まずは材料を探す
タピオカ入り飲料に入っているタピオカはうっかりすると飲んでしまうくらいの存在感である。
うまいのだけれど、なんだか物足りない。
かといって一つずつ食べても特に感動もない。みなさんも一度くらいは食べたことがあるだろう、でもはっきりと思い出せるだろうか、あの噛むとぼそっとつぶれてなくなるタピオカを。うまいまずいの舞台に乗ってこない粒である。
でもあれ、もう少ししっかりでかかったらちゃんと主役を張れると思うのだ。ひき肉だって一つじゃ物足りないが、ハンバーグにすると美味いだろう。それと同じである。
というわけで単品でも見劣りしないタピオカを作ってみることにした。まずは材料探しから。
上野アメ横地下。困ったらここに来たらたいていなんとかなると思っています。
上野の地下にはなんでもある、と僕は思っている。少なくとも僕が想像できる範囲の世界中の食材は揃っている。
タピオカの原料がどこの国のものなのかわからないけれど、ここになかったらもう僕の持ち球はない。
やっぱり売ってた。
アジア系の食材店で思いのほかすぐに見つかってしまった。さすが上野、信頼感アップである。しかもこのタピオカ、見たことないカラフルさである。種類も多い。すでに主役張れる派手さがあるのではないか。
それにしてもカラフルすぎるだろう。BB弾かと思った。
今日のターゲットはこちら。タピオカを自由に作ることができる粉である。
派手な市販のタピオカ粒も魅力的だが、今回は原料の粉を入手した。
調べるとタピオカはキャッサバという植物の根っこから作られたでんぷんだという。キャッサバ、知らない。
この粉さえあればでかいタピオカができるのだろうか。売っていたお店のおじさんに聞いてみた
--タピオカってこの粉から作れるものですか
「…。わかんねえなー、でもタピオカって書いてあるから、たぶん一緒なんだろうなー。」
--黒いのとかカラフルなのとか、原料が違ったりするんですか
「…。わかんねえなー、きっと一緒なんじゃないかな」
--この粉ってどういう人が買っていくんでしょう
「あれだよ、ちょっと前に白いたい焼きって流行っただろ。あれって皮にその粉入れてんだ。」
売ってるおっさんすらタピオカのことなんてそんな詳しく知らないのだ。タピオカ、さすがのサブっぷりである。
必死で調べるも情報なし
この粉を使ってタピオカ粒を作りたいのだけれど、ちゃんとした作り方とかあるのだろうか。
ネットで作り方を調べてみた。
しかしこれがおどろいたことにまったくヒットしないのだ。ネットは全知ではないのか。
たまにヒットるすのは知恵袋。
いくつか見つけた情報の切れ端を手繰り寄せると、どうやら
・タピオカはタピオカ粉をまるめて作るに間違いはない
・しかしタピオカを粉から玉にするのは素人には無理
・あきらめた方がいいよ
ということらしい。容赦ない。
作れない…?。
どこで調べても粉からの作り方が載っていないのだ。載っていても工場みたいなところででかい機械でぐるぐる回っていたりする。個人レベルでは無理なのか。
でもとりあえず水でこねて丸くしたらいいんだろう。物は試しである。粉買っちゃったし。
粉とくれば水だ。
タピオカ粉を水で溶くとすぐにさらっとした液体になった。
しかし、だ。
これが単なる液体じゃないのだ。
液体?固体?
粘りがあるのは予想していたのだけれど、これ、液体に見えてすごい固体っぽくもあるのだ。
なんと説明していいのかわからないんだけど、持ち上げると固体、そのままほうっておくと液体に戻る。片栗粉を溶かしても同じような具合ではないか。ターミネーターはここから発想されたといわれたら信じたい。
うまく説明できないので動画でも撮ってみたんだけど、これでも伝わるかわからないのでいつかイベントとかで体験コーナー作りたいです。
このさわり心地がなにしろ面白いのだけれど、遊んでばかりもいられない。とにかく丸めてみたい。
湯銭してこねるとまとまってきました。
白玉じゃなくてタピオカですよこれ。
一般的なタピオカと比べるとこんな感じ。月と地球くらい。
丸めたタピオカ粉はだんごほどしっかりしたものではなく、力を入れると崩れてしまいそうなもろさだった。優しく丸めて沸騰したお湯でゆでる。たいていの粉ものは水で練ってお湯でゆでれば食べられるのだ。
あとはひたすら煮込みます。
30分くらいで通常サイズは芯を残してほぼ透明に。
しかし巨大サイズはまだまだほぼ白。
この後も1時間くらい煮込んでみたのだけれど、巨大タピオカはほとんど白いままだった(小さいタピオカは溶けた)。
ためしに一つ食べて見たのだが、スーパーボールを食べてるみたいだった。生、というか材料とった感じ。これはまだだ。
さらに煮込むため、寝てる間は保温機能のある鍋に移し変えて朝を待つことにした。
※市販の小さいタピオカは熱湯に入れて2時間くらい保温しておくとうまく戻るみたいですよ。沸騰させたまま煮続けると溶けてなくなります。
明日の朝には透明になっているといいんだけど。
そして次の朝
これがまったく変化ないのだ。
しいて言えば煮汁にとろみがついたか。一つ取って半分に切ってみたが、やっぱり中がものすごく硬かった。もう一回沸騰させてから保温する。
そのまま放置すること一日。
一日…。
キッチンを占領するタピオカ製造現場。
この日の夜、家に帰るといつもと違う鍋でカレーが作られていた。
保温鍋には巨大なタピオカが入っていて使えなかったんだと思う。妻よ許せ。
そんなしがらみを乗り越えてみごと透明になったタピオカがこちらである。
鍋いっぱいのタピオカ。ぷるんぷるんですよ。
タピオカは昨日より一回り小さくなったような気がする。煮込んでいるうちに溶けたんだろう。代わりに煮汁がとろとろになっていた。
もうこれ以上キッチンを占拠するわけにもいかないので、さっそく甘いミルクティーに浮かべてみた。
かかってこい、台湾。
こちらは市販の粒。まあ、普通だよね。
え?…え?
良い悪いは別としてタピオカ入りドリンクの概念を打ち破った感はある。
なにせ重い。たぶん大量の水を含んでいるからだろう。
見よ、この存在感。
巨大だけれど間違いなくタピオカである。もっちりしていながらも特に味はない。うん、味はない。
ただ巨大なだけあってもっちり感が攻撃的なのだ。なんというか、かじっても歯が入っていかないし無理に噛むと歯ごともっていかれそうな勢いである。弾かれつつも一生懸命に食べる。
コップ一杯のミルクティーでおなか一杯になってしまった。
一杯のミルクティーでおなか一杯になる経験ってなかなかないだろう。そういう意味でも斬新である。
この後に市販のタピオカ入りミルクティーを飲んだら美味しかったことは明記しておこう。デザートみたいだった。
でかいのはうれしい、でも普通もいい
好きなものをでかくしたらさぞうれしいだろうと思って作ってみたのだけれど、まあたしかにうれしいはうれしかった。でもやっぱり普通のサイズでいいや、とも思う。なにせ煮込むの2日かかるのだ。