ミノムシ、激減中
「ミノムシ」という単語を久しぶりに見て「ああ、そういえばそんな虫いたなあ」「最近見てないなあ」と思う方も多いだろう。
それも無理からぬこと。なんと近年、この日本から急速にミノムシがいなくなりつつあるのだ
その原因は
「オオミノガヤドリバエ」という大陸産のハエの侵入にある。外国からやってきたこのハエがミノムシを食べつくしているというのだ。
本当にミノムシは姿を消してしまったのか。僕は生れて初めて本気でミノムシを探してみることにした。
第一目標はオオミノガ!
ミノムシにはいくつか種類がある。その中でも一番メジャーなのは最も大型になるオオミノガだ。まさに外来のハエのターゲットとなっているミノムシである。以前は一番頻繁に目に付くミノムシだったのだが…。なお、このオオミノガのミノムシはバラ科の植物に付くという。バラ科というと…
例えばサクラとか
バラ、サクラ、リンゴ、イチゴ…。
えー、バラ科って括りが大きすぎるよ!こういう色んな種類の植物に付く虫というのは意外と探すのが大変だ。僕のような優柔不断には探すポイントが絞れないのだ。
たとえばモンシロチョウの幼虫の青虫だったらキャベツ畑に、カブトムシだったらクヌギ林に行けばいいと相場が決まっているから楽ちんなのだが…。
仕方ないのでとりあえず外に出て、手当たり次第にバラ科の植物を観察することにしよう。
虫食い跡を頼りに探っていく
いろんな虫がいて楽しい
バラ科といえばとりあえず代表選手のバラは外せないだろう。小さな頃、故郷長崎でバラの生け垣にたくさんのミノムシがぶら下がっているのをよく見ていた。
彼らを捕まえてはミノをひっぺがし、色とりどりの紙片を与えてやたらサイケデリックなミノを作らせていた思い出もある。
ん?よく見るとなんかいますね…。
カマキリー!
バラの花の上にカマキリがいた。寄ってくるチョウやハチを食べようという魂胆だろうか。
なんだその表情は。
別のバラ科植物の木の上にはハラビロカマキリという別種のカマキリが。上目遣いがキュート。
パステルグリーンとピンクの縁取りがおしゃれなアオバハゴロモ。
ミノムシは一向に見つからない。しかし、代わりに色々な昆虫たちが現れて目を楽しませてくれる。
この謎の物体はカイガラムシという昆虫。蝋でできた殻をかぶっているのだ。
裏返すとこんな感じ。切ったゆでたまごみたいだ。
クロウリハムシ。かわいい。
やたら色黒なカタツムリを発見。
気が付くと、もうミノムシもバラ科もそっちのけで手当たり次第に虫を撮影している自分がいた。いかんいかん。でも楽しい!
ミノムシもどきたちにだまされまくる
そんなとき、木の枝に茶色い何かがぶら下がっているのが見えた。ミノムシか!?
超ドキッとしたのに…。
これはまつぼっくり。
枯葉でした…。紛らわしいなあ自然界にはミノムシそっくりな物体があふれていることに気がついた。ということはミノムシのあの恰好は風景に溶け込む良い擬態になっているということかもしれない。。
ゴミグモというクモの巣。中央に集めたごみがミノムシに見えて焦った。
一日探すも見つからず…
職務質問されたらどうしよう。
夜になってもミノムシ捜索は続いた。しかし結果は惨敗。ミノの欠片すらも見つからなかった。本当にいなくなってしまったのかミノムシ…。
クワガタまで見つかるのに…。
捜索打ち切り寸前にたまたまコクワガタのメスを見つけた。
いつの間にかミノムシはクワガタよりもレアな存在になっていたのか…。
灯台もと暗し
結局一日を費やしてもミノムシの姿を拝むことはできなかった。なんだか打ちひしがれたような気持でその後数日を過ごした。ところがそんなある日、自宅の近くに打ち捨てられた木材に目が留まった。
ん?
あっ
ちっさ!
ものすごく小さい。まだ生まれて間もないのだろうか。それともこういう種類なのだろうか。どのみち第一目標であったオオミノガではなさそうだ。
しかしミノムシはミノムシ。うれしい。
一匹見つかったのだ。近くにまだいるかもしれないと欲を張って辺りを探すと…
いたー!
今度は塀に張り付いていた。藪に分け入っていた苦労は一体何だったのか。
こいつは少し立派。でもやっぱりオオミノガではなさそう。
やはりミノムシは減っていた。
当初はミノムシを見つけるのにこんなに苦労するとは思わなかった。
しかも、やっとこさ見つけたのは地味な小型種。立派なオオミノガは姿を見せてくれなかった。やはりオオミノガヤドリバエの影響が甚大なのだろうか。
ちょっと悲しくなってしまったが、捜索の過程で目にした他の虫たちに癒されもした。
あなたの街にはまだミノムシがいるかもしれない。一度散歩でもしながらあの懐かしい姿を探してみてはいかがだろうか。
取材してて気づいたけど、うちの近所バラ植えてるとこ多すぎ!