会場がアツい!(物理的に)
今回訪れたのは
アクアリウムバスというイベントで、昨年に引き続き今年で二回目の開催となる。前回の開催後、「生き物好きにはたまらない催しだった」と知人たちからちょくちょく耳にしていたので、気になっていたのだ。
今年の会場は東京都立産業貿易センター浜松館
熱気ムンムン!
足を踏み入れた会場は大盛況で熱気に満ちている!いや、比喩じゃなくて本当に熱気がすごい。暑い。熱帯原産の生き物を多く扱うからそれに合わせているのだろうか。
水の入った厚手のビニール袋があちこちに。
魚たちは瓶や酸素をたっぷりパッキングしたビニール袋に詰めて販売されている。
そのためか会場内にはビュンビュン泳ぎまわるようなタイプの魚はほとんど見受けられなかった。
おそらく、一日限りのイベントとはいえ、各出展者とも輸送や展示のストレスに強い種類を選んで連れてきているのだろう。
ベタという魚。綺麗。
会場で特に目立ったのがこのベタという淡水魚。この魚は特殊な器官を使った空気呼吸ができるので酸欠に強く、一時的に瓶に入れて展示可能なのだ。その上華やかでもあるので、こういったイベントには最適なのだろう。
…そう思っていたらその上を行く魚が現れた。
有明海の泥を売る
さきほども書いた通り、魚は水質や酸素に関してデリケートなので展示するのも大変である。容器にパックできる水は少ないので、すぐ汚れてしまうし、溶けている酸素もすぐに消費されてしまう。水はできるだけ多いのが理想…のはず…なのだが…。
水、少なっ!
水がほとんど入っていない容器に魚が入れられているではないか!
何だこれ。どういうことだ。魚体が水から露出している。これはもう水質がどうこうとかいう問題じゃないだろう。駆け寄って良く見てみると…。
あっ、なんだおまえか。
売られていた魚は「水が苦手な魚」として有名なムツゴロウであった。
なるほどこれなら納得がいく。
僕「この泥みたいなのは何ですか?」 店主「泥ですね。」
その傍らにはムツゴロウたちの生息地である有明海の干潟の泥が。このイベント、こんな感じでペットショップにも置かれていないような思いもよらない商品が続々飛び出して来るので油断ならない。
日本一濁った海、有明海の生き物もあれば、日本一澄んでいる沖縄の海のものも。
宮古島の海水魚やサンゴの類を販売しているブースもあった。
海水魚やサンゴを採集する許可を持っている宮古島の漁師さんと提携して仕入れているのだそうだ。
水族館と違って、業界のこういう話をいろいろと聞けるのも面白い。
魚以外の生き物も!
珍しい魚を求めて会場をうろうろしているとこんなブースを発見。
爬虫類がいっぱいいらっしゃる!
観賞魚だけじゃない。会場のあちこちにヘビ、カメ、トカゲなどの爬虫類、それからカエルやイモリなどの両生類もいるじゃないか。
お惣菜か。
爬虫類・両生類の異様な充実ぶり。
いや、それどころか魚より爬虫類とか昆虫の方が多いんじゃないかというくらい、魚以外の生き物が充実している。
改めてこのイベントの概要に目を通すと、「アクアリウムバスは、熱帯魚をはじめ、爬虫類、小動物、両生類から水草専門店などさまざまなジャンルのお店が集結した即売会です
」とある。
「アクアリウム」とつくからてっきり鑑賞魚ばかりなのかと思いきや…。これは嬉しい誤算である。
お腹の甲羅が小さなハラガケガメというカメ。ハラガケとは腹掛け(童話の金太郎が着けているようなアレ)のことらしい。ずっと「腹欠け」だと勘違いしていた。
見とれるほど綺麗なヘビ
すべての原色が揃ったド派手なアカメアマガエル(隠れている脇腹は鮮やかなブルー。)
短い四肢にコロンとした体、そして愛嬌たっぷりの顔。最高に可愛い両生類界のアイドルフクラガエル。
虫派も満足。
ところで、爬虫類を扱っているブースの下に何やら意味ありげな箱が見えた。
ん、なんだこれ?
