特集 2012年7月22日

誰でも出来る綱渡り体験会

揺れるし、しなるし、汗かくし。新感覚のスポーツです。
揺れるし、しなるし、汗かくし。新感覚のスポーツです。
スラックラインという新しいスポーツがあります。幅5cmほどの綱を渡るスポーツです。簡単に言えば綱渡りですが、ただの綱渡りではありません。

今回はプロのスラックラインライダーの方に話を聞いて、実際にスラックラインを体験してきました。
1972年生まれ。元機械設計屋の工業製造業系ライター。普段は工業、製造業関係、テクノロジー全般の記事を多く書いています。元プロボクサーでウルトラマラソンを走ります。日本酒利き酒師の資格があり、ライター以外に日本酒と発酵食品をメインにした飲み屋も経営しているので、体力実践系、各種料理、日本酒関係の記事も多く書いています。(動画インタビュー

前の記事:氷のグラスを作る方法

> 個人サイト 酒と醸し料理 BY 工業製造業系ライター 馬場吉成 website

CMなどで話題です

まずはこの映像を見て頂きたい。ドコモのスマートフォンのCMです。
この綱の上で飛び跳ねたり、回転したりしているのがスラックラインというスポーツ。サーカスの曲芸ではなく、技の完成度を競う競技もちゃんとある、紛れもないスポーツです。

日本ではまだマイナーですが、海外では非常に人気のあるスポーツで、大きな大会や様々なイベントも開催されています。このような動画も多数アップされています。
更に最近ではプロスポーツ選手の間で体幹トレーニングというものが注目されていて、このスラックラインは体幹を鍛えるのにも効果的ということで注目が集まっているそうです。

サーカスでピエロが綱を渡るのとは全然違います。

プロに話を聞いてみよう。

さて、今回参加したスラックライン体験会では、プロのスラックラインライダーの方が講師として指導してくれました。スラックラインプロライダーの我妻吉信さんです。
日本オープンスラックライン チャンピオンシップ優勝、ギボンワールドカップ ツアー総合7位の記録保持者。世界クラスのスラックラインライダー。
日本オープンスラックライン チャンピオンシップ優勝、ギボンワールドカップ ツアー総合7位の記録保持者。世界クラスのスラックラインライダー。
まずは我妻さんにお話を聞いてみました。

馬場「そもそもスラックラインとはどんなスポーツなのでしょう?」
我妻「登山家の人たちが、オフの際に遊びやトレーニングとしてザイルを木の間に張って渡っていたのが発祥のスポーツです。今から5年ぐらい前、ドイツのギボンスラックライン社が、渡りやすい様に綱の幅を5cm にして、登山家専門の高度な技術が無くても簡単に綱のセッティングが出来るようにしたんです。それをストリートに持ち込んで皆にやらせたんですよ。」
登山家もこういう競技になると思っていただろうか。
登山家もこういう競技になると思っていただろうか。
我妻「競技としてやっている人もいるし、エクストリームなパフォーマンスを目指している人もいる。それだけではなく、50mとか長い距離をゆっくり渡る人、ラインの上でヨガをやる人。すべてがスラックラインです。」

渡るだけでも結構大変と思うのですが、綱の上でヨガとは!明らかにただの綱渡りとは色々違うようです。では、綱渡りというとアレを持っているイメージがあるのですがそこのところどうなのでしょう?
綱の上で宙返り。上級者はこんなアクロバティックなことも出来てしまう。
綱の上で宙返り。上級者はこんなアクロバティックなことも出来てしまう。
馬場「綱渡りというと、サーカスとか、高い渓谷の間を長い棒を持って渡っているみたいなイメージがるのですが、棒は持たないのですか?」
我妻「あのように高い所を命綱付けて渡るのはスラックラインの中でもハイラインと言われます。スラックラインでは手に何も持たずにやるのが普通です。元は同じものとは思うけど、全く別物ですね。」

スラックラインには、ジャンプなどの技を楽しむフリースタイル、長いラインを張って歩くロングライン、 高い場所にラインを張って行うハイライ、テンションをほとんどかけていないラインに乗るロデオラインなど様々な楽しみ方があるそうです。

