特集 2012年10月16日

知床の温泉が熱い!

野性むきだしな知床の温泉たち
野性むきだしな知床の温泉たち
北海道東部、オホーツク海にぴょこんと飛び出た知床半島。アイヌ語でシリエトコ、地の果てという意味を持つ、まさに最果ての地である。

知床の主だった見どころは半島の西岸部に集中しており、知床観光といえば西岸部の港町であるウトロを拠点にその周辺を回るのが一般的だろう。

とは言うものの、知床の東岸部には見どころが無いというワケではない。特に東岸部は温泉が豊富で、中には秘湯という表現がピッタリな温泉も存在する。今回はその知床東岸部の温泉にスポットを当ててみたい。
1981年神奈川生まれ。テケテケな文化財ライター。古いモノを漁るべく、各地を奔走中。常になんとかなるさと思いながら生きてるが、実際なんとかなってしまっているのがタチ悪い。2011年には30歳の節目として歩き遍路をやりました。2012年には31歳の節目としてサンティアゴ巡礼をやりました。(動画インタビュー)

前の記事:2000年前に作られた人工景観「ラス・メドゥラス」を見に行った

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まずは知床西岸のみどころ紹介

というワケで今回は知床東岸部の温泉特集なのだが、その前に知床半島西岸部の見どころをざっくり紹介しておこう。

知床最大の魅力といえば、何といってもそのダイナミックな自然の風景だろう。ウトロの周囲には、壮大な知床の景色を手軽に楽しむことができる場所が多い。
雄大にそびえる知床連山
雄大にそびえる知床連山
海岸は断崖絶壁がたまらん程に連続している
海岸は断崖絶壁がたまらん程に連続している
ウトロ界隈には奇岩も多い(これはゴジラ岩)
ウトロ界隈には奇岩も多い(これはゴジラ岩)
ウトロ港からは知床岬やその途中まで行く遊覧船も出ており、それに乗れば海から地形を眺める事ができる。

知床連山からの稜線が海岸でストーンと落ちる光景は迫力満点。流氷によって浸食された痕や、運が良ければ海岸で魚を捕るヒグマの姿を見る事ができる。

また、ウトロから北に入った所にある知床五湖も人気のスポットだ。
その名の通り五つの池が密集する知床五湖
その名の通り五つの池が密集する知床五湖
この日は湖面の状態がすこぶる良く、写り込みが素晴らしかった
この日は湖面の状態がすこぶる良く、写り込みが素晴らしかった
知床五湖は遊歩道が整備されているものの、知床半島はその全体がヒグマの聖地であるが故にヒグマが出没する事もあり、その際には遊歩道が閉鎖されてしまう。

ヒグマの活動が活発な夏は閉鎖される確率が高く、特に今年の8月上旬はほぼ全滅だったらしい。私が知床を訪れたのは9月の下旬だが、この日も午前中はヒグマが出てクローズだったという。
こちらは知床五湖のさらに奥にあるカムイワッカの滝
こちらは知床五湖のさらに奥にあるカムイワッカの滝
温泉がそのまま滝になっているので水が温かい
温泉がそのまま滝になっているので水が温かい
知床五湖から未舗装の砂利道を進んだその先にあるカムイワッカの滝は、ほんのりと硫黄のにおいがする温泉の滝だ。ただし少々ぬるいので、温水プール感覚で水遊びが関の山だろうか。

源泉に近い上流はもっと熱いようだが、残念ながら立ち入り禁止で入る事はできない。

とまぁ、このカムイワッカの滝のように、知床はあちらこちらから温泉が湧き出している。まさに温泉だだ漏れ地帯、知床。
ウトロにも温泉施設が多い
ウトロにも温泉施設が多い
普通の浴場なので秘湯感は少ないが
普通の浴場なので秘湯感は少ないが
遊覧船も出ているし、知床五湖やカムイワッカの滝もあるし、温泉施設も整っている知床西岸部。知床の自然を楽しみたいだけならば、正直この辺りだけでも十分な気がしないでもない。

しかしながら、西岸部を見たら東岸部も見たくなるというのが人情であろう。私もまたそのような衝動にかられて東岸部に足を運んでみたのだが、そのお陰で冒頭の写真のような温泉を見付ける事ができたのだ。
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地元の人に親しまれる「熊の湯」

さぁ、知床東岸部の中心地である羅臼(らうす)にやってきた。羅臼にも宿泊施設など揃ってはいるものの、ウトロよりは幾分観光地度が低い印象である。

その羅臼の市街地からウトロに至る知床横断道路を少しだけ上った所に、「熊の湯」という名の温泉がある。
西岸部は快晴だったが、東岸部はあいにくの天気であった
西岸部は快晴だったが、東岸部はあいにくの天気であった
道路を上って行くと温泉採掘の施設が現れる
道路を上って行くと温泉採掘の施設が現れる
その先にある橋を渡ると「熊の湯」だ
その先にある橋を渡ると「熊の湯」だ
女湯にはドアがあるが、男湯(写真右奥)はあけっぴろげ
女湯にはドアがあるが、男湯(写真右奥)はあけっぴろげ
いちおう、靴箱と脱衣所はある
いちおう、靴箱と脱衣所はある
この温泉は有志によって管理されているらしく、入浴料は無料。その代わり設備は最低限のものだけだが、かえってその方が温泉をじっくり楽しむのに適しているとも言える。

