本日めぐるパン屋はこちらの3軒
ビールが飲めてサンドイッチやちょっとしたパンが食べられるようなカフェだったらいくらでもあるだろう。
だが今日めぐるのはあくまでも「パン屋」である。
トレイとトングを手に持って、ずらりと並ぶパンをあれこれ迷って選ぶ。そこからのビール&パンだ。この喜びはパン屋のイートインでしか味わえないと思うのだ。
普段は買って帰るパンを今日はこの場でビールといっしょに食べられる!
ただ、パン屋にはそもそもイートインスペースがある方が珍しい。イートインがあっても大抵はアルコールは扱っていない。
そこを何とか、と、ビールが飲める店舗を探し、こちらの3店がようやく見つかった。
・アンデルセン 青山店
・サンジェルマン 恵比寿店
・ドンク 自由が丘大丸ピーコック店
できるだけおしゃれ寄りではない庶民のパン屋から探したつもりだったのだが、リストアップされた店があるのは青山、恵比寿、自由が丘。期せずして「Hanako」の特集みたいなセレクションになっている。
どうやら、おしゃれな街ではパン屋でビールが飲めるらしいのだ。
下手な写真1枚にもあふれるこのおしゃれさ、青山
しかしなにしろ私は普段の一人称が「あっし」なのだ。
「あっしが行っていい街なんでげすかねえ、青山って」
ダメだろう明らかに。
しかしパンとビールが待っている。臆して進むことにしよう。
※普段の一人称が「あっし」であるというのは嘘です。おしゃれタウンにびびりすぎて嘘が出ました。
アンデルセン青山店は表参道の交差点のすぐ近くにある。おしゃれ震源地のどまんなか
アンデルセンでビール&カレーパン
アンデルセンは広島に本社のあるベーカリーチェーンだ。
デパ地下に出店しているのをよく見かけるので「まちのパン屋」というよりやや高価格帯なのかもしれない。それでも店舗数が多いからかどこかとっつきやすい印象がある。
行くだけ行ってビール不在! ということがないようにあらかじめお店にビールの扱いがあるか確認の電話をしたのだが、保留音が一時スーパーの魚売り場で流れて流行した「さかな、さかな、さかな~♪」のような感じのパンの歌だった。やっぱりとっつきやすい。
2Fはコース料理も食べられるきちんとしたレストラン。1Fがパンの店
そして、地下1Fがサンドイッチとデリのイートインで、1Fで買ったパンも食べられる
アンデルセン青山店では、地下1階がカフェになっている。ここでドリンクなど何かしらひとつオーダーすると1階で買ったパンを一緒に食べられるという仕組みのようだ。
カフェでも作りたてのサンドイッチやバーガー、デリにスープなど女子悲鳴のメニューの注文ができるようだったが、もちろん今日は1Fでパンを物色する。
トレイとトングを持ってうろうろ(ちなみにこのシステムをはじめたのがアンデルセン)。売り場ではいろいろな種類のデニッシュや、小さなピッツァ(ピザじゃないほう)がきれいに陳列されていた。
ハード系のパンも充実していて思った以上にパンのラインナップはおしゃれだったが、関東でいうところのメロンパンはサンライズという名でちゃんと置かれているなど町のパン屋さんとしての仕事もぬかりない。
ビールに合わせるパンはどれにしようと思うといつものパン選びとは目先も変わってわくわく5割増しだ。
1Fでの会計時、地下で食べることを伝えると簡単な包装におしぼりをつけてくれた。そのまま地下へ行き、今度はビールをオーダー
ビールは小瓶で2種
ビールはカールスバーグ(550円)、スーパードライ(500円)の2種。どちらも小瓶で出されるようだ。
この日はビール好きの友人が食べ飲み要員として付き合ってくれたので、悩むことなく「どっちもください」発動である。
友人のチョイスは「デンマークシリアルサンド」とカールスバーグ。おい、なんかおしゃれなことになってるぞ
対する私のチョイスはカレーパンとスーパードライ。 今日やりたかったのは、つまりこういうこと!
