特集 2012年8月28日

ベイエリアから深海まで!東京湾のサメを狩れ!!

こんなやつらが東京湾で釣れちゃうんだ…!
こんなやつらが東京湾で釣れちゃうんだ…!
「東京は自然が少ない」「都会を離れて珍しい生き物がたくさんいる沖縄や海外に行きたい」「子どもたちに自然に親しむ機会を…」
…自然を愛しつつも都心部に住んでいる人々はこういった愚痴をつぶやきがちである。
確かにそうだ。里山はおろか草むらもほとんど残っていないから昆虫採集をするのも至難である。
だがちょっと待ってほしい。自然と言うのは僕らの足の裏より低い場所にも広がっているじゃないか。
そう、海だ。都心部在住の都会っ子たち、カブトムシは遠出しないと採れないかもしれないけど、もっとワクワクするような怪物が東京湾には潜んでいる!!
さあ、少年少女よ!そして童心に帰りたい大人たちよ!今すぐ、東京湾へ繰り出そう!!
1985年生まれ。生物を五感で楽しむことが生きがい。好きな芸能人は城島茂。(動画インタビュー)

前の記事:ドライアイスでスイカがシュワシュワに!!

> 個人サイト 平坂寛のフィールドノート

東京湾にもサメはいる

東京湾には僕らが思う以上に色々な魚がいる。スズキ、アジ、サバ、アナゴ、メバル…おいしくて釣り人に人気のある魚だけでも数えきれない。
そういった魚を釣らせてくれる釣り船もたくさんあるのだが、今回紹介する船は他とは一味違う大物を釣らせてくれる。サメだ。
横浜は磯子から出る船に乗る。赤い帽子の方は船長。この写真だと怖く見えるけど実際はとても優しいナイスガイ。
横浜は磯子から出る船に乗る。赤い帽子の方は船長。この写真だと怖く見えるけど実際はとても優しいナイスガイ。
その釣り船の名は「てきと丸」。東京湾で唯一サメを「狙って」釣らせてくれる船だ。
サメ。英語で言うとシャーク。まぎれもない大物。海の怪物だ。それを釣らせてくれるだと?
そんな魅力的な釣り、やってみたいに決まっているじゃないか!というわけでさっそく予約を入れ、週末に魚好きの仲間を連れて乗りこんだ。
工業地帯を横目に釣り場へ向かう。
工業地帯を横目に釣り場へ向かう。
釣り場への道中はさながら沿岸の街並みを見ながらのクルージング。潮風を切って海原を走るのは釣りを抜きにしても最高に気持ちがいい。
えっ、もう着いちゃったの!?
えっ、もう着いちゃったの!?
船着き場から20分ほど走っただろうか。突然船が停まる。
「はい釣りはじめていいですよー!」
ええっ、こんなに岸から近い場所でサメ釣れるんですか!?
エサは前もって船長が釣っておいてくれた新鮮なイナダ。エサにするのがもったいないくらいおいしそう。
エサは前もって船長が釣っておいてくれた新鮮なイナダ。エサにするのがもったいないくらいおいしそう。
この日竿を出すのは僕を含めて4人。おのおの半信半疑で仕掛けを海底に沈める。
初心者へのレクチャーもとても丁寧。決してただの女好きというわけではない。と思う。
初心者へのレクチャーもとても丁寧。決してただの女好きというわけではない。と思う。
この日、ぜひサメ釣りに挑戦したいとわざわざ名古屋から来た女性Mさん。
彼女は釣り具の使い方もわからないずぶの素人状態。でも大丈夫。ビギナーには船長の手厚いサポートがあるので女性や子供も安心なのだ。

さっそく釣れた!

