特集 2012年6月28日

海苔競技会で海苔6種類を食べまくり!

同じ板海苔で、まさかこれほどまで味に違いがあったとは…
同じ板海苔で、まさかこれほどまで味に違いがあったとは…
定期的におにぎりを作るようになって、以前より頻繁に海苔を買うようになった。買うときの基準は特にない。「ま、値段が張るのはおいしいよね」くらいの認識で、貰い物の海苔もありがたく使わせていただく。こだわりなどない。

そんなんだから、海苔は大きく分けて「普通の(味が付いてない)海苔」と「味付け海苔」の2種類しかないと思っていた。が、しかし。

海苔競技会に参加して、いかに自分が海苔について無知であったのかを思い知らされました!
1968年秋田県生まれ。食べたり飲んだりしていれば概ね幸せ。興味のあることも飲食関係が中心。もっとほかに目を向けるべきだと自覚はしています。

前の記事:油で揚げないとんかつモノマネ選手権


会の趣旨

いきなり「海苔競技会」と言われても、なんのことだかさっぱりお分かりにならない皆さん。当然です。説明します。

えー、海苔競技会とは、それぞれが「これがおいしい海苔だ!」という自慢の1枚を持ち寄り、その旨さを競うという自主的な集まりのことでございます。

つまり、大人のカードバトル(紙のように薄い海苔+値段もそれなり)と思っていただければ、ほぼ間違いないでしょう。

競技の前に腹ごしらえ


海苔を競わせる「競技部門」の前に、まずはエキシビションといこうではないか。

参加者にはそれぞれ「海苔に合うつまみを持参するように」と指令を出してあった。
なんだろう、このお酒が飲みたくなるラインナップは。
なんだろう、このお酒が飲みたくなるラインナップは。
ネギトロを持って来た人が2人も! そりゃ海苔に合いますよねぇ。さ、酒ー!
ネギトロを持って来た人が2人も! そりゃ海苔に合いますよねぇ。さ、酒ー!
「海苔に合う」と言ったところで、実はほとんどの食べ物が海苔に合ってしまう。特に和食の場合はパーフェクトじゃないかと思うほど、どれも相性がいい。

私はキャベツのコールスロー(酢多め)を海苔で巻いて食べるのが好きでよくやるだが、洋食も意外とイケます。おすすめ。
そしてカラスミごはん。紫蘇とかゴマとかが入ってて、海苔と合わないわけがない! たまらん!
そしてカラスミごはん。紫蘇とかゴマとかが入ってて、海苔と合わないわけがない! たまらん!
そうかと思えば、海苔会にちなんで真っ黒な日本酒(!)を持参する参加者も。
うっすら黒いというレベルじゃなく、もう見事なまでに真っ黒。ほぼ墨。なのに、ちゃんとおいしい!
うっすら黒いというレベルじゃなく、もう見事なまでに真っ黒。ほぼ墨。なのに、ちゃんとおいしい!
墨汁のようでありながらしっかり旨いお酒(秋田にある白瀑という酒造の「ど黒」という日本酒)を飲みながら、そろそろ競技会への準備を始めるとしよう。

なんとダブりが3枚も

まずは主催者の私が海苔を回収し、食べてもらう順番を決め、どれが誰の海苔か分からない状態にした。
海苔チェック。会場提供者の元DPZライター土屋さんにも手伝ってもらった。
海苔チェック。会場提供者の元DPZライター土屋さんにも手伝ってもらった。
そこで驚愕の事実発覚。なんと3名が同じ海苔を持ってきていた!
そこで驚愕の事実発覚。なんと3名が同じ海苔を持ってきていた!
いきなり3枚もダブるなんて競技になるのか…? と不安になったが、なんとか計6枚の海苔が集まった。これでなんとかなる。

これを、DPZライターの玉置さんが持ってきてくれた卓上七輪でパリっと焼いてから審査に入ろうではないか。
台所で炭をおこしてから部屋へ移動。
台所で炭をおこしてから部屋へ移動。
換気に気をつけないとえらいことに!
換気に気をつけないとえらいことに!
まずは、それぞれが持参した海苔をご紹介しよう。
はたさん持参の「青混」は10枚×3で1000円。「風味焼のり」の表記あり。
はたさん持参の「青混」は10枚×3で1000円。「風味焼のり」の表記あり。
一枚がそのままの形で袋に入ってるのが「焼き海苔」
一枚がそのままの形で袋に入ってるのが「焼き海苔」
どうやら同じ板海苔でも、一枚がそのままの形(正方形)の物が「焼き海苔」なのだそうだ。

