特集 2012年9月11日

ベイエリアから深海まで!東京湾のサメを食え!!

やっぱり揚げるのが無難か。
やっぱり揚げるのが無難か。
本サイトでも記事にしたが、先日東京湾へサメを釣りに行ってきた
せっかくサメという珍しい大物が釣れたのだ。食べてみない手は無いだろう。
1985年生まれ。生物を五感で楽しむことが生きがい。好きな芸能人は城島茂。(動画インタビュー)

前の記事:ベイエリアから深海まで!東京湾のサメを狩れ!!

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食材はドチザメと深海ザメ、そして深海アナゴ

東京湾の浅場ではドチザメという種類のサメを、水深400メートル以上の深場ではちょっと不気味な深海ザメとおまけで深海アナゴを釣ることができた。
これはドチザメ。とてもパワフルで釣ってて楽しい。
これはドチザメ。とてもパワフルで釣ってて楽しい。
深海ザメと深海アナゴ。そもそも食べられるのか。
深海ザメと深海アナゴ。そもそも食べられるのか。
本日は、この食材としてはちょっと馴染みの無い魚たちを調理、試食していく。

サメはすっぱい

まずは一番何とかなりそうな見た目のドチザメから手をつけてみよう。
まな板に乗りきらない。釣れたサメの中で一番小さなものを持ち帰ってきたのに。(編集部より:若干ワイルドな写真になっておりますので、ごらんになりたい方はクリックしてください!)
まずはザラザラと固いいわゆる「鮫肌」をどうにかしないといけない。
熱湯をかけてこすると…
あっさりとスベスベした皮が顔をのぞかせる。
あっさりとスベスベした皮が顔をのぞかせる。
手ごわそうに見えた鱗が砂のようにジャリジャリと簡単にはがれ落ちる。面白い。
さらに、サメはエイと同じく軟骨魚類というグループに属す魚で、顎や歯以外は全身の骨格が軟骨で構成されている。そのためこれだけ大きくても中骨がサクサク切れてしまう。
湯を沸かす手間はあるが、下ごしらえは普通の魚よりも楽かもしれない。
刺身。ぱっと見た感じはタイのよう。
刺身。ぱっと見た感じはタイのよう。
とりあえず刺身でいただいてみる。見た目は良いが味はどうか。
う…。
う…。
…。まずほんのりとサメ特有の匂いが鼻を突く。いわゆるアンモニア臭というやつだ。
サメは体に尿素を貯め込む。その尿素が死後アンモニアに変わるそうだ。
さらに味が妙にすっぱい気がする。鮮度が落ちて饐えているとうわけではないのだが…。
食感はもちもちと不思議な弾力があって面白いが、生で食べるには向かないと判断した。湯引きも試したがいまいちだった。
では塩焼きはどうか。
では塩焼きはどうか。
とりあえず火を通さないとダメだと判断。オーソドックスに塩焼きにしてみる。
やっぱすっぱい!
やっぱすっぱい!
うーん、匂いは気にならなくなったが、やはり酸味が感じられあまり美味しくはない。
こうなったら奥の手だ!
から揚げ。
から揚げ。
揚げてしまおう。
我が家には「大抵のものは揚げれば食える」という家訓がある。
その野蛮な思い込みはサメにも通じるのか。
いただきます!
いただきます!
おっ、うまいじゃん!
おっ、うまいじゃん!
おいしい!これだ!!
匂いも酸味も気にならない。それどころかいくらでも食べられるほどの味だ。
肉はほくほくと柔らかく、ゼラチン質の皮の食感が楽しい。
サメ料理の「正解」を見つけた気がした。
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フカヒレは歯に挟まる