そんな船長の指導のおかげか、開始早々Mさんの竿に何かが掛かった!
船長曰く「間違いない。サメだ!」という。やった!
やったぜMさん!船長の指示通り慎重に…あれ?
やったぜMさん!船長の指示通り慎重に…あれ?
しかし、なんだかMさんの様子がおかしい。どうしたんだろう?
手元をよく見ると…。
あっ…
あっ…
釣竿折れてる…!突然のサメ襲来に興奮してしまい竿を立てすぎてしまったようだ。でも普通そんなことぐらいで釣竿は折れたりしないはず。
ということはその先にいるのはそこそこの大物ということ!
海面に魚影が見えた!
海面に魚影が見えた!
水面直下を疾走する青白い影!サメだ!
しかし姿を見せてもおいそれとは観念してくれない。何度船べりへ引き寄せても、有無を言わさぬパワーでリールから糸を引きずり出して海底へと潜っていってしまうのだ。
それでも長時間やりとりをしているとさすがにサメも疲れたのか、水面に浮いている時間が長くなってきた。
さあ船長!タモを入れるチャンスですよ!
度重なる水面下での攻防の末、ついに船長がサメを捕らえた!素手で。
度重なる水面下での攻防の末、ついに船長がサメを捕らえた!素手で。
と思ったら船長素手でサメつかんで船上に引きずりあげてやんの。ちょっとワイルドすぎでしょ!
しかも女の子に「はいこれ、おめでとう!」とか言ってサメ手渡し。
しかも女の子に「はいこれ、おめでとう!」とか言ってサメ手渡し。
本当にサメが釣れた!しかも1メートルをオーバーするサイズ!
どっと沸く船上!折れた竿で頑張り通したMさんも笑顔がはじける。
ひどく和やかにサメに喰われるMさん。
ひどく和やかにサメに喰われるMさん。
いやいやMさん、何笑ってんの!あんたサメに服噛まれてるよ!!
しかし動じないMさん。いや、むしろ嬉しそうだ。
それもそのはず、彼女はなんと生涯をサメに捧げたサメ研究者なのだ。サメの扱いには慣れている。
「自分でサメを釣ってみたくて釣竿まで買ったけど、まだ一度も釣ったことがない。」ということで今回乗船した彼女。最初で最後の一尾になったけど、自前の竿で釣れてよかったね!
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ベイエリアで釣れるのは「ドチザメ」

けっこうかわいい顔してる。
けっこうかわいい顔してる。
釣れたのはドチザメという種類。浅場を好むサメだが、大人しい性質で、人を襲ったりすることは無いとか。
でもやっぱりサメはサメ。整っているけど凶悪な歯並びだ。
でもやっぱりサメはサメ。整っているけど凶悪な歯並びだ。
今度は伊藤さんにヒット!
今度は伊藤さんにヒット!
Mさんの記念撮影が終わるか終らないかのうちに本サイトのライター伊藤さんの竿がしなった!
伊藤さん、必死の形相。
伊藤さん、必死の形相。
「何これ、強っ…!」先ほどまで談笑していた伊藤さんが初めて体験するサメの引きに表情を硬くする。驚愕と焦燥が入り混じった顔である。
大の男をここまでエキサイトさせる魚が近海にいるのだ。しかも東京湾内に。
Mさんに負けじと接吻でサメへの愛情表現。
Mさんに負けじと接吻でサメへの愛情表現。

次々釣れる!

もうアタリが止まらない!船上はてんやわんや。嬉しい悲鳴が湾に響く。
これが小アジやカワハギなどだったら和気藹々と楽しめるのだが、相手はサメである。釣り人も必死だ。
今度は釣りバカのEさんが掛けた!
今度は釣りバカのEさんが掛けた!
今までのよりも大きそうだ!
今までのよりも大きそうだ!
揚がったのはこの日最大、およそ130センチの大物!
揚がったのはこの日最大、およそ130センチの大物!
小学生の身長くらいの長さのサメも釣れた。体重も十数キロに及んだ。魚釣りのターゲットとしては間違いなく東京湾最大級であろう。
とても持参したクーラーボックスに入るサイズではないので優しくリリース。
とても持参したクーラーボックスに入るサイズではないので優しくリリース。
持ち帰らない魚を丁寧に海へ還してやることも、釣りをする上での大切な作法だ。
しかし「大きすぎてクーラーボックスの蓋が閉まらないから逃がす」というのも贅沢な話だ。
僕も小さいながらもゲット!
僕も小さいながらもゲット!
なぜか僕には他の人より小さめのサメしか釣れなかった。何が悪いのだろうと船長に尋ねると、「うーん、日頃の行いじゃないですかね?」との回答。
ちょっとショック。
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外道もすごい!!

