色彩豊かに描きたい
お菓子業界の場合、チョコや粉砂糖などを駆使したカラフルなイラストをたまにみる。しかし一般の料理では…ケチャップでハートを描く事がある位だろうか。
今回はそんな単純なものではなく、色彩豊かで美的な絵画に挑戦したいと思う。
絵の具代わりになりそうな食品を色々と用意した。
白系
黄色、緑系
赤系
茶色系
黒系
紫はブルーベリージャム
青色が無い
色を揃えるにあたり大きめのスーパーに行ってみたのだけど、人の食欲を無くすといわれている青色だけは見つからなかった。三原色のため、何かと何かを混ぜて青色にする、という事もできないみたい。着色料を使う訳にはいかないし…残念だけど青は諦めよう。
キャンバスはこれ
キャンバス代わりにライスペーパー(生春巻きの皮)
キャンバスは何がいいか。どうせなら食べられるものがいいなと色々と候補を挙げた結果、ライスペーパーを選択してみる。色は白っぽいし、そのまま食べられるから丁度いいかと思ったのだ。
A3くらいの大きさにしたかったので4枚並べて水に戻す
キャンバスできた。イマイチだ!
想像ではもっと白い紙に近くなる予定だったけど半透明のためアルミが透けてて見た目はイマイチに。アルミじゃなくて白いお皿を用意すれば良かった。
お次は絵の具を並べよう。
まずは白から
それっぽい気分を味わおうとパレットに色を並べる。まずは基本の白から、とれん乳を垂らしてみる。押していないのにトロトロと出てくる純白の液体、甘い香り。思わず蓋を閉める前になめてしまった。この絵の具、美味しい。
あ、これ色がほとんど一緒!(手前がワサビ、奥が柚子胡椒)
パッケージの写真では色味が違ったワサビと柚子胡椒は、出してみたらほとんど一緒だった。こんなに似ているものでしたか…
それぞれトロミが違いますね
パレットの色を乗せる所の数の都合と使いやすさを考慮して、今回はパウダー系や醤油のようなサラサラの液体は外す事にした。
色んな香りがする。中でもニンニクとタバスコの香りの強さたるや
青春の香りがする
混沌とした香りの中、ニンニクとタバスコは主張が激しかった。特にやっぱりニンニクが凄い。高校時代初めてバイトした焼肉屋でニンニクすりおろし係をさせられ、3本の指に残った臭いがずっと気になり授業中に嗅ぎ続けていた事を思い出す。私の青春時代の香りだが…クサイ!
対象物はヒマワリとした。ゴッホを意識。
有名な画家の中ではゴッホが好きなのと、夏休みの時期という事で最初の絵の対象物はヒマワリ(造花)とした。
ではいざ描きます!
すぐに色塗り
普通の絵画は色をつける前に下描きをする所だろうけど、この調味料絵画の場合どうしたらいいのか分からないのでその工程は無視して進める。
真ん中の種部分はやっぱりソースかな
中濃ソースを筆につけて
塗る。うん、薄い
ライスペーパーに筆を置いてみるも、ソースは全く吸収されず弾かれて思うように色が乗らない。塗るというよりペタペタと厚く重ねるようにしていった。やりたかったイメージと違うな…
種の感じを出すのに焼肉のタレ(濃いめ)も使用
周りにはカラシとマヨネーズを混ぜたものを塗った。
鮮やかな黄色の花びらにはマンゴージャムを
でもほとんどヒマワリ見てない
細やかさが出せない
普通の絵画と違い、ひと筆ひと筆の繊細さを表す事が難しい。マンゴージャムの綺麗な色はとても映えるが、花びらの質感や個性的な動きを意識的に表現できないのだ。こりゃもう対象物見なくていいやという気になってしまった。
完成しました
茎と葉っぱの縁取りを柚子胡椒で、葉っぱの色をワサビで(多少明るいので)塗ってみたが、そんな細かい事は全く伝わらない上にマンゴージャムやソースに比べて存在が薄い。凄くアンバランス。しかしポジティブに考えれば、メインの花の美しさ(?)の引き立て役となっているとも言えるだろうか。
マヨネーズは溶けていき、練り物は映えない
茎や葉っぱの色をもっと濃くしたいなら、ワサビや柚子胡椒をもっと厚く塗ればいいかもしれない。しかしそれにはかなりの勇気がいる。なぜなら後で食べるつもりだからだ。これ以上は無理できなかった。
そして美は一瞬で崩壊した
芸術は崩壊だ!
