特集 2012年11月14日

立ち呑み屋で座って呑む方法

カウンターで立って呑んでいるようですが、実は座っています。
カウンターで立って呑んでいるようですが、実は座っています。
立って呑むのが立ち呑み屋のルールだが、できれば座って呑みたい時もあるだろう。

立ち呑み屋で座って呑む。ベジタリアン御用達の店で肉はないのかと文句をいうような、そんな掟破りを野性味あふれる破天荒な方法で解決してみた。

趣味は食材採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は製麺機を使った麺作りが趣味。(動画インタビュー)

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立ち呑み屋で座って呑みたい

毎年11月11日は「立ち呑みの日」ということで、それにあわせておこなわれる呑み歩きイベントに、毎年参加をしている。

こんなイベントに参加するくらいだから、当然立って呑むというスタイルは嫌いではないのだが、さすがに3軒、4軒とハシゴをすると、だんだんと腰や膝が疲れてくる年頃だ。
そろそろお湯割りの焼酎がうれしい季節ですね。
そろそろお湯割りの焼酎がうれしい季節ですね。
立ち呑み屋のハシゴ酒をしたい、でもできれば座って呑みたい。

そんな矛盾した思いを実現するために、あるツールの開発を思いついた。

一本脚のイスを作ろう

立ち呑み屋で座って呑むために必要なツールとは、持ち運べる小型イスではなかろうか。

まったく捻りのない答えで恐縮だが、これが正論というものだろう。

そこで釣り用の三脚型竿立てを利用して、一本足の小型イスを制作してみることにした。王選手もびっくりの一本脚作戦だ。
脚が曲がって収納できなくなった竿立てを分解してイスを作ってみよう。
脚が曲がって収納できなくなった竿立てを分解してイスを作ってみよう。
曲がっていない脚を取り出す。これがイスのベースとなる。
曲がっていない脚を取り出す。これがイスのベースとなる。
竿立てから脚を一本はずし、そこに元々ついていた部品からとがった部分をもぎ取ったものを付け直し、プチプチシートでくるんでガムテープを張り、クッション性をアップさせる。

ついでに床を傷つけないためと滑り止めとして、脚の一番下もガムテープでカバーしておこう。
カメラ用の一脚があれば話は早かったですね。
カメラ用の一脚があれば話は早かったですね。
本当は自転車のサドルでもつけたいところだが、とりあえずこれで完成とする。
本当は自転車のサドルでもつけたいところだが、とりあえずこれで完成とする。
とても工作と呼べないような、非常に雑な仕上がりだが、一応これで座れるイスの完成だ。

イスというよりは杖みたいな見た目だが、これなら狭い立ち呑み屋でも、邪魔にならないことだろう。
高さはぴったり。一定の角度をキープするのが上手に座るポイントか。
高さはぴったり。一定の角度をキープするのが上手に座るポイントか。

立ち呑み屋にイスを持ち込んでみた

そして立ち呑みイベントの当日、夕方5時のオープンにあわせてやってきた串揚げ屋にて、立ち呑み屋で座って呑むという実験を、さっそく試してみることにした。
立石が誇る串揚げ屋、毘利軒でチャレンジ。
立石が誇る串揚げ屋、毘利軒でチャレンジ。
今日は最低4軒ハシゴをする予定なのだが、イスがあれば大丈夫。
今日は最低4軒ハシゴをする予定なのだが、イスがあれば大丈夫。
とりあえずチューハイを呑みながら店の様子を伺い、多少変なことをしても怒られなそうな雰囲気であることを確認の上、ミッションの実行に移る。

これが俺にとってのコロンブスの卵なのだ。
今から、立ち呑み屋で、座ります。
今から、立ち呑み屋で、座ります。
衣の薄い大阪スタイルの串揚げがうまいんだ。
衣の薄い大阪スタイルの串揚げがうまいんだ。
カバンからそっと取り出した一本足の椅子を伸ばし、尻の座りのいい場所に当てて、体重をそっと掛ける。

うん、やはり楽だ。この店の一番奥という場所なら、後ろを人が通った時にイスを蹴られてスッテンコロリンということもないので、安心して座っていられる。
しかし、まてよ…。
しかし、まてよ…。
しかしだ、確かにイスがあると楽なのだが、立ち呑み屋にイスを持ち込むという行為は、やはり江戸っ子が一番嫌うという「野暮」というやつなのではなかろうか。