では、2つに折られた海苔は何かというと「乾海苔」だという。し、知らなかった…。
筆者持参の乾海苔。前の家のお隣さんに頂いた海苔で「非売品なんですよ~」とのこと。
筆者持参の乾海苔。前の家のお隣さんに頂いた海苔で「非売品なんですよ~」とのこと。
貰ったのが1月で、ずっと冷蔵庫に入れっぱなしだったのがどう影響するか。
貰ったのが1月で、ずっと冷蔵庫に入れっぱなしだったのがどう影響するか。
続いても乾海苔だ。同じく1月に頂いたものの、もったいなくてそのまま…という海苔を持参したのは玉置さん。
こちらも乾海苔。船橋の船宿からお年賀で頂戴した物だそう。
こちらも乾海苔。船橋の船宿からお年賀で頂戴した物だそう。
海苔はやっぱり筆文字!と思わせられる立派な見た目。ゴシック体の海苔なんてあるか?
海苔はやっぱり筆文字!と思わせられる立派な見た目。ゴシック体の海苔なんてあるか?
続いて登場するのも2つ折りの乾海苔ではあるが、こちらはまたタイプが大きく異なる。
マリ絵さん持参の浅草海苔。「浅草のりって商品名?」と思ったが、さにあらず。5枚で650円。
マリ絵さん持参の浅草海苔。「浅草のりって商品名?」と思ったが、さにあらず。5枚で650円。
なんと「アサクサノリ」というのは品種の名前だった! 他のは全て「スサビノリ」という品種らしい。
なんと「アサクサノリ」というのは品種の名前だった! 他のは全て「スサビノリ」という品種らしい。
これには本当に驚いた。

マリ絵さんの食にかける情熱は本当に素晴らしく頭が下がるばかりなのだが、この海苔も競技会決定前に築地の海苔屋で「酸処理してない海苔はありますか?」と聞いて出してもらった物なのだという。

酸処理が何なのか、そこからして私には説明が必要だった…。(気になる方は検索してみて下さい。勉強になりますよ)

続いては、久々に焼き海苔が登場。
牧子さん持参の海苔は、3人が被った大人気の「こんとび」。5枚で750円也。
牧子さん持参の海苔は、3人が被った大人気の「こんとび」。5枚で750円也。
伊藤ガビンさんも「寿司屋の板さんにオススメしてもらった」と持参。
伊藤ガビンさんも「寿司屋の板さんにオススメしてもらった」と持参。
ガビンさんは板さんから「食べる30分前に炙って下さい」と言われたそうだが、今回はあえて無視(すみません。他と条件を揃えたかったもので…)。
土屋さんの推す海苔は「佐賀のはしり」5枚で1550円。高っ!
土屋さんの推す海苔は「佐賀のはしり」5枚で1550円。高っ!
値段に本気っぷりが窺える…。果たして値段はうまさに直結するのか?
値段に本気っぷりが窺える…。果たして値段はうまさに直結するのか?
以上、焼き海苔3枚、乾海苔3枚(うち浅草海苔1枚)という、いい具合にばらけたラインナップとなった。
これを順番に玉置さんがいい手つきで炙り、
これを順番に玉置さんがいい手つきで炙り、
人数分に切って食べてもらいます。
人数分に切って食べてもらいます。
どの海苔が誰の海苔か、正解を知ってるのは筆者である私のみ。

みんな「うーん…」だの「おおおおお?」だの「うわー、わかんねー!」だのと言いながらパリパリと海苔を食べ続け、感想をメモしていく。
炙りが足りないと思ったら、ご自由に。
炙りが足りないと思ったら、ご自由に。
6枚全部を味わったら、競技は次の段階へと進む。ごはん部門である。

海苔はご飯と一緒に食べてこそ

会場提供者の土屋さんに、小さなおにぎりを大量に握ってもらった。
途中であわてて写真を撮ったせいで、これしか残ってなかった…(それくらいの勢いで無くなった)
途中であわてて写真を撮ったせいで、これしか残ってなかった…(それくらいの勢いで無くなった)
やはり、海苔はごはんと一緒に食べるのが一番だ。というか、その機会が最も多い。となれば、競技に「ごはんの部」を設けないわけにはいかないだろう。

海苔単体で食べた時と印象はどう変化するか、全員が眉間にシワを寄せながら、もぐもぐと食べ続けていた。
みんな超真剣…(見事なまでに誰も笑ってない)
みんな超真剣…(見事なまでに誰も笑ってない)
採点を書いたメモを回収し、さっそく優勝海苔を決定するとしよう。