特に必要性も無かったのだがなんとなく立てて撮影しようとした所、ジャムとソースとマヨネーズが重力により垂れ、あっという間に絵が崩壊してしまった。岡本太郎の芸術は爆発だ!の名言が頭をよぎる。
別に爆発した訳ではないのだけれど、一瞬で崩れるその様はまるで美は永遠ではないよと告げているようじゃないか。これぞ芸術だ。
このあと美味しくいただきました
芸術のお陰で色々と混ざったものに、冷蔵庫にあった大根やキュウリを乗せ皮に包んで食べた。シャキシャキとした新鮮な野菜の食感に、どこにも分類できない奇妙な味。口の中がピカソ。普段と違う芸術的な味覚に舌も驚いたようだった。ちょっと自由にやりすぎた。
王道でいこう
芸術も大事だが、できれば味覚も大事にしていきたい。そこでキャンバスを変更してみる事に。子供の頃ソースや梅ジャムで絵を描いた人がいるかもしれない、えびみりん焼きだ。これ自体にしっかり味がついているので、上に乗せるものが多少迷走しても美味しくいただける気がする。
先程のヒマワリで舌がまだ驚いたままなので、まずは控えめに、袋にいるエビを描いてみることにした。
やっぱり赤はケチャップだよな
白は何にしようかな
赤と白、そして目玉の黒の3色だけの単純配色のエビ。今回の決め手は繊細でいて躍動感あるヒゲの線をどこまで表現できるかだろうか。細い筆を使った。
できた。ケチャップ×ホワイトソース×練りゴマ
梅肉×練乳×黒蜜
どちらもとても美味しかった。特に梅肉×練乳×黒蜜の、酸味と甘味のかけあわせがグッド。えびみりん焼きそのものの味も強くて、先程の生春巻きの皮よりもずっと安心していただけた。色も乗りやすいぞ。
美味しい。けどちょっと絵が単純すぎたかな
そして次に描いたのがコレ。なんだか分かりますかね
「オーイ」
ムンクの叫びもイマイチ
キャンバスを広げ、全体的にダイナミックに筆を振ってみるが、ヒマワリの時同様にどうにも繊細さが出ない。ちなみにブルーベリージャム、練乳、マンゴージャム、ケチャップ、ソース、カラシ、練りゴマペーストあたりを使用しました。
味はけっこう美味しいけどさ…絵がねえ…
やっぱり下描きが必要かも
下描き、というか主線をしっかり描いた方がちゃんと絵になるかもしれない。そこで線を描きやすい素材はどれかを調査してみることに。
ごはんですよも雰囲気があっていいけど
練りゴマが描き心地良し!
大根の輪切りによーじやの絵を描いて比較してみた所、圧倒的に練りゴマペーストが描きやすかった。これなら今度こそちゃんとした絵が描ける気がするぞ。
では練りゴマを使って
主線を描いてみよう
ウフ
ソースで顔の影つけ(あ、ちゃんと描いてる感じがして楽しい!)
痩せ気味のモナリザ完成。練りゴマペースト、ソース、ケチャップ、練乳、ごはんですよ、粕ディップ、マンゴーソースあたりを使用。
旨いし満足!
ここに来てようやく、絵を描いてるなあという満足感が得られた。特にソースやケチャップで影をつける作業が楽しい。
本物の絵の背景は山だか湖らしきものがあり、空も含めて青みがかっているのだが、青色が無いため美味しさ重視でごはんですよを塗り、マンゴージャムでその暗さを打ち消してみた。つまり本物とはまるきり違うが、ヒマワリや叫びよりはそれっぽく描けていると言ってもいいだろう。(いいよね!)
他にも写楽の絵、真珠の耳飾りの少女(耳飾り描き忘れてますが)。
こうしていくつか描いてみると、だんだん使う素材が絞られてくる。使いやすいのは黒ゴマペースト、ソース、ケチャップがトップ3で、明るい色はジャム系。白系の色は、乗せてもあまりよく見えないが食べた時に美味しいのは練乳だろう。
えびみりん焼き食べすぎだ
ようやく絵を描くのが楽しくなってきたのだけど、えびみりん焼きを食べすぎて流石に飽きてきた。最後にキャンバスをハンペンに変えオリジナルの絵を描いて終わろう。
犬は味噌と焼肉の濃いタレ、背景にワサビ。自分のキャラはごはんですよと梅肉とほっぺたにタバスコ、背景はカラシ。
トーストで軽く焼いたら雰囲気のある色合いになった
使いすぎに気を付けたいカラシやワサビも、背景に薄く塗って焼けば程よい風味となり美味しくいただけた。そういえば両方ともハンペンとは相性いいもんな、助かった。
こうして、芸術性と美味しさの折り合いをつけながら進めた今回の企画。少しは満足した絵が描けたしすごくお腹いっぱいになったのでこれにて終了!
混ぜるな危険
絵の具代わりになりそうかなと思った食品たち。実際使ってみたら、粘度により使い勝手に差が出てくる事や、マヨネーズは溶けて消える、混ぜたら危険(味的に)、ごはんですよはどんな食材にも合う、など色々な発見があった。
キャンバスは他に豆腐やパンなどを使ってもいいかも。色々とアレンジがききそうな調味料絵画、今後も美味しさ求めつつチャレンジしてみたい。