しかも立ち呑み屋では若造として扱われるべき年齢の人間がイスの持ち込みなんて、年季の入った常連さんに「50年早いぞ!」と本気で怒られるかもしれない。

尻尾に見せれば自然ではなかろうか

でも大丈夫。そんなこともあろうかと用意してきたのが、毛皮風の布を細長い袋状にした尻尾風イスカバーである。

これをかぶせることで、イスから尻尾へとヴィジュアルチェンジを果たすはずだ。まさにフェイクファーである。
これがあれば、野暮にならずイスに座れるはず。
これがあれば、野暮にならずイスに座れるはず。
まずイスの足に毛皮のカバーを通してゴムで固定する。肝心なのはここからだ。

このために後ろ前に履いてきたズボンのチャックをコソコソと開け、イスのシート部分をズボンの中にねじ込み、チャックを閉める。
ピアノを掃除するやつみたいですね。
ピアノを掃除するやつみたいですね。
こっちがお尻側です。
こっちがお尻側です。
尻尾に化けたイスに腰を掛けると、その姿は立ち呑み屋でイスに座っている野暮な人ではなく、化けそこなったキツネかタヌキだ。野暮から野性へ。
ほら、もうイスには見えない。
ほら、もうイスには見えない。
人間に化けたときにどうしても尻尾だけ隠せなかったキツネは、きっと私と同じように、ズボンを後ろ前に履いて、チャックから尻尾を出すんだろうな。

そんなことを思いながらチューハイの入ったグラスを空けた。

マスター、今日の支払いは木の葉のお金でいいかな。
後ろが壁だとより安定するので、片足立ちとかしても全然余裕。
後ろが壁だとより安定するので、片足立ちとかしても全然余裕。

尻尾をつけたままハシゴ酒を楽しんだ

すっかりこの尻尾が気に入ったので、この日はドラゴンボールの悟空の中途半端なコスプレみたいな姿のまま、立ち呑み屋のハシゴ酒を楽しんだ。
外すのが面倒なので、移動もそのままで。視線が尻に集まるね。
外すのが面倒なので、移動もそのままで。視線が尻に集まるね。
中のイスを縮めることで、中腰で座ることも可能だ。すごいオナラをしている人みたいだが。
中のイスを縮めることで、中腰で座ることも可能だ。すごいオナラをしている人みたいだが。
どうでもいいがズボンが後ろ前なので、ポケットの位置がぜんぜんわからなくて混乱する。ついでにいうと、歩くたびに膝の部分が突っ張る。
どうでもいいがズボンが後ろ前なので、ポケットの位置がぜんぜんわからなくて混乱する。ついでにいうと、歩くたびに膝の部分が突っ張る。
2軒目は静かな隠れ家風の店で。「マスター、猿酒ある?」
2軒目は静かな隠れ家風の店で。「マスター、猿酒ある?」
「お嬢さん、サルノコシカケっていうキノコがあるの、知っていますか?」
「お嬢さん、サルノコシカケっていうキノコがあるの、知っていますか?」
3軒目、限界まで我慢をしてからトイレに入ったのだが、下ろそうとしたチャックがなくて、ちょっとしたパニックになった。

そんなズボンが後ろ前の男、どうかな。
「ほら仕事なんて、キツネとタヌキの化かし合いみたいなもんだからさ」
「ほら仕事なんて、キツネとタヌキの化かし合いみたいなもんだからさ」
たまたま同席したプロテニスプレイヤー赤羽毅朗さんも、「これ、けっこうお尻が痛いですね」と絶賛!
たまたま同席したプロテニスプレイヤー赤羽毅朗さんも、「これ、けっこうお尻が痛いですね」と絶賛!
そして4軒のハシゴ酒を終えて、化けそこなったキツネは、そのまま山へと帰ったとさ。
電車でイスが空いていたが、尻尾が邪魔でスッと座れなかったぜ。
電車でイスが空いていたが、尻尾が邪魔でスッと座れなかったぜ。
冷えてきたので、襟巻にして帰りました。
冷えてきたので、襟巻にして帰りました。

メリットとデメリット

正直に言うと、座り心地はよくない。尻が痛くなるし、変に力を入れて座るので、太ももが筋肉痛になった。

ただ、イスを支える脚が滑ったり蹴られたりすれば、頭を打って死ぬかもしれないという不安が常にあるので、理性を保ったままハシゴ酒ができるというメリットはあったと思う。

でも、たまたま隣で飲んでいた女性に、「それってなんだか、かまってほしい人みたいですね!」と言われたので、もう立ち呑み屋にこの尻尾を持ち込むことはないだろう。襟巻として大切に使います。
縮めてカバンにしまったら、犬に服を着せて散歩している人みたいになった。
縮めてカバンにしまったら、犬に服を着せて散歩している人みたいになった。
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