そして、手に持つ棒は不要です。

日本に入ってきたのは3年半前

スラックラインが日本に入ってきたのは3年半ほど前なのだとか。割と最近の事。このような競技を始めた切っ掛けを我妻さんに聞いてみました。
今じゃこんなことも出来るように。凄い。
今じゃこんなことも出来るように。凄い。
馬場「スラックラインを始めた切っ掛けは?」
我妻「友人が日本に初めて入ってきたギボンのスラックラインを持ってきたのが切っ掛け。最初は全然できなくて、バランス悪いな自分というところから始まった。」

そんな運命的にスラックラインとであった我妻さんは、現在ではギボンスラックライン社日本代理店の専属ライダー。イベントでのパフォーマンス披露や、講師としてスラックラインを教えることによりプロライダーとして活躍しています。

日本でも大会がある。

馬場「大会はやはり海外に行ってやるのでしょうか?」
我妻「日本でも年に1回、日本オープンという大会が開催されていまあす。その他にも地方大会があります。日本オープンも前回で2回目なので、まだ国内はこれからですね。」
外国では大きな大会も多数開催されているそうです。
外国では大きな大会も多数開催されているそうです。
日本に入ってきてまだ3年半。ようやく国内のスラックライン協会も立ち上がったそうです。これから大会も徐々に盛り上がりを見せてくるのでしょう。

更にお話を聴きつつ、体験会の様子をレポートしていきます。
いったん広告です

練習場所には結構困る

室内用のスラックライン台。長さ4m、高さ30mにラインが張れます。
室内用のスラックライン台。長さ4m、高さ30mにラインが張れます。
馬場「練習はどういった所でされるのですか?」
我妻「近所の公園とか、イベントで呼ばれた会場とかですね。」

スラックラインは、ある程度の広さがあって綱を固定できる物が必要な為、練習場所が限られます。まだマイナースポーツのスラックラインは、公園などで練習していると驚かれて注意されることもあるのだとか。練習場所は限られます。
これがスラックライン用の綱。あと綱を引っ張るためのラチェット。これで綱をピンと張る。
これがスラックライン用の綱。あと綱を引っ張るためのラチェット。これで綱をピンと張る。
それでも、今では都内に2か所スラックライン専用の練習ジムがあるそうです。また、大手スポーツジムに上の写真にあるような室内用のスラックライン台を備えているところもあり、徐々に普及しているそうです。

普段の生活にはない浮遊感、達成感が楽しい。

更にスラックラインの楽しさなども聞いてみました。
体験会ではラインの張り方も簡単に教えてもらう。木に張る時は、木を傷つけないように、保護する何か巻いてから張るのがいいらしい。
体験会ではラインの張り方も簡単に教えてもらう。木に張る時は、木を傷つけないように、保護する何か巻いてから張るのがいいらしい。
馬場「スラックラインの楽しさはなんでしょう?」
我妻「空中を渡っているのは浮遊している感覚。目指すところがあってそれに向かって歩いていく。なんとも言えない、普通の生活ではないその感覚が気持ちいい。そういった様々な感覚がポジティブに実生活に役立ってくる。」
ラチェットを引いてテンションをかける。トラックの荷台などについている固定具と構造は大体同じ物です。
ラチェットを引いてテンションをかける。トラックの荷台などについている固定具と構造は大体同じ物です。
スラックラインは体に無駄な力が入っているとバランスが崩れて上手く立つことすら出来ないそうです。集中してその浮遊感を楽しむ。綱を渡りきる。技を決める。なんとも奥の深い世界です。

いよいよ体験会

我妻さんの話を聞いた後は、いよいよスラックライン体験会です。今回の体験会は日本スポーツ&ボディ・マイスター協会で開催されたもので、男性、女性、サッカー少年達と多彩な顔ぶれでした。
ラチェットをスラックライン台に取り付けてラインをセット。
ラチェットをスラックライン台に取り付けてラインをセット。
体験会では高さ30㎝ほどにラインを張れる専用台を使います。
設置完了。
設置完了。
最初の動画にあるような、高さのある綱の上で飛んだり跳ねたりするものとは違い、かなり簡単そうに見えます。
結構幅広。綱というより帯。これなら簡単に渡れるのでは?と、この時点では思っている。
結構幅広。綱というより帯。これなら簡単に渡れるのでは?と、この時点では思っている。
綱を見ると幅が結構あります。子供の頃、ブロック塀の上をスタスタ歩いて遊んだことを考えると、これぐらいの高さと幅。心の中でうっすら「余裕じゃね?」と思っていたり。まあ後で痛い目を見るわけですが、それは後程。

