思えば私の人生、アルコール漬けだ。
毎日毎日、何かしら飲んでいる。休肝日なしの生活を、10年以上続けてる。
シラフで夜を過ごしていないから、夜の記憶はいつも曖昧。正気でいる時間が短い、一日が短い。これじゃ身体に良いわきゃないよ。
休止するって決めたら休止出来るのかな? 出来なかったらどうしよう。そんな不安に襲われて、缶ビールを買うのを止めた。
3日までは、イライラして辛かった。でも5日過ぎたくらいから、顔の輪郭が変わってきた。どうやら、むくみがとれたようだ。
一週間目、体重計に乗ってみると、2キロ減!! まじすか。お酒を止めると、痩せるとは聞いてたけど、本当なんですね。
でも、左半身がうすく麻痺してて、つねってもひっかいても、遠く痛い感じ。何なんだコレ。まだ身体が慣れてないのだろうか…。
しかし、お金は使わなくていいし、痩せるし、いいことばっかり。そりゃ酒飲まない人が増えて、ノンアルコール飲料が流行るわけだ。
禁酒のまま、飲み会に潜入だ!!
このまま一人で禁酒生活しててもいいのだけれど、人づきあいには、お酒の場も必要。
飲み会に出れなくなったら、まずい。
そう思い、
「飲み会やらない? 酒飲みと一緒に、ノンアルコールを飲む人の気持ちが知りたいんですよ」
と言って、人を誘った。人生チャレンジだ。
近所に。新しく出来たタイ料理屋に、知人5人集合した。
「かんぱーい!」
一応、ソフトドリンクでも乾杯はする。でもウーロン茶の乾杯が、こんなに空しいものだとは知らなかった。いくらカチカチいわせても、お茶はお茶だ。お茶テンション以上以下でもない。口にふくむと、気持ちが沈む。
まずはシーフードのサラダを頼む。つまみしか楽しみがないので、やたらと美味しく感じた。実際、ハーブの香りがきいててサッパリした味付けで、ハイレベルなタイ料理だった。
シーフードサラダ美味しかった。ビールに合うんだろうなあ…。
「ゴハンのまずい店では、飲み会参加は厳しいな~」と思った。今まで行き着けだった安い焼き鳥屋さんとか、全然行きたくない。さほど美味しくない肉をつまみにウーロン茶とか…、きついだろうなあ。
そういうのに付き合ってくれた「飲めない人たち」のことを思い浮かべると、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
じょじょに皆が、酔っぱらってきた。
いちばん酒を飲むTさん(ビールジョッキ7杯、チチひとつ、レモンサワーふたつ摂取)の話を冷静に聞いていたら、
・仕事のグチ
・人の悪口
・人の噂話(色恋)
・手にしたフリーペーパーをけなす
・タイ料理が苦手な友人を、電話で飲み会に呼び出そうとする
という、素晴らしき王道よっぱらいぶりだったので、途中からおかしくなってきた。こんな人だっけ? そして私も酔っ払っている時は、同じようなことをしてるはず。
酔っ払いと一緒にしゃべってるとテンションがおかしくなる。人の感情に引きずられる。 世の中の禁酒っ子は、みんなこんな思いをしてるのか!
ウーロン茶ではあんまりなので、2杯目はオレンジジュースに切り替えた。果汁! 果汁うまい! としみじみ思った。 ソフトドリンクに果汁があって良かった。
エスニック料理屋だと、飲まないでも、スパイシーな料理で気がまぎれるからいいわね、と途中で気づいた。
Tさんは、グチ&悪口を言うのも飽きたのか、途中からくだらない冗談を言い始めた。 そして
「よっぱらってきたー」
と叫んだかとおもうと、芹那(タレント、元SDN48)のツイートについて語り始めた。
かと思ったら、今日買ったという「モーニング」(雑誌)を取り出し「これ!『主に泣いてます』(マンガ)実写版の写真載ってる! 結構マンガのイメージに似てる! でも『主に泣いてます』はやっぱ原作が最高!」と力説。
かと思えば「なんで調布に引っ越したんだよ」と、隣の席の友人にからんだ。いいじゃないべつに、調布でも。
なんとなく節酒している、という年下女子が来ていたので、何で飲まないの? と訊いたら
「昔、酔っ払って、財布落として定期だけで家に帰っちゃったんです…、でも寝る前にそれに気づいて、泣きながらカードを全部止めて。でも翌日に『財布忘れ てったよー』って、知人から連絡あって…。あと、酔っ払いすぎて、自転車で道に迷いすぎて、3時間くらい走りっぱなしで、とんでもない場所に着いたことが あって。後頭部からコケたこともあるし、階段から落ちたこともあるし、そういうの多くて…。」と。なるほど、それは危険ですね。
ぎゃくに、私は中途半端に酒に強くて、そういう大失敗はほとんどないから、禁酒という考えに至らなかったのかも…。
料理をぽちぽち頼みながら飲む。3杯目のソフトドリンクに「すいかスムージー」を頼みながら、「ソフトドリンクは3杯が限度だわー」と思った。おなかがたぷたぷになる。ビールやチューハイなら、3杯なんてすぐなのに、なぜかしら。