このお店、女子率100%であった。入ってくれば来るほど、お客は全員女性だ。
私たちがビールを「カーッ!」と飲みはじめると妙にハーブの香りがする。カールスバーグってこんなにハーブっぽい匂いだっけ? と思っていたら隣の女性2人が持参のハーブの香りつきのおしぼりで手を拭いていたのだった。 おお、女の園だ。
そういう場所でのこの堂々たるカレーパン&スーパードライの美味しさよ。
カレーパンは超いい意味で「昔ながら」の甘辛いペーストカレーが
もちろん私だって女子の一員である。おしゃれなパンは大好きだ。アンデルセンの名物であるデニッシュも、あごが痛くなるようなハード系のパンも、固くてすっぱいサワーパンも買うときは買ったる。
でも、やっぱりビールに合うのはこういうザ・惣菜パンなのだと思うのだよ。
うん。やはりいい。パン屋でビール、いいぞ。すっかり胸を打たれて一人目頭を熱くしていると早くもカールスバーグを飲み干した友人が「次、行こう」と急きたてた。
うん。早く行かないとうっかり2杯目と追加のおつまみ(パン)を買ってしまいそうだ。
続いては恵比寿ガーデンプレイスへ
期待のサンジェルマン
小走りで電車を乗り継いでやってきたのは恵比寿。続いてのビールパン屋はガーデンプレイス内でちょこんと独立して営業しているサンジェルマンだ。
後ろ側がカフェスペースになっている
さきほどのアンデルセンがデパ地下のパン屋だとすると、サンジェルマンはスーパーによくあるパン屋。東急ストアに多く出店しているなとは思っていたが、もともと東急百貨店の子会社だったらしい(で、現在はJTの子会社とのこと。Wikipediaは物知りだな)。
グループのブランドには「プルミエサンジェルマン」という高級形態もある。恵比寿という土地柄この店舗もそちらなのではと思っていたが、見るとどうやらおなじみのサンジェルマンである。
これは気取らないパンが期待できそうだ。
セットメニューにもカレーパンやソーセージパンとおなじみの惣菜パンが
あっ! そうか、「エビス」か
期待通り、店内はいかにもパン屋の惣菜パンに菓子パンでいっぱいであった。
さらに盛り上がることには、こちらのビールは生、しかもエビスである。大き目の紙コップになみなみ入って550円だ。
と、ここでようやく気づいた。そうだ、ここ恵比寿じゃないか。ヱビスビールを作っていたから恵比寿になった、ビールの申し街(申し子みたいな感じで)なのだった。そもそもガーデンプレイスがサッポロの持ち物だ。
しかしそんなバックボーンはもうどうでもいい。乾杯だ。なにせ、この光景である。
ホットドッグに見えるけどそうじゃないソーセージのパンに、枝豆とチーズのパン、そしてまさかのチョココロネ。なんとこの店、テラス席もある
友人と二人、この冗談のような光景に興奮がとまらない。
「ここはすごい」「あれだ、これはパン屋でビアガーデンだ」「本当に記事にして載せちゃうの? 人が押し寄せたらどうしよう」
二人でかい声でしゃべりながらぐびぐびビールを飲んで、ばくばくパンを食べていた。
ビールとパンがお好きな方、ここは天国です。
友人がなんか地味なパン選んだなあと思ったが、枝豆でチーズでパンという対ビールとして無敵のパンだった
チョココロネは当然ビールには合わない。が、ビール(大好き!)×チョココロネ(大好き!)で幸せは倍増し、合う合わないはもう関係ない
正直、もう1回パンとビールを買いに戻りたかったのだが、ここで酔いつぶれてしまっては困る。自由が丘が待っているのだ。
恵比寿を振って自由が丘へ急ぐ。埼玉の山奥で蛇とカメムシにまみれていた中学生時代の自分に今日の道程を教えてびびらせたい。
しかし早くも酔ってきてしまったのかカメラにはこの時間に撮ったらしいすずめの写真がたくさんおさめられていた
スーパー帰りにビール、ドンク
最後のドンクはデパ地下や駅ナカ、さらに自由が丘の店のようにスーパーにも展開している。
ビールの扱いを聞くのに電話したところ「フランスパンの店、ドンクです!」と応対してくれたとおり、バケットやクロワッサンなどフランスのパンが得意というイメージがある。
おしゃれな街の代名詞、自由が丘であるが、ドンクのあるピーコック周辺はもろに地元スーパーの雰囲気
実はドンクはさきほどまでいた青山にも店舗がある。ちょっと覗いたらバーカウンターにビールサーバまであり、雰囲気も高級すぎて(何せ紀伊国屋インターナショナルと同じビルにあるのだ)およおよ後ずさりした次第なのだが、自由ヶ丘店はフレンドリーな雰囲気だ。
ここは1階でパンを選んで、そのまま2階のカフェスペースでお会計、ドリンクも注文する仕組み。
見るとスーパー帰りのお客が多いようだった。スーパー帰りにパンを食べながらビールが飲める。幸せの形としてはかなり完成度の高さではないか。
ビールになまの食パンを合わせる暴挙も可能
ここでは最後の店ということで、ビールが飲めるパン屋じゃないとできないことをやってみたい。
おつまみとして食パンを食べてしまおう。惣菜パンのほかに食パンもトレイに載せた。
ビールは小瓶でハイネケン(525円)、一番絞り(525円)の2種類。 コロッケパンは温めてくれた。そして、あれ? 食パンは
店員さんがまさかここで食べるとは思わなかったようで、持ち帰り袋に入れてくれたのだった。丁寧!
うん!、合わない! でも幸せ!
食パンはさておき、恵比寿のサンジェルマンで頼んだ枝豆とチーズのパンもそうだったのだがパン屋にはつまみとしてのポテンシャルが高すぎるパンがある。
ドンクで頼んだ「チーズパリパリ」もそうだ。その名のとおり、ぎゅっとチーズが凝縮された生地が平たくパリパリに焼かれている。これ、お茶で食べるパンじゃないぞ。やっぱりパン屋にビールは必要だ。
これを売るのなら、ビールを置くのは当然ですよね
全3軒、この日まわれたビールの飲めるまちのパン屋は少なかったが、すっかり堪能した。それにしてもやはりどの店も立地がおしゃれだ。
なんでだろうと思うと、パンとビールの組み合わせがちょっと外国っぽいから、なのだろうか。
フランスの人が昼からワイン飲む、みたいなことの延長にビールを飲ませるパン屋もあるのかもしれない。
どちらかという居酒屋みたいに使いたがってしまって申し訳ないとともに、今後ともパン屋の居酒屋性については注目していきたい。
夏休みの初日は8時から行こう
さて、ここまで黙ってきたが、今回まわった店はどの店も朝早くからやっている。自由ヶ丘のドンクは9時からだが、青山のアンデルセンと恵比寿のサンジェルマンは8時から営業だ。早い! なぜならパン屋だから。
大きな声ではいえないが、朝からビールが飲めちゃうわけだ。あっし、今年の夏休みの初日の朝にまた行ってみるつもりでげすよ。