特集 2012年4月27日

エスカレーターの手すりでワープ!

これは、ゆりかもめの先頭でワープ!
これは、ゆりかもめの先頭でワープ!
少し前に、ゆりかもめに乗って長時間露光した写真が話題になった。まるでワープしているみたいな光景だ。ワープしたことないからよくわからないけど。

これ、ゆりかもめ以外でもできるんじゃないだろうか。そう、たとえばエスカレーターで。
もっぱら工場とか団地とかジャンクションを愛でています。著書に「工場萌え」「団地の見究」「ジャンクション」など。(動画インタビュー

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長時間露光するために買い物

上の冒頭の写真は、話題になった写真を真似して撮ったもの。うん、たしかにこれは面白い。ただ、これを撮るためにはちょっと準備がいる。
「可変NDフィルター」というものをワープのために購入。これはレンズにとりつけて、光が余り入ってこないようにするためのもの。
「可変NDフィルター」というものをワープのために購入。これはレンズにとりつけて、光が余り入ってこないようにするためのもの。
要するに暗くするためのものだ。
要するに暗くするためのものだ。
「可変」と銘打つゆえんは、その暗くなり具合を調整できるから。
「可変」と銘打つゆえんは、その暗くなり具合を調整できるから。
長時間シャッターを開け続けても明るくなりすぎないために、NDフィルターをいうものがある。以前「炎天下の電飾写真」という記事を書いたときにも使ったものだ。

ただ、あのときと違って、いまはその暗さを調節できる「可変NDフィルター」という便利なものがある。いや、当時もあったのかもしれないけど知らなかった。あのときは大量にフィルター重ねたものだ。

この可変NDフィルターは偏光フィルターを2枚重ねたものだ。乙幡さんが以前「偏光板でパンダをサイケデリックに変化させた」で使っていた、あれとまったく同じ原理だ。
真昼に長時間シャッターを開け続け、手鏡で太陽光をカメラに向けて反射させた「炎天下の電飾写真」。このときもこのNDフィルターを使った。
真昼に長時間シャッターを開け続け、手鏡で太陽光をカメラに向けて反射させた「炎天下の電飾写真」。このときもこのNDフィルターを使った。
この「可変NDフィルター」ならシャッタースピードをあれこれ変えることが簡単にできる。便利だ。便利だけど他の人はいったいこれを何に使っているのだろう。みんなワープ写真撮ってるのかしら。

で、これをたずさえて、まずはゆりかもめに乗車だ。
ゆりかもめの先頭座席でスタンバイ。それにしてもこの台、丸くなっててカメラが安定しない。ワープ写真を撮る人のことを考えてもらいたい。
ゆりかもめの先頭座席でスタンバイ。それにしてもこの台、丸くなっててカメラが安定しない。ワープ写真を撮る人のことを考えてもらいたい。
なぜゆりかもめがよいかというと、運転手がいないため、先頭座席からは何も遮られることなく風景が見えるからだ。

で、狙うのはある箇所。
狙うのは、ループになっている箇所の、構造物で蔽われている、ここを走る瞬間。
狙うのは、ループになっている箇所の、構造物で蔽われている、ここを走る瞬間。
ここ。構造物に蔽われていることもさることながら、曲率が一定、ほぼ正円であるのもポイントだ。(大きな地図で見る
普通に撮ると、こんな。
普通に撮ると、こんな。
ここで撮ったのが冒頭の写真というわけだ。
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圧迫感がポイント

で、こうなる!ワープ!
で、こうなる!ワープ!
上の写真は6秒ぐらいシャッター開けっ放しの状態だ。もうちょっと短くてもよかったかもしれない。

ポイントは、周囲が構造物で蔽われている点だと思う。上がひらけていると下のようになる。
まあこれはこれですてきだけど。やっぱり圧迫感がほしい。
まあこれはこれですてきだけど。やっぱり圧迫感がほしい。
まっすぐだと、こんな。カーブの方がすてきかもね。
まっすぐだと、こんな。カーブの方がすてきかもね。
やっぱり上に何かあった方がおもしろい写真になる。
やっぱり上に何かあった方がおもしろい写真になる。
一方、圧迫感はあるけど、その部分が暗くなるのでこのように車内の光景が反射しちゃう、という痛し痒しの状態にもなる。むむー。
一方、圧迫感はあるけど、その部分が暗くなるのでこのように車内の光景が反射しちゃう、という痛し痒しの状態にもなる。むむー。

で、エスカレーターだ

やはりゆりかもめはすてきだ。だが今回の趣旨は、これの応用をエスカレーターでやろうというものなのだ。

なぜエスカレーターなのかというと「ゆりかもめワープ」を見て、なぜこれがワープっぽいのかと考えたところ、それは「画面中に動くものと動かないものがある」だからなのでは、と気づいたからだ。

どういうことかというと、これら「ゆりかもめワープ」写真では、まわりの風景は流れて動くけど、レール部分はカメラに対して「動いていない」。いや、実際は動いているんだけど、いつも画面に対して同じ位置にあり続けるので、長時間露光してもぶれないのだ。