そこそこ知名度があるのか訪れる観光客も多いようで、脱衣所には注意書きが記された看板が掲げられていた。
注目すべきは右から三番目と四番目。かなり熱い温泉らしい
注目すべきは右から三番目と四番目。かなり熱い温泉らしい
その注意書きには「熱いと感じても、一度上がってまた入れば大丈夫」とか、「半分以上の人が熱い言えば水を入れてもOK」とか「二、三人の人が熱いと言ってるだけならその言葉には従わなくてもいいよ」など、熱さを強調した文面が並んでいる。

いやはや、どれだけ熱いお湯なんだろう。私はドキドキしながら衣服を脱いで浴場に出た。先客はいたが、観光客ではなく地元の漁師さんのようである。仕事を終えてひとっ風呂浴びに来たのだろう。この温泉の利用者は、基本的には地元の方がメインなようだ。
眺めの良い露天風呂。湯船の向こうは谷である
眺めの良い露天風呂。湯船の向こうは谷である
洗い場は湯船の周囲のコンクリート部分。椅子が無いのでそこに直接ドカッと座り、桶で湯船からお湯をすくって体を洗う。

そしていよいよ湯船の中へ。恐る恐る足を入れると……うん、熱い。確かに熱い。というか、かなり熱い。が、動かずじっとしていれば我慢できない程ではないかな。熱い風呂が苦手な方はキツいかもしれない。

……などと思っていたら、後から入ってきたおじさんが「今日はぬるいなぁ」「熱くないと熊の湯じゃないよ」とおっしゃっていた。えぇ、これでぬるいのか。恐るべし、熊の湯。

間隔がアバウトな羅臼の間欠泉

地元の方がぬるいとは言ったものの、それでも私にとっては十分熱いお湯だった。

湯船から出た後も、ポカポカを通り越して物凄く暑いままである。このまま次へ行く前に、クールダウンとして寄り道をする事にしよう。
熊の湯の近くにある羅臼ビジターセンター
熊の湯の近くにある羅臼ビジターセンター
その裏手には間欠泉があるのだ(写真右の白い部分)
その裏手には間欠泉があるのだ(写真右の白い部分)
現在は約30分から2時間の間隔で噴き出すらしい
現在は約30分から2時間の間隔で噴き出すらしい
間欠泉といえば一定の周期で噴き出す温泉だが、ここ羅臼の間欠泉はその間隔が30分から2時間と超アバウト。

なかなか興味深いので噴き出すのを見てみたいと思ったものの、いったいどのくらい待てば良いのだろうか。まぁ、時間はたっぷりあるので、とりあえずただひたすら待ってみる事にした。
――10分経過
――10分経過
――20分経過
――20分経過
――30分経過
――30分経過
間欠泉の側にあったベンチに座ってボーっとその様子を見張る。30分が経ち、さすがもう諦めようかと思ったまさにその時――
おっしゃー、きたー!
おっしゃー、きたー!
突然ゴボシャーと白い柱が立ち上った。その高さは5メートルぐらいだろうか。目の前で噴射される温泉は、思っていたより迫力があって驚きである。

おぉ、これぞまさに地球の活動。いやぁ、間欠泉って素晴らしい。温泉って素晴らしい。
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知床最北集落の「相泊温泉」

知床西岸部は非常に険しい環境故ウトロよりも北には集落が存在しないが、東岸部は羅臼以北にも海岸線沿いに車道が通っており、かなり北まで行く事ができる。

その道路のどん詰まり、知床の最も北にある集落が相泊(あいどまり)だ。
羅臼から相泊に続く道路。コンブの漁場が連なっている
羅臼から相泊に続く道路。コンブの漁場が連なっている
浜に打ち上げられたコンブも多い
浜に打ち上げられたコンブも多い
なお、相泊から先には道路こそな無いものの、海岸沿いを歩いて知床半島の先っちょまで行くツワモノもいるそうだ。

もっとも、相泊から先は地形がより険しくなり、ヒグマも出るので岬まで辿り着くには十分なスキルと経験が必要らしい。私にはムリだ。
相泊から先の風景。地形のスケールがでかすぎる
相泊から先の風景。地形のスケールがでかすぎる
この知床最奥部の集落である相泊には、「相泊温泉」という名の露天風呂があった。

私はここに温泉がある事は全く知らなかったのだが、たまたま道路沿いの駐車場に立っていた看板を見てその存在を知り、寄ってみる事にしたのだ。
駐車場からは木の階段を下りる
駐車場からは木の階段を下りる
そうして現れたのがこの露天風呂
そうして現れたのがこの露天風呂
温泉は浴槽の底から湧いているようだ
温泉は浴槽の底から湧いているようだ
砂利の浜辺にポツンとたたずむその温泉は、あまりに露天すぎる露天風呂であった。もはや脱衣所すら存在しない、野生に近い温泉である。

