

いや、ゾウリムシには見えないよという人もいるだろうし、なんでゾウリムシが喋って記事かいてるのかと混乱している人もいるかもしれない。

そんな二人がお互いの意見をぶつけることはないだろう。どうにも無益だし、わたしたちはサイレントでできればマジョリティでいたいからだ。

そんななか、ペイズリーの見た目のうるささよ。これはサイレントでいられない。それが見た目の生命力にもつながっているのだろう。

生きるということはそもそもうるさいのである。

ペイズリーを着ためんどくさいやつは、見た目にうるさいが生きている感はすごい。だがどっちがいいということはないので、ペイズリーは買わなくても大丈夫。ぼくが代わりに買っておいたし。

今日までの自分と同じ明日を送ろう。
ペイズリーのぬけがら
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