機能を求めるのはあきらめました
僕は当サイトでいろいろと工作物(と呼べるか怪しいもの)を作ってきた。 ただどれもこれもうまくいったことがない。
玉に磁石がいっぱい付いた成功率の高い剣玉。結構苦労した。
走るスチロールカッター。かなり苦労した(苦労の度合いを右下の表情で表してます)。
どんなにがんばって作っても、完成してみたら磁石がすぐとれたとか、 ゴリラが重くて動かないとか、工作以前のところで失敗ばかりしている。 基本的にセンスがないのだ。
でも失敗するのは機能を求めるからであって、最初から機能をあきらめてれば絶対に失敗はない。そう、機能を作るセンスがないのなら、とにかく見た目だけがすごくてかっこいい工作を目指せばいいんだ。
果たしてそれを工作と呼べるか、という疑問はあるも、 人間社会だってイケメンやグラビアアイドルの需要があるのだから、 工作にもそういうのがあっていいじゃないか。
攻撃的で勢いがあるとかっこいい
かっこいいのバイブル。
かっこいい工作を作るのに図面も何もいらない。 だからといってただ自分のセンスだけで作ってもあまりかっこよくはならないだろう。
そこで参考にするのが小松崎茂氏の画集。 ここには男児なら誰もがあこがれる、ピュアなかっこよさで溢れている。
トゲの意味は分からないけどかっこいい。
ロケットみたいに飛ぶロケット戦車。 役に立たないだろうけどかっこいい。
近未来と言えば流線型。
キャタピラにドリルはかっこよさの黄金コンビ。
共通するのは、まずトゲとかがやたらいっぱい付いてて妙に攻撃的であること。やはり男は闘いの中にかっこよさを見いだすのか。
あとはとにかく勢いがすごくあること。意味とか実用性とかがつけ込む隙を与えず、ここにロケットバーン!あっちにドリルドーン!ぐらいの勢いでいくのが大切かもしれない。
うんゴリラもかっこいいよね。
材料調達の手間ないの最高!
ということで見た目だけかっこいい工作を作ろう。 この工作の最高に良い点は、必要な材料の調達がまったくいらないところだ。 なにが必要かはその都度適当に決められるから。
適当に決められたものたち。
特にこういうのはハイテク感が期待できる。
そして百円ショップで買った湿度計に雑に接着。 強度とか考えなくてもいいのすばらしい。
すごいなにかやってくれそう。
ただくっつけだけだから当然湿度計以上の機能はない。 しかしこの「工作しました」感は、かかった手間に比べたらなかなか出せている。 300円ぐらいで売れそう。
さらにいろいろと機能を追加しないで見た目だけ追加してみた。
HL213-β SHITSUDO-KEI
パッと見ではいったいなにをする装置か理解できないかもしれないが、 もちろん何もしない装置なので理解しなくていい。
しかし土台にマグロのお寿司を使ってしまったためちょっとかっこわるいか。
とはいえこれは処女作品である。次ページからは、ちゃんとかっこよさだけを追求して作った工作を紹介したい。
メカ単なる木箱
木箱といっても箱ですらありません。
中にあるネジらしきものにも特に役割はありません。
家にあった木材を意味のない形に接着して、 両サイドに電子基板2個を付けた。
もうそれだけでなにかすごいことをしでかしそうな雰囲気を醸し出してるが、 だめ押しで輪ゴムとバネを足して、便利さをプラスしている。 もちろんなんに対する便利さかは自分でも分からない。
手に装着すると超かっこいい!
電子基板のコンデンサーからなにかが発射されそう。スネオがこんなのもってそうだ。「へへっこれパパに買ってもらったんだ」。かっこいいけどそれほとんど木だから。
いかにも光りそうで光らないハイテクメガネ
地底人のメガネドラッグで買いました。
両目の電球、鼻当てに付けられたスイッチ。そこを押せばいかにも光りそうで、 当然まったく光らない。
しかしメガネに電球があるだけで、地底王国の住民が付けてるアイテムみたいではないだろうか。暗いから目元に明かりが必要なのだ。最初からいろんなことをあきらめていれば、そんな無茶も堂々と言える。
村上隆の新作
ウソです。
半分がミラーになっている電球にカニのチョロQやプロペラモーターを組み合わせた物。 ミラーの球面状の反射が圧倒的近未来感を醸し出している。 今年のクリスマスはトイザらスにこれが並ぶこと確実である。
ライオンも倒せるドリル。
そもそもがウソ100%で出来ているため、後からもウソつき放題。
何万トンの肉だって刺せる
そのあまりの攻撃的デザインにフランスでは抗議行動が起きたという。
小学2年生ぐらいのころ、図工の授業で「自分の理想の車」を描くというのがあり、 そこで僕はおにぎり型のワゴン車に所狭しとトゲの生えた、世紀末もいいとこな車を描いた。
思い出すとタイヤにもトゲを描いてたから、その頃から機能はもうあきらめていたんだろう。
「ヒャッハー!!」とシューマッハに跨がって欲しい。
かつてないハイスペックゴリラ
縄張り争いに負け命を落としたオスゴリラが、悪の博士の手によって蘇った姿。
電池以前にお尻に引っかかって回らないプロペラの意味のなさ。
過去に東宝の怪獣映画で
メカニコングというゴリラのロボットが登場したことがあり、
またゾイドというプラモデルにも
