1年という月日の重み
新宿中央公園であまりの見つからなさに絶望してから約1年、
ナナフシのことをなにも知らなかったあの頃とはだいぶ違う。実際ナナフシを
捕まえもした。今年こそは新宿でナナフシを見つける自信が、かなりある。
去年の様子。ナナフシ探しの困難を知らず、まだ希望に満ちている。
そして2012年。ナナフシ探しの苦労を知り、歳の分だけ影を重ねた。重ねすぎだ。
新兵器:家庭で再利用可能な虫網
今回ナナフシを探すに当たって新兵器を用意した。
ジップロック、針金、クイックルワイパー。
即席虫網。
普通の虫網を買っても結局捨ててしまう。 それはもったいないということで考えたエコ虫網。
しかも捕まえた虫はジップロックで即保存可能だ。 花王と旭化成が合併したらこのアタッチメントが出ることは確実である。
ストイックに探す
でも新しく用意したことはこれのみです。前回と同様、助っ人をお願いした編集部の安藤さんと合流したら、 後はもうただただ探し回るだけです。
園内の木をしらみ潰しに見て回る。
夜行性のナナフシは日中葉っぱの影に隠れてジッとしてるという。
陽光降り注ぐ若葉の裏を覗いて探す。目に光が入って眩しい。
その結果、不本意にも希望に満ちた顔に。
1時間で早くもあきらめムードが漂う
顔は希望に満ちている、が実際の状況はどうかというと、 ナナフシどころか他の昆虫もあまり見かけることもなく、 探し始めて1時間で早くも絶望的な雰囲気が漂ってきた。
殺し屋か。
まったく関係ない写真を撮り始めたら「アキテキタ」のサイン。
ナナフシはバラ科の植物にいるという知識を覚えていた安藤さんが、 バラ園で探しましょうと提案した。
バラはきれいですね。
きれいなバラの写真を載せておきますね。
こういうのを載せたときは、これで勘弁してくださいということです。はい。
持っているのはゴミじゃない
ナナフシ以前にそもそも昆虫があまり見かけない。 見かけないから、手に持ってる虫網みたいなものが何なのかよく分からなくなってきた。あれ、ゴミじゃないの?
ゴミじゃない!虫捕まえられる!
よく見たら人殺せそうな虫だったためすぐリリース。
絶望感が漂ってから既に結構経過したそのとき、安藤さんがなにかを見つけて地面を指した!
交尾中のゴミムシだった。ダメだ。
ナナフシ倦怠期
探し始めてから約2時間、ナナフシというものが何だったのか忘れてしまうほど 希望を失った二人(ぼくと安藤さん)の間には、倦怠期に入って4年目ぐらいのカップル みたいな空気が流れていた。
どこにいるのかと思ったらすごい遠くにいたりする。
ただまったく希望がないわけではない。1年前に聞いた目撃情報(バイト先の社長)によると、見つけたのは新宿通側のフェンス辺りだと言っていた。
こういうところ?
本命のこの辺りはまだ見ていない。 来てみると確かに緑が濃くて虫が多そうだ。
もしいなかったら、
社長を訴える。
裁判が決定しました。
それは冗談だが、ナナフシが見つからない現状は冗談になってない。
いやそもそも御苑は動植物の採取禁止だからこれでいいんだ…と自分をごまかそうとするも、別に見つけたいだけで採取するつもりはないからごまかしきれない。
靴底にナナフシ挟まってたりはしないか。
この頃には安藤さんも別の仕事で帰ってしまった。 いよいよもってナナフシと一人で向き合わなければならない。
ナナフシ探しという精神修行
新宿中央公園の比ではないくらい新宿御苑は広いので、 探してないところはまだたくさんある。ほんともうイヤになるくらい広い。
きれいな花々もあの世の景色みたいに見える。
開けたところに出たら外国の子供だけが遊んでいてドリーミング。
森のともだちにナナフシがいない。ナ、ナナフシは孤高なんだからね!
