特集 2012年12月17日

飲み放題で、飲まない

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今年、禁酒記事を幾つか書かさせて頂いたが(「禁酒して飲み会を開催してみた」等)、現在もあまり飲まない日々を続けている。
飲まないってイイ! 頭はクリアだし、痩せるし。
しかし時は年末。忘年会など、パーティの多い季節だ。
知人のカフェ(バー)の、7周年記念イベントというのも、最近開催された。オールナイトで、いろんなDJさんやらミュージシャンやらが出て、生ビールをはじめとしたドリンクが飲み放題で3000円、という、破格のイベント。食べ物、飲み物の持ち込みもオッケーだ。
毎年、そこそこ飲んで、酔っぱらいながら楽しむのだが、今年は飲まないことにした。
そう、「飲み放題イベントで、飲まない」。自分内で初の試みだ。
9時間に及ぶイベントで、私はシラフで、酔っぱらった人々と会話していた……。

(以下の会話は、個人情報が含まれるため、かなり脚色・変換してあることをご了承ください)
埼玉生まれ。電子書籍『初恋と座間のヒマワリ』(リイド社刊)発売中。最近、ほぼ毎日ブログを更新していますので、良かったら読んでください。

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私が持ち込んだのは、もちろんノンアル飲料。
私が持ち込んだのは、もちろんノンアル飲料。
(友人Tちゃんとの会話)
「えっ、飲まないの?」
――うん、そんなわけで、今日は飲まないことにした…。飲まないでも充分楽しめるイベントだし。
「いや、生ビール飲み放題なんだよ!? 飲まなきゃ~。お祝いの席だしさ~。」
――いや、心が祝ってればいいんだよ。きみは飲みなさい、飲むのが好きなんだから。いつものように、がぶかぶ飲みなさい。私、これ買ってきたから。
「………オールフリー!? 雰囲気飲料じゃない。さてはまたダイエットか!?」
――いや、そうじゃないんだけど。たんに好奇心で……。
「そういえばさっき、スタッフのSちゃんに、『大塚さん痩せましたよねえ?』って言われたよ。」
――うっそ、まじで。まあ少し痩せたけどさ。ヤッター。
「Mちゃんにも言われた。何で私に言うのかね?」
――まー、そんなに仲良くない人に、直には言いにくいんじゃない、太った痩せたの話。でも嬉しいな。
「えー、酒を飲めよ! そして太れ! リバウンドしろ!」
――ヤダー。
会場には人がたくさん。
会場には人がたくさん。
(某出版社に勤める
Yさんとの会話)
――あ、おひさしぶりです~。それ飲んでるの何ですか? 透明だけど。
「ん? 焼酎の水割り。」
――酔っぱらってます?
「まあ、ぼちぼち。ハハハ。大塚さん、最近どう?」
――最近は……どうもこうもないですね。お金がないですね。涙が出ないほどお金がないですね。ハハハ。
「最近、自分の中で流行ってるものってないの?」
――えっ……。ん~、ゆるキャラですかねえ。
「ゆるキャラ! なんかニュースでもやってたねえ、ゆるキャラのグランプリっていうのがあるんでしょ。」
――そうそう。そこで優勝したバリィさんっていうキャラが好きですねえ。キャラクタービジネスとして、これから大ブレイクしていく感じなんですよ。そういうのを、横から見るのが好きです。
「くまモンは優勝しないの?」
――くまモンは、前年度優勝者として、今年はアンバサダーやってましたよ。優勝トロフィーを贈る側。
「くまモンねえ……去年、くまモンで本が出したかったんだけどさあ、営業部には通じなくて、出せなかったんだよねえ」
――今、くまモン本、6冊くらい出てますよね。
「出たよねえ。去年の時点でもさ、西日本に行くと、くまモンの盛り上がりが分かるんだけど、東日本にいると、それが体感出来ないからさあ、企画通らなかったんだよねえ。でももう、遠い存在になっちゃったよねえ」
――ゆるキャラブームですからねえ。
「くまモンの他、よく知らないんだけど、バリィさんってどうなの?」
――超かわいいですよ。でも、もう年明けには、初の書籍が出るらしいですよ。
「どっから出るんだろう。でもやっぱり営業部に理解がないと、流行りものって企画通らないんだよー…」
――あー。しかしこう出版って、本当に大変ですよね。本屋さんに行くと、本がいっぱいあるじゃないですか、あの中から売れるのって、相当なギャンブルですよね。
「まあねえ。でも年間100冊以上作って出せば、1冊くらいは当たるからさ。アハハ」
――あ、そういうもんですか。しかし大変だ……。