サメと言えばヒレ。
サメと言えばヒレ。
食べるのは身だけではない。もちろん「フカヒレ」も取る。
たくさん取れたけど、どれも小さい!中華料理店で出てくるような立派なフカヒレは一体どんなに巨大な鮫から取っているのだろう…。
たくさん取れたけど、どれも小さい!中華料理店で出てくるような立派なフカヒレは一体どんなに巨大な鮫から取っているのだろう…。
フカヒレの作り方は本サイトでライター玉置さんが記事にしていたのでそれを参考にした。
ただし、干して乾燥させる工程は時間が無いので省略した。
姿煮…のつもりなのだが。
姿煮…のつもりなのだが。
フカヒレの姿煮にしたのだが、一度乾燥させなかったのが災いしたか、加熱すると反り返ってちんちくりんになってしまった。
でも食感はまさにフカヒレのそれで、なかなか美味しかった(ヒレ自体に味はほとんど無いのでスープの味次第だが…)。
しかし歯に挟まりまくる。
しかし歯に挟まりまくる。
一度にこんなにまとまった量のフカヒレを食べたのは初めてだったのだが、これほど歯に挟まる食材だとは思わなかった。
自分でサメを釣らねばこんな事実も知ることはなかったかもしれない。良い勉強になった。

深海ザメは臭い!でも…

さて、いよいよ深海ザメを調理する時である。
台所が異世界になる。(クリックでモザイクが消えます)
ちなみにこの深海ザメはヘラツノザメというサメの仲間のようだ。
ヒレに大きなトゲがあってかっこいい。
ヒレに大きなトゲがあってかっこいい。
このサメ、見た目のインパクトもさることながら、もう一点困った特徴がある。
新鮮なんだけどなー。
新鮮なんだけどなー。
臭いのだ。ドチザメも刺身を口に含むと多少臭みがあったが、その比ではない。
この段階ですでに臭いってなかなか無いよね。
この段階ですでに臭いってなかなか無いよね。
釣って、船上に上げた瞬間からアンモニア臭をまき散らす始末。正直これには驚いた。
さらに一度冷凍して解凍すると明太子を強烈にしたような臭気が漂い、食欲が減退する。
鮮度に問題はないのだが…。
身はこれでもかと言うほど綺麗な白身。
身はこれでもかと言うほど綺麗な白身。
でも臭いものほど意外とおいしかったりするし、とりあえず試食してみよう!
恐る恐る生の切り身を口に運ぶ。
恐る恐る生の切り身を口に運ぶ。
試しに一口だけ生で食べてみよう
おおおう。
おおおう。
匂いも強烈だが、酸味もドチザメより強い。それだけではない。今まで経験したことの無い味わいが口の中いっぱいに広がり、なぜか唾液が大量に分泌される。
一言で表すと、エグい!!

こうなれば取るべき選択肢はひとつ!
深海ザメのフライ。
深海ザメのフライ。
揚げるしかないでしょう。
ドチザメもから揚げにすればおいしかったし、これならあの臭い深海ザメもどうにか食べられるんじゃないか。
いただきます!
いただきます!
意を決してかぶりつく。果たして味は?
あれ?いけるじゃん!
あれ?いけるじゃん!
えっ、すごくおいしい!
匂いも無くなっているし、味も普通の白身魚に勝るとも劣らない。むしろそれよりおいしいくらいだ。揚げたてだというのもあるだろうけれど。
なんであのエグい魚が油で揚げただけでこんなにおいしくなるんだ??不思議だ。
もちろんヒレは…。
もちろんヒレは…。
フカヒレも作った。
鱗を剥がすとヒレの縁が黒かった。こういう発見が楽しい。
鱗を剥がすとヒレの縁が黒かった。こういう発見が楽しい。
フカヒレにしてしまうと匂いもあまり気にならず、やはりおいしくいただけた。
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顎の骨格標本を作ろう

さて、料理もいいがこのあたりでちょっと一息入れよう。
深海ザメの頭(クリックでモザイクが消えます)
深海ザメなんてなかなか手に入るものではない。僕のような魚好きにとっては貴重な存在だ。
食べて血肉にするのも良いが、せっかくだし手元に残せるようなものが欲しい。そこで顎の骨格標本を作ることにした。
顎を切り取り、
顎を切り取り、
包丁、ハサミ、ピンセットを駆使して骨の回りの肉を取り去る。
包丁、ハサミ、ピンセットを駆使して骨の回りの肉を取り去る。
乾かして完成!
乾かして完成!
肉を取り除く作業がかなり面倒くさいが、想像していたよりも簡単に、そして綺麗にできた。
歯は2~3列。
歯は2~3列。
この深海ザメ、体の大きさの割に歯が小さい。大きな魚にかぶりつくと言うより、深海の小さな生き物を丸飲みしているのかもしれない。

