特集 2012年11月14日

からくりから木製スーパーカーまで!? なんだかスゴイ家具工場

コレ、家具工場が作った作品です
コレ、家具工場が作った作品です
家具を作るのは家具工場、自動車を作るのは自動車工場。そんなことは小学生でも分かる常識ですよね。しかし、そんな常識を覆すスゴイ家具工場が岡山にありました! なんとその家具工場では、スーパーカーを作ってしまったそうです、……しかも木製の。そりゃあ見に行くしかないでしょう!
1975年群馬生まれ。ライター&イラストレーター。
犯罪者からアイドルちゃんまで興味の幅は広範囲。仕事のジャンルも幅が広過ぎて、他人に何の仕事をしている人なのか説明するのが非常に苦痛です。変なスポット、変なおっちゃんなど、どーしてこんなことに……というようなものに関する記事をよく書きます。(動画インタビュー)

前の記事:ゴリラ舎の前でゴリラ絵本を読む会

> 個人サイト Web人生

男の夢だぜスーパーカー!

いつかは乗りたい「スーパーカー!」男の夢だぜ「スーパーカー!」(卒業式の呼びかけ風に読んで)。
よく考えると「スーパーカー」ってマヌケな名前ですよね。特に「パーカー」のあたり
よく考えると「スーパーカー」ってマヌケな名前ですよね。特に「パーカー」のあたり
まあ、日本でスーパーカーの大ブームが起こったのは1970年代のことなので、さすがにリアルタイム世代ではないのですが、ボクが物心ついた頃にもまだブームの最後っ屁みたいな雰囲気は残っていました。幼少期には実家に転がっていた、誰が買って来たんだか分からないランボルギーニ・カウンタックのおもちゃのガルウイングを開けたり閉じたりしてウットリしていたものです。

このように、いつの時代でも男子の心をガッチリとつかんで放さない夢の乗り物「スーパーカー」。ボクも「いつかはスーパーカーを乗り回したい!」なーんて思っていたのですが……。
ホント、ビックリだよ……エヘヘ
ホント、ビックリだよ……エヘヘ
そんなボクのような非・スーパーカーな人がいる一方、世の中には本物のスーパーカーを所有して乗り回すだけでは飽き足らず、自分でスーパーカーを作ってしまったというスゴイ人もいるらしいのです。しかも「木」で!
これぞエコカー!?
これぞエコカー!?
というわけで今回は、その木製スーパーカーとやらを見るために岡山県まで行ってきました。

家具工場の社長が作ったスーパーカー

そういえば、一時期話題になった個人制作の巨大ロボット(Zガンダム風)があるのも岡山。桃太郎ときび団子くらいのイメージしか持っていませんでしたが、岡山って「自力で何でも作ってやろう」的な気質があるんですかねぇ?
写真は何度も見たことがありましたが、実物は思ってた以上にデカくてビビッた!
写真は何度も見たことがありましたが、実物は思ってた以上にデカくてビビッた!
Zガンダムについても書きたいことは山ほどありますが、今回の目的はスーパーカー!
ということで、やって来ました「佐田健美」さんの家具工場&ショールーム
ということで、やって来ました「佐田健美」さんの家具工場&ショールーム
この家具工場の社長さんが、問題の木製スーパーカーを作ってしまったらしいのですが……。木製のスーパーカーとは一体どんなものなんでしょうか!?
……って、もうデカデカと看板に写っちゃってますね
……って、もうデカデカと看板に写っちゃってますね
まあ、いい宣伝材料になるんでしょうし、ズドーンと看板に載せるのも当然だとは思いますが、外観から入口、そしていよいよ……みたいに順を追った記事の展開を考えてるわけじゃないですか、こっちも。

非常にライター泣かせな看板と言えます。
こういうボケも考えてたんだけどなぁ……
こういうボケも考えてたんだけどなぁ……
そういや最寄りのサービスエリアにこんなポスターが貼られていました
そういや最寄りのサービスエリアにこんなポスターが貼られていました
「岡山の家具工場はただものではない!」と高らかに謳われているポスター。どれほど「ただものではない!」のか、見せてもらおうじゃないですか。
さっそく中に入ろうとしたところ……
さっそく中に入ろうとしたところ……
こんな貼り紙が
こんな貼り紙が
「基本的に予約制だけど、まあ連絡くれれば当日でも対応しますよ」……ということなんだと思いますが、社長さんの携帯番号、社員さんの携帯番号、さらには社長さんの自宅電話番号まで丸出し。た、確かにコレは「ただものではない!」かも。
うおおおっ、いきなり!
うおおおっ、いきなり!
入口を一歩入ったところに、ズドーンと木製スーパーカーが! うーん、とにかく展開とか関係なく、スタートダッシュで全部見せちゃうタイプなんですね……。
「木製スーパーカー・真庭(MANIWA)」のステッカーが
「木製スーパーカー・真庭(MANIWA)」のステッカーが
ちなみに「真庭」という名前は、このショールームがある岡山県真庭市にちなんでいるそうです。

さて、次のページではいよいよ木製スーパーカーの謎にグイグイ迫っちゃいますよ。
いったん広告です

このスーパーカー、走るぞ!