開始、2時間目。そろそろお酒に弱い子たちが、顔を赤くする時間。
よく見ていると、みんな、スマホを落とす落とす。
いろんな人が、いろんなスマホを落とす。それを「よいしょっと」という感じで拾う。
結論:スマホは結構丈夫だ。
オールフリーぐびぐび。
オールフリーぐびぐび。
(30代前半の友人、男性)
「大塚さーん、最近、アメーバピグやってるらしいじゃないですか。フェイスブックに書いてるの、見ましたよ。」
――あー、試しにやってみたんですよ。DJが出来る部屋があって、そこに入ってみたら、みんなでユーチューブの曲を選曲して、流しまくっているんですよ。ああ、こんな交流の場があるのか、と思ってカルチャーショックを受けましたよ。
「昔、アメリカにも、合法的にDJが共有出来るサービスがあって、僕、ハマりましたよ。あれ、楽しかったなあ。」
――ねー、なんかDJごっこって楽しいですね。
「よく『中2病』って言葉がありますけど、『高2病』っていうのもあると思うんですよ! DJごっこって、高2感あふれる感じしません?」
――ああー。半端にちょっと、いろいろなことが出来ちゃう感じね。
「そう、だけどお金も機材もなくて、世界は狭い感じ…。高2感については、みんなもっと、語りあったほうがいいと思うんですよ!」
――高2病。興味深いテーマですね。
「で、ピグで何か面白いことありました?」
――えーと、私は無料の服しか着てなかったんですけど、DJしてる人とか、みんなお洒落してるんですよね。それと比べちゃうと、ああ、服にお金をかけなきゃいけないのか、と思ったり。」
「ああ、比較なんですね。へえー。」
――本当に恥ずかしい、みすぼらしいなあ私って気分になるんですよ。あれ何なんだろう…。

DJのいるフロアに出て踊る。みんな片手にコップを持っている。私はカラのオールフリーの缶を持っていた。
いやなんか、バーのイベントで、手ぶらで踊るのって、なんとなく恥ずかしいじゃない。
イカしたDJさんが音楽をかける。
イカしたDJさんが音楽をかける。
12時前。日本語ペラペラでめちゃくちゃスタイルのいい、アメリカ人の女の子に話しかけられる。
「そのパーカー、可愛いですね。どこのブランドですか?」
――え? 高いものじゃないですよ、スカラーというブランド。
「オウ! 私もそのブランド、大好き!」
――えっ、そうなの!?
「好きデース。渋谷のパルコパート3にお店があって……。」
――そうそう。あとセレクトショップにもあるよね。
「そう! 池袋のアルパにすごーく安く売ってマス!」
――池袋アルパ! 本当? いいこと聞いた。今度行ってみますね。
今日は……何のキッカケで来たんですか?
「このカフェ、アメリカのサイトで紹介されてたんデス。
それで旅行中に来て、もう素敵で素敵で、大好きになって。
今、東京に住んで働いてて、通ってるんデス。友だちいっぱい出来て、すごい楽しい、サイコウ!」
――そうですか、なるほど。日本の何が好きなの?
「ゲームと、源氏物語!」
――……おおおお。
「大学では、日本文学を専攻してマシタ。」
――私、古い日本文学、全然詳しくないですよー。すごいな。
「私も古いアメリカ文学、まったく読んでいまセーン! 興味ぜんぜんナーイ!(きっぱり)」
――あ、そういうものなの?

開始5時間。そろそろみんな酩酊状態。
心底どうでもいい会話を始める。
みんなが持ち込んだお菓子とかが、散乱しはじめる時刻。
みんなが持ち込んだお菓子とかが、散乱しはじめる時刻。
(30代、
A君とB君の会話)
「B君さあ、挨拶代わりに、人のコカンを、ぽんぽんって叩くけどさあ……」
「ああ、ん? そうだね、やるね」
「その習慣、どれくらい続けてる?」
「……10年くらい?」
「ぽんぽんってしててさ、何かに詳しくなったりする?」
「エ?……そうだねえ、9割はほぼ同じ感触、という感じだね」
「そうなんだ」
「ちなみにキミのもその9割に入る。普通だね」
「あら、そう」
「あとの1割は、エッ? ってなるね。どっちの意味でも」
「………ふ~ん。大塚さん、どう思う?」
――……エ? どうも思わん!!

