心の中ってのはフシギですよ
世の中、フシギなことっていっぱいあるけれど、何だかんだいって一番フシギなのは人の心ですよね。他人の心はもちろんのこと、自分の心ってヤツも中々につかみ所がなく、よく分からないもんです。
妙なタイミングでスイッチが入っちゃって、理由もなくブルーな気持ちになってしまったり、変なことがツボに入って、狂ったように笑いが止まらなくなっちゃったり……。「オレの頭ん中、どーなっちゃってんだい!?」って思うような時、よくありますよね(みんな、あるって言って!)。
ムーディーな雰囲気のトークをしたかったのにバカ話をしてしまったり……コレはただ単にボクがダメなだけという気もしますが
そんな、フシギがいっぱいな頭の中をのぞく方法があるとしたら……ちょっと興味あるでしょ?
もちろん、ドラえもんの道具のように「頭の中が丸見え!」というわけにはいきませんが、深層心理を目に見える形でなんとな~く表現する方法があるそうです。それが「箱庭療法」。まあ、カウンセリングや心理療法のたぐいなんですが、その方法がちょっと変わっているんですね。
人形や建物などのフィギュアを並べて箱庭、いわゆるジオラマを作ることによって、知らず知らずの内に自分の深層心理が浮かび上がってくる……的なことらしいです。
テレビ番組や書籍で目にして、以前から「箱庭療法」というものに興味は持っていたんですが、どこに行ったら受けられるのか、そもそも一般人が簡単に受けさせてもらえるものなのかよく分からなくて、「いつかやりたいリスト」の中に突っ込んだままになっていたんですが、最近「箱庭療法」を体験させてもらえる場所を発見したので、早速行ってきました。
……ということで今回は、なんだかいつもモヤモヤしているボクの心にグイグイと迫ってみたいと思います。
さて、やってきたのは株式会社クリエーションアカデミーさん。
こちらでは、箱庭療法の用具をはじめとしたコミュニケーションツールなどの開発・製造をしており、箱庭療法の普及のために不定期で体験セミナーを行っているそうです。
こういう箱庭療法用具を作っているみたいです
箱庭「療法」というだけあって、病院やカウンセリング室みたいな場所でやるのかな? と思っていたら、まあ普通の部屋へ案内されました。
で、その部屋の片隅に箱庭の箱が(「頭痛の頭」みたいにしっくりこない表現ね)! 早速、箱庭を作っていきましょう。
コレが箱庭のベースとなる箱です
いざ、箱庭製作!
真ん中の石は「とりあえず置いてあるだけで意味はない」とのことです
ほい、こちらが箱庭ボックス(やっぱりあんましっくりこないね)。
一応、箱のサイズは57cm×72cm×7cmと決まっているらしいです。制作者が近くに立って全体を見渡せる程度のサイズ、とのこと。
「海」に見えるか「空」に見えるか……
箱の内側は水色に塗られていて「海」でも「空」でも「沼」でも自由に見立ててオッケー。そして、底には砂が敷き詰められています。
部屋には箱庭ボックスが三つあって、それぞれタイプの違う砂が入っていました。
サラサラ細かくて手触りが気持ちいい砂
砂場にありそうな粒子の大きめな砂
南の島から取ってきたという砂
最初に砂を触ってみて、感覚的に「いいな」と思う砂の入った箱を選ぶそうです。
ボクは、サラサラと細かくて手触りが気持ちいい砂(石を砕いてすり潰して作った砂らしいです)を、取材に同行してもらったデイリーポータルZ編集部の石川さんは海岸の砂の入った箱を選びました。
バンザイしてるわけじゃないよ
さて、箱庭療法のスタートは、まず深呼吸から。
つづいて、箱の中の砂を自由にいじくって地形を作っていきます。
真ん中あたりに砂をこんもりと盛り上げていく
砂遊び……と言ってしまっていいのか分からないですが、砂を手でいじくるのなんて久しぶりで楽しいですね。
しょりしょりとした砂の手触りを手のひら全体で感じて、気持ちイイ!
造成スタイルも色々
で、僕の方は、砂を底まで掘り返して「海」部分を作りました。何となく「海に浮かぶ島」的なイメージの地形が完成!