木もため息。
暗い感じになってしまったので、きれいなアジサイと希望に満ちた顔の合成写真をご覧下さい。
最初に聞いておくべき有力情報
その後2時間ほどかけて園内を探し回ったけどやっぱり見つからない。 もう腹減ったから帰ろう、と門を出たら隣にインフォメーションセンターというのが あることに気がついた。
あまり期待は出来ないかもしれないけど覗くだけ覗いてみよう。
ボランティアの人が撮ったアルバム集にもナナフシは載ってなかった。
園内で見つけた虫をふせんで貼っていくマップ。
会社のモニターに貼りたい。
中学生ぐらいのギャグセンスに触れて胸がキュッとなる。
やはりというかナナフシに関する情報は見当たらない。 「早く帰ってお茶を濁す手立てを考えるか…」、併設された食堂でカレー(福神漬けがピンク)をそんなことを思いつつ食べ終え、帰ろうとしたところダメ元で職員の人に聞いてみた。
「あー、御苑でナナフシって、ナナフシらしきっていうかナナフシみたいなものって見たことありますか」
「ございます」
宝(ナナフシ)の地図を高速で取り出す職員。
ナナフシ、ございます
意外な丁寧語に驚いたが超有力情報である。 詳しい話を聞くと、母と子の森という場所で見つけやすいとのこと。 最初に聞いとけば良かった!
「ここですか?」「いえ全然違います」
永遠と書いて”とわ”と読み、母と子と書いてナナフシと読む。
ここは園内を一周したときに一度見て回った。 とはいえ通りすがりにさっと見ただけなので、今度は念入りに調べてみよう。 なにせ信頼できる人にいると断言されたのだから俄然やる気が出てくる。
散策路から少し離れてあまり手の入ってないところを探してみよう。
大きくてあまり見たことない蛾が交尾中。ナナフシより珍しいかもしれない。
この時点で新宿御苑の閉園時間まで後1時間半しかない。 しかし辺りを注意深く探すと見たことのない昆虫がたくさんがいる。イケる。これはナナフシ見つかるわ。
そう確信した矢先、目の前にナナフシらしきものが。
あ、あれは…、
食いつぶされた葉っぱ。孔明の罠だ。
右を向いても左を向いても交尾中
閉園時間まで残り1時間を切った。だいぶ焦って汗が大量に流れてきた。 するとそれに反応して蚊が群がってくる。 そしてそれを食べにナナフシが集まってきた。
ということも当然なく、見つかるのはなぜか交尾中の虫たちだ。
どいつもこいつも、
なんなんだ。
もしナナフシが見つかったら、ナナフシをこいつらの真ん中にバランス取れる感じで置いてみたい。
終了
しかしタイムアップ。
まだ探す場所は残ってる
新宿御苑はもう閉園してしまった。ただ御苑の隣にあるちょっとした遊歩道は まだ開いてはいる。ここも草木がモサモサしており、ナナフシがいる可能性はたぶんある。
意外とこういうところの‥、
こういうところにいたり…。
はいタイムアップ。
動いてないから見つからないのか
またも新宿でナナフシを見つけられなかった。 見つけられなかったが、「いる」という話は聞いたのでいるのは間違いない。
気になるのは、いないところを探してたのか、それともいたけど見逃してたのか。 それを検証するためにこのような動画を作った。
枝葉の背景にCGのナナフシが高速で動いてる映像だ。 こんなカサカサした動きをするナナフシがいたらそれは目立つだろう。 それとも案外分からないものだろうか。
ナナフシなきところに、
ナナフシを生み出す。
想像以上に馴染んでる。
やっぱり見つけやすいよなあ。やっぱりいなかったんだよなあ。
見つけるその日まで
1年前の忘れ物を探しにいった今回、結局またナナフシを見つけられなかった。 ただ信頼できる筋から確実にいるという情報を掴むことが出来たので去年に比べたらかなりの前進である。
来年は未開の部族が武器としてナナフシを使った痕跡ぐらいは見つけたいと思う。
写真を編集してて気がついた。前のページのこの写真。