3杯目のすいかスムージーで、ソフトドリンクに飽きてきた。
酔っぱらいTさんは「この前、好きなアーティスト(具体的に言うと岡村靖幸さん)を、街で偶然見かけた話」を大きな声でしゃべっていた。「声もかけられな かった。なんにも出来なかった。なんにも出来なかったんだよう! でも出来ることなんかないし!」だそうだ。この話をきくの、30回目くらいだ。よっぽど 会えたのが嬉しくて、かつ何か後悔があるのだろう。
飲み会は3時間に及んだ。いつもならあっというまなのに、結構長く感じた。ゆっくりお茶してるような時間感覚…。
翌朝体重はかったら、結構メニュー頼んだのに、体重減ってた…。順調に減り続けてる。禁酒おそるべし。
オールフリーガーデン
サントリーから発売されている、カロリーゼロ・糖質ゼロ・アルコールフリーのビ-ルテイスト飲料「オールフリー」が飲める、ビアガーデン的なものが六本木ミッドタウンで期間限定開催されているというので、行ってみた。
ノンアルコール飲料、いろいろ飲み比べてみたけど、オールフリーがいちばん飲みやすい気がした。次点は「アサヒドライゼロ」。個人的にはスーパードライよりも美味しいと思う。
わざわざ六本木まで、ノンアルコールを飲みに行きましたよ!
青い芝生の庭に、白い丸いテーブルと椅子。オールフリーは150円、レモンやライムをしぼって入れたものが200円。
「カレーを頼むと、カレーに無料でオールフリーが付いてくる」というので、薬膳カレーとのセットをチョイス(650円)。それに50円足してライムを追加してもらった。
女性グループやカップル、ベビーカーの人とかが来てて、雰囲気はぼんやーりと平和。そりゃアルコール入ってる人がいないわけだから、雰囲気もカフェっぽくなるだろう。
カレーは普通に美味しかったです。これで650円は安い。
のんびりした空気が流れていました。
はあ、風が気持ちいい。芝生が気持ちいい。
オールフリーは…ライム入りはかなり美味しい! 「海外の、ローアルコールのビールですよ」と言われても、わからないかもしれない。オールフリーを使ったビール風カクテルを、試してみたくなった。シロップ入れたり、ジンジャエールで割ったりするといいのかも。
でもそれはあくまで「料理」「つまみ」ありきの話。オールフリーだけ2杯飲む…という気持ちには、どうしてもならない。
周囲の席も、お代わりしている人は、見当たらなかった。という以前に、「オールフリーガーデン」目当てで来たお客さんというよりも、通りがかった人が試しに飲んでいるように見えた。そりゃそうだ、わざわざ飲みに来ないよなあ。
最難関、サシ飲みにトライ
禁酒16日目。
麻痺していた左半身も治り、調子が良くなったので、あの酒癖のあまり良くないTさんと、サシ飲みすることにした(私はノンアルコール)。 チャ、チャレンジだ。
魚介が安くて美味しい、とっておきのお店に行った。
しかしその店、日本酒は多種あるのに、ソフトドリンクがウーロン茶と緑茶しかなかった。ああ、いつもお酒ばっかり飲んでたから気が付かなかったあ! ジュースもなしで、飲み物、お茶1択!
ソフトドリンク、お茶しかナイ!!!!!
刺身のメニューを見る。いつもなら「3点盛りにする? 5点盛りにする? えへへへへ」と思うところなのに、刺身と冷たいウーロン茶…。口の中で想像して、「合わないなあ」と思ってしまった。食欲がわかない。Tさんに選択をまかせ、遠い気持ちに。
「刺身」のほか、「かま焼き」「なめろう」なども頼んだが、どれ食べてもウーロン茶に合わない。「ごはんが欲しいな…」と思ってしまった。
生しらす。これもウーロン茶には合わなかった(美味しいんだけど…)。
(飲酒一時間後、Tさん泥酔、私シラフ)
――今日はお付き合いありがとう。酔っぱらってきました?
「酔っぱらって…きましたよ!
しかし、このなめろうは、改心の出来だね! 酒に合う!」
――そうかな。私は、とにかくごはんが欲しいですよ。
「でもさあ、ごはん食べたら終了するじゃない」
――まあ、しますけどね。
「ごはんの代わりにこうやって酒を飲むんだよ。君も飲みなさいよ」
――飲みませんよ。飲まないで、飲む人に付き合ってみるっていうコンセプトなんだから。
「友だちにこういうの付き合わせるのがスゴいよね、アナタは…。(スマホでフェイスブックを見ながら)あ、Iさんが、アレな店に行ってる! 名古屋の!」
――何、何。
「Aってひつまぶし屋、美味いか!?」
――高いですよね。
「高いだけでたいしたことないでしょ!」
――いいんじゃないですか、Iさんの自由でしょう。
「ね、美味いか、あそこ!?」
――知らないですよ。フェイスブックにからむのやめてくださいよ。っつーかいつもスマホ相手に酒飲んでるの?