餌用のゴキブリでした。
引っ張り出してみると動物の餌用ゴキブリが弁当箱にパックされていた。生き物愛好家たちの闇は深い。
れっきとした商品であるのに机の下に隠してあったのは、やはり苦手な人に配慮してのことだろうか。
しかしゴキブリがダメな人でも歓迎できるイケメンな虫たちの姿も。
甲虫の王様ヘラクレスオオカブト。王様と言っておきながら、心の中で「背中が食べごろのバナナっぽいな…」と思っていたのは内緒だ。
僕がまだ小さな頃は動物園の催しで、厳重なガラス越しでしか見られなかった夢の虫、ヘラクレスオオカブト。まさか自前のカメラで接写できる日が来ようとは。いや、その気になればこのまま連れて帰ることすらできてしまうのだ。すごい時代になったなと思った。
世界一美しいクワガタと言われるニジイロクワガタ。
「クワガタ」という絶対的なブランドだけでは飽き足らず、タマムシもびっくりするようなビカビカ、ギラギラのカラーリングまで手に入れてしまったニジイロクワガタ。そのうちスズムシみたいに鳴きだすんじゃないかコイツ。
やはりクワガタやカブトムシはかなりファンが多いようで、出展が多かった。
すごく立派なオオクワガタがこの値段。いろんな商品が破格値で買えるのもこのイベントの魅力だ。
僕が幼稚園児の頃は一匹数十万円もしていた特大のオオクワガタが焼き肉の食べ放題より安く売られていた。思い出は遠くなりにけりである。
でもまあクワガタ・カブトは虫業界ではメジャーもメジャー。一般的なペットショップや下手すりゃデパートでも見られる。アクアリウムバスの本領発揮はここからである。
生きている姿をはじめて見た!タガメモドキという虫。
タンザニアバンデッドウデムシ。
神様がふざけて作ったような造形の奇虫「ウデムシ」や、
オオヤスデ。ものすごく硬くて興奮した。(オンマウスでモザイクがとれます)
馬鹿でかいヤスデなどがいる。驚くのは同じ奇虫の出展が複数のブースでかぶっていることである。
単純にかわいいのもいる
ヘビに虫とちょっとクセのある感じの生き物の紹介が続いてしまった。しかしそういう「キモカワイイ」系が苦手な人たちでも愛せる生き物もちゃんといた。
集団で固まっておやすみ中のフクロモモンガたち。撮影のために起こしてごめん。
フクロモモンガ。文句なしにキュートなアニマルである。モモンガと名がつくが、実はモモンガの仲間ではなくカンガルーなどと同じ有袋類と呼ばれるグループの動物だ。
哺乳類もいるんだ。欲張りだな、このイベント。
こちらのフクロモモンガの赤ちゃんは「リューシスティック」という体が白い突然変異。
ブタじゃないよ。
哺乳類だと他にはスキニーギニアピッグ(体毛の薄いモルモット)もいた。やはり、わざわざこのイベントで展示される動物は、ただ可愛ければいいわけではないようだ。一癖二癖ある珍しい動物を喜ぶタイプが多いのだろう(出展者もお客さんも)
植物もあるよ。
展示販売されるのは動物だけではない。水草をはじめ、鮮やかな緑があちらこちらで会場に華を添えている。
綺麗にアレンジされた鉢植えもあった。
しかし植物最大の武器、万人の目を確実に引くパーツである「花」はほとんど見かけなかった。そこもこのイベントの「らしさ」なのだろう。
ひときわエキゾチックな雰囲気のブースが。
とあるテーブルの上にキレイな水槽が並んでいたので、どんな動物が入っているのかのぞいてみたが植物しか入っていない。
店主に訊ねると、その植物こそが主役であると言う。この場合、水槽は小さな温室として機能しているのだろうか。
ここは「クリプトコリネ」という植物にのみ特化した、会場内でもかなりマニアックなブースだったのだ。
実は僕もこの手の植物(コケ、シダ、水草など、派手さは無いが繊細で落ち着いた魅力があるタイプ)が大好きなのでこれにはとても嬉しくなった。
なるほど、確かに渋く妖しい魅力がある。店主がのめりこんでしまうのもわかる。
このブースを担当しているのは企業やお店ではなく、熱心な一般の愛好家であった。
個人でも出展できるシステムのおかげで、規模は控えめながらも、とんでもなくピンポイントでコアな展示が見られるのである。これはいい。
瓶詰め深海生物
会場の隅にヒトデやエビなど、海の小動物を販売するブースがあったので立ち寄ってみた。
お気づきだろうか…。
生きてます。ホルマリン漬けとかじゃありません。
オ、オオオオオオオオ、オオグソクムシ売ってる!!