で、思った。エスカレーターも手すりが「動かない」じゃないかと。うん、これはいけるぞきっと!
手すりにこうやってカメラを乗せて長時間露光すればいいはず!
手すりにこうやってカメラを乗せて長時間露光すればいいはず!
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むずかしいです…

手始めにこのエスカレーターで。
手始めにこのエスカレーターで。
ぜんぜんだめだ…
ぜんぜんだめだ…
と、意気込んだものの、ぜんぜんうまくいかない。

上の写真でいうと、やっぱり圧迫感がまずないのが致命的だ。

それはゆりかもめワープで分かっていたことだろう、なぜこんな開放的なエスカレーターで撮ったのか、と言われると思う。

どうしてかって?エスカレーターで写真撮るとものすごく怪しいからだよ!
なるべく男性がいる時を選んで挑みます。
なるべく男性がいる時を選んで挑みます。
怪しい。実に怪しい。
怪しい。実に怪しい。
人がいないエスカレーターを求めてさまよった結果、本ページ最初のような開放的なエスカレーターになってしまったのだ。

ほんと、田村さんは女性でよかったよなあ、とあらためて思った。

しかしひるんではいられない。人がいても、ちゃんと圧迫感のあるエスカレーターでチャレンジしなくては!

圧迫感といえばあそこだ!
ご存じ東京駅の中央線ホームに上がるエスカレーター。この「いつか見た未来」みたいなチューブ感はいつ見てもすばらしい。
ご存じ東京駅の中央線ホームに上がるエスカレーター。この「いつか見た未来」みたいなチューブ感はいつ見てもすばらしい。
すばらしい圧迫感!(人が途切れた瞬間とっさに撮ったのでこんな斜めになりました)
すばらしい圧迫感!(人が途切れた瞬間とっさに撮ったのでこんな斜めになりました)
そう、東京駅の中央線ホームへ行くためのエスカレーターだ。ここの囲まれ感は特別だ。ここでなら「エスカレーター・ワープ」写真が撮れるだろう。いざ!
…うーん。
…うーん。
…うーん。なんかうまくいかない。なんか普通に撮った写真の方がかっこいい。

困ったなー。シャッタースピードの問題もあると思うんだけど、いまひとつすてきじゃない大きな原因は「手すりってけっこう上下に振動してる」という点なんだよなー。
今回はじめて実感したけど、手すりってけっこう波打ってるんだね。
今回はじめて実感したけど、手すりってけっこう波打ってるんだね。
ワープ写真においては「動かない部分」が重要だと喝破したのに、これでは台無しだ。なんで波打ってんのよ手すりったら!

大学の講義で「機械工学とはつまるところ振動の制御の問題である」と教えられたことを思い出した。先生、いま実感してます!
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しょうがないので腰だめで撮るも

腰におしつけて撮る。なんだかさらに怪しい人に!
腰におしつけて撮る。なんだかさらに怪しい人に!
手すりが波打っちゃうんだったら、いっそ手で持とう。ほんとうは三脚立てたいぐらいだけど、さすがにそれはゆるされまい。

息を止めて腰にカメラを押しつけ、エスカレーターとの相対位置がなるべく動かないように…
…うーん。
…うーん。
悪くはない。悪くはないけど良くもない。

というか、こんな手持ちでうまくいくわけないよねえ。

失意のまま、せっかくなら、とぼくがいちばん好きなエスカレーターへと向かった。

思い出のエスカレーターで

ぼくがいちばん好きなエスカレーター、それはもちろん新御茶ノ水駅の聖橋方面改札へと登る、あれだ!
ぼくがいちばん好きなエスカレーター、それはもちろん新御茶ノ水駅の聖橋方面改札へと登る、あれだ!
上り下りで計4車線(車線?)というのもすてきだが、なによりとても長い。
上り下りで計4車線(車線?)というのもすてきだが、なによりとても長い。
それは地下鉄千代田線の新御茶ノ水にあるエスカレーターだ。田村さんも「ファンが多い」と言っている。いいよねえ、このエスカレーター。

その規模と古式ゆかしい雰囲気も良いが、個人的には青春の記憶と結びついているエスカレーターなので感慨もひとしおなのだ。

中学生のころお茶の水の古本屋や楽器屋に通っていたときにこのエスカレーターによく乗ったものだ。いまでもこれに乗ると当時のことを思い出す。まあ、ぼくの青春なんてそれぐらいのもんですよ。

で、ここでワープにチャレンジだ。できることならこのまま当時にワープして青春をやり直したい!
思い出のエスカレーターも、容赦なく手すりは振動する。だめだ。
思い出のエスカレーターも、容赦なく手すりは振動する。だめだ。
で、ふたたび腰だめにして撮る。うーん。
で、ふたたび腰だめにして撮る。うーん。
…結局、ゆりかもめのようにはいかなかったなあ。なんとか振動しない方法を考えて再チャレンジしたい。アイディアあったら教えてください!

なんとも煮え切らない結果ですが

露光時間もけっこう難しくて、こういう写真がたくさん。でもいっそこっちのほうがかっこいいかも。
露光時間もけっこう難しくて、こういう写真がたくさん。でもいっそこっちのほうがかっこいいかも。
完璧ではないけど、まあなんか面白い写真にはなったんじゃないだろうか。もう一回振動押さえてチャレンジしようと思います!

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