ドチザメは本来夜行性なので、夜釣りでも釣ることができる。夕涼みにちょうどいい遊びかも。
ドチザメは本来夜行性なので、夜釣りでも釣ることができる。夕涼みにちょうどいい遊びかも。
さて日が暮れるまでアタリは続き、そろそろ撤収しようかというその時、またMさんの竿が悲鳴を上げる。
今度は折らないでよ!
今度は折らないでよ!
折れてしまった竿の代わりにレンタルの竿で格闘するMさん。そう、このドチザメ釣りは竿、リールから仕掛けまですべてレンタルできるので手ぶらで出かけられるのだ。まあ便利。

それはいいとしてこの魚、なかなか上がってこない。しかも船長が言うには「サメじゃなさそう…」とのこと。一体何なんだ!?
エイ!それもでかい!
エイ!それもでかい!
長時間の戦いの後、水面に浮いたのは大きなアカエイ!本来狙っていなかった魚、釣り用語でいう「外道」だが、思いもかけないサプライズゲストの登場に船上は色めき立つ。
アカエイの尻尾。画像中央に見えるのが毒針。
アカエイの尻尾。画像中央に見えるのが毒針。
アカエイの尻尾には大きな毒針が生えている。釣り上げられるとその尻尾を振りまわすので危険極まりない。
でも毒針さえ無ければ無害なんですけどね。
でも毒針さえ無ければ無害なんですけどね。
しかし毒針を持ったエイもワイルドさの煮こごりみたいな船長の前には何とも無力。
ペンチで毒針をあっさり折られて記念撮影はいポーズ。その後は逃げるように海底へ帰って行きましたとさ。
ちなみにエイの毒針は人間でいうところの爪のようなもので、折られてもまた再生するのでエイファンの方々はご安心を。
なお、折った毒針は有毒生物マニアのライター伊藤さんが持って帰りました。
ブレまくりの写真で申し訳ないが、こちらもサメ釣りの外道で釣れたダイナンアナゴと思しき巨大アナゴ。
ブレまくりの写真で申し訳ないが、こちらもサメ釣りの外道で釣れたダイナンアナゴと思しき巨大アナゴ。
ドチザメ釣りには大きな釣り鈎と大きなエサを用いるため、必然的に外道までも大物になってしまうというわけだ。うーん、どこまでもエキサイティング!

釣ったサメは食べてみます

手ごろなサイズのサメは味見するために船上で〆て持ち帰った。
手ごろなサイズのサメは味見するために船上で〆て持ち帰った。
獲物を持ち帰って食べるのも魚釣りの楽しみの一つだ。特にサメを料理するのは初めての体験なのでワクワクする。
なお調理、試食に関する詳しいレポートはまた次回!
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深海への挑戦!

そんなこんなでトーキョーベイシャークフィッシングは大興奮のうちに幕を閉じた。
あまりに楽しかったので、またすぐにでも挑戦したいと船長に相談すると「道具があれば深海ザメも釣れますよ。」 と驚きの一言が!
何それ、超やりたい!
さらば都会の喧騒…。
さらば都会の喧騒…。
というわけで数日後の早朝4時。僕はまたてきと丸に乗り込み、磯子の船着き場を後にした。
エサを釣るのもまた楽し。
エサを釣るのもまた楽し。
今回はターゲットが深海ザメとあって狩場は水深400メートル以上。ドチザメのようにちょっと走った程度では辿り着かない。
片道2時間ほどかけて釣り場を探すのだが、その道中がまた面白い。船長が小魚の群れを見つけては船を寄せ、彼らを食べに来ているサバやサワラをエサ用に釣っていくのだ。
こんな立派なサワラもエサにしてしまう。おいしそうだけどね。
こんな立派なサワラもエサにしてしまう。おいしそうだけどね。
道中ではなんとシュモクザメ(ハンマーヘッドシャーク)にも遭遇!サバのぶつ切りに喰いつくが惜しくも釣れず!残念!!
道中ではなんとシュモクザメ(ハンマーヘッドシャーク)にも遭遇!サバのぶつ切りに喰いつくが惜しくも釣れず!残念!!
魚群探知機などを使いながら釣り場を慎重に選定していく。
魚群探知機などを使いながら釣り場を慎重に選定していく。
深海釣りにおいても漁場選びは重要だ。ほんの少し船が流されただけで水深が数十メートル単位で変化する。船長の腕と経験がモノを言う。
ここぞというポイントで仕掛けを降ろす。
ちなみに僕の仕掛けはこんな感じ。600グラム近くある巨大な金属製ルアーにイカやサバの切り身をつける。
ちなみに僕の仕掛けはこんな感じ。600グラム近くある巨大な金属製ルアーにイカやサバの切り身をつける。
上の画像、見る人が見れば相当むちゃくちゃな仕掛けかもしれない。僕もどんな形が正解かわからない。まあ過去にもほとんど挑んだ者の無い黎明期の釣りだから仕方が無い。