起承転結を無視し、いきなり入口すぐに置かれていた木製スーパーカー。しかも2台!(+小さいの1台)
1台だけじゃなかったんですねぇ
1台だけじゃなかったんですねぇ
サイズ的には軽自動車をさらに一回り小さくしたコンパクトな感じですが、確かに自動車! そしてもちろん、いたるところが木で作られています。
床や座席も木製。フローリングの自動車って不思議な感じですね
床や座席も木製。フローリングの自動車って不思議な感じですね
スーパーカーというだけあって、ガルウイングも装備!
スーパーカーというだけあって、ガルウイングも装備!
なんと、オーディオまで完備されているのだ
なんと、オーディオまで完備されているのだ
そして何よりもビックリなのが……
ちゃんとナンバーを取得しているということ
ちゃんとナンバーを取得しているということ
この木製スーパーカー、ただ単に巨大な木工模型なのかと思いきや、リアルに公道を走ることができる自動車だったのです。

まあ、動くんだろうなぁー……とは思っていたものの、まさかこんな組木細工みたいなモンが公道を走っていいなんて! よく許可が下りたなぁ。
公道どころか、高速道路も走ってオッケー!
公道どころか、高速道路も走ってオッケー!
ここからは、この木製スーパーカーを作ってしまった佐田健美の佐田社長と、社員さんに話を聞きながら色々と見て行くことにしましょう。

――この木製スーパーカー、公道を走れるんですね!
気持ちはよく分かります
気持ちはよく分かります
……ということで、国土交通省などに相談しながら制作していったらしいんですが、さすがに木製の車体で自動車登録するのは難しかったらしく、道路交通法上は「側車付二輪車」という区分になっているそうです。
ハンドルもバイクみたいなバーハンドルなのだ
ハンドルもバイクみたいなバーハンドルなのだ
いわゆる、三輪バイクの「トライク」という位置づけなので、普通免許で運転でき、ノーヘルでオッケー、高速道路も走行可能!
乗車定員は3名。運転する人は前の座椅子みたいなところに座り、同乗者は後ろの座席に座るのですが……木製なので、普通にベンチみたいですな
乗車定員は3名。運転する人は前の座椅子みたいなところに座り、同乗者は後ろの座席に座るのですが……木製なので、普通にベンチみたいですな
しっかし基本的には家具工場のはずなのに、どうしてスーパーカーを作ることになったんでしょうか?

社長「全国建具展示会に出品するためだったんですよ」
「建具」というのは、障子やふすまといった開閉式の仕切りのこと
「建具」というのは、障子やふすまといった開閉式の仕切りのこと

独創的すぎる展示会作品

「全国建具展示会」とは、この建具を作る技術などを競う展示会。で、もともと社長は、建具の職人だったんだとか。
ま、普通はこういった
ま、普通はこういった
細工の技術などを競う展示会なんでしょうが
細工の技術などを競う展示会なんでしょうが
社長さんのあふれ出る創作意欲は伝統的な建具のカテゴリーでは収まりきらなかったようで、建具の技術を競うはずの「全国建具展示会」に、こんな問題作を出品してしまったそうです。
タイトル「まてるDREAM」
タイトル「まてるDREAM」
う……うおおぅ……。

ひと目見たら、障子やふすま、組木細工の類ではないことは分かりますが……。一体、何じゃコレ!?
この足踏み部分をキコキコ踏むと
この足踏み部分をキコキコ踏むと
その動力が木製のギアや木製チェーン(!)で伝わって
その動力が木製のギアや木製チェーン(!)で伝わって
最終的にこの人形が踊り狂うというカラクリ!
最終的にこの人形が踊り狂うというカラクリ!
ちなみに「まてるDream」という名前は、行列ができる店でもコレを設置すれば……
ちなみに「まてるDream」という名前は、行列ができる店でもコレを設置すれば……
確かに楽しいけど、コレが目立ちすぎて何の店だか分からなくなりそうです
確かに楽しいけど、コレが目立ちすぎて何の店だか分からなくなりそうです
面白いし、木の加工技術もスゴイとは思いますが、果たして「全国建具展示会」の趣旨に沿っているのかどうかはナゾ!