焼き海苔、大人気

海苔単体部門、ごはん部門それぞれに1位~3位まで順番をつけてもらい、集計した結果…
単体部門の優勝は、大人気の「こんとび」でした! 3人がダブったのも納得の結果に。
単体部門の優勝は、大人気の「こんとび」でした! 3人がダブったのも納得の結果に。
ごはん部門優勝は「佐賀のはしり」がランクイン。確かに高い海苔はウマかった!
ごはん部門優勝は「佐賀のはしり」がランクイン。確かに高い海苔はウマかった!
単体ではランク外だった「浅草のり」は、ごはん部門・同得票数で見事に優勝!
単体ではランク外だった「浅草のり」は、ごはん部門・同得票数で見事に優勝!
安定した人気の「青混」は単体で2位と高得点。
安定した人気の「青混」は単体で2位と高得点。
単体優勝した「こんとび」の人気はすさまじく、絶賛する人が続出。

寿司屋の板さんが実際に使っているという海苔は、そりゃあ旨かった!
見よ、このびっしり感想が書き込まれたメモを!
見よ、このびっしり感想が書き込まれたメモを!
詳しい結果は以下の通りです。
!
単体・ごはん部門共に、上位を4種類の海苔が占める結果となった。浅草のりを除いて、全て焼き海苔である。

好みの問題もあろうが、これには他にハッキリとした理由がある。どうか次の乾海苔2種に対する感想メモを読んで欲しい。
●旨味は強い!…けど、湿気ってる?
●味が濃い。甘みもある。でもモサッとしてる
●厚みがあって歯ごたえもある。アオサの味がしっかりする。でもパリッとしてない

乾海苔惨敗のワケ

そうなのだ。乾海苔は乾燥しただけの状態なため食べる前に炙る必要があるのだが、炙り担当の玉置さんによれば「湿気った海苔は、いくら炙ってもパリッとし ませんねー。炙りすぎると風味が飛んじゃうし…」とのことで、乾海苔は鮮度が重要であることが判明した。

半年前にもらった海苔は、そりゃ食べ比べでは負けますわな…。
焼き海苔。光に透かすと緑がかった黒。全体的に薄くて軽め。ふわんと磯の香りがする。曲げるとパキリと割れます。
焼き海苔。光に透かすと緑がかった黒。全体的に薄くて軽め。ふわんと磯の香りがする。曲げるとパキリと割れます。
乾海苔。密度みっしり。軽さはなく、しなやか。深い磯の香り。半分に曲げようが折ろうが割れません。
乾海苔。密度みっしり。軽さはなく、しなやか。深い磯の香り。半分に曲げようが折ろうが割れません。
まさか、焼きと乾でここまで違いがあるとは思わなかった。

実家の母が作るおにぎりと、私が作るおにぎりの何が違うのかずっと気になっていたが、結局は海苔の違いだったのか!

実家のおにぎりは、食べる頃になると海苔がべちゃべちゃに溶けて手と口が海苔だらけになったものだが、あれはいま思えば乾海苔だったんだなぁ…。
光に透かさなくても、これだけ違う。
光に透かさなくても、これだけ違う。
玉置さんが「乾海苔が焼きたてのパンだとすれば、焼き海苔はラスク。それくらい違う!」と言っていて、まったくもってその通りだと思った。

さすがDPZライター、表現が的確です。
あとは、好きな海苔で好きなつまみを巻いて食べるだけの交流戦に突入!
あとは、好きな海苔で好きなつまみを巻いて食べるだけの交流戦に突入!
酢と相性がいいだけに、酢味噌も当然のように合う。うま~い。
酢と相性がいいだけに、酢味噌も当然のように合う。うま~い。
ネギトロ+海苔、それを…
ネギトロ+海苔、それを…
サンドしたまま炙るとか! どんだけー!
サンドしたまま炙るとか! どんだけー!
競技の緊張感から解放され、好きに飲んで食べて感想を語りまくった。

「アオサが混ざると磯の味だけど、混ざらないと海!って感じがした」とか「これだけ振り幅があるなら、おにぎりを何種類か作るとき海苔を変えたら楽しいね」とか「自分が持って来た海苔がどれか分からなかった。ショック…」とか。

人生で、こんなに海苔ばっかり食べた日はない! と断言できるくらい、ばりばりと海苔を食べ続けたのでした。

第2回も是非やりたい

乾海苔の鮮度が良かったなら、もっと結果はバラけたに違いない。そう思うと、また次回をやりたいような気がしてくる。やるとすれば、新鮮な乾海苔が出回る新年あたりが狙い目だろうか。

今回は勝負用に気張ったいい海苔ばかりが集まったが、次は安い海苔を忍ばせておくのも楽しいかもしれません!
板海苔だって言ってるのに、味付け海苔(かき醤油味)を持って来た、まーさん。最終的に味に飢えた参加者から「うまい!」「味がある!」と大絶賛されてました。
板海苔だって言ってるのに、味付け海苔(かき醤油味)を持って来た、まーさん。最終的に味に飢えた参加者から「うまい!」「味がある!」と大絶賛されてました。
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