ズラッと並べられた箱庭療法用具
つづいて、その地形の上に人形やら建物やらを配置していきます。
またこの用具が、ものすごく色んな種類があって見ているだけでも面白いんです。
色んな人形
建物
ザ・ノンジャンル
そして、謎のオブジェたち
確かに「よくわからない」けど……生き物かな? コレ
部屋に置いてある、この辺の物も使っていいみたいです
あまり決まり事みたいなことはなく、自分の持ち物でも、その辺にある物でも、とにかく好きな物を置いていいらしいです。
うーん……どうしようかなぁ……?
「何でも自由」と言われると、逆に悩んでしまう不自由なボク。まあ、とにかく気になった物をボンボン置いていってみましょうか。
確かに気にはなるけど……
ものすごい存在感を放つこんなフィギュアもありましたが、さすがにいきなりゴジラを置いちゃうと箱庭の方向性が決まり過ぎてしまう気がするので(確実にマズイ結果が出そう……)、やめときますか。
でも、こうやってアンパイを選んでしまう自分もちょっとキライです
まずは無難に、ドーンと島の真ん中にシンボル的な木を植えてみました。
コレ一本あるだけで、ちょっと島っぽくなるでしょ?
ささやかな自己主張
そして、藤子不二雄至上主義のボクとしては、とりあえずドラえもんは置いておかなきゃ……ですよね!
は……墓!? こんなオブジェもあります
どう考えてもプラス方向の診断はされなそうなオブジェですが、もう気になり過ぎて目が離せません。使わずにいられないよ、コレは!
墓地を見つめるモノノケたちも配置
さすがに中心部あたりにズドンと置くのは気が引けたので、目立たない隅っこの方に墓地を建設。
……しかし、いきなりボクの心の闇がビジュアル化されたかのような箱庭になってしまったような気がします。大丈夫かな?
石川さんも箱庭を制作中
さて、石川さんの箱庭はどうなってるのかと見てみると、レインボー的なものを配置したりして、何となく清らかな心を持っていそうな感じがする箱庭に! ズルイ!
何だか謎の方向性に
……かと思ったら、やたらと変な人たちが増えてきましたよ。
石川さんも心にどんな物を抱えているのか、楽しみですねぇ。うふふふ。
再びボクの箱庭
こんなノアの方舟的なオブジェ(中に小さな人や動物がいっぱい)を発見したので、コレを使ってみることにしました。
海に浮かべるのにちょうどいい感じですしね。
コレなんかも、実に使ってみたくなるオブジェです
うん、しっくりきました!
人間も配置していきたいところですが……
き……気になり過ぎる! この人たちッ!
ここにあるオブジェたちは箱庭療法のために作られたオリジナルの物が多いため、普通じゃ考えられないような人形も沢山あるんです。
……たしかに、普通に飾るにはどうかなって感じの人形ですが、自分の心を表現する箱庭を作るのには使い勝手がよさそうです。
この人をさっきの場所に配置してみると……これ以上ないというくらい、しっくりきました。
うん……心のおもむくままテキトーに作ったわりに、ストーリー性のある(ように見える)箱庭ができたんじゃないでしょうか。
一方、石川さんの箱庭。コレはコレですごい感じになっています。同じ「箱庭」なのに、ここまで違うテイストの物が完成するとは。
それぞれ、どんな診断結果が出るのか楽しみですね。
心の闇が見えてきた……!?