しかし、この「まてるDREAM」が好評を博し、ノリノリになった社長はそれから毎年「全国建具展示会」に建具のカテゴリーからはみ出しまくった作品を出品するようになったそうです。
建具の技術を応用して作った仮設住宅「TATEGU家」
建具の技術を応用して作った仮設住宅「TATEGU家」
電力等を使用せず、重力を利用したからくりの力で上下する「エコベーター真庭」
電力等を使用せず、重力を利用したからくりの力で上下する「エコベーター真庭」
ビー玉が落ちる力を利用して
ビー玉が落ちる力を利用して
この動物たちが上下します
この動物たちが上下します
社長「ビー玉が落ちてくる重みだけを利用して動かしてるから、ビー玉が全部落ちちゃったら、また人力で上げなきゃならないんですけどね。そこを何とかできたら、永久運動も可能かもしれないんですけど……」

永久機関を作れたらノーベル賞もんですよ!
中心部分が回転することによって、用途や雰囲気を変えることができる「間わーるど」(もちろん「まわる」のダジャレですね!)
中心部分が回転することによって、用途や雰囲気を変えることができる「間わーるど」(もちろん「まわる」のダジャレですね!)
こんな感じで、障子やふすまが出展されている展示会の中では浮きまくっていること間違いナシな作品ばかりを発表し続ける社長&佐田健美。

それがエスカレートしていって、遂には木製スーパーカーを制作するに至ったんだとか。

――それにしても、いくらなんでも木でスーパーカーを作ろうだなんて……。

社長「『木で作れないものはない!』というのが私のポリシーなんです。それにバイクやスーパーカーがもともと好きだから!」

は、はい。じゃあ仕方がないっすね。
いったん広告です

木で作れないものはない!

改めて見てもやっぱりスゴイ木製スーパーカー……
改めて見てもやっぱりスゴイ木製スーパーカー……
「木で作れないものはない!」という社長さんの鶴の一声で作ることが決まった木製スーパーカー。

しかし、実際に作る社員さんたちは大変だったんじゃないでしょうか?

社員「デザインを社内コンペしたり、わりとみんなノリノリで取り組んでいましたよ。まあ、そのデザインや社長の希望を実現する職人さんたちは大変そうでしたけど」

……そうでしょうねぇ。

特に、車体の剛性・耐久性を高めるためには間違いなく屋根付きの方がいいらしいんですが、社長の「絶対にオープンカー!」というこだわりを実現しつつ、高速走行しても大丈夫なだけの剛性・耐久性を確保するのは相当大変だったそうです。
社員さんたちからのデザイン案にはこんなものが……カッコイイ!
社員さんたちからのデザイン案にはこんなものが……カッコイイ!
中にはイノシシ型のデザインも。木製でスーパーカーでイノシシ型って、色んな要素入りすぎ!
中にはイノシシ型のデザインも。木製でスーパーカーでイノシシ型って、色んな要素入りすぎ!
こちらが木製スーパーカーの試作品。よくここからあのカッコイイ完成形まで持ってきましたねぇ
こちらが木製スーパーカーの試作品。よくここからあのカッコイイ完成形まで持ってきましたねぇ
ちなみにこの木製スーパーカー、なんと実際に販売されたこともあるそうです。お値段は390万円!

社長「サンキュー価格ということで390万円にしたんですけど、正直高いかなぁ~と思ってたんですね。でもすぐに買い手が決まって『こういうものは自慢したくて買うものだから、もっと値段は高くていいよ!』言われちゃいましたよ」

世の中にはものすごい趣味の世界があるもんだ……。

次回作の構想は……?

ところで、もともとは建具職人だった社長ですが、現在の主力商品はドイツ生まれのシステムオーダー家具となっています。
住宅にピッタリ合う使い勝手のいい家具ということで全国から注文が来ているそうです
住宅にピッタリ合う使い勝手のいい家具ということで全国から注文が来ているそうです
建具の職人から一代で会社をここまで大きくした佐田社長の経歴も面白かったので、ここでちょっと紹介させてもらいましょう。

