特集 2012年7月28日

上海のアートな物干し

上海の観光客が来なさそうな旧市街から対岸を眺める。  品川コンテナターミナルから見るレインボーブリッジのような味がある。
上海の観光客が来なさそうな旧市街から対岸を眺める。
品川コンテナターミナルから見るレインボーブリッジのような味がある。
上海といえば川の対岸に見える塔「東方明珠塔」や巨大な高層ビルが代名詞。

東方明珠塔だけでなく、上海の繁華街では近未来的な高層ビルあり、高級レストランあり、ブランドショップが並ぶ通りがあるし、上海に進出する日本企業のニュースは数知れず、ファミリーマートにローソンにセブンイレブンとコンビニも沢山。

そんな新しく活気のある大都市、上海にも旧市街があり、下町があり、実にいい味を出している。そこではまるで物干し竿と洗濯物が香港の道に飛び出る看板のようにせり出しているのだ。

この物干しを撮り貯めてみた。
変なモノ好きで、比較文化にこだわる2人組(1号&2号)旅行ライターユニット。中国の面白可笑しいものばかりを集めて本にした「 中国の変-現代中国路上考現学 」(バジリコ刊)が発売中。

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> 個人サイト 旅ライターユニット、ライスマウンテンのページ

道路に攻め入る洗濯物

確かに1回目の上海なら華のある場所に行きたいのはよくわかる。東京観光といえば、まずは浅草やスカイツリーに行くだろうし、新宿や秋葉原や銀座で買い物するだろうし、ディズニーランド@千葉で遊ぶだろう。初東京で月島や谷根千や北千住に行きたい人はそういないのではないかと思うのだ。

だがリピーターなら、新たな東京を発見すべく、月島で路地裏を歩き、もんじゃ焼き食べると思うのだ。谷根千であてもなく歩くと思うのだ。

生活臭のあるところで歩けば、上海の物干しが自然と目に入ってくる。
街中ですらこんな暖かみのある光景がどこにでも
街中ですらこんな暖かみのある光景がどこにでも
洗濯物はアパートの敷地内から外へと浸食していく。
洗濯物はアパートの敷地内から外へと浸食していく。
敷地のない洗濯物は道路へと居場所を求める。
敷地のない洗濯物は道路へと居場所を求める。
歩道に洗濯物があるのだから、洗濯物をのれんのように手でわけて歩いてみたい。
歩道に洗濯物があるのだから、洗濯物をのれんのように手でわけて歩いてみたい。
商店街の万国旗と思えば、通りに活気があるとも思えなくもない。
商店街の万国旗と思えば、通りに活気があるとも思えなくもない。
休憩スペースの上にMy竿をかけて洗濯物は佇む。 座ると背中にひやりと水が垂れるので納涼になりそうだが誰も座れない。
休憩スペースの上にMy竿をかけて洗濯物は佇む。 座ると背中にひやりと水が垂れるので納涼になりそうだが誰も座れない。
なにかの柱にモップをかけ、さらに紐を伸ばし、ぬいぐるみを干す。 モップからもぬいぐるみからも、水がしたたるいい景色。
なにかの柱にモップをかけ、さらに紐を伸ばし、ぬいぐるみを干す。 モップからもぬいぐるみからも、水がしたたるいい景色。
布団も路上で干すから、たまに車に接触することもある。でも地元の人はそんなリスクに寛容らしい。
布団も路上で干すから、たまに車に接触することもある。でも地元の人はそんなリスクに寛容らしい。
水分いっぱいの洗濯物は、電気分いっぱいのところにまで進出。怖いモノ知らず。
水分いっぱいの洗濯物は、電気分いっぱいのところにまで進出。怖いモノ知らず。
上海の下町らしい「ちょっと一息」な光景。
上海の下町らしい「ちょっと一息」な光景。

天を舞う洗濯物

中国では他人の目を気にせず我が道を行く人がけっこういる。一方でモラル改善を意識して、ルールをできるだけ守ろうとする中国の人もいる。

どうしても前者の人が目立ちがちなので、洗濯物も路上のモノばかり目立ちがちである。でも路上に侵攻しないシャイな洗濯物もある。親の性格が洗濯物にも反映される。それはペットのようであり、親子のようである。

とはいえ上海の地価は高い。家が高い。だから他の都市と比べてどうしても狭い家に住まざるをえない。外に洗濯物を出さない代わりにちょっとした工夫が上海の家にはある。
それはまるで香港の看板か、日本のこいのぼりか。
それはまるで香港の看板か、日本のこいのぼりか。
マンション内でも突き出る物干竿
マンション内でも突き出る物干竿
直接洗濯物が道を塞いでいるわけではないので、この通りでは水がしたたろうがモーマンタイ(無問題)。
直接洗濯物が道を塞いでいるわけではないので、この通りでは水がしたたろうがモーマンタイ(無問題)。
見上げれば、高層マンションの窓から洗濯物。
見上げれば、高層マンションの窓から洗濯物。
すごくアクロバティック。イメージがわかない光景こそ海外旅行の醍醐味。
すごくアクロバティック。イメージがわかない光景こそ海外旅行の醍醐味。
どれだけ高い高層マンションだろうと庶民の臭いがある。日本のベイサイドの高層マンションから山形で一番高いマンションまで真似てみてはどうだろうか。。
どれだけ高い高層マンションだろうと庶民の臭いがある。 日本のベイサイドの高層マンションから山形で一番高いマンションまで真似てみてはどうだろうか。

世界の旧市街の習慣を探し尽くしたい

「ベランダなんか欲しくない、だったらその分を部屋のスペースに割り当てたい」そんな中国人民のニーズと、狭い家がマッチしたからか、独特な物干し文化が生まれた。

以前は北京の旧市街で味がある絵を発見し、今回は上海の旧市街で洗濯物の独特さを発見した。きっと東京の谷根千や月島や浅草近辺の下町にも、ほかの都市の下町にも、現代風マンションが建ち並ぶ地域にはない、その土地ならではの変わった習慣が建物や風景に滲み出ているのではないだろうか。

外国でも日本国内でも下町巡りのときにはちょっと意識して町歩きをしてみたい。
遺産級の建物と生活臭のある洗濯物、 その組み合わせはむしろいい。
遺産級の建物と生活臭のある洗濯物、 その組み合わせはむしろいい。
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