「それでは完成した箱庭を見ていきましょうか」
ということで、カウンセラーさんと一緒に箱庭を鑑賞していきます。
自分の箱庭の正面に座り、向かい合います
「箱庭療法」って、勝手なイメージで、心理ゲームや占い的な感じで「ここにコレを置いたから、アナタの性格はこう!」みたいにズバズバ診断結果を言われるのかと思っていたのですが、そうではないようです。
ある意味、もっと自分の内面をえぐるような作業というか……。カウンセラーさんから指摘されるというよりも、自分からしゃべってしまうんですよね。
あんまり深く考えずに感覚的に作っていた箱庭ですが、その中で自分は……となると、強いて言えば……。
この人か……
この人あたりかなぁ
「じゃあ、自分自身の気持ちを人形に込めて、この人たちは今、どんなことを思っているのか教えて下さい」
えーっ、な、何を思っているのか!? そんなこと全然考えてなかったけど……ちょっと想像してみましょう。
どうにも切ない光景に見えてきました
そして、あからさまに問題がありそうな……
箱庭を作っている時は、何となく見栄えだったりバランスを考えて置いていっただけなので、細かい設定やら何やらは全く考えてなかったんですが、他人から「コレは何ですか?」「この人はどんなことを考えているんですか?」などと質問をぶつけられると、自分でも無意識の内に作っていたのであろう設定のようなものが、うっすらと見えてくるんですよ。
それがまた、自分が普段から考えていることとリンクしているような気がして……。そうか、箱庭療法ってこうやって自分の内面と見つめ合っていくのか。
カウンセラーさんがまた「ふんふん」「なるほどー」「そうなんだねー」などと、絶妙なタイミングで合いの手を入れてくれるため、ちょっと言いづらいようなことまでスルスルと口から出てきちゃうんですよね……。
まあ、ここでボクの深層心理について細かく書いてもしょうがないと思うので、はしょりますが、確かに自分で箱庭について解説しながらも「ああーっ分かる!」と妙に納得してしまうことも沢山ありました。
周りの主流派な集団が変に盛り上がってると、自分は急速に盛り下がっちゃう感じ……ホント、身に覚えがありますもん。
それで、その盛り上がってる人たちを見て「バカ騒ぎしやがって……ケッ」と思いつつも、お祭り騒ぎに素直に乗っかれている人たちがちょっと羨ましい気持ちもあったりして。自分も、そういう殻を破って社交性を身につけた方が人間関係上手くいくんだろうな……みたいな。
いやあ、今回は石川さんに同行してもらっててホントによかったです。人に見られていると思うから、色んなことをちょっとオブラートに包んでしゃべれてたんですけど、コレがカウンセラーさんとマンツーマンだったら、変な心の扉が開いて泣いちゃってたかもしれませんよ……。
いや、箱庭療法の本来の目的としてはそっちの方がいいんでしょうけど、ガチ過ぎて記事にできなかったと思います。
質問に答えれば応えるほど、「大丈夫かなオレ」感が……。
自分の内面と向かい合い過ぎて、ちょっと脳がしびれてきちゃったので、つづいて石川さんの作った箱庭の診断に。
石川さんの箱庭もちょっと不思議な雰囲気なので、どんな結果が出るのか期待です
え、ちょっとステキそうな話じゃないですか……
ボクの、何とも内面ドロドロ丸出しな感じの箱庭と比べて、随分ファンタジックでステキ感ただよう箱庭じゃないですか……。
で、自分(石川さん)を表しているのがこのキリン
動物園のオリを抜け出して、格好いい車を見に行こうとしているところなんだそうです
ということです
まあ、色んな解釈ができるんでしょうけど、端から見ていてボクが思ったのは。
こういうことじゃないかと
デイリーポータルZのPVがもっと上がるといいな! 的な気持ちが表れてるんじゃないかと……まあ、勝手な解釈ですけどね。
いやあ、自分の箱庭ももちろん、他の人が作った箱庭を見るのもなかなか面白いものです。
「はじめて作る箱庭には、その時に自分の中で思っているテーマみたいなことが表現されることが多いんですけど、2回、3回と繰り返しやっていくと、もっと色々な側面が出てくると思いますよ」
ということなので、また「箱庭療法」を体験しに来たいなぁ……と。取材というのを取っ払って箱庭作りに取り組んだら、もっとリアルな内面を見ることができそうですしね。
箱庭用具には他にもこんなものが……ガイコツ満載!
生死を表現するような物を使いたがる人は多いらしいです
面白いけど……ちょっと怖い!
「どんなもんかなー?」くらいの気持ちで体験した箱庭療法でしたが、思いの外グイグイと自分の内面に迫ってきて……正直、カウンセラーさんと話している時も色んなことをオブラートに包んで、ちょっとごまかしちゃいました。だって、それくらい心のヤバイところまで食い込んできちゃいそうだったんだもん。
「面白かった!」とも「怖かった!」とも言える箱庭療法体験でしたが、とりあえず、ゾクゾクするような興味深い体験はできたような気がします。
もう何回かは通ってみて、ごまかしなしのガチな箱庭療法に挑んでみたいと思います(泣いちゃうかもしれないけど)。