まずは先生のお手本

綱の上で綺麗に安定。
綱の上で綺麗に安定。
では実際に渡ってみます。まずは講師の我妻さんよりバランスのとり方や、力の入れ方の説明を受け、実演を見ます。
大きく揺れることもなく綱の上で安定を保っています。何気なくやっているようですが、色々と細かく体を使っているようにも見えます。

では、私も乗ってみましょう。立つことぐらいなら出来るでしょう。
いや、無理!
いや、無理!
全くもって立てません。足元が左右に小刻みに揺れる。それに伴い上体のバランスが崩れるので戻そうとすると、反対側に一気に倒れていきます。1歩歩くぐらいが限界。スラックライン、見た目ほど簡単じゃない!
他の参加者も次々に挑む。私のように立つ段階で戸惑う人もいれば、最初から少しは歩ける方も。
他の参加者も次々に挑む。私のように立つ段階で戸惑う人もいれば、最初から少しは歩ける方も。
女性も渡っていく。
女性も渡っていく。
少年たちは最初から割と上手かった。
少年たちは最初から割と上手かった。
まず立つことの基本は上体の力を抜くこと。あと、使ってない側の足の力も抜いた方が良いようなのですが、言うは易し行うは難し。
直接指導。慣れるまで何度でもやるさ。
直接指導。慣れるまで何度でもやるさ。
とにかく力を抜いて回数を重ねます。
いったん広告です

転倒!

そうこうしているうちに他の参加者も綱に徐々に慣れてきてある程度渡れるようになってきます。特に少年達は呑み込みが早い。
あっさり反対側まで渡ってしまいました。で、昭和生まれのオッサンはというと…
なかなか安定しないですな。人生の綱渡りはギリギリ落ちないで生きてきましたが、リアル綱渡りは落ちまくりです。
鳥になったよ。
鳥になったよ。
そして、体験会も後半。転倒などしながらも、ひとまず私も半分ぐらいまではなんとか渡れるようになっていました。

渡るのが精いっぱい

ここで講師の我妻さんよりターンの方法や、ラインの上で座る方法などについて説明、実演が入ります。
この状態で床に足は全く着いてない。
この状態で床に足は全く着いてない。
我妻さんは「回る時は頭の位置を変えないでサッと回る。回ってから考える!」と回るコツを教えてくれます。
とはいえ、立って少し歩くことが限界の状態では、回るどころの話ではありません。将来の参考にします。
少年達はサッサと渡っていきます。
少年達はサッサと渡っていきます。
とりあえず、ラインの上では両足で立っているよりも片足で立っている方がバランスをとりやすく、歩くときはサッと反対の足を出した方が歩きやすかった。スラックラインでは思い切りが必要なようです。

こうして体験会は終了。意外に運動量が多く、興味深い楽しい体験でした。

奥が深くて面白い

今回の体験会では男性、女性、少年たちと幅広い層が集まっていました。外でイベントをやる時は、もっと小さい子供やお年寄りが体験することもあるそうです。

最初は大体「なんじゃこれ?」から入るものの、終わると「楽しかった!」となるのだとか。スラックラインの協会では幅広く参加を謳っているので、アクロバティックな物だけでなく、だれでも出来るようなイベントの開催、普及を目指しているそうです。

そのうち、公園にある遊具でちょっと遊ぶ感覚で楽しむスラックラインから、エクストリームな物まで普通に体験できる日が来るかもしれません。興味のある方はこういう体験会にまず参加してみると楽しいですよ。
最後には反対側まで渡ることができました。スラックラインの綱、買っちゃおうかな。
▽デイリーポータルZトップへ

banner.jpg

 

デイリーポータルZのTwitterをフォローすると、あなたのタイムラインに「役には立たないけどなんかいい情報」がとどきます!

→→→  ←←←
ひと段落(広告)

 

デイリーポータルZは、Amazonアソシエイト・プログラムに参加しています。

デイリーポータルZを

 

バックナンバー

バックナンバー

▲デイリーポータルZトップへ バックナンバーいちらんへ