つまり、おれたちが日本の製造業をリードする
しかし考えてみればデイリーポータルZでは10年にわたってさまざまなアイデアを実現してきた。
iPhone5メガネ(しかし寝坊してiPhone5は買えず)
かっこいい鼻メガネ
車窓から夜景が見えるマシーン
しょうゆをかけ過ぎてくれる装置
どれも利益、それどころか実用性すら感じさせないピュアなプロダクトばかりである。あほの子をほめるときにしかたなく目がキレイと言うようなニュアンスでの、ピュアである。
そんな我々にMAKERSの出版元であるNHK出版が工作機械を用意してくれるという。レーザーカッター、3Dプリンタ、大判プリンタが1日使い放題だ。
高価な装置でろくでもないものを作るチャンスである。
高所恐怖症床を作る
工作機械を使わせてくれるのは
co-lab渋谷アトリエ。フリーのデザイナー、アーティスト向けのシェアオフィスである。
左が今回装置の使い方を教えてくれるco-labの山元史朗さん。デイリーポータルZからは林、べつやく、石川が参加。
アートやシェアといった横文字並ぶ世界でも昭和なポーズではじめる。
ここにはB0版が出せるプリンタがあるのだ。B0版はだいたい1メートル×1.4メートル。街の出力屋さんで出すと1枚1万円ぐらいする。冗談で出すには躊躇する値段である。
これで高いところから下を見た景色を印刷したい。その上に立ったら宙に浮いているように錯覚するのではないか。
そのために前日に東京タワーにのぼり見下ろす窓から写真を撮ってきた
ここから見下ろしたのが
この景色。これをB0で印刷しよう
B0のプリンタは思ったよりも速く印刷する。
10分ほどで印刷できてしまった(速度重視の設定にしてあります)。うちのプリンタよりも静かだったのがショックである。
ではこれを床に敷いて、靴を脱いであがってみる。 デジタルな試みだがヤンキーの車同様、土禁である。
………うーん
これはもしかして………
見えない。
宙に浮いているような感覚にはならない。でも周囲ではNHK出版の編集者3名が期待に満ちた目で見ている。困った。
告白しに行った友達を迎える中学生のような雰囲気だ。
「ど、どうだった?どうだった?」
ごめん、全然みえない!
だが僕らは中学生ではなく大人なので気遣いがある。
台に乗ったり写真に手を入れるなど工夫して「これならいけますよ」「そうですね!」「御社!」「弊社!」など励ましあった。
台の上に乗れば違うかもよ
手なんて出したらどうだろう
その甲斐あってようやく浮いてるような写真が撮れた。
落ちる~
キャー!
よく宇宙飛行士が自分だけが飛んだのではなくてチームワークの勝利だ、みたいなことを言うが僕もいま同じ気分だ。
ITと気遣いで人は飛べる。
どうでもいい写真を伸ばす
続いてB0で印刷するのはどうでもいい写真だ。写真展の写真がよく見えるのは大きくプリントされているからではないか。その疑いを検証したい。
サンプルはこれ
僕の写真フォルダからいちばんどうでもいい写真を持ってきた。とってつけたような帽子、散乱した食事、要らないフラッシュ、帰りたい気持ちがありありと分る表情。
僕が大学生だったら就職への不安が2割増しになりそうな写真である。これを伸ばして味わい深い写真になるか試してみよう。
どんな写真でも不満を言わずにプリントするインクジェットプリンタ
プリンタから原寸の人の顔が出てくるのは新鮮だった。これがiPS細胞か!と全く理解してないことを口走りたくなる。
平びったいクローン誕生
写真を写真で見ているからあまりパッとしないのだが、近くで見てみると雰囲気のある写真に見えなくもない。ヴィレッジヴァンガードで人気の写真集のなかの1枚です、と言われたら信じる。
この写真は写っているライターの西村さんか木村さんにあげよう。飲み会の写真をいちいちB0で出すのも嫌がらせとしておもしろそうだ。お金持ちになったらやりたいことがまたひとつ増えた。夢手帳に書いておきたい。
巨大QRコード
プリンタあそび最後は巨大QRコードである。
つまりこういうことである
1メートル×1メートルのQRコードだ。これなら多少遠くても読み込むことができるだろう。
約20m離れていても読み込み可能(スマホとアプリによります)
ビルの壁や対岸に貼ってあってもこれなら読むことができる。ただし欠点もある。
人が前を通ると読めない
風に弱い
もっと大きくして屋根に貼っておけばいつかグーグルが航空写真を撮ってくれるかもしれない。そうしたらB0の印刷代よりも大きな広告効果が得られるのではないか。グーグルにこんどいつうちの上を撮影するかを聞いておきたい。
そしてQRコードが巨大化した時代にはQRコードを持つだけという新たな役割が誕生することも発見
iPhone4を5にするケース
最後にレーザーカッターでiPhoneケースを作りたい。作るのはiPhone4を5に見せるiPhoneケースである。もう本稿も後半にさしかかっているのでいきなり完成品をお見せしてしまおう。
iPhone4のケースでありながら、5と同じ長さを実現
持ってたらどう見てもiPhone5
隙間にはつまようじだって入れられる。そう、iPhone5みたいな4のケースならね
市販のiPhone4用のケースに5と同じ長さになるように余計な部品をアクリルで作り貼り付けたのだ。
できた隙間にはつまようじやフリスクを入れることも可能である(そのまま通話するとこぼれます)。
iPhone5持ってるんだーという見栄と使い慣れたiPhone4を両立するケースである。
レーザーカッターでアクリルを切る
切り出した部品
あとは貼り付けるだけ
大した問題点ではないのだが、ケースに入れたまま充電できないのが気になる。
5を気取りたい気持ちの前では大した問題ではないだろう(おしゃれはやせ我慢からという言葉もある)。
こういったふざけた商品でもレーザーカッターで作ると隙間がぴったりくっつくのが気持ちいい
以上、メーカーズムーブメントでした
iPhone5に見えるケースは手でアクリルを切ったら絶対にできないし、スチロールを切って作ってもぼそぼそになっていただろう。でもレーザーカッターがあれば不器用な人でも作ることができてしまう。
がんばって器用にならなくてよかった!
落ちてるように見えるかと思って撮ったがだだをこねているようにしか見えず