なお、このてきと丸で船長と共にこの奇妙な釣りを開拓したのは、世界中で魚を釣り歩いている小塚拓矢さんという方だそうだ。うーん、日本にもまだまだ奇特な方がいらっしゃいますな!とてもとても良いことだ。
おっ!来た来た!!
おっ!来た来た!!
魚の反応は意外なほど早かった。
当初は「深海ザメなんてそうそういないだろうし、ひたすら待つ釣りになるな。」と予想していたものだから、これは嬉しい誤算と言うことになろう。
さて何が釣れているのか!?
ぬぼぇぁー。
ぬぼぇぁー。
うわああああああああ、なんじゃこりゃあああ!
べろんちょろー。
べろんちょろー。
正解は深海アナゴでしたー(正しい名前わからず)。
なんだ、サメじゃないのか…。と残念な気持ちも多少はあるが、手探りの状態から釣れた価値ある一尾。普通の釣りしてたんじゃ絶対出会えない魚だしやっぱりすごく嬉しい!!
胃袋を開いてみることに。
胃袋を開いてみることに。
しかしこの深海アナゴ、やけにお腹が膨らんでいる。一体何が入っているのかと船長を含め皆興味津々。
というわけでお腹を割いてみると…。
結構大きな魚の頭の骨と思われる物が出てきた。
結構大きな魚の頭の骨と思われる物が出てきた。
何やら見慣れぬ形の頭骨が出現。
並べてみると本人(?)と大して変わらないサイズなんだけど…。よく飲みこめたな。
並べてみると本人(?)と大して変わらないサイズなんだけど…。よく飲みこめたな。
深海魚が飲みこんでいたんだからやっぱり他の深海魚の頭なんだろうか…。魚類の骨格に詳しい方、情報求む。
ほぼ同時に同乗者の方にもヒット!
ほぼ同時に同乗者の方にもヒット!
そうこうしているうちに同船したHさんの竿にも何やら大物が!
この釣り、なかなか頻繁に魚からのレスポンスがあって退屈しない。

しかしこの釣り、掛かった魚を深海から引っ張り上げるのが重労働である。せいぜい30メートルほどの水深で釣るドチザメですら、釣り上げるまでに結構な体力を使う。それが水深400~500メートルになったらそりゃもう大変だ。
考えてもみてほしい。東京タワー以上スカイツリー未満の深さからそこそこ大きな魚を、直径数センチ程度のリールの軸に釣り糸を巻き込み続けることで引き上げるのだ。
こうして文章にするだけで気が遠くなる。
ついに浮いた!
ついに浮いた!
どれくらい時間がかかっただろう。10分?20分?
ついに海面に幽霊のような影が浮かび上がった。
「サメだ!サメ!」誰からともなく口をついて出るサメコール。
もはや暴れる力は残っていなかったようで無事ネットに納まってくれた。
もはや暴れる力は残っていなかったようで無事ネットに納まってくれた。
何だ?一体何が釣れたんだ!?急いで駆け寄るとそこには「怪物」あるいは「化け物」と呼ぶにふさわしい異形のサメが!
おっかない口と歯と
おっかない口と歯と
そして満月のように輝く綺麗な瞳。
そして満月のように輝く綺麗な瞳。
こいつは一体何者なのか。
一般的にイメージされるサメのフォルムとは一線を画した体躯。
一般的にイメージされるサメのフォルムとは一線を画した体躯。
その正体はヘラツノザメの仲間。深海ザメの中では割と分布の広い種のようだ。
それにしても、こういう奇特な釣りへの理解がある船長の力添えさえあれば、こんな魚を漁師でもない一介の釣り人が釣り上げることができてしまうのである。これは驚嘆に値する事実ではないか。

その後、Hさんと共に先程と同じ深海アナゴと深海ザメをさらに一尾ずつ釣り上げたが、風が強くなってきたため撤収した。ようやくたどり着いた深海が名残惜しくはあったが、素晴らしい充足感と共に陸に上がることができた。

もちろん食べるよ!!

さて、この度ご紹介した東京湾サメハンティングはいかがだっただろうか。
興味を抱いた方はぜひ、釣り船「てきと丸」に乗ってみていただきたい。きっと後悔はしないはずだ。
しかし、本サイトにおける僕のサメ狩り紹介はまだまだ終われない。そう!肝心の試食編を公開していないではないか。
ページ数の都合で今回お見せできなかったサメ料理の数々はまた次回、たっぷりとお見せする所存である。
釣りの最中に船長が発見、捕獲したトビウオの稚魚。このサイズでも一応飛べるみたいです。
釣りの最中に船長が発見、捕獲したトビウオの稚魚。このサイズでも一応飛べるみたいです。

取材協力
道楽釣り船てきと丸:http://www.fishtokyo.com/
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