特集 2012年6月7日

日常にひそむルール

身の回りのものの形を、実はルールが決めている
身の回りのものの形を、実はルールが決めている
小中学校の教室の出入口はたいてい前後に2つある。あれって偶然じゃなくてルールで決まってるって知ってました?

そんなふうに、身の回りのものの形を実は決めているルールについて調べてみました。
1976年茨城県生まれ。地図好き。好きな川跡は藍染川です。(動画インタビュー)

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小学校の形にはルールがある

小学校ってどれもよく似てるなーと思う。白くて、3階建てぐらいで、横に平べったい。見かけると一発で小学校だ!と分かる。
小学校てなんかこんな感じですよね
小学校てなんかこんな感じですよね
じつはここにもルールがあるのだ。

「四階以上に設ける教室等の禁止」(東京都建築安全条例 第12条)
「四階以上に設ける教室等の禁止」(東京都建築安全条例 第12条)
安全上の理由から、小学校の教室は基本的に3階までと決まっているのだ。これは東京の場合だけど、他の自治体もだいたい同じ感じです。そりゃあ似るよね。

つぎは教室の中を見てみよう。
いつもの教室の風景にもルールがひそんでいるぞ
いつもの教室の風景にもルールがひそんでいるぞ
「学校の教室等には(中略)二以上の出入口を設けなければならない」(東京都建築安全条例 第13条)
「学校の教室等には(中略)二以上の出入口を設けなければならない」(東京都建築安全条例 第13条)
なんと。

黒板消しを前の扉に仕込んでおいたら先生が後ろから入ってきた、みたいなことが起こるのは建築安全条例のせいだったのだ!

それから廊下にも意外なルールがある。
ふつうの廊下に見えるけど、
ふつうの廊下に見えるけど、
「行き止まり廊下等の禁止」 (東京都建築安全条例 第10条の8)
「行き止まり廊下等の禁止」 (東京都建築安全条例 第10条の8)
なんと渋い。学校に限らず、図書館や病院とかでは、廊下が行き止まりになっていてはいけないそうなのだ。

思い浮かべてみると、確かに階段とか外への扉につながっていたような気もする。言われなきゃ気づかない、そんなところもちゃんとルールになっていたとは。
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部屋のなかのもののルール

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部屋の中の日用品の形にも、もちろんルールがある。クイズ形式で紹介していきましょう。
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たとえばこの牛乳パック。目の見えない人向けに配慮された形がひそんでいるんですが、それはどこでしょう?
正解はここ
正解はここ
JIS S 0021「高齢者・障害者配慮設計指針 - 包装・容器」という長い名前の規格に基づいて、触っただけで牛乳と分かるように切り欠きがついているそうだ。
同じように洗剤とかシャンプーにもぎざぎざがついてるよね
同じように洗剤とかシャンプーにもぎざぎざがついてるよね
リモコンにも同じような配慮がひそんでいる。それはどこ?
よく見ると、
よく見ると、
ここにポッチがついてる!
ここにポッチがついてる!
たいていのリモコンでは、JIS S 0011という規格に基づいて、音量ボタンみたいにプラスとマイナスの方向があるものは、プラスのほうにポッチがついてるそうだ。

するどい人は「5」のボタンにもポッチがついてることに気がついちゃったかもしれません。そちらは各自調べてみてください。

そして次は驚きのルール。
ヨーグルトとかプリンの容器に、
ヨーグルトとかプリンの容器に、
ベロがついてるのも実はJIS規格なのだった!
ベロがついてるのも実はJIS規格なのだった!
JIS S 0021は、こういう場合にベロをつけなさいと規定してる。

でもこれって当たり前だよね!JISにあろうがなかろうが自然にどのメーカーもそうすると思う。
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町並みにもルールがある

町並みをかたちづくるルールはややこしいので、さらりと紹介しましょう。

たとえば大通りの道の両側に高いビルが建っているのは、よく見かける光景だと思う。

道の両側にビルが並ぶ
道の両側にビルが並ぶ
これは「用途地域」というルールが作った景色だ。
商業地域は高さ制限がゆるい
商業地域は高さ制限がゆるい
たいへんおおざっぱに言うと、大通りの周辺だけ高さの制限が違うことがあるのでこういうことになる。
これは何だ
これは何だ
そして住宅街にとつぜん現れる窓のない白い建物。なんだか分かりますか?

答えは変電所。住居地域には基本的に家しか建てちゃいけない場合があって、それでも学校とか変電所とかだけは例外的に建ててもいいので、こういうのがのっぺりと現れるのです。

そして次は非常にしぶい例。
道の左側の建物だけ高い。なぜ?
道の左側の建物だけ高い。なぜ?
答:用途地域の境目だから
答:用途地域の境目だから
用途地域の境はこんなふうに目に見えて町の形を作ってる場合がある。

道の片側だけ工場が多いとか、ビルが高いとかの景色に出会ったら、そこは用途地域の境かもしれませんぞ。
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安全のためのルール

安全のために決められたルールもいっぱいある。駅の中のものでいくつか紹介しましょう。
エスカレーターの、
エスカレーターの、
足元の銀色の部分(点検口)は45cm角以上でないといけない
足元の銀色の部分(点検口)は45cm角以上でないといけない
地下道の、
地下道の、
脇道の長さは30メートル以下でないといけない
脇道の長さは30メートル以下でないといけない
階段の、
階段の、
角度は(結果として)約35度以下でないといけない
角度は(結果として)約35度以下でないといけない
こんなふうに、日々なんとなく使っているものにも安全のためのルールがこと細かに決まっている。

ということで、最後に超難問クイズを出しましょう。

次の図は、鉄道の安全にかかわる形のルール部分だけ抜き出したもの。さてなんの形についてのルールでしょう?
ヒント:黄色と黒(分かったらすごい)
ヒント:黄色と黒(分かったらすごい)
こたえは、
踏切でした
踏切でした
一応解説すると、
・踏切の斜めのシマ模様の角度は45度
・黄色と黒の幅はなるべく3対2
・踏切に使える色は黄色と黒と赤と白
といったことが、JIS E 3701「踏切諸施設 - 安全色彩」に決められている。

これだけ細かく決められてるってことは、逆にそれだけ踏切周辺が危険ってことなんでしょうね。

実はルールだった

教室の扉が2つあることみたいに、今まで意識したことすらなかったことが実はルールだったと知るのは驚きだ。

ずっと誰かの手のひらの上にいたのに、それに気づいていなかったような感覚。だれかの設計の上で暮らして来たんですね。

なお、本文中でははしょりましたが、ほとんどのルールには例外規定があり、たとえば4階以上の小学校もあります。詳しくはそれぞれの条例などをご覧下さい。
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