夜中1時半。みんな、疲れてくるころ。
ぼやぼやした話になってくる。
(20代後半、
女子との会話)
「大塚さん、最近どうですか?」
――あ~。ゆるキャラのバリィさんが好きだね~。
「それ何なんですか?」
――ええとね~(以下説明)。
「ふうん。私は『ごはんかいじゅうパップ』が好きですねえ。」
――あれも可愛いよねえ。ゆるキャラは日本を救うよ。
「今年流行ったものって、何ですかねえ」
――好きだったもの、ある?
「………星野源(俳優/ミュージシャン)」
――確かに!
「星野源!」
――星野源に会いたい!
「星野源と付き合いたい!」
――確かに付き合いたい!
「一緒に部屋でまったりしたい!」
――一緒にコンビニとか行きたい!
「一緒に美味しい餃子とか食べに行きたい!」
――いいね、貧乏デート!
「でも優しそうに見えて、絶対に面倒くさい!」
――その面倒くささも含めて、萌える!
「萌えますね、きゃー!」
――きゃー! っていうか、星野源、今年は一人勝ちだよね。文化系女子のハートをわしづかみですよ。
「私の周囲にも、星野源星野源言ってる人が多かったです」
――星野源くらいだったら、付き合えるんじゃないかって、みんな妄想するんだよねえ。
「ま、無理ですけどね」
――なんか5、6年くらい前、大泉洋が、その枠にいた気がする。
「ああ、そうかも。でも星野源のほうが、王子様っぽいけど。」
――王子様っぽいかなあ。何なんだろう、日本における王子様っぽさって。育ちがいい感じとかな?

午前3時、眠気とだるさが襲ってくる。
頭もポワーとしてくる。
ついに水を飲み始める私。
ついに水を飲み始める私。
(酔っぱらってる周囲
の人に、相談ごとする私)

――今度、ヨガ教室のクラスメイツで集まって、クリスマス忘年会をするんですけどね。
「へー、大塚さん、ヨガなんか行ってるんだ」
「女の子ばっかり?」
――女の子っちゅーか、20代から40代の女性ですね。
「それで?」
――プレゼント交換会をやろうという話になって…。
「へー」
「面白いじゃないですか」
――1000円以内の、気の利いたプレゼントを買わなきゃいけないんですけどね。
「ふむふむ」
――こないだ渋谷のヒカリエ行ったら、ロクシタンの小さいハンドクリームとか、コンランショップの小さいチョコとか、なんかショボいものしか買えないんですよ、1000円じゃ!!
「それは、ヒカリエに行くのが間違いなんじゃない…? あそこは1000円で買い物する場所じゃないでしょ」
「新大久保に行ったら、韓国コスメが安く買えるよ、パック1枚40円とかさあ」
――ああ、パック…いいかもですね。
「100円均一のものを、10個買えば? 10個のうち1個くらいは、相手が欲しいものが、あるんじゃないの?」
――それ、斬新。
「300円均一のもの3個でも可。」
――でもなー……。なんかステキなチョイスをしたいのに、みんなが喜ぶものがわからん、わからないのですよ。私、女子力が低いから。
「甘いものならいいんじゃない?」
「女子、甘いもの、はずれないでしょ」
――プリンジャムとか?
「そうそう」
――もうプリンジャムでいいかあ、新宿ペペの!
「ああ、ペペの2階にあるねえ…」
――新宿行く用事、あったっけなあー。

朝近くなると、「実は彼氏が出来たの~」「エエッ」みたいな会話も出て来た。
深い時間というのは、人は、真に話したいことを話すものだな、と思った。
明け方の灰皿。
明け方の灰皿。
イベントが終わりかけの頃、酔いつぶれたTさんが、
「ごめん、タクって帰る!! 同じ方向で疲れた人、同乗しよう!」と、人を誘い出した。私も乗った。
車内(4人乗り、女3人、
男1人の会話)
「つかれたね」
「やっぱオールはきついね」
「あと1時間で始発だけどね」
「この1時間がキツイんだよ」
「やっぱ酒飲んじゃうとね…」
「私たちも年とったよね」
「あの頃、20代だったもんね」
「朝まで飲んだ後、『つるとんたん』でうどん食べたもんね」
「今考えると、『つるとんたん』のお金で、タクッて帰れたんだよね」
「バカだったよね」
「体力あったよねー」
「もうぜんぜんだよね」
「ほんと」
「もう30代ってババアだよねえ」
「ジジイとババアだよ」
「……大塚さんは奇跡的に元気だよね」
――みんな、私より6歳以上、年下じゃないかあ! なんか腹立つなあ。
「ハハハハ」
「ハハハハ」
「ハハハ。体力あるねえ、大塚さん」
――むかー。

タクシーから降りると、お腹がすいていた。
ああ、お酒を飲まないで、眠らず起きていると、おなかがすくのかー!
という単純なことに気が付いて、富士そばで、かけうどん食べた。
……染みた。

というわけで、飲まなくても充分に楽しかった。

でも「周囲に酔っぱらいがいる」という状況が楽しかったので、
全員がシラフだったら、楽しくないのかもしれない……。
難しい問題です。
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