佐田社長は中学卒業後、建具職人としての修行をスタートしたのですが、職人の修行をしつつも別に野望を持っていたそうです。それが……歌手になること。理由はズバリ「儲かりそうだから」!
歌手を目指してオーディション番組に出まくっていた頃の社長
歌手を目指してオーディション番組に出まくっていた頃の社長
社長・オン・ステージ。ダンディズム!
社長・オン・ステージ。ダンディズム!
歌手を目指し、テレビの素人参加番組などに出演しまくっていた社長でしたが、ある時「これ以上続けていても無理かな」と思い断念。

その後、建具職人に専念するようになるのですが、今度はもともと好きだったバイクや車に狂い(なんと現在でも自動車を11台も所有しているとか!)、ちょいちょい全国をツーリングして廻っていたそうです。
アメリカンに乗ってたかどうかは知りませんが……
アメリカンに乗ってたかどうかは知りませんが……
そのツーリング先でとあるおじさんと出会います。それがこの人!
「ホスピタリティの神様」とも称される伝説のホテルマン・橋本保雄
「ホスピタリティの神様」とも称される伝説のホテルマン・橋本保雄
当初はただのバイク好きなおじさん、くらいに思っていたそうですが、それがなんとホテルオークラの副社長(当時)!

その後、橋本さんに誘ってもらった海外のツーリングでドイツの家具と出会い「歴史の浅い日本の家具と比べ、ドイツ家具の技術はスゴイ!」と衝撃を受けた佐田社長は、ドイツのシステム家具の技術を応用して日本の住宅にフィットさせた家具を完成させたのです。
こんな和室とも
こんな和室とも
そんな、人生において大きな影響を与えてくれた橋本さんを偲び、佐田健美の家具ショールームの一角には「橋本保雄想いでギャラリー」が常設されています。
「人とのつながりは宝物」とのこと
「人とのつながりは宝物」とのこと
想いでの品が色々と
想いでの品が色々と
そして、ヒット曲「君の朝だよ」やドラマ『1年B組新八先生』『渡る世間は鬼ばかり』などで知られる歌手・俳優の岸田敏志さんのギャラリーもなぜか併設されています。
社長の恩師が岸田さんの親御さんらしいです
社長の恩師が岸田さんの親御さんらしいです
こちらも岸田敏志グッズ盛りだくさん!
こちらも岸田敏志グッズ盛りだくさん!
さらに、こんなスペースまで……。
本格的なステージ&イベントスペース!
本格的なステージ&イベントスペース!
基本的にはイベントや講演会に使っているのですが、時には社長のカラオケショーなんかも行われているとか……。

もはや、ただの家具工場&ショールームではなく、社長の人生&人脈を体現した空間ですな、こりゃ。
また予想外すぎる答えが返ってきましたよ……
また予想外すぎる答えが返ってきましたよ……
「おひつ」とはもちろん、ホカホカのごはんを入れておく「おひつ」のこと。モミの木で作られた「おひつ」は調湿性がすぐれていて、多少ベチャベチャに炊けてしまったごはんでも入れておくとちょうどいい水分量にしてくれるんだとか。

そんな「おひつ」の中に住んだら夏でも冬でもさぞかし快適だろう……という発想から生まれた「おひつHOUSE」構想! 来年6月の全国建具展示会に向けてマジで作りはじめているそうです。た、楽しみ!

社長「家自体がおひつだったら、洪水なんかの災害時にもプカプカ浮いて助かれるかもしれないですしね!」

どこまで本気なのか分からないほどぶっ飛んだ構想ですが、とにかく気になり過ぎる「おひつHOUSE」。完成した際には、また取材させて下さい!

やっぱ一代で会社をデカくした社長はすごい……

本業にも、そして本業とはちょっとズレてるような気もする木製スーパーカーなどの作品にも精力的にに取り組んでいる社長さんで、とにかく「あふれ出る創作意欲が止まらない!」みたいな雰囲気がビンビンに伝わってきてパワーをもらいました。

一代で会社を大きくした社長さんって、大抵キャラが強くてパワフルなもんですが、その中でも佐田社長は別格にすごかったですね。来年に予定されている「おひつHOUSE」もそうですが、これから毎年、佐田健美の新作から目が離せません!

●佐田健美・岡山本社ショールーム
岡山県真庭市下方863-1
【電話番号】0867-52-7817
【営業時間】9:00~18:00
【定休日】年中無休

※予約制ショールームなので、事前に連絡をしてください。
▽デイリーポータルZトップへ

デイリーポータルZのTwitterをフォローすると、あなたのタイムラインに「役には立たないけどなんかいい情報」がとどきます!

→→→  ←←←

デイリーポータルZを

 

▲デイリーポータルZトップへ バックナンバーいちらんへ
↓↓↓ここからまたトップページです↓↓↓

 

今日のみどころ