「サメすくめ」を作ろう

顎を取り去った頭も無駄にはしない(実はドチザメの頭は捨ててしまったのだが…)。
そんな折、サメ研究者の知人からサメの頭を使った「サメすくめ」なる郷土料理が青森をはじめとする東北地方にあると聞いた。ちょうどいいのでインターネットで調べて実践してみることに。
まず頭をさっと湯に通し、
まず頭をさっと湯に通し、
指でこすって鱗を落とす。
指でこすって鱗を落とす。
何か出てきた!
何か出てきた!
鱗を落としていると、鼻先の皮膚からゼリー状の粘液が溢れ出てきた。これを食べるのはちょっと気持ちが悪いので全部絞り出して洗っておいた。
鱗を剥がすだけのつもりだったのに…。
鱗を剥がすだけのつもりだったのに…。
湯に通す時間が長すぎたのか、皮ごと剥がれてしまった…。だいぶ可食部が減ってしまったな。
ここから肉とゼラチン質、小さな軟骨を集めて冷蔵庫で冷やし固めれば完成。
いわゆるにこごりの一種。ポン酢でいただく。
いわゆるにこごりの一種。ポン酢でいただく。
味の方は…正直言って僕の口には合わなかった。プルプルもちもちした食感は面白かったが、いかんせん匂いが残ってしまっていて…。

このサメすくめ、本来は近海でとれる新鮮で臭みの少ないサメを使うようなので、さすがにこの深海ザメで作るのは無理があったのだ。
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深海アナゴはおいしい

残るは深海アナゴの料理である。記事のタイトルからは外れてしまうのだが、せっかく珍しい食材だし紹介しておきたい。
作るのは蒲焼きと天丼である。
これが深海アナゴ。
これが深海アナゴ。
口がものすごく大きく開く。アナゴやウナギの仲間と言うのは強力な顎でエサを噛みちぎって食べるものが多いのだが、この深海アナゴはエサを丸飲みにするためにこんな口をしているのかもしれない。
背開きにする。
背開きにする。
開いて頭を落としてしまうと普通のアナゴと大差ない。
身の色もアナゴにそっくりでおいしそう。
身の色もアナゴにそっくりでおいしそう。
深海アナゴの蒲焼き。
深海アナゴの蒲焼き。
蒲焼きは見た目も味も普通のアナゴに引けを取らず、非常に美味であった。
これは今回一番癖の無い食材のようだ。
深海アナゴ天丼
深海アナゴ天丼
「久しぶりに天丼が食べたい」というだけの浅い理由で作った深海アナゴ天丼も、ほっぺたが落ちんばかりの味わいだった。
深海アナゴ、味は普通のアナゴだが、肉質はさらに柔らかい。個人的には天ぷらにするならこちらの方が好みなくらいだ。
自分、幸せっす!
自分、幸せっす!

調理法次第でいくらでも美味しく!

一部の人々には、「サメはまずい魚」という思い込みがあるように思う。かくいう僕も実はその一人だった。
今回調理したサメ2種も、けっこうクセがあって扱いにくい食材ではあった。しかし、試行錯誤してぴったりはまる調理法を探してやれば、見事においしい料理に化けてくれることがわかった。
むしろこういう魚の方が、工夫のし甲斐があって料理をしていて楽しい。
釣って楽しく、食べておいしいサメたち。さて、さっそく次の船を予約しようか。
深海ザメを釣っているとエサに謎の深海生物の脚がからみついてくる。クモヒトデかな?
深海ザメを釣っているとエサに謎の深海生物の脚がからみついてくる。クモヒトデかな?
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