その素朴な外観に最初は少しギョッとしたが、温泉が湧き出す様子を眺めているうちにふつふつと入ってみたいという欲求が湧き起こってきた。しかし、その周囲を見渡すと――
道路や民家から丸見えである
道路や民家から丸見えである
ここで服を脱ぐのは少し勇気がいるな……
ここで服を脱ぐのは少し勇気がいるな……
湯船の周囲には目隠しが無く、道行く車からも見えてしまう状況である。ここで素っ裸になって良いのだろうか。通報されて公然わいせつ罪とかにならないだろうか。

ま、まぁ、ほとんど車も通らないし、そもそも温泉と銘打っているのだから、きっと大丈夫だろう。私はパパっと服を脱ぐと、そそくさ湯船に突入した。
よし、入るぞ!
よし、入るぞ!
っていうか、あっちーーー!超あっちーーーーーー!
っていうか、あっちーーー!超あっちーーーーーー!
そのお湯は物凄く熱かった。我慢すれば入れるようなレベルの熱さではなく、もはや人体に危害が及ぶのではないかという程の熱さである。

少し足を入れてみただけなのに、その足はみるみるうちに赤くなっていった。熱湯コマーシャルも真っ青の温度である。卵を入れたら温泉卵になるんじゃないかと思う。
しょうがないので水をガバガバ入れる
しょうがないので水をガバガバ入れる
散々薄めて、ようやく入れるようになった。でもあっちー!
散々薄めて、ようやく入れるようになった。でもあっちー!
そろそろ入れるか→やっぱり熱い!という工程を延々繰り返し、ようやく入れる温度になったのがおよそ30分後である(素っ裸で右往左往する私の姿はきっと滑稽だった事だろう)。それでも先程の熊の湯より全然熱い。

特に温泉が湧き出てくる足元がヤバいくらいに熱いのだ。大きめの石につま先立ちの状態で、身をかがめるようにしてお湯に浸かる。結局、その熱さと体勢のきつさに、5分くらい入っただけで引き上げるざるを得なかった。

しかしながら、わずかな入浴時間であったにも関わらず体は相当に温まり、しばらく汗が止まらなかった。
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岩盤からお湯が湧き出す「瀬石温泉」

相泊から羅臼に戻る途中、相泊温泉と同じような看板が立っているのを発見。思わず止まってそれを見やると、そこもまた温泉であった。
手前に小屋があり、その奥に湯船らしきものが
手前に小屋があり、その奥に湯船らしきものが
って、これまた凄い温泉だな
って、これまた凄い温泉だな
波がざぶんざぶんと湯船に当たっているのだ
波がざぶんざぶんと湯船に当たっているのだ
看板によると、瀬石温泉という名のこの温泉。物凄く海に近い位置にある為、満潮になると海に沈んでしまうそうだ。

私が訪れたのはたまたま潮が引いている時間であったが、それでもすぐ側まで波が近付いていた。
岩盤の亀裂からお湯が沸いている
岩盤の亀裂からお湯が沸いている
塩分が濃く、手足がプカプカ浮く感じ
塩分が濃く、手足がプカプカ浮く感じ
先程の相泊温泉が死ぬ程に熱かったので、恐る恐る手を入れ温度を確かめてみると……こちらは適温。むしろこれまでのものと比べると少しぬるい感じもする。

これまでの温泉は硫黄のにおいがしつつ塩気があったが、この温泉は特に塩分が濃いようで、お湯に浸かっている手足が無意識に浮いてしまう。泉質がそうなのか、あるいは湯船に海水が入ってきているのかもしれない。
だって、こんなロケーションだもの
だって、こんなロケーションだもの
もう少しすると海に沈んでしまうのだろう
もう少しすると海に沈んでしまうのだろう
なお、湯船の底が非常にぬるぬるしているので入る際には注意が必要だ。これもまた、毎日海水に洗われる為なのだろう。

いやはや、なかなか面白い温泉である。ビジュアル的なインパクトが大きいだけに、過去には「北の国から」のロケにも使われた事もあるらしい。

なかなか楽しい知床の温泉たち

雄大な自然を求めた訪れた知床だったが、素朴かつ味わい深い温泉をたくさん見る事ができた。いずれも手が込んだ整備などは行われておらず、地元の方によって守られているという感じがひしひしと伝わってくる素朴な温泉である。無料という点もありがたい。

なお、今回私が訪れたのは夏のシーズンが終わった後だったが、調べてみるとシーズン中は相泊温泉に囲いが設けられるなど、多少は敷居が下がるようである。知床観光の際にはこれらの温泉に寄ってはいかがだろう。

景観も凄いし、温泉も豊富だし、エゾシカもかわいい。知床は良いところですなぁ。
だがエキノコックス野郎、キサマだけは許さん(夜討をかけられ荷物を取られた)
だがエキノコックス野郎、キサマだけは許さん(夜討をかけられ荷物を取られた)
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