アイアンコングというゴリラをモチーフにした玩具がある。
それから分かるとおり、ゴリラのロボットというのはいつでも子供たちの憧れ
である。かっこよくならないわけがあろうか。
かっこいい対決
作ったものは何の疑問もなくかっこいいと思っている。 ただやはり自分だけの評価ですべてを決めてしまうのは良くないだろう。それではナルシストと同じだ。
そこで幼稚園から小学校低学年までの男子4名に、見た目だけかっこいい工作と市販のかっこいい玩具とを見比べてもらい、どちらがかっこいいか決めていただくことにした。
編集部から安藤さん・古賀さんと、当サイトライターの西村さんと元ライターの加藤和美さんのお子さん計4名によるジャッジ。
かっこいいもの感度が最も高い時期真っ盛りの彼らなら、大人とは違って真っ直ぐな批評が出来るはずである。
第1戦:メカ単なる木箱VS盾
手に装着する点で共通しているため、このメカ単なる木箱はトイザらスで売っていたスチロール製の盾と勝負させよう。
武器防具は王道のかっこいいアイテムなのでいきなり強敵だが、全体的な材料費なら見た目だけ工作の方が上のはず!(寄せ集めだからいくらかは分かりません)
いきなり評価が分かれた。特に引き分けが二つあるのが特徴的か。
古賀くん(都合上名字にくん付けで表記します)が「どっちもそんなでもない」で、西村くんが「まあまあどっちもかっこいい」なのは、4歳と6歳の間になにかかっこよさに関する決定的な芽生えみたいなものがあるのだろうか。
加藤くんは渾身の力で、盾。
そんな中、安藤くんは大絶賛。 年齢もちょっと高いため、電子工作のメカっぽさを分かってくれるのか。
ただそれとは別にこんなコメントもしていた。
すみません、なにもしないです。
第2戦:光らないメガネVS消しゴム
かっこいい単なるメガネの相手は単なる消しゴム。 これには負けて欲しくない。
ただこれ最近の仮面ライダーだそうで、昔のを知ってる身からしたらそのデザインの突飛さには不安にさせられる。これは工作有利と見ていいのか?
これまた年齢によって表が割れた。 ただ工作を選んだ理由がそれぞれフリーダムすぎてかっこよさが全然関係してない。
でも笑わせることが出来て満足。
それとは一方、古賀くんには恐怖心を与えてしまっていた。
ネットの闇には気をつけて。
これだけではなく、全工作でもう引き気味だったということなので、なんというかもう本当にすみません。
第3戦:電球カニプロペラVS戦隊フィギュア
おそらく今回の工作の中で最もコンセプトがないものであろう、この電球カニプロペラ(村上隆の新作だとあんまりなので)。
実はこの戦隊フィギュア、買いに行ったときちょうど売り場で父親が息子に「太郎これ買っちゃる!」と買い与えていて、 そのときの子供の反応が「ヴァー!ヴァヴァー!ヴァー!」と失禁しそうな大興奮状態だった。なのでこれはかなり分が悪いかもしれない。
しかしフタを開けてみるとまたも引き分け。 さらに工作を選んだ子供たちの反応はかなり良かった。
うれしさと同時に申し訳なさもある。
ということで安藤さんお願いします。いまなら1万8千円で売りますよ。
第4戦:ナイフフォークカーVSミニカー
世紀末デザインのクルマと一般的ミニカーの対決。 この二つのクルマが正面衝突した場合、世紀末の方が市販品のミニカーを真っ二つにしてしまうだろう。
そういった実力差があるのでこれは自信がある。
自信があると思ったら負けた。いつもそうなんです。
それはそれとして、西村君の理由はリサーチと違って意外だった。 攻撃性よりもスピードが大事なのか。確かに工作の方は遅い。というよりほとんど走らない。あのタイヤみたいなの滑車だからさ。
全力でミニカーを選んだ加藤くん。指すにしてもそこまで工作から離すことはないだろう。
第5戦:ハイスペックゴリラVS恐竜
最後の大将戦はゴリラ対恐竜。 映画のキングコングならコング圧勝必須であるが、かっこよさという点では 分からない。ただあんなにトゲがいっぱいなのだからものすごく強くてかっこいいと思ってくれるはず。
1対3で負けてしまった。確かにゴリラは途中でかっこよさよりおもしろさを狙いに行ってしまった感は否めない。それが敗因だったか。
鳴き声スイッチが股間にあるのを教えておくべきだった。
しかし安藤くんだけは断然すごいと超ゴリラ推し。 他にも「(スイッチないのに)スイッチ押したら動きそう」などゴリラ賞賛のコメントを してくれた。
そんな中でも特に次のコメントが、ゴリラだけならず今回の見た目だけかっこいい工作全体をまさしく言い表してるだろう。
みんなひどくて、みんないい
見た目だけがかっこいい工作は、工作というより美術に近い気がした。
工作では一切ないのは当然として、なにをどこに配置すればかっこいいか、 全体的なフォルムはどうか、そういうことが重要で機能はなにもないから失敗もない。 また形として失敗だとしても、それはそれで”ひどいけどかっこいい”のだから もちろん失敗ではない。
それを現代美術と言ってしまうとなんでも収まってしまいそうになるからまだ言わないが、 とりあえずMoMAから声がかかるのを待とうと思う。
西村さんが「うちの子のカッコイイのセンスはこの程度です」と送ってくださった写真。あ、こっちのほうがかっこいい。