オオグソクムシとは本来、深海底に生息する生物である。(オオグソクムシについては当サイトのライター玉置さんによる
こちらの記事に詳しい。)
それがなぜ浜松町のイベント会場で、それも瓶詰めというカジュアル&ポータブルな形で生きたまま売られているのか。この出会いはさすがに予想できなかった。
かっこいい!
えへへ、ひっくり返っちゃった!
担当の方にお話をうかがうと、オオグソクムシは深海魚漁の際に混じって獲れてしまうのだが、実は飼育しやすくペットに向いているのだという。
いやいや、飼育が簡単だろうが難しかろうが、こんな生き物を飼いたいと思う人がいるのか?
…僕は本気で飼いたいと思いました。
それは明らかにメーカーが想定していない感じの使用法だと思うんですが…。
生き物モチーフのグッズも充実
会場で入手できるのは生き物そのものだけではない。
魚や爬虫類をはじめとしたさまざまな生き物にちなんだグッズも充実しているのだ。
こちらはお魚ポストカードなど
このお魚カードのブースなどイラストレーターさんが描いた好きな生き物の絵を使用した品物が目立った。どれもクオリティーが高く、購買意欲をそそられる。しかし…
コマイって…。
どのイラストレーターさんもちょいちょい趣味全開のマニアックな生き物を混ぜてくる。
「コマイのポストカード欲しいなあ~!」と潜在的にでも思っている人が全国にどれだけいると思っているのか。需要と供給という概念から意図的に目をそらしているんじゃないか。
だが、この「やりたいことやってる感じ」が実にいい!
ちなみに僕はこのブースで深海ザメの缶バッジを購入した。極小の需要と供給が一致した稀有な例であると言えよう。
買いそびれた手ぬぐい。通販とかしてないかな。
かわいいカメのイラストが目白押しのブース。
こちらはカメのイラストを使った品物がメインのブース。いろんなカメをめちゃくちゃかわいく、かつ特徴をうまく残してデフォルメしている。あふれる才能をものすごく偏ったベクトルに注ぎこんでいる。そこがまた良い。
ここまでデフォルメしていても、一目でちゃんと種類がわかってしまった。絵のことはよくわからないが、これってすごいことだと思う。
国別・カメメモ帳。
カメのイラストがたっぷり入ったメモ帳は国別。
カメが好きすぎて、こうやって描くカメを体系的に制限しないと収拾がつかなくなるようだ。
絵と言えばこんなブースもあった。
ガラス食器のブース。クジラをはじめ、海の人気者の手彫り絵が入った爽やかなデザイン。
と思ったら交尾中のカブトガニ柄のお皿とかあるし…。
こちらのお店ではリクエストに応えて好きな生き物を食器に彫ってくれるそうだ。
よーし、今度アレとアレとアレを彫ってもらおう…。
他にはこんなグッズが。
本物のヘビの抜け殻で作ったお守り。仕入れ先を聞くのを忘れた。
海獣モチーフのアクセサリー。
なぜかカプセル入り玩具が大量に。
なるほど、生き物のフィギュアなのか!
と思ったら全然関係ないのも入ってた。
もちろん水槽や餌などの飼育用品も充実。
隅々まで見ようとしていたらあっという間に閉場時間に。
じっくり見られなかったブースもあったので名残惜しかったが、それでも十分に「生き物見たい欲」は満たされた。満腹である。
生き物相手なので片付けも大変そう。
このアクアリウムバス、今年で二回目という産まれて間もない催しだけれど、今後も末永く続いていくことを願う。とても楽しかったから。