「うん、まあね…。…っかー、やっぱ獺祭(日本酒)うまーいー」
カマも…美味しいんだけど、やっぱりゴハンが欲しくなってしまう。
「でも大塚さん、本当に飲酒を辞めちゃうの?」
――んー、とりあえず一ヶ月。あとは考えてないです。少なくとも節酒はするかな。
「だよねえ、大塚さん、前に代々木のフェスで、ものすごーく酔っ払って、知らない女の人と話しこんでたりしてたもんねえ。そんでその女の人に教えてもらったフグ屋に行って…」
――あー、あのフグ屋は安くて美味しかったねえ、久々の当たりだった。飲酒してると知らない人と知り合えて面白いですよね。 人見知りがなくなるっつーか。
「ほら、あと、恵比寿の地ビールフェスに、持ち込み禁止なのに、自分で茹でた卵を大量に持って来たりさ。卵を配ってるんだもの、ヘンだった…。」
――あそこ持ち込み禁止だっけ? まあ知らない人に「なんで卵むいてんの!?」って爆笑されて、卵わけてあげたりしたね。そうね、あれは楽しかったけどね
「楽しく一緒にアルコールライフをおくってきたのにさ。禁酒なんて…。
……しめさば食っちゃおうかな~。」
――あー。飲兵衛のセレクトですね。
「しめさばいいよね~(クネクネ)」
――ああ、クネクネし出しましたね…。
「だって酔っ払ってるもーん。あと、じゅんさい頼もうかなー」
――ああ…。じゅんさいも、ウーロン茶と合わない…しかし一向にお腹が膨れないなあ。
豊富な日本酒メニュー…。今は飲めないけどねっ。
「(再びフェイスブックを見て)つまんないこと言う奴いるよなあ!」
――あのー、だからフェイスブックにからまなくていいですよ。私にからんでいいですから。フェイスブック酒禁止!」
「YO! YO! チェケラッチョ! チェケチェケチェケ! DJ!」
――ど、どうしたんですか?
「(小声で)いや、後ろの席の男、俺DJとかやってるからとか言って、女の子の気をひいてるからさ、ダサーと思って」
――ちょっ、聞こえたら喧嘩になるじゃないすか!! 本当に私にからんでいいですから!!
「ねえ、あの人に『どこでDJやってるの?』ってきいてきてよ~」
――無理無理無理!!
「本当? ……じゃあ話題変えよう。原発についてどう思う?」
――えええーいきなりそういう話題!?
(以下両者、政治的発言のため100行削除)
――…もっとくだらない話しましょうよ。
「何、どんな話。」
――今まで食べた中でいちばん美味しいもの、とか…?
「仙台の某っていう名前の牛タン屋さんの牛タンだよ。
――他、候補ないんすか。
「ないっ。
……つうか結局、大塚さんが飲んでないと楽しくないっ!」
――……って言われてもなあ~。
「ウーロン茶飲んでて楽しい?」
――まあとくに楽しくはないけど、平気っちゃ平気ですよ、脳の飲酒スイッチをオフにしてるから。
「ふーん……(隣席のグループを見ながら)同じ料理を2個づつ頼むのって、嫌じゃない?」
―ーえ、そうですかね。
「こっちで食べるものをあっちで決められたくないでしょ。コース料理じゃないんだから。」
――でもそれが日本の気遣いってもんだからなあ。
「あの習慣は、世の中から絶滅して欲しい!!」
――はいはい。
「……それにしてもさ、こないだ岡村ちゃんに会った時さあ! 私、声もかけられなくてさあ!」
――またその話!?
今、日本酒を見ても「美味しそう」と思えない。なんだか強力な液体に見えて…。
いつまで続けられるのかなあ
私がこの短い禁酒生活の中で思ったのは、
・今まで飲み会に付き合ってくれた、飲めない&飲まない人たち超ゴメン
・自宅でアルコールを我慢するのは割と容易だけど、飲み会の時は、若干精神力が必要
・飲み屋に『オールフリー』があると、つまみに合わせられて、有難いなあ
っつーことです。
『銀だこ』とか、オールフリー導入してますよね。
もっと増えろよオールフリー! そして私の禁酒生活をサポートしておくれ!!
(そして、以前、新宿で飲んだ時、大きな声で愚痴ってたら、知らない人に背中をポンポンと叩かれて、『デイリーポータル読んでます、じゃあ☆』って言われて去られた時の、超絶恥ずかしい気持